先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本

質問

先物為替予約は、その予約の実行日や期間の決め方に応じて、「確定日渡し」と「期間渡し」があり、「期間渡し」の中にも一般的に利用されている「暦月渡し」や「特定期間渡し」などの期間の決め方があると聞きました。それらの違いと利用にあたっての留意事項を教えてください。

回答

先物為替予約とは、企業と銀行との相対で、将来の任意の特定日または任意の一定期間をあらかじめ定めて外貨の受け払いを行う際に適用する為替レートを契約しておく取引のことを指します。 予約の実行日を将来の任意の特定日とする先物為替予約を「確定日渡し」といい、また、予約を実行する期間を将来の任意の一定期間とする先物為替予約を「期間渡し」といいます。

I. 「確定日渡し」と「期間渡し」の特徴

  1. 「確定日渡し」の特徴
    「確定日渡し」とは、例えば、「7月11日渡し」とか「11月14日渡し」といったように予約の実行日を特定します。このような特定日は、例えば、銀行が企業から持ち込まれる輸出荷為替手形の買い取りを行う日、または、輸入ユーザンスやインパクト・ローンの期日、外貨定期預金の預入・満期解約など外貨の支払期日や外貨の受領日が事前に確定している外国為替取引に利用されています。
  2. 「期間渡し」の特徴
    「期間渡し」とは、例えば、輸出入契約の締結後、受け払いする外貨建て代金の決済時期が特定日に確定できないような場合や数日間の着金のずれ込みや前倒しで支払いの実行をするなどの事態が予想されるような場合に利用されています。例えば、「4月渡し」とか「7月渡し」といった暦月ベースでの決め方を「暦月渡し」と呼んでおり、その暦の1日から月末日までの期間であれば、銀行の休業日を除き、いつでも予約の実行ができます。また、「9月21日から9月29日渡し」とか「10月25日から11月10日渡し」などのように、月またがりの期間であっても、任意の期間を設定する「特定期間渡し」や「順月特定期間渡し」のように、先物為替予約の締結日のバリューデート(一般的に2営業日後)を基準にして、例えば9月22日(予約締結日が9月20日と仮定)から10月21日の1ヶ月間のうち、いつでも予約の実行が可能な方法などが 一般的になっています。これらの「期間渡し」の特徴は、その予約が実行可能な期間中であれば、いつでも、また、輸出・輸入の同方向であれば、何回でも分割して実行することが可能ですので、分割船積許容条件(Partial Shipment Allowed)の輸出入取引などに便利に利用できます。

II. 先物為替予約の留意点

  1. 事前審査
    銀行は先物為替予約の締結に際し、顧客に先物為替予約の実行能力があるかどうか、事前に審査を行います。これは、万一顧客が倒産などの理由で先物為替予約の実行が不履行になってしまったような場合に、銀行が締結している予約レートと不履行になった時点での市場実勢レートとの差損金を顧客から回収できなくなるリスクがあり、先物為替予約の締結は顧客に対する与信行為とみなしているからです。
  2. 予約の取消と期日変更
    先物為替予約は原則として、あらかじめ決めた予約の実行日または実行期間内に、締結済みの予約金額の全てを消化して使い切らなければなりません。使い切れない場合は残額につきキャンセル手続きをとります。予約済レートでの期日変更(HRR: Historial Rate Rollover)は基本的に認められません。しかし、戦争や暴動・テロ、または、港湾ストライキや悪天候などの真にやむをえない理由がある場合には、銀行も先物為替予約の取消や期日変更(予約の延長など)に応じる場合があります。
    先物為替予約の期日延長などの必要性が生じた場合には、銀行内部での審査・事務処理などの手続きに時間を要する場合がありますので、できるだけ時間的余裕を持って取引銀行と相談することをお勧めします。

調査時点:2011/09
最終更新:2018/02

記事番号: A-010912

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