海上貨物のセキュリティ規則(10+2ルール):米国

質問

米国向け海上貨物のセキュリティ規則(10+2ルール)について教えてください。

回答

米国は2001年の同時多発テロ事件を契機に、ヒトの米国入国については渡航者の基本情報の申告を出国前に義務付ける電子渡航認証システム(ESTA)を導入しました。モノに関しては、2002年には以下のようなリスクを把握する体制を導入しています。

I. 貨物のセキュリティ規則

  1. コンテナ・セキュリティ・イニシアチブ(CSI)
    外国の大型港湾に米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection: CBP)職員が常駐し、危険度の高いコンテナを識別・検査
  2. テロ行為防止のための税関・産業界パートナーシップ(C-TPAT)
    セキュリティー面の法令遵守に優れた輸入者などに対し、検査率の減少などの優遇を実施
  3. 24時間ルール
    外国港での船積24時間前までに、船会社などに船荷目録(マニフェスト)情報の提出を義務化
  4. 10+2ルール

    これらに続いてCBPは2009年1月から輸入者セキュリティ・ファイリング(Importer Security Filing: ISF)「10+2ルール」を導入しました。2013年7月からは、違反に対してはそれまでの貨物マニフェストの保留や非侵襲式な貨物検査に加え、罰金を含む罰則の本格運用が開始されています。すなわち、不正確、不完全、不適切なタイミングでのISFの送信については、1件につき5,000ドルの罰金が課せられます。また、ISFが送信されなかった場合は、貨物の輸入・転送が許可されません。船会社による積み付け情報(Vessel Stow Plan)違反の場合は貨物の陸揚げの不許可等の罰則が課せられる可能性があります。詳細は参考資料・情報にあるウェブサイトを参照してください。

    「10+2ルール」は、2006年10月に制定された港湾安全法(SAFE Port Act)に基づき、ハイリスク貨物選別の精度を高めるため、24時間ルールで要求されている船荷目録情報に加え、米国の輸入者に10項目、 船会社に2項目の追加情報の提出を義務付ける制度です。

II. 輸入者が提出すべき情報

1.通常貨物

輸入者は下記10項目の貨物情報を自動積荷目録システム(Automated Manifest System: AMS)もしくは自動通関申告システム(Automated Broker Interface: ABI)により、 CBPに提出します(バラ積み貨物は対象外)。10項目を提出のタイミングで分けると次のようになります。

    1. 船積24時間前に提出が必須のもの
      1. 売り手の名称および住所
      2. 買い手の名称および住所
      3. 輸入者登録番号および外国貿易地帯の出願人識別番号
      4. 荷受人番号
    2. 船積24時間前までに提出必須のもの。ただし、米国港到着の24時間前までは修正可能。
      1. 製造業者/サプライヤーの名称および住所
      2. 配送先の名称および住所
      3. 商品の原産国
      4. 商品の米国関税率表(Harmonized Tariff Schedule of the United State: HTSUS )番号
    3. 米国港到着の24時間前までにできるだけ早く提出するもの
      1. コンテナの詰め込み場所
      2. 混載業者/詰め込み業者の名称および住所

なお、暫定最終規則では上記10項目に加えて、CBPが積荷目録情報と結び付け、貨物を識別するための必須情報として、船荷証券番号(ハウスB/Lレベル)の提出が輸入者に求められています。B/L番号は、以前は出航するまでほとんど船会社から発行されていなかったために、導入当初は混乱がありました。現在は、ブッキング番号をB/L番号にするなど、各船会社で対策を講じています。ただし、B/L番号の設定方法は船会社により異なりますので、輸入者は船会社と緊密に連絡を取る必要があります。

2.米国港を経由して他国に向かう貨物(船積24時間前まで。荷下ろしせず、そのまま第三国に輸送する貨物は船積前のいつでもよい)

      1. 船腹予約者の名称および住所
      2. 貨物の積み下ろしを行う外国港
      3. 納入場所
      4. 配送先の名称および住所
      5. 商品のHTSUS番号(HSコード6桁)

III. 船会社が提出すべき情報

  1. 船積計画書(Vessel Stow Plan)
    最後に寄港した外国港を出航後48時間以内に提出します。バルクおよびブレーク・バルク貨物には本件は適用されません。申告はAMS、セキュア・ファイル転送プロトコル(sFTP)、またはe-mailで行います。sFTPは、暗号化された通信路を使って安全にファイルを送受信するプロトコルです。E-mailでの申告の場合、テキストファイル(.txt)の添付ファイルの形式で、CBPの専用アドレス、stowplan@cbp.dhs.govに送付します。なおCBPのシステムは、1件のe-mailにつき1件の船積計画書しか受領しません。
  2. コンテナ・ステータス・メッセージ(CSM)

    船会社のトラッキング・システムに関連情報が取り込まれた後、24時間以内に提出します。バルクおよびブレーク・バルク貨物に本件は適用されません。申告はsFTPで行います。

    このルールでCBPから情報提供義務を直接課されているのは、それぞれ米国の輸入者、船会社であって、輸出者ではありません。しかし、輸入者がCBPに提供を義務付けられている10項目の情報のうち、以下の6項目は輸出者が輸入者の情報入力期限に間に合うように提供する必要があります。

    1. 売り手の名称および住所(上記II. 1. 1. a.)
    2. 製造業者/供給者の名称および住所(同II. 1. 2. e.)
    3. 商品の原産国(同II. 1. 2. g.)
    4. 商品のHTSUS番号(同II. 1.2. h.)
    5. コンテナの詰め込み場所(同II. 1. 3. i.)
    6. 混載業者/詰め込み業者の名称および住所 (同II. 1. 3. j.)

IV. 輸入者の負担

「10+2ルール」の10項目+船荷証券番号のCBPに対する申告義務は輸入者が負っていますが、通関業者、運送業者、システムコンサルティング会社など多くの企業が10項目の代理申告を請け負うサービスを提供しています。一方、代理申告は行わず、効率的なデータ収集のためのシステム販売のみを専門とする企業もあります。輸入業者は申告情報の収集から申告までを自社独自で行うか、すべて外部に委託するか、一部のみを外部に委託するかを、コストおよび自社の要員、その能力などを総合的に検討して決定することになります。

V. 輸出者側の対応

日本の輸出企業の対応は、米国の子会社へ輸出する親子間取引の場合と、米国の第三者に輸出する場合の2通りが考えられます。

  1. 親子間取引の場合
    1. 輸出者である日本の親会社も「10+2ルール」の内容を充分理解することが必要です。
    2. 10項目の情報のうち、日本側親会社の誰が(who)、どの情報を(what)、いつ(when)、米国子会社の誰に(whom)、いかなる通信手段で (how)の情報を知らせなければならないか、あるいは明確にしておくことと、国内情報収集ルートの整備が重要です。これらの日本側親会社が集める情報を社内のどこか1つの部署に集中して、そこから米国の子会社に伝える方法をとるべきと思われます。
    3. 日本企業がアジアなどの工場で生産して直接米国子会社に輸出する場合、必要な情報を工場から直接米国子会社に伝えるのか、日本の親会社を経由して伝えるのか調整しておく必要があります。
  2. 日本企業が米国の第三者に輸出する場合
    10項目の情報のうち、輸出者である日本側企業でなければ入手が困難な情報は、輸入者と協力して迅速にな情報を提供するよう心がけるべきです。特に三国間取引の場合、輸出側企業が輸入者からの情報提供の要求に応じられないと、結果的に取引そのものを失うことになりかねません。また、必要な費用の両者間での負担区分については可能な限り事前に明確に定めておくべきです。

関係機関

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参考資料・情報

U.S. Customs and Border Protection(CBP):
10+2に関する情報リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
CBP enters Next Phase of Importer Security Filing外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ジェトロ:
物流セキュリティ規制に関する情報

調査時点:2014年12月
最終更新:2017年9月


記事番号: A-090902

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