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化学品の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出

質問

米国向けに化学物質(品)を輸出する際の米国の輸入規則および留意点について教えてください。

回答

米国へ化学物質(品)を輸出する場合、環境保護庁(EPA)の「有害物質規制法(Toxic Substances Control Act: TSCA)」と、労働安全衛生局(OSHA)が所管する「労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act: OSHA)」による規制を理解する必要があります。

I. 有害物質規制法(TSCA)による規制

TSCAは、人の健康または環境にEPAが所管する有害な化学物質が及ぼすリスクを防止することを目的としており、商業用に米国で製造、加工、または輸入される「化学物質、混合物または化学物質、混合物を含有する物品(以下アーティクル)」を規制しています。
TSCAでは化学物質を「既存化学物質」と「新規化学物質」に分類しています。化学物質には、ある特定の分子式や構造を持った有機もしくは無機化学物質、ポリマーおよびUVCB物質(Substances of Unknown or Variable Composition, Complex Reaction Products or Biological Materials、組成が不明または不定の物質、複雑な反応生成物または生物材料)を含みます。他の法律によって規制される殺虫剤、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、放射性物質、軍需物資、タバコなどは、規制の重複を避けるためTSCAの適用外です。

  1. 既存化学物質
    TSCAの「既存化学物質」リスト(TSCA Inventory、以下インベントリー)には、1975年1月1日以降に製造、輸入または加工された化学物質が収録されています。インベントリーの公開部分には特定の化学名と「CAS登録番号」が記載されています。インベントリーの公開部分に収録されていない化学物質は通常、「新規化学物質」とみなされますが、既存化学物質でも非公開部分に含まれている場合があります。収録が確認できない化学物質の分類については、EPAに直接確認ください。

    「CAS登録番号」は米国化学会の情報部門(Chemical Abstracts Service: CAS)が付与する化学物質の識別番号です。化学物質を特定し、その物質に関する情報を検索する際に利用されます。異なる名称であっても、CAS登録番号が同じであれば、同一の物質と判断されます。CAS番号は、日本では(社)化学情報協会が登録手続きを代行しています。

  2. 新規化学物質
    1. 米国内で商業目的のためにインベントリーに収録されていない「新規化学物質」を製造・輸入する米国内の製造者または輸入業者は、製造または輸入の前にEPAへ届け出る必要があります。届け出の手順は以下のとおりです。
      1. 新規化学物質の製造または輸入開始の少なくとも90日前に「製造前届出(Pre-Manufacturing Notice: PMN)」をEPAに提出します。
      2. EPAは90日以内に審査します。
      3. EPAのPMN承認を受けた製造者または輸入者は、製造または輸入後30日以内に開始届出(Notice of Commencement of Manufacture or Import: NOC)を提出します。
      4. NOC提出後、新規化学物質はインベントリーに既存化学物質として分類、収録されます。
    2. 上記のようなPMN規則に加え、PMN免除規定があります。PMN免除の種類としては、以下が挙げられます。
      1. 少量免除(年間10トン以下で製造または輸入される化学物質)(Low Volume Exemption: LVE)
        30日前までに免除届出の提出が必要。
      2. 環境放出または人への暴露が低い物質免除(Low Environmental Releases and Human Exposure: LoREX)
        30日前までに免除届出の提出が必要。
      3. 試験販売免除(Test Marketing Exemption: TME)
        45日前までに免除申請の提出が必要。
      4. ポリマー免除
        最初の製造の翌年の1 月31日までに免除報告書(製造業者の名称・製造された物質の数)の提出が必要。
      5. R&D 目的免除
        免除届出・申請の提出は不要。
    3. 既存化学物質を新たな使用方法で販売する場合、販売の90日前までに届け出る必要があります(「著しく新しい方法で使用されると判断される既存化学物質(Significant New Use Rules: SNUR)」、TSCA(第5条(a)項(2)号)」規定)。SNURに該当するかどうかの判断は、届け出の前にEPAに確認することをお勧めします。
  3. 米国税関国境保護局(CBP)の輸入通関に係る規則
    輸入業者は有害物質の輸入に際して、「貨物がTSCAの規則または命令に適合していること(ポジティブ証明)」または「貨物がTSCAの対象外であること(ネガティブ証明)」を示す陳述証明書をCBPに提出しなければなりません。詳細は文末のTSCA 第13条を参照ください。
    ただし、特定製品を除き、輸入されるたばこやアーティクルの一部に含まれる各化学物質について陳述証明書を提出する必要はありません。特定製品とは、殺虫剤(中間体を除く)、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、放射性物質などです。他の連邦法によって規制されている物品はネガティブ証明、貨物がTSCAの対象である場合はポジティブ証明が必要です。

II. 労働安全衛生法(OSHA)による規制

OSHAの規制対象は、米国内の製造業者、輸入業者、流通業者および事業者で、米国外の製造業者、輸出業者は対象外です。ただし、米国内の輸入業者の多くは、この規制に対応するため、輸出業者に化学品に関する情報、特に安全性データシート(Material Safety Data Sheet: MSDS)の提供を要求します。

  1. 労働安全衛生法の危険有害性周知基準(Hazard Communication Standard: HCS)
    米国内で危険有害性化学品(Hazardous Chemical)を取り扱う作業場を有する事業者に対し、以下の事項を義務付けています。
    1. 当該有害化学品についてのラベル表示
    2. 物質安全性データシート(MSDS)の作成
    3. 従業員の訓練プログラムを含む危険有害性周知プログラム (Hazard Communication Program)の確立
    4. 従業員に対する危険有害性化学品に関する情報の提供

    化学品の製造業者または輸入業者は、生産または輸入する化学品の危険有害性を評価し、危険有害性であると評価された化学品について、ラベル表示やMSDSにより、関連する化学品の情報を米国内で危険有害性化学品を取り扱う作業場を有する事業者に伝達しなければなりません。危険有害性の評価は科学的なデータに基づいて行います。評価については文末の連邦規則29CFR1910.1200(d)(3)(Occupational Safety and Health Standards)を参照ください。

  2. 危険有害性化学品の種類
    1. 物理的危険有害性化学品:
      可燃性液体、圧縮ガス、爆発物、引火性物質、有機過酸化物、自然発火物、不安定物質または水反応性物質など
    2. 健康危険有害性化学品:
      発がん性物質、腐食性物質、猛毒性物質、刺激性物質、感作性物質、毒性物質など
  3. 表示
    OSHAは、化学品の製造業者、輸入業者または流通業者に対し、以下の項目を危険有害性化学品の容器にラベル表示するよう義務付けています。
    1. 危険有害性化学品の名称
    2. 危険有害性の警告
    3. 化学品の製造業者、輸入業者または他の責任者の名前と所在地

    なお、上記内容は英語で容器に目立つよう表示しなければなりません。通常、米国規格協会(ANSI)で規定されている表示基準(ANSI Z400.1/Z129.1-2010)に基づきます。

  4. MSDS
    MSDSには29CFR1910.1200(g)に定められた情報を記載します。定められた情報が記載されている限り、フォーマットは自由です。ただし、OSHAはANSI作成のMSDSのフォーマットANSI Z400.1/Z129.1-2010の利用を推奨しています。ANSIのMSDSの項目は文末のウェブサイトを参照ください。なお、危険有害性化学品の輸送については、米国運輸省・危険物安全課(Department of Transportation Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration: PHMSA)が運送基準を定めています。詳細はPHMSAのウェブサイトを参照ください。

III. バイオテロ法による規制

2004年8月13日から公衆の健康安全保障とバイオテロへの準備および対策法(バイオテロ法)が本格的に運用されています。米国に食品(食品の成分に使用される化学物質も食品に含む)を輸出する場合には以下のことが義務付けられています。

  1. 工場、倉庫等、その食品にかかわる施設が米国食品医薬品局 (FDA)に登録されていること
  2. 輸出の前にFDAに事前通知(Prior Notice)すること

関係法令

米国環境保護庁(EPA):
有害物質規制法(The Toxic Substances Control Act: TSCA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
TSCAインベントリー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
有害な化学物質および混合物の規制(TSCA第6条)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
情報の報告要件(TSCA第8条)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国労働安全衛生庁(OSHA):
危険有害性周知基準(29CFR1910.1200)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参照資料・情報

米国環境保護庁(EPA):
Importing or Exporting Chemical Substances under TSCA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Compliance Guide for the Chemical Import Requirements of the Toxic Substances Control ActPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(438KB)
TSCAに関する問い合わせ先(EPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
PMN免除規定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国労働安全衛生庁(OSHA):
MSDS入力項目外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ:
バイオテロ法に関する情報

調査時点:2016/10
最終更新:2018/02

記事番号: A-010115

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