輸入における価格および取引条件の決定方法:日本

質問

ある国から機械部品を輸入します。輸出者側が工場渡し(EXW)を提示しています。輸入原価の試算方法その他留意点を教えてください。

回答

EXWでは、物品が引き渡されてから自国に持ち込むまでの輸出入通関手続きおよび諸掛、輸送費、関税等の費用を買主が負担しなければなりません。加算すべき費用項目に関する情報を入手してEXWでの輸入原価を試算します。

I. 費用項目(海上運送の場合)

EXWの場合、EXW価格に以下の費用を加算したものが輸入原価となります。

  1. 輸出国内でかかる費用
    輸出国内でかかる費用は混載貨物(Less than Container Load: LCL)の場合は輸出者の工場などの貨物の引渡し地からCFS (コンテナ・フレート・ステーション)まで、コンテナ満載貨物(Full Container Load: FCL)の場合は輸出者の工場などの貨物の引渡し地からCY(コンテナーヤード)までの国内輸送費および国内輸送保険料、CFS費用またはTHC(ターミナル・ハンドリング・チャージ)、輸出通関料、輸出関税(ある場合)、海貨業者の手数料などです。
  2. 海上運賃
    船会社または海貨業者から見積書を入手して計算に加えます。
  3. 保険料
    損害保険会社またはその代理店から見積書を入手して計算に加えます。通常運賃保険料込(CIF)価格または輸送費保険料込(CIP)価格の110%が付保対象金額です。 海上保険は日本での貨物の最終目的地まで通しで付保することをお勧めします。
  4. 関税
    輸入する品物のHSコードと税率を税関に確認します。
  5. 消費税
    CIF価格に関税の額および消費税以外の内国消費税(酒税など)の額を加算した合計額に消費税率を掛けて算出します(消費税法第28条第4項参照)。
  6. 輸入国内でかかるその他の費用
    1. CFS料金(LCLの場合)またはTHC(FCLの場合)、貨物搬出費用、通関料、海貨業者の手数料、必要あれば保管料など
    2. 国内輸送費
    3. 銀行諸掛:代金決済手段がL/Cの場合はL/C開設料、送金の場合は送金手数料、金利など
    4. 商社・代理店などを起用した場合はその手数料

II. 費用の見積り

  1. 輸出者から、当該機械部品の梱包仕様・重量・容積などの数値を入手し、海貨業者あるいは国際宅配業者にEXW以降自社が希望する日本国内の納入場所までの上記Iの費用(6-cおよび dは除く)の見積りを依頼します。貨物が比較的軽く付加価値の高いものであれば海上輸送より、空輸のほうが有利な場合もあるため、必要であれば空輸の場合の費用の見積りも依頼します。空輸の場合はCFS費用とTHCはかかりません。貨物が大量の場合は、輸送費などを直接船会社から入手し、比較検討することも一案です。
  2. 実際の業務は、最適の見積りを提出した業者に任せられる部分は任せます。一部輸入者自身が行わなければならないこともあります。貨物の量が多い場合も業務の一部は直接、船会社などと契約したほうがコストの削減になる可能性があります。

III. 取引条件について

  1. 支払条件:
    貨物受領後の「後払い送金」が、コストもリスクも輸入者側にとって最小で最適です。輸出者がこの条件を受けない場合は、「L/C決済」を検討します。L/C決済が何らかの理由で難しい場合には、代金の一部を前払い送金し、残額を後払い送金にする方法もあります。
  2. 契約通貨:
    為替リスクのない日本円が最適です。ドル建て等の外貨建てにする場合は、為替変動リスクを最小限にするため為替予約などを行います。
  3. 契約書(または注文書):
    上記以外に契約対象、数量、価格、受け渡し場所、受け渡し時期、契約履行遅延のペナルティなど、当該契約固有の個別条項で必要なものは明記します。さらに、契約解除(契約終了)・不可抗力・機密保持・契約変更・紛争処理・準拠法などもできるだけ明記しておくとよいでしょう。

調査時点:2011年11月
最終更新:2018年12月

記事番号: A-011203

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