化粧品の現地輸入規則および留意点:シンガポール向け輸出
質問
シンガポールに化粧品を輸出します。現地での輸入規則および輸出者として留意すべき事項を教えてください。
回答
シンガポールは東南アジア諸国連合(ASEAN)化粧品規則(ASEAN Cosmetic Directive: ACD)を早期に導入し、ACDに準じた化粧品管理のためのガイドラインが策定されています。
I. ASEAN化粧品統一規則の枠組み
ASEAN加盟各国は、2003年9月の経済閣僚会議で、ASEAN化粧品統一規則に関する枠組み(ASEAN Harmonized Cosmetic Regulatory Scheme)に署名しました。その後、各国でACDに基づく国内規制が整備されました。シンガポールでは、ACDが2008年1月1日から施行され、保健科学庁(Health Sciences Authority:HSA)がガイドライン「Guidelines On The Control of Cosmetic Products」を発表して化粧品管理を行っています(以下「化粧品管理ガイドライン」)(HSA:Regulatory Overview of Cosmetic Products
)。
ACDはArticle1からArticle12の条項があります。
Article1は、加盟各国がこの規則の各規定(Provision)、付属書(Appendix)、付表(Annex)に適合する化粧品のみ市場に出ることを確保するために必要な措置を講じなければならないと規定しています。ただし、成分については各加盟国の事情も考慮し、一定の条件の下でACDの規則に従わないことも認めています。
Article2〜Article11では、化粧品の定義、安全性に関する要件、使用を禁止あるいは制限する成分および使用できる着色剤・防腐剤・紫外線防止剤のリスト、前記リストに含まれない成分の承認手続きについての取り決め(ASEAN Handbook)、表示(ラベリング)、化粧品の機能・効能の主張、製品情報の提供義務、分析方法に関する文書、ACDの導入に関する調整・評価・監視のための委員会設置、特例について規定されています。
さらに、AppendixおよびAnnex には以下の情報が掲載されています。
- Appendix I および付表Annex I:化粧品の分類
- Appendix II:具体的な表示事項
- Appendix III:化粧品の機能・効能の主張に関するガイドライン
- Appendix VI:Good Manufacturing Practiceガイドライン(Appendix V:廃止)
- Annex II: 使用が禁止されている成分のリスト
- Annex III: 条件付きで使用が許容されている成分のリスト
- Annex IV: 使用が許容されている着色料のリスト(Annex Vは廃止)
- Annex VI:使用が許容されている保存料のリスト
- Annex VII:使用が許容されているUVフィルター成分のリスト
ACD関連文書は文末の保健科学庁(HSA)のASEAN Cosmetic Directive
で見ることができます。Annexの成分リストは、ASEAN化粧品委員会(ACC)で毎年見直されていますので、シンガポールへの化粧品の輸出者は、自社製品の成分が最新の禁止・制限リストに抵触しないかを注意する必要があります。
II. シンガポールでの化粧品管理
- 健康製品(アセアン化粧品指令)規定
シンガポールでは、化粧品は医薬品などの健康製品の一種として、健康製品法(Health Products Act)の附属規定である健康製品(ASEAN化粧品指令)規定〔Health Products(Cosmetic Products - ASEAN Cosmetic Directive)Regulations 2007〕を2007年に制定し、2008年1月1日から施行し、化粧品管理ガイドラインを発表しました。
シンガポールの管理規則はACDに準じています。ただし、成分規制や表示にはACDの規定よりも具体的・詳細に規定されています。 - シンガポールにおける化粧品管理(概要)
- 責任者選任義務
シンガポールに化粧品を上市する輸入者あるいは販売業者は、シンガポールに登録住所を持つ現地輸入者・代理店・販売者のうちの1法人を市場販売責任者として選任の上、当該化粧品をHSAに届け出る必要があります(Product Notification)。市場販売責任者は、届出、表示内容の適合、苦情対応、有害事象報告、必要に応じた製品回収を行う法的責任を負います。 - 販売前届出義務
化粧品を市場(店頭やオンラインを含む)において販売する前に、製品ごとの届出(Product Notification)が義務付けられています。
製品の届出はHSAのオンラインシステム (Pharmaceutical Regulatory Information System: PRISM) を介して市場販売責任者が行います。化粧品の届出はオンライン上で比較的簡単に行えますが、ブランド名、製品名、製品の種類、販権の変更等があった場合には、既存の届出を取り消し、新たに届出を登録する必要があります。また、販売しようとする製品が既に別の会社によって届出され、同じ製造者によって製造されている製品であっても、輸入者が異なる場合には届出が必要です。届出の有効期間は一年間ですので、シンガポールで販売を継続する場合、毎年届出を行う必要があります。
もし販売を中止する場合は届出を取り下げることができます。届出義務違反は罰則の対象となりますので、ご留意ください。なお、ASEAN域外製造の輸入品にも、ACDに従い、ISO22716に整合するASEAN化粧品製造管理および品質基準(Good Manufacturing Practice: GMP)への適合が望まれます。ただし、ACDのGMPは自主運用規定であり、輸入時に、適合証明の提示は義務付けられていません。日本からの化粧品輸出手続きはジェトロ貿易・投資相談Q&A「化粧品を輸出する際の注意事項」を参照ください。 - 成分規制
防腐剤、着色剤、紫外線吸収剤など添加剤の使用も特定のものに限り許可されます。配合成分の詳細はACDのAnnexを確認してください。Annex II(配合禁止成分リスト)、Annex III(配合制限成分リスト)のほか、着色料・防腐剤・紫外線防止剤については許可リスト方式が取られており、Annex IV(着色剤ポジティブリスト)、Annex VI(防腐剤ポジティブリスト)及びAnnex VII(紫外線吸収剤ポジティブリスト)に挙げられたものしか使用できません。 - ラベル表示
シンガポールで化粧品を販売するには、製品の容器や外箱等に一定の項目を英語で表示する義務があります。他の言語を併記することも可能ですが、英語表記と内容が一致している必要があります。なお、ラベル表示はシンガポール通関時に貼付を求められるものではありません。表示すべき具体的事項はACDのAppendixに定められており、以下のとおりです。- 製品名
- 用途(名称やパッケージから用途が明らかな場合は用途の明記省略可)
- 使用方法(製品名や形状等から明らかでない場合は、具体的な使い方の説明)
- 成分(全成分)
- 製造国
- 市場販売責任者の氏名および住所
- 内容量(重量または容量)
- ロットNo
- 製造日または使用期限(耐久性が30カ月未満の製品は使用期限を記載)
- 市場販売責任者の氏名および住所
- 使用上の注意(とくに、Annex III、Annex VI、Annex VII のリストに掲載されている成分に関連している場合)
- 責任者選任義務
III. 輸入関税・その他税
シンガポールの輸入化粧品に対する関税率は全て0%ですが、物品・サービス税(GST、CIF価格の9%)が輸入通関時に課税されます。
IV. 医薬成分入り製品の個人使用目的の輸入についての留意点
シンガポールでは、化粧品を個人が自ら使用する目的で輸入する場合、HSAへの事前製品届出は不要です。但し、化粧品に類似する一部の製品については、(例えば、ニキビ治療や皮膚炎の改善のためなどの治療効能があるとするスキンケア製品、医薬成分を含む染髪用製剤及びヘアケア用製剤など)は、医薬的効能を有することから、therapeutic productとして、別途許可等を得る必要がありますのでご留意ください。Regulatory overview of therapeutic products
関係機関
関係法令
参考資料・情報
-
ASEAN化粧品協会
- 保健科学庁(HSA)(化粧品規定に関するウェブサイト):
-
ASEAN Cosmetic Directive
-
Regulatory overview of cosmetic products
-
化粧品管理ガイドライン(HSA)
(562KB)
- ジェトロ:
- 世界各国の関税率「World Tariff」
調査時点:2017年3月
最終更新:2025年11月
記事番号: A-030113
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