対外直接投資に際して必要な届出または報告:日本

質問

対外直接投資に際し、日本で必要な届出または報告にはどのようなものがあるか教えてください。

回答

対外直接投資とは、資本取引の一部であり、外為法第23条第2項において以下のとおり定義されています。
「対外直接投資」とは居住者による外国法令に基づいて設立された法人の発行に係る証券の取得若しくは当該法人に対する金銭の貸付けであって、当該法人との間に永続的な経済関係を樹立するために行われるものとして政令で定めるもの又は外国における支店、工場その他の事業所(以下「支店等」という)の設置若しくは拡張に係る資金の支払をいう。
またこのうち貸付けに関しては、貸付期間が一年を超える非居住者に対する金銭の貸付であって、該当居住者と非居住者の間に一定の関係(例えば出資比率10%以上など6つの基準がある)がある場合、「対外直接投資に係る金銭の貸付」として区分されます。
ほとんどの業種では、事後報告で対外投資を行うことができます。しかし、一部の業種および資本取引については、事前の届出または許可が必要です。

Ⅰ. 届出を要するもの

以下の業種では事前届出が必要です。

  1. 漁業(水産動植物の採捕の事業)
  2. 皮革または皮革製品の製造業
  3. 武器の製造業
  4. 武器製造関連設備の製造業
  5. 麻薬等の製造業

上記の業種にかかわる対外直接投資を行おうとする居住者[注1]は、その取引または行為の区分に応じて、次の(1)~(4)に記載の届出書を、対外直接投資を行おうとする日の2カ月以前に日本銀行を経由して財務大臣に提出しなければなりません。

  1. 証券の取得については、対外直接投資に係る証券の取得に関する届出書(外為省令別紙様式第17)
  2. 金銭の貸付については、対外直接投資に係る金銭の貸付契約に関する届出書(外為省令別紙様式第18)
  3. 支店設置・拡張資金の支払いについては、対外直接投資に係る外国における支店等の設置・拡張に係る資金の支払に関する届出書(外為省令別紙様式第19)
  4. 届出内容を変更[注2]する場合には、対外直接投資に係る変更届出書(外為省令別紙様式第20)

[注]外為法における居住者とは主に、日本に商業登記をした法人または日本に住所を有する自然人(個人)と規定されています。

[注2] 上記(1)~(3)の届出書を提出した居住者が当該取引を実行する前に、当該届出の内容について次の事項を変更しようとするときは、「対外直接投資に係る変更届出書」を3通作成し、これに原届出受理証等(正1通、同コピー2通)をそれぞれ添付して、日本銀行を経由して財務大臣に提出する必要があります(外為省令第22条1項、第24条1項)。

Ⅱ. 報告を要するもの

上記の業種を除く以下の対外直接投資取引については、当該対外直接投資取引を行った日または当該取引に係る支払等を行った日のいずれか遅い日から20日以内に、取引区分に応じて次の報告書1通を日本銀行経由で財務大臣に提出する必要があります。

取引区分 取引内容
a (証券の取得) 居住者の出資比率が10%以上の外国法人(今回、株式または出資の持分を取得することにより、出資比率が10%以上になる外国法人を含む。以下b.およびc.についても同じ)の発行する証券の取得。
b (同上) 居住者と当該居住者の100%出資子会社(居住者、非居住者の違いは問わない)との出資比率の合計が、10%以上の外国法人の発行する証券の取得。
c (証券の取 得・証券の譲渡) 居住者と共同出資者(居住者、非居住者の違いは問わない)との出資比率の合計が10%以上の外国法人の発行する証券の取得又は譲渡。
d (同上) 居住者と次のいずれかの永続的な関係にある外国法人の発行する証券の取得又は譲渡。
  • 当該外国法人に対して役員を派遣している(常勤、非常勤は問わない)。
  • 当該外国法人に対して長期にわたる原材料の供給又は製品の売買を行っている。
  • 当該外国法人に対して重要な製造技術を提供している。
e (証券の譲渡・債権の放棄又は免除) 上記a、bの取引にかかる報告書、又は届出書を提出した後に、取得した証券を非居住者に譲渡。もしくは、対外直接投資として行った金銭の貸付契約に基づく債権を放棄又は免除。
  1. 取引区分a、bの場合は※、対外直接投資に係る証券の取得に関する報告書(報告省令別紙様式第16)
  2. 取引区分c、dの場合は※、証券の取得又は譲渡に関する報告書(報告省令別紙様式第13)
  3. 取引区分eの場合は、対外直接投資に係る証券の譲渡並びに債権の放棄及び免除に関する報告書(報告省令様式第19)

※「a、b」と「c、d」の両区分に該当するケースは、「a、b」に該当している点が優先され、「対外直接投資に係る証券の取得に関する報告書(報告省令別紙様式第16)」を報告する扱いとなる。

なお、いずれかの場合も別途外為法第55条に基づき、支払又は支払の受領に関する報告書(の提出が必要となります。また、直接投資先の外国法人の翌事業年度(報告者が法人以外の場合には、当該外国法人の事業年度の終了日の年の翌年)開始後4カ月以内に「対外直接投資に係る外国法人の内部留保等に関する報告書(様式51)」を提出します(出資の帳簿価額10億円以上の場合)。

Ⅲ. 許可を要するもの

資本取引のうち、「経済制裁措置及び許可手続」で対象とされる者との取引については、事前に財務大臣の許可を得る必要がある場合があります[外国為替及び外国貿易法(外為法)第21条、外国為替令(第11条)および財務省告示(1998年3月大蔵省告示第九十九号)]。 対外直接投資の許可申請を行おうとする場合は、取引区分に応じて、以下のa~cの許可申請書いずれかを作成し、日本銀行を経由して財務大臣に提出しなければなりません。なお、対外直接投資の許可申請には、投資金額にかかわらず申請が必要です。

  1. 対外直接投資に係る証券の取得に関する許可申請書(外為省令別紙様式第11)
  2. 対外直接投資に係る金銭の貸付契約に関する許可申請書(外為省令別紙様式第12)
  3. 対外直接投資に係る外国における支店等の設置・拡張に係る資金の支払に関する許可申請書(外為省令別紙様式第13)

外為法上の報告書様式は下記「参考資料・情報」に掲載の日本銀行ウェブサイト「報告書様式および記入の手引等」を参照ください。

関係機関

関係法令

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参考資料・情報

財務省:
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日本銀行:
報告書様式および記入の手引等外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外為法Q&A(資本取引編)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1,0MB)

調査時点:2015年1月
最終更新:2025年7月

記事番号: A-010802

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