船荷証券を紛失したとき:日本

質問

輸出者から直接郵送させた船荷証券が郵送途中のどこかで紛失してしまいましたが、どうしたらよいでしょうか。

回答

以下のとおり、実務的処理と法的処理に区分して述べます。実務的処理を行った後でも法的処理を行わねばなりません。

I. 実務的処理

船会社によって対応に違いはありますが、一般的には次のような対応が取られています。
輸入者は、次のいずれかを船会社に提出して、荷渡指図書(Delivery Order)を発行してもらいます。コンテナ・ヤード等の貨物引き渡し所で、この荷渡指図書と交換に貨物を受け取ります。

  1. 銀行の連帯保証状(BANK L/G :Letter of Guarantee)(銀行に保証料と手数料を支払い発行を受ける)
  2. 該当貨物のCASH DEPOSIT(CIF価格の150%など)および荷受人(輸入者)の保証状(SINGLE L/G)

a.とb.のどちらを求められるかについては荷主の信用力や船会社との関係によります。また、銀行自体に不安がある場合など、まれにa.とb.の両方の提出を要求される場合もあります。詳細については船荷証券を発行した船会社にご相談ください。

II. 法的処理

海外で発行された日本向け貨物の船荷証券が郵送途中で紛失した場合、以下のような法的処理が必要になります。
船荷証券は船名・貨物の品名・数量などが記載された有価証券で、荷主はこれと引き換えなくして船会社に貨物の引渡しを要求する権利はありません。逆に船会社は、船荷証券があれば、その所持人が正当な所持人でないとしても、悪意または重大な過失がない限り、その貨物を船荷証券の所持人に引渡してよいことになっています。
このため、船荷証券紛失後、もし他に船荷証券の取得者が現れた場合、貨物の所有権の帰属について紛争が起こる可能性があります。これを未然に防ぐために、所轄の簡易裁判所に権利の無効宣言である除権決定のため公示催告を申請します。この公示により、船荷証券の所持人の貨物引取請求権の時効(日本の商法上は5年、国際海上物品運送法上は1年)を待たず、その効力を消滅させることができます。具体的には以下の手続きで行います。

  1. 船荷証券が輸送途中のどこで紛失したかを特定することは実務的には困難であるため、通常、申立人所在地所轄の警察署にその旨を届け、紛失届出証明書を発行してもらいます。そして必要書類(船荷証券の写しおよび紛失・盗難・滅失の事実を証明する書類など)を揃えたうえで、本船が到着した荷揚地を管轄している簡易裁判所に提出し、公示催告の申立手続きを行います。
  2. 裁判所は公示催告の日時を指定し、「その期日までに紛失した船荷証券について権利を有するものはその旨を届け、船荷証券を提出しなければならず、その催告に応じない時は、その船荷証券は無効となる」旨を警告します。公示催告の方法は、裁判所の掲示板に掲示し、かつ官報または公報に掲載します。この公示までにおよそ2週間から1カ月要します。
  3. 一定の公示期間(法律上最低2カ月となっていますが、通常は4カ月〜4カ月半程度公示されるようです)の催告期間内に届出がなければ除権決定がなされ、この除権決定により申立人は荷主の権利を主張することが可能となります。

    なお、既に荷主が貨物を引き取るために、荷物引取保証状(L/G)を船会社に提出している場合は、この除権決定の謄本を船荷証券の原本に代えて船会社に持ち込み、L/Gの返却および銀行でのL/G解除を行います。

上記のように実際に船荷証券を紛失した場合は、長期にわたる法的手続きや、Bank L/Gの手数料負担、また、時効までに紛争が発生した場合は多大な費用がかかります。従って、船荷証券原本の郵送を手配する場合は、原本を複数発行してもらい、分割発送をするなどして郵送途中の紛失に備える等など、その取り扱いには十分注意を払う必要があります。

関係法令

非訟事件手続法 公示催告各条(§99,101,102,103,104)除権各条(§106,107,108)
商法 第518条(有価証券喪失の場合の権利行使方法))
国際海上物品運送法
「船荷証券統一条約」(船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約)(ヘーグ・ルール)
ヘーグ・ルールの改正議定書(the Hague-Visby Rules、ヘーグ・ヴィスビー・ルール)

参考資料・情報

「Q&A貿易実務トラブル解決マニュアル」 小林晃 編 日本経済新聞社
ジェトロ記事:
「「国際海上物品運送法」と船荷証券に関する国際条約(ヘーグ・ルール等):日本」

調査時点:2012年4月
最終更新:2019年12月

記事番号: A-A10837

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