衣料品の現地輸入規則および留意点:EU向け輸出

質問

EU向けに衣料品を輸出する際の現地輸入規制および留意点について教えてください。

回答

I. EU全体の輸入規制

WTO加盟国に対する輸入割当は2005年に廃止されており、日本製の繊維製品にも特別の輸入規制はありません。EU域内産業保護等のため、必要に応じて監視、セーフガードなどの措置がとられる場合があります。(欧州議会・理事会規則2015/936)。

II. 輸出者としての留意点

  1. EU域内での市場流通は一般製品安全指令(Directive 2001/95/EC of the European Parliament and of the Council of 3 December 2001 on general product safety:GPSD))が適用され生産者は安全な製品のみ流通させる義務があり、衣料品に関しては製品素材の難燃性や有害物質の含有規制や縫製の不具合による使用上の安全に関して留意する必要があります。そのほか、加盟各国レベルの規制についても注意が必要です。
  2. 表示、ラベルは繊維の名称と繊維製品の組成表示・ラベリングに関する欧州議会・理事会規則1007/2011(Regulation on textile fiber names and related labelling and marking of the fiber composition of textile products)に基づき表示、ラベルに関しての遵守が求められます。
    同規則は28の条文と10の付属書から構成されており、この規則の適用範囲、繊維の名称や関連のラベル表示とマークの要件、市場での監視、新しい繊維の出現に備えての対処法などが規定されています。また、繊維の定量分析の方法も付属書で規定しています。主な内容は以下のとおりです。
    1. 使用できる繊維の名称はCotton、Polyesterなど50種にのぼること
    2. 複数の繊維素材が使用されている場合は構成比を重量比(%)で正確に記載すること
    3. 少なくとも重量比80%を超える繊維素材が使われている繊維製品にも表示適用が求められること
    4. 動物起源の素材が含まれている場合の表示義務

この他、サイズの表示方法、完全なトレーサビリティを提供する原産地ラベリング制度、洗濯その他の取扱い方法を示すケアラベルのシステム、アレルゲン物質の表示、電子表示、非言語シンボル・コードによる繊維識別表示などにも注意が必要です。事前に輸入者を通じて関係機関への確認や検査認証機関からのサポートを仰ぐことをお勧めします。

III. 有害物資の管理

欧州議会・理事会規則(EC)No. 1907/2006「化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則」(REACH規則)に基づき製品中に含まれる化学物質は発がん性、有毒性、残留性の観点より当該物質の使用の禁止や使用用途での届出、認可が必要となります。
特に繊維製品関連物質としては、アゾ顔料・染料、フタル酸エステル(PAE)(合成皮革のジャンパーやTシャツのプリント部分など可塑剤として樹脂に添加される可能性)について含有の有無の確認が必要です。

IV. 日EU経済連携協定(EPA)

2019年2月1日に発効した日EU経済連携協定の基づき特恵関税の適用により関税の減免措置が受けられます。
特恵関税の適用を受けるためには、日本で生産された原産品としての資格を有することが必要です。衣料品は一般的に関税分類コード(HSコード)番号で61類または62類になりますが、これらのHSコード品目の日本以外の非原産材料を使用した場合の品目別規則を確認して加工工程基準(繊維製品の2工程基準)に従うことになります。例えば製品の一部に中国原産のボタンやファスナー等が使われていても加工工程基準を満たせばこれらの素材(いわゆる副素材)の原産地は問題とはなりません。詳細は文末の「参考資料・情報」の 日EU・EPA解説書をご参照ください。

関係法令

欧州議会・理事会規則(EU)No.1007/2011:繊維の名称と繊維製品の組成表示・ラベリングに関する規則(統合版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
欧州議会・理事会規則(EC)No.1907/2006:化学物質の登録、評価、認可および制限(REACH)に関する規則(統合版)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

参考資料・情報

ジェトロ:
世界各国の関税率
日EU・EPA解説書:日EU・EPAの特恵関税の活用についてPDFファイル(6.3MB)

調査時点:2015年12月
最終更新:2020年3月

記事番号: A-031212

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