タックスヘイブン対策税制:日本

質問

軽課税国であるシンガポールに現地子会社を設立する計画ですが、日本の親会社に対しタックスへイブン対策税制の適用可能性があると言われました。 日本のタックスへイブン対策税制の概要を教えてください。

回答

タックスへイブン対策(CFC: Controlled Foreign Company, 合算課税)税制は、タックスへイブン(軽課税国)を利用して租税回避を図る行為を排除する制度です。
本税制では、外国子会社がペーパー・カンパニー等に該当する場合や経済活動基準のいずれか1つでも満たさない場合、外国子会社が得た全所得を内国法人の所得とみなして合算課税されることになります。
また、経済活動基準をすべて満たす場合であっても、後述する受動的所得については内国法人の所得とみなして合算課税の対象となります。
しかし、外国子会社の租税負担割合が一定割合以上であれば本税制は適用されませんので、先ず、外国子会社の租税負担割合を確認することが大切です。
これは、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との経済協力開発機構(OECD)の「税源浸食と利益移転行動計画」(Base Erosion and Profit Shifting: BEPS)の基本的な考え方によります。

Ⅰ. 外国関係会社

タックスヘイブン税制の適用対象となる海外子会社は「外国関係会社」です。
外国関係会社とは、以下のいずれかをいいます。

  1. 居住者・内国法人・特殊関係非居住者・(2)に掲げる外国法人(これらをあわせて「居住者等株主等」といいます)が直接または間接にその株式の50%超を保有している外国法人
  2. 居住者または内国法人との間に実質支配関係がある外国法人

(1)特殊関係非居住者

CFC税制の適用対象となる外国関係会社に該当するかどうかは、居住者や内国法人だけでなく、特殊関係非居住者が直接または間接に保有する持株割合も判定に含まれる点にも留意が必要です。

特殊関係非居住者は、非居住者で、次に掲げるものとされています。

  1. 居住者の親族
  2. 居住者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  3. 居住者の使用人
  4. 上述までに掲げる者以外の者で居住者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
  5. 上述に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
  6. 内国法人の役員及びその役員の特殊関係使用人

(2)間接持分は連鎖方式

また、間接保有している割合の計算は、50%超の支配関係が連鎖しているかどうかで判定します(「連鎖方式」)。連鎖方式では、内国法人等の最終的な間接持分は、50%超で連鎖している最後の外国法人が外国関係会社に対して出資している持分になり、途中で「50%超」という持分の連鎖が切れた場合は間接持分はゼロになります。
例えば、内国法人A社が外国法人B社に40%出資し、外国法人B社が外国法人C社に80%出資している場合、A社B社間が50%超になっていないため(50%超の連鎖関係が切れるため)、A社のC社に対する間接持分はゼロになります。そのため、C社はA社の外国関係会社に該当しません。
もし、内国法人A社が外国法人B社に60%出資し、外国法人B社がC社に80%出資している場合、A社B社間、およびB社C社間が50%超の連鎖関係が続いているため、C社はA社の外国関係会社に該当します。
なお、(5)で後述する「納税義務者」を判定するときの間接持分の計算は連鎖方式ではなく、「掛け算方式」を用いますので留意が必要です。

(3)実質支配関係がある外国法人

外国関係会社の判定は、資本関係の連鎖による判定のほかに、実質的支配関係によっても判定する基準があります。
実質的支配関係とは、次のような関係をいいます。

  • 居住者や内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有していること
  • 居住者や内国法人が外国法人の財産の処分の方針のおおむね全部を決定することができる旨の契約その他の取り決めが存在すること

(4)外国関係会社の判定時期

外国関係会社に該当するかどうかの判定は、内国法人の事業年度終了時ではなく、その外国法人の各事業年度終了時に行います。

(5)納税義務者

CFC税制の適用を受ける内国法人(納税義務者)は、

  1. 外国関係会社に対する直接・間接の株式等保有割合が単独で又は同族グループで10%以上である内国法人
  2. 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人 です。

CFC税制の納税義務者の判定においては、間接持分の割合計算は連鎖方式ではなく「掛け算方式」をも用います。この点、上述(2)で説明した外国関係会社の判定における間接持分の計算は「連鎖方式」で行う点が違うので、留意が必要です。
例えば、外国法人A社に株式の8%を保有する内国法人B社と49%を保有する内国法人C社がある場合、日本からの出資の合計は57%(つまり50%超の出資割合を満たす)なのでA社はB社とC社にとって「外国関係会社」に該当します。
しかし、納税義務者はC社のみです。なぜなら、B社が保有する8%はA社の外国関係会社の判定には使われますが、B社の保有割合は10%未満ですのでCFC税制の納税義務者にはなりません。
もし、内国法人A社が外国法人B社に40%出資し、外国法人B社が外国法人C社に80%出資している場合、内国法人A社がCFC税制の納税義務者かの判定における間接保有割合は40%×80%=32%となり、10%以上であるため、A社は納税義務者となります。

Ⅱ. 特定外国関係会社

従来の租税負担割合による一律の判断基準(いわゆるトリガー税率)は廃止され、租税負担割合が20%以上であったとしても、以下1~3に掲げるペーパー・カンパニー、事実上のキャッシュ・ボックス、ブラックリスト所在国法人の特定外国関係会社に該当する場合は当該会社のすべての所得に対して合算課税されます。ただし、企業の事務負担軽減の措置として、租税負担割合が27%以上のペーパー・カンパニー等については、親会社の令和6年4月1日以後に開始する事業年度から適用が免除されます。

  1. ペーパーカンパニー
    特定外国関係会社のうち、ペーパー・カンパニーとは、実体基準と管理支配基準のいずれも満たさない外国関係会社をいいます。具体的には、以下のいずれも満たさない外国関係会社をいいます。
    1. 実体基準
      主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している外国関係会社
    2. 管理支配基準
      その本店又は主たる事務所の所在する国または地域(本店所在地国)においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている外国関係会社

    ただし、海外で事業を行う際に一般的に用いられる実態があり、租税回避リスクが限定的であると考えられる一定の外国関係会社をペーパー・カンパニーとしない除外規定があります。 具体的には、次の3つはペーパー・カンパニーから除外されます。

    • 持株会社である一定の外国関係会社
    • 不動産保有に係る一定の外国関係会社
    • 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社
  2. 事実上のキャッシュボックス
    後述する受動的所得が一定以上の外国関係会社を事実上のキャッシュ・ボックスといいます。具体的には、以下の基準の両方を満たす外国関係会社をいいます。
    1. 総資産の額に対する保険金収入等の通常の経済活動からは生じないと考えられる異常所得を除く受動的所得の割合が30%を超えること
    2. 総資産の額に対する一定の金融資産等の額の割合が50%を超えること

    なお、上術の判定は、原則として外国関係会社の事業年度終了の時における貸借対照表の価格により行われます。

  3. ブラックリスト国所在法人
    租税に関する情報の交換に非協力的な国または地域として財務大臣が指定する国または地域に本店等を有する外国関係会社をいいます。

Ⅲ. 対象外国関係会社・部分対象外国関係会社

外国関係会社に経済実態があるか否かを判定する基準となります。
外国関係会社のうち、以下1~4の「経済活動基準」要件のいずれか1つでも満たさない外国関係会社を「対象外国関係会社」といい、以下1~4の「経済活動基準」要件をすべて満たす外国関係会社を「部分対象外国関係会社」といいます。 「対象外国関係会社」の所得のすべてが合算課税の対象所得となりますが、租税負担割合が20%以上の場合は合算課税が免除になります。

「部分対象外国関係会社」は税法で規定された一定の受動的所得だけが合算課税の対象所得となりますが、租税負担割合が20%以上の場合は合算課税が免除になる点は対象外国関係会社と同じです。

【経済活動基準】

  1. 事業基準:主な事業が株式の保有、著作権の提供、船舶リース等でないこと
  2. 実体基準:本店所在地国に主たる事業に必要な事業所等を有すること
  3. 管理支配基準:本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること
  4. 次のいずれかの基準
    1. 所在地国基準:主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は航空機リース業以外の場合で、かつそれを主として本店所在地国で行っていること
    2. 非関連者基準:主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は航空機リース業の場合で、かつ非関連者との取引割合が50%超であること
    3. 0%超であること
  1. 受動的所得とは

    「部分対象外国関係会社」で合算課税の対象となるのは、受動的所得(特定所得)を抜き出し、そこに損益通算や繰越欠損金の控除を適用して計算します。特定所得の主なものは次のとおりです。

    1. 株式等の配当(持分25%以上等の一定のものを除く)にかかわる所得又は譲渡による所得
    2. 受取利子等(業務の通常の過程で生じる預貯金の利子は除く)、デリバティブ取引及び外国為替差損益(業務(投機的取引を除く)の通常の過程で生じる損益は除く)
    3. 無形資産等(外国関係会社が自ら研究開発して得た無形資産は除く)の使用料による所得、譲渡損益
    4. 有形固定資産の貸し付けによる対価(対象資産が本店所在地国で使用される場合は除く)
    5. 総資産等に対して根拠性の希薄な異常所得
  2. 租税負担割合とは

    上述のとおり、租税負担割合が一定割合以上であれば、CFC税制(合算課税)は適用されません。そのため租税負担割合の計算は本税制の検討にあたって重要な検討項目です。
    租税負担割合の計算式は以下になります。

    分子(本店所在地国において課される外国法人税+第三国において課される外国法人税)
    /分母(本店所在地国の法令に基づく所得+本店所在地国の法令で非課税(日本なら課税)とされる所得+調整

    租税負担割合の計算においては、以下の事項などに留意下さい。現地国の優遇税制により分子の外国法人税が小さくなる場合や、外国で恒久的に税金が課されない非課税所得により分母が大きくなる場合があります。そうすると租税負担割合が小さくなり現地の法定税率を下回る可能性があります。現地国の申告状況の確認が必要となります。

    • 「本店所在地国の税法では課税にならないが、日本では課税になる所得」(ただし受取配当は除く)を分母の所得に加算します。
    • 無税国の場合とそうでない場合とでは租税負担割合の計算方法が異なります。
    • 分子の外国法人税とは、外国税額控除の対象となる外国法人税のことです。本店所在地国で課されるものの他に、他の国で課される外国法人税(源泉徴収によるもの)等も含みます。
    • 本店所在地国において複数税率が適用される場合は、外国法人税の額は、最も高い税率であるものとして算定した外国法人税の額とすることができます。

Ⅳ. 合算課税の時期について

CFC税制における外国関係会社に係る課税対象金額等の合算時期について、これまではその外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から2カ月を超過する日を含む内国法人の事業年度でしたが、この度の令和7年度税制改正により、これまではその外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4カ月を超過する日を含む内国法人の事業年度となりました。
内国法人の令和7年4月1日以後に開始する事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等について適用されます。

Ⅴ. その他

  1. 書類等の提出
    ペーパー・カンパニーの適用除外要件(Ⅱの1参照)または経済活動基準(Ⅲ参照)の判定上、国税当局の当該職員が要件を満たすことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限内に提出等がないときは、当該要件を満たさないものと見なされます。
  2. 外国関係会社に係る財務諸表等の添付
    内国法人は、以下の外国関係会社に係る財務諸表等の確定申告書への添付を要します。
    なお、令和7年度税制改正により、「株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書」、「勘定科目内訳明細書」は添付・保存書類の対象から除外されました。
    1. 租税負担割合が20%未満の外国関係会社
    2. 租税負担割合が27%未満の特定外国関係会社

関係機関

財務省主税局参事官室

関係法令

参考資料・情報

財務省:
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調査時点:2012年8月
最終更新:2026年3月

記事番号: A-010814

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