航空貨物運送状(Air Waybill)と船荷証券の違い

質問

航空貨物のAir Waybillの原本は、荷受人に送付せず、そのままキープしてよいと言われました。船荷証券(Bill of Lading:B/L)の取り扱いとはずいぶん違いますが、なぜですか。

回答

船荷証券(B/L)は貨物請求権を化体した権利証券ですが、航空貨物運送状(Air Waybill)は権利証券ではないため、流通性がありません。

I. 船荷証券(B/L)

船荷証券は船積書類の中で最も重要な書類の1つで、以下の基本的性質を持っています。

  1. 船積地で運送人(船会社)が貨物を引き受けたことを証する受領証
  2. 運送人と荷主との間の運送契約の証拠であり運送契約書
  3. 荷卸し地で運送人へ貨物の引渡請求することができる貨物引換証であり権利証券
  4. 裏書きすることで転売することができる流通証券

船荷証券は権利証券であるため、実務的には同証券を受け取った輸入者は、貨物の引き渡し請求権を受け取ったことになります。それが指図式の場合は流通証券となり、所持人が裏書きすることにより航海中に貨物を転売することもできます。
そして、運送人は船荷証券の所持人に貨物を引き渡す義務を負い、貨物と引き換えに船荷証券を回収しなければなりません。最近はコンテナ船の高速化などにより船積書類より貨物の方が早く到着する場合がありますが、原則として船荷証券なしでは貨物の引き取りができないので、船荷証券の代わりに保証状(Letter of Guarantee)を船会社に差し入れて引き取る方法が慣行になっています。通常は船会社所定の様式に、受取人と銀行が連署して保証状が発行されます。後日、船荷証券が到着すれば、船会社に提出して同保証状を解除します。

II. 航空貨物運送状(Air Waybill

航空貨物運送状(Air Waybill)は、前述aとbの性質を持っていますが、cとdの権利証券や流通証券ではないため、流通性がないことが船荷証券と大きく異なります。
航空貨物運送状は本来、荷送人から荷受人への貨物運送通知書です。また、記名式であるため譲渡可能(negotiable)ではありません。このため荷受人は運送人(航空会社、航空貨物代理店等)に対して荷受人であることを証明すれば、運送状原本を運送人へ提出しなくとも貨物の引き取りが可能です。

また航空貨物運送状を紛失した場合も、船荷証券のような煩雑な手続は不要なので、保証状による貨物引き渡しを行う等の手続きも不要です。これは、航空貨物の場合は海上貨物と比較して運送期間が短く、貨物を迅速に処理するために流通証券性を持たせない方が合理的だからです。

一方、航空貨物運送状の短所は、船荷証券のように担保力がないので荷為替手形の担保にはなり得ません。ゆえに、売主と買主は十分な信頼関係を前提として、決済は送金ベースや信用状なしの取り立て手形(B/C)によってなされます。
ただし、信用状で"Air Waybill Acceptable"の条項を入れれば荷為替の取り組みは可能になります。

また、信用状取引の際に航空貨物における売買料金の受け取りを確実にしたい場合は、運送状の荷受人(Consignee)を仕向地銀行宛にすれば、貨物は銀行の占有下にあるため荷受人は銀行に代金決済をしないと貨物を受け取ることはできません。

参考資料・情報

  • 国際商業会議所(ICC)信用状統一規則(UCP600)第23条

調査時点:2011年8月
最終更新:2017年9月

記事番号: A-010932

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