原産地規則と原産地証明書:タイ

タイの原産地規則と原産地証明書について教えてください。

非特恵原産地証明書は、輸入国の要求に応じて発行するもので、原産地基準や要件は公式に示されていません。自由貿易協定や経済連携協定のための特恵(特定)原産地証明書については各協定における原産品判定基準に則り、協定ごとの様式で用意する必要があります。

I. 非特恵原産地証明書と原産地規則

非特恵原産地規則が適用されるのは、輸入国の法律・規則に基づく要請、契約や信用状に指定があり、輸出業者が産品の原産地をタイと示す証明書が必要となる場合です。
非特恵原産地証明書は、タイ商務省外国貿易局(Department of Foreign Trade: DFT)、タイ商業会議所(Thai Chambers of Commerce: TCC)、タイ工業連盟(Federation of Thai Industries: FTI)に申請します。必要書類は、(1)インボイス(商業送り状)、(2)船荷証券(事前発給の場合はドラフトB/L、もしくはその他の貨物輸送関係書類でも可)、(3)輸出業者による自己申告書(産品がタイ国内で製造された、または、タイ国内の工場から購入したものであるという宣誓)となります。産品の原価や製造工程に関する書類は不要です。もし輸出者がその輸出商品を製造していない場合、輸出者は、製造者または売主から工場設置許可(Ror Ngor4)のコピーなどを入手する必要があります。

非特恵原産地証明書を発行する際の原産性の判定に関する基準や要件は公式には示されていません。通常、輸入国側の法律・規則に対応する形で、発給当局が証明書の発給可否を判断することになります。商務省(DFT)によれば、一般的には、タイ国内での製造・加工によって、輸出品に40%以上の価値が付加されていれば、タイ原産品と判断されます。(2017年2月20日、DFT外国貿易サービス課に確認)

II. 特恵(特定)原産地証明書発給のための特恵原産地規則と原産品判定基準

特定原産地証明書とは、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)締約国間での貿易に際し、域内原産品に特恵待遇を供与するための原産地証明書です。タイが発給する主な特定原産地証明書の様式ならびにそれぞれの原産地規則・原産性判定基準は下記のとおりです。

  1. 日タイ経済連携協定(JTEPA)原産地証明書様式: Form JTEPA
    原産地規則の詳細は協定第3章(第27条から第49条)に記載があります(協定文へのリンクhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/thailand/kyotei.html)。原産地規則の概略は下記のとおりです。
    1. 完全生産品: WO
      当該締約国で完全に得られ、または生産される産品。
    2. 当該締約国の原産材料のみから当該締約国で完全に生産される産品: PE
    3. 非原産材料を使用して当該締約国内で完全に生産される産品: PS
      非原産材料を使用して当該締約国で生産される産品であって、附属書2並びに第3章第28条から30条(一般的原産基準)(品目別規則)に定める3つの実質的変更基準の一つまたは複数を満たすもの。
      1. 関税分類変更基準 (2桁、4桁、または6桁ベースによる)
        輸入原料・部品の関税分類番号(HSコード)と完成品の関税分類番号(HSコード)が異なれば、完成品製造国の原産品とするという基準です。品目によってどの程度の番号(何桁の変更)の変更が求められるかは協定の品目別規則を確認する必要があります。
      2. 加工工程基準
        非原産品に特定の加工工程が施されたことをもって原産品とします。 例えば、布類の場合、繊維と染色が必要です。
      3. 付加価値基準
        加工の結果、産品に付加された価値が特定の比率(例:40%)以上となる場合に原産品とします。
  2. ASEAN自由貿易協定(AFTA)原産地証明書様式: Form D

    鉱工業製品に対する一般規則として、付加基準40%以上、もしくは4桁レベルの関税分類変更基準のいずれかを満たせばよいという基準が採用されています(品目別規則による例外もあるため、品目ごとに事前の確認作業が必要です)。

    付加価値基準40%以上とは、すなわち、最終加工工程がASEAN締約国内で実施され、その現地調達率が40%を超えていなければなりません。この現地調達率にはASEAN締約国から調達した部品・原材料も含みます。これはASEAN累積原産基準(ASEANコンテンツ)と呼ばれています。4桁レベルの関税分類変更基準とは、非原産材料のHSコードと最終生産品とのHSコードの変更が品目別規則に規定されている基準を満たしている場合に、原産品とみなす基準です。

  3. ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)原産地証明書様式: Form E
    アーリーハーベストの対象品目は農産物のみで、完全生産品基準が適用されます。鉱工業製品を含む非完全生産品については、一般規則(General Rule)として、40%以上の付加価値基準が採用されています。ASEAN域内および中国の部材も組み込んだASEAN中国累積ベースで、輸出品のFOB価格の40%以上が、締約国内で付加されていることが必要です。
  4. ASEAN・インド自由貿易協定(AIFTA)原産地証明書様式: Form AI
    果物、植物、動物、魚介類等に適用される完全生産品基準のほか、非完全生産品に対しては、鉱工業製品などに対する一般規則として、付加価値基準35%以上、および6桁レベルの関税分類変更基準をいずれも満たさなければならない基準が採用されています。
  5. ASEAN・豪州・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)原産地証明書様式: Form AANZ
    完全生産品基準のほか、鉱工業製品に対しては、品目別規則により、関税分類変更基準 (2桁から6桁)、付加価値基準(多くは40%以上)、加工工程基準などが定められています。多くの製品は、上記のいずれかを満たせばよい基準が採用されています。
  6. タイ・インド自由貿易協定(アーリーハーベスト)原産地証明書: Form FTA
    アーリーハーベスト措置の原産地規則は、完全生産品基準が適用される果実、植物、動物、魚介類などを除き、ほとんどが4桁ないし6桁の関税分類変更と付加価値基準40%以上を同時に満たすことが必要です。宝石類には調達率が20%以上と低いものもあります。
  7. タイ・オーストラリア自由貿易協定(TAFTA)原産地証明書: Form FTA
    基本的には関税分類変更基準(4〜6桁)が採用されています。ただし、繊維製品、衣服、靴、鉄鋼製品、機械、エレクトロニクス製品、自動車・同部品などは関税分類変更基準に加え、現地調達基準も同時にクリアする必要があるものもあります。あるいは、どちらか1つをクリアすれば認定される品目もあります。現地調達率の水準は40%または45%です。衣類、靴については現地調達率55%以上という高い基準が設けられています。
  8. 日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)原産地証明書様式: Form AJ
    本経済連携協定の詳細については文末記載のウェブサイトを参照ください。
  9. SEAN・韓国自由貿易協定(AKFTA)原産地証明書様式: Form AK
    本自由貿易協定の詳細については文末記載のURLを参照ください。

III. 原産地証明書発給機関

経済連携協定(FTA/EPA)の特恵関税適用を受けるための特恵(特定)原産地証明書はタイ商務省外国貿易局(DFT)が発給します。非特恵原産地証明書は、DFTに加えタイ商業会議所でも発給可能です。

商務省・外国貿易局コンタクト先:+66-2-547-4832(Bureau of Foreign Trade)

タイ商業会議所コンタクト先:+66-2-018-6888(内線1060)

関係機関

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参考資料・情報

ジェトロ:
海外のビジネス情報(タイ)
日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)
ASEANの締約するFTA活用マニュアル
日本・タイ経済連携協定(JTEPA)

日本商工会議所:
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インド商業工業省:
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オーストラリア外務貿易省:
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日本機械輸出組合:
アジア諸国の原産地表示およびラベリング義務外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017/2

記事番号: A-051005

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