中古車の現地輸入規則および留意点:ニュージーランド向け輸出
質問
ニュージーランドへ中古車を輸出する際の現地での輸入規則と輸入手続きについて教えてください。
回答
ニュージーランドでは安全基準や排出ガス基準、所有権の証明書等の条件を満たした車両であれば原則として誰でも自由に輸入することができます。基準を満たしていないもの、走行距離計の表示を不正に改ざんしたものは輸入できません。
I. 規制概要
自動車販売法により、1年に6台以上の販売もしくは3台以上の輸入に携わるもの(インターネット販売、オークション業者、自動車コンサルタントも含む)は、自動車取引業者とみなされ、政府への業者登録(Motor Vehicle Traders Register)が必要です。
II. 輸入手続き
中古車は輸出国を問わず抹消登録証明書(Deregistration Certificate)が必要です。ニュージーランド第一次産業省(Ministry of Primary Industries: MPI)による検疫、ニュージーランド運輸局(New Zealand Transport Agency: NZTA)が指定した輸入車両検査業者(Entry Certifier)による輸入車両検査が義務付けられています。
- 車両検査に必要な書類
- 所有権証明書類
- 排出ガス基準・前面衝突安全性能基準と車種に基づく輸入基準(Overall Standards)に適合していることを示すために「完成検査終了証」、「輸出予定届出証明書」、「輸出抹消仮登録証明書」(国土交通省が発行した抹消登録番号が印字されたもの)のいずれかの原本
- 燃費証明書(下記よりオンラインにて入手可)
- 大型車の場合は、ブレーキ基準証明書
- 検疫検査
ニュージーランドは輸入品に対するバイオセキュリティ(検疫)を厳格に行っており、輸入されるすべての中古車は検疫の対象となります。検疫は第一次産業省バイオセキュリティ局(Biosecurity New Zealand)の検疫官が行い、車両の内装・外装に昆虫、植物関連物質、土壌、汚水、その他汚染物質がないかを調べます。検査を通過できない場合は、第一次産業省の指定施設で検疫処理(洗浄・消毒)を行うか、国外への積み戻しを求められ、関連する費用は全額輸入者の負担となります。検査は車両上の道具を使わずに開けられる部分すべてを対象とします。並行輸入の未使用車は検疫を免除される場合がありますが、検疫官が汚染を認めた場合は中古車と同様の扱いとなります。日本から輸出する場合は、日本にある指定検査機関で検疫を済ませることが一般的です。船積み前に検査をする場合は、船積み前10日以内に行われなければなりません。船積み前検査を実施した場合は、荷揚げ後に部分的な再検査が実施されます。
- 通関書類
- 第一次産業省(MPI)の検疫検査証
- 輸入者のパスポート
- 輸入車の購入額と購入日を示す領収書
- 輸出抹消仮登録書
- 日本からの輸出費用を示すインボイス
- ニュージーランドまでの運賃証明書および保険明細書
- 船荷証券
- 輸出時の走行距離表示値
- ニュージーランド輸入時の走行距離表示値
- 関税・消費税
9人乗りまでの普通自動車には関税はかかりません。消費税(Goods and Services Tax:GST)の15%のみが課税されます。
- 登録
輸入車両検査が終了すると自動車登録申請書(MR2A)と車検証(Warrant of Fitness: WoF)が発行され、車両登録が可能になります。MR2Aフォームに必要事項を記入して登録費用を支払い、ナンバープレート、登録証(Certificate of Registration)、ライセンス証(License Label)の交付を受けると公道を走行することができます。
III. 車両に関する規格基準
ニュージーランド運輸局(NZTA)では、車種区分により規格基準を定めています。9人乗りまでの普通乗用車はクラスMA、前輪駆動車はクラスMB、オフロード車はクラスMCに分類されます。
部品ごとの規格はNZTAのウェブサイトを参照ください。
NZTA: Passenger cars
- 前面衝突安全性基準
2002年4月に導入された前面衝突安全性能基準は、中古車輸入において最も重視されています。2003年10月1日以降に日本で国内市場向けに製造された車両は、ニュージーランドの前面衝突安全性能基準に適合しています。前面衝突安全性基準を備えていない中古車は原則として輸入・車両登録することはできません。 車両識別記号の「上3ケタ」からメーカー毎に基準を満たしているかどうか調べることができます。
NZTA: Frontal impact compliance status of vehicles by vehicle make - 排出ガス基準
ニュージーランドでは車を製造していないため、排出ガス基準は主要輸出国/地域である日本、米国、豪州、欧州の基準をそのまま導入しています。日本からの輸入車は、中古車、並行輸入の未使用車とも輸出予定届出証明書、輸出抹消仮登録証明書、完成検査終了証に記載されている型式コードの最初のアルファベットに基づいて確認します。日本では、2005年の排出ガス基準以降、3ケタのコード(例: AAA、ABA、DAA)を採用していますので、実質的に2005年以降に製造された型式コードが3ケタのものしか現在は輸入できません。
NZTA: Acceptable character sets on Japanese deregistration, export certificates or completion inspection certificates
ただし、歴史的価値がある特別関心車(Special Interest Vehicle)としてニュージーランド運輸局(NZTA)が認定した場合は車齢20年以上でも輸入することができます。 - ハンドル
原則として右ハンドル車しか輸入・車両登録できません。左ハンドル車は右ハンドルへの変更が必要です。
- 横滑り防止装置(Electronic Stability Control: ESC)
2015年7月1日以降、輸入される新車に対して横滑り防止装置(ESC)の装備が義務付けられました。中古車についても順次、適用対象が拡大されています。中古車への導入スケジュールは下記のとおりです。
- 2016年3月1日以降:運輸局分類のMC(オフロード車、SUV)に該当する中古車。
- 2018年3月1日以降:運輸局分類のMA(乗用車)に該当する中古自動車で、排気量が2000cc超のもの。
- 2020年3月1日以降:その他の中古自動車全て。2000cc以下のMAなどに該当する中古自動車。
日本では、2012年10月以降に新型車として発売される車種およびフルモデルチェンジされる車種に、既存車種には2014年10月以降ESCに相当する装置が義務づけられています(軽自動車は新型車が2014年10月以降、それ以外は2018年2月以降に義務化)。
ESCはメーカー毎にシステムが異なり、名称が様々です。ニュージーランド運輸局(NZTA)が認定しているESCはNZTAのウェブサイトで確認できます。
NZTA: Electronic stability control identification - 排気騒音規制
車両検査時に停止状態での視聴によるマフラー検査で排気騒音が大きすぎる場合、騒音測定検査(Objective Noise Test)を要求される場合があります。国際基準で製造された状態が保たれている限り問題になることはありません。
- その他
II-1に述べたように排出ガス基準・前面衝突安全性能基準が基準(Overall Standards)に適合していることを示すために「完成検査終了証」、「輸出予定届出証明書」、「輸出抹消仮登録証明書」(国土交通省が発行した抹消登録番号が印字されたもの)を提出します。これらの書類の型式欄に『改』と記載があるものは、改造車を意味しますので、排出ガス基準、安全基準等の基準を満たさない可能性があります。
関係機関
関係法令
- New Zealand's legislation:
-
自動車販売法(Motor Vehicle Sale Act 2003)
参考情報・資料
- ジェトロ:
- 調査レポート「ニュージーランドにおける中古車・中古建設機械の輸入制度(2010年12月)」
- 貿易・投資相談Q&A「中古車輸出の際の必要書類と手続き:日本」
- ニュージーランド運輸局:
-
Used vehicles from Japan
-
車両検査関連機関
- ニュージーランド税関:
-
Items coming into NZ(Motor vehicles, boats & aircraft)
調査時点:2015年8月
最終更新:2017年9月
記事番号: A-001225
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