中古車の現地輸入規則および留意点:オーストラリア向け輸出
質問
オーストラリアへ中古車を輸出する際の現地での輸入規則と輸入手続きについて教えてください。
回答
オーストラリアで走行する自動車は、連邦レベルと州レベルで規制されています。連邦インフラ・地域開発省が主導するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules: ADR)では、車種ごとの安全・防犯及び排ガス基準を定めています。州レベルでは、ADR成立以前から独自の制度を施行しており、ADR成立後は既存の制度をADRに則ったものに順次改定しています。ADRはまた国際規格(UNECE規格)を反映したものであるため、国際規格の変更によって随時更新されます。
I. 規制概要
ADRでは車種をLカテゴリー(二輪車・三輪車)、Mカテゴリー(乗用車)、Nカテゴリー(貨物車)、Tカテゴリー(トレイラー)の4つに分け、それぞれブレーキ、インジケーター、ランプ、ドア、シート、シートベルトなどの構造的基準、騒音、排ガス、燃費などの環境基準、子供の乗車、ポジショニング、衝撃(緩和)性などの安全性基準の3つの基準を定めています。
輸入した自動車は、各州の関係機関で車両登録されます。登録には各州が定める自動車規格に適合していることが必要です。大部分はADRに基づいた規格となっていますが、各州で異なったものもあります。
II. 輸入許可(Vehicle Import Approval)申請
輸入のスキームにより輸入許可が異なります。
- RAWスキーム
1989年1月1日以降に製造された中古車は、2002年4月に導入された登録自動車業者スキーム(Registered Automotive Workshop Scheme: RAWS)に従います(Motor Vehicle Standards Act Amendment Act 2001)。RAWとは、自動車のカテゴリーごとに年間100台までの中古車の輸入と改造・プレートの取り付けを許可されている業者です。このRAWスキームでは、RAWが必要な改造を加え、ADR適合承認を受け、輸入中古車プレートを取り付ける場合に限り、SEVスキーム(Specialist and Enthusiast Vehicles Scheme: SEVS)に適合する中古車種(SEV)を輸入できます。 - ADR適合書による輸入スキーム(Letter of Compliance Option)
ADRに適合した型式で生産され、オーストラリアで販売実績のある車種の中古車については、当該車に対するADR適合書(Letter of Compliance)を特定のIPA(Identification Plate Approval)所持業者から取り付けることにより、輸入許可申請ができます。輸入者はこの方式により年間1台を輸入できます。 - Pre-1989スキーム(1988年12月31日以前に製造された中古車が対象)
1988年12月31日以前に製造された中古車、主にクラシックカーと呼ばれるのものを収集家やカークラブが輸入する場合はADR準拠は要求されませんが、輸入許可は必要です(Vehicle Manufactured before 1989 Option)。各州での車両登録の際に製造年に照らし合わせた制度基準に則って独自の検査が行われるため、当該検査に合格するレベルの安全性が必要です。 - 個人使用目的で輸入される中古車(Personal Import Option)
オーストラリアに定住する移民、長期の海外居住からオーストラリアに帰国し、定住する市民が自身の入国と同時に個人所有車を持ち込むことを認められる制度で、輸入許可申請が必要です。この場合の個人所有車は、オーストラリア国外で12カ月以上所有・使用されていた車を指します。また、個人輸入として輸入できる車は一人当たり5年間に一台のみです。許可条件や申請に必要な書類等は、「 個人輸入オプション」を参照ください。
個人輸入として輸入された中古車は、ADR基準に適合するよう必要な改修を行い、登録機関または代行検査場で車体の検査を受け、承認を受けた後、Personal Import Plateを取得し、登録します。自動車検査と登録の手続きについては各州の登録機関へ問い合せてください。
III. 輸出手続き
日本からの輸出に必要な書類はジェトロ貿易・投資相談Q&A「 中古車輸出の際の通関手続きおよび書類 」を参照ください。
IV. 中古車の輸入関税率、内国税の種類と税率
中古乗用車の関税率は、FOB価格の5%です。日本オーストラリア経済連携協定を利用する場合は、関税は0%です。中古車1台当たり1万2,000豪ドルかかっていた特別税は2018年1月に撤廃されました。
内国税の種類と税率は以下のとおりです。
- 財・サービス税(GST)
価額および関税の合計額の10% 。障害者用自動車には特例としてGSTは課税されません。 - 奢侈自動車税(Luxury Car Tax: LCT)
自動車価格(FOB価額、関税、GSTの合計額)が特定価格(2018/2019年度6万6,331豪ドル)を超える自動車(2トン未満・9座席未満、トラック・バス等の商用車を除く、リムジンは含む)に対し、33%のLCTが課税されます。LCT課税基準の特定価格はGST込みで算出されますが、LCTの課税対象はGSTを含まない価格です。
また、低燃費車(燃料消費量が100キロ当たり7リットル以下)に関しては、7万5,526豪ドルの特定価格が適用され自動車価格との差額分に対し33%課税されます。自動車価格(CIF価格、関税、GSTの合計額)が7万5,526豪ドルに達しない場合は奢侈自動車税を払う必要はありません。- LCT=(自動車価格-LCT特定価格66,331ドル)×10/11×33%
- 低燃費車LCT=(自動車価格-低燃費車特定価格75,526ドル)×10/11×33%
例: 自動車価格(CIF価額・関税・GSTの合計額)が94,000ドルの低燃費車の場合
低燃費車LCT = ($94,000 – $75,526) x 10/11 x 33% = $5,542
※式中の10/11はGST分を除くことを意味しています。
V. 輸入通関、登録手続き
RAWスキームを通じた輸入手続きは以下のとおりです。
- 輸入許可書(Vehicle Import Approval)の入手(船積み前に輸入許可書を取得すること)
SEVS基準に適合する中古車の詳細は Register of Specialist and Enthusiast Vehicles(the Register)に記載されています。輸出する中古車が登録されていることを確認し、その車種の適合承認ができるRAWを検索します。
輸入許可申請は当該RAWの名前で行います。RAWに連絡をとり、中古車の適合を確認した後、輸入許可申請のためRAWが必要とする書類(売買契約書・インボイス等)を提供します。RAWはインフラ・地域開発省に輸入許可申請し、RAW名義で輸入許可が発行されます。 - 通関手続き
通関時には、輸入許可書、BL、インボイスなどを提示し、関税、財・サービス税(Goods and Services Tax: GST)、車種によっては(LCT)を納付します。通関手続き終了後、RAWが中古車を引き取ります。 - 適合処置、プレートの取り付け
RAWが中古車の改修を行い、ADR適合証明書を州・地域登録機関に提出し、プレート(Used Import Plate)取り付け許可を受けます。 - 登録
各州政府の自動車登録窓口で登録します。
VI. その他の留意点
- 検疫
通関時に農業・水資源省(Department of Agriculture and Water Recourses: DAWR)による検疫を受ける必要があります。検疫に当たっては、事前に車体内外の土、泥を徹底的に洗浄する、さらに車体内外に動植物(種子を含む)が付着していないよう清掃する必要があります。 - フロンガス
代替フロン(HFC・HCFC)をはじめ、オゾンガス(ODSs・SGGs)を使用しているエアコンや冷蔵庫の輸入は規制されています(Ozone Protection and Synthetic Greenhouse Gas Management Act 1989)。2010年7月以降、HCFCを封入したエアコンの輸入が禁止されています。中古車にHFC・HCFCを使用したエアコンが装着されている場合は、事前にエアコンガスを脱気する、あるいは付け替える必要があります。原産国の規則に従ってガス抜きが行われたことを証明するメーカー/サプライヤーのレター(エアコン機体のモデル、シリアルナンバー等を明示する)や認定空調技術者のガス抜き証明書(英文・和文併記)およびCompliance Reportを税関に提出する必要があります。その他オゾンガス(ODSs・SGGs)を使用しているエアコンや冷蔵庫の輸入には、ライセンスが必要です。 - アスベスト
アスベストを含有する部品を使った車の輸入は禁止されています。(Customs(Prohibited Imports)Regulations 1956)
関係法令
-
自動車基準法(Motor Vehicle Standards Act 1989)
-
自動車基準規則(Motor Vehicle Standards Regulations 1989)
-
Australian Design Rules(ADR)
参考資料・情報
- インフラ・地域開発省:
-
Importing Vehicles into Australia
-
RAWスキーム(Registered Automotive Workshop Scheme)
-
RAW Scheme
-
適合書手配による輸入スキーム(Letter of Compliance Option)
-
1989年より以前の製造車輸入スキーム(Vehicles Manufactured Before 1989 Option)
-
個人輸入オプション(Personal Imports Option)
-
Specialist and Enthusiast Vehicle Scheme(SEVS)
- 環境:エネルギー省:
-
エアコンガスに関する情報
- 財務省課税局:
-
Luxury Car Tax
調査時点:2016年9月
最終更新:2018年9月
記事番号: A-001227
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