貨物をコンテナに詰めたまま輸出通関する「搬入前申告」、「搬入前検査」:日本

質問

自社工場でコンテナに貨物を詰めた状態で輸出の許可を得る「搬入前申告」および「搬入前検査」について教えてください。

回答

2011年(平成23年)10月、保税搬入原則の見直しによる関税法基本通達等の改正で、輸出申告における「予備申告」と「事前検査」制度が廃止され、それに替わり「搬入前申告」と「搬入前検査」制度が導入されました。

I. コンテナに詰めた貨物の「搬入前申告」

従前、輸出申告は保税地域に貨物を搬入した後に行うのが原則でしたが、2011年10月の法令改正で、輸出申告は保税地域への搬入前に行うことができるようになりました。これを「搬入前申告」といいます。この結果として、工場で貨物をコンテナに詰み込んだ後に輸出申告することが可能になりました。

II. 「搬入前申告」のメリット

「搬入前申告」制度には、輸出申告の時期を早め、コストと時間の短縮を図りたい産業界の要請と、不正輸出の防止という税関の目的があります。搬入前申告は正式な輸出申告ですから、申告には厳密さが要求され、貨物と書類の内容に不一致があれば全量取り出して開被検査、場合によっては輸出取り消しもあります。また、申告撤回は容易に認められず、税関様式の「輸出申告撤回申出書」を提出し、輸出者からの事情聴取や貨物検査が行われることもあります。一方、輸出の許可は保税地域に搬入後に行われますが、簡易審査扱い(区分1)や、審査扱い(区分2)であっても保税地域に搬入前に審査が終了していれば、保税地域への搬入登録を行うと同時に輸出許可になり、直ちに船積みすることができますので、コストと時間の大幅な短縮になります。

III. コンテナに詰めた貨物の「搬入前検査」

搬入前申告が検査扱い(区分3)になれば、原則として保税地域に搬入後に検査が行われ、コンテナからの貨物の取り出し、開梱検査が行われることもあります。そこで輸出者は、保税地域に搬入する前に税関長の指定する場所で検査を受けることができる「搬入前検査」を税関に申し出ることができます。税関長の指定する場所とは「保税地域」および「税関官署」のことですが、保税地域に搬入する前の検査という意味からは税関官署での検査を意味します。税関官署には大型X線検査場や開梱検査場が設けられているところもあり、ここでの検査が「搬入前検査」です。そのような設備のない税関官署では、保税地域での検査となります。検査の方法は、見本検査、一部指定検査および全部検査の3種類で通常の税関検査と同じです。搬入前検査のメリットは、検査扱いになったとき工場から直接税関検査場にコンテナ貨物を持ち込むことができ、費用と時間の軽減、短縮が図れることです。搬入前検査は、検査のためにコンテナから貨物を出さずに通関できるということではありません。

搬入前検査を受けるには、輸出者が口頭または簡単な文書で申し出を行い、かつ、以下の全ての条件を具備する必要があります。

  1. 搬入前検査を実施することに支障がない貨物であること(例えば、荷主の異なる貨物が同一のコンテナに詰められているような場合は支障があると見られます。)
  2. 積付状況説明書その他仕入書等により貨物の内容が明らかであること
  3. 搬入前検査後、速やかに保税地域に搬入されることが確実であること(例えば、自社工場に戻すことなく合理的な経路で保税地域に搬入することを言います。)

ただ、検査扱いになっても、貨物や貨物の積付状況の写真、説明書等を税関に提出すれば、これらの書類が審査・検査の参考にされることもありますので、コンテナ詰め込み時にはこれらの写真や書類を準備しておくことが必要です。
また、搬入前検査を行った貨物であっても輸出者等の輸出実績や違反・事故履歴の有無等を勘案して保税地域搬入後の検査が行われることもあります。

IV. コンテナに詰めたまま輸出通関をするときの留意点

  1. 「輸出許可が受けられない貨物」の詰み込み
    関税法第69条の2に規定する「輸出してはならない貨物」や、輸出貿易管理令該当貨物などで経済産業省の輸出許可や承認を得ていない貨物は輸出が禁止されています。輸出実績のない貨物を輸出するときは、事前に税関や経済産業省等の管轄官庁に確認されることをお勧めします。
  2. インボイスやパッキングリストに記載されていない物品の詰め込み
    たとえ輸送中の破損のための予備の箱や袋など廉価な無償貨物であっても必ずインボイスに記載してください。税関検査で発見されると事情説明や書類訂正などを求められ、許可が遅れ船積みに間に合わないこともあります。
  3. コンテナの総重量オーバー
    コンテナの総重量(貨物重量+梱包材重量+コンテナ自重)が規定を超えていると、コンテナヤード搬入や船積みができなくなり多大な損失となります。
    2016年7月の「改正SOLAS条約」の発効により、荷送人(船会社が発行するB/L上に荷送人として記載される者)は国交省へ“届出”の上、コンテナ総重量を船長へ提供する義務が課せられ、船積書類に正確な重量を記載しなければならなくなりました。

関係機関

参考資料・情報

調査時点:2017/01
最終更新:2017/11

記事番号: A-011213

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