無線機器の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出

質問

米国へ無線機器を輸出する予定です。現地の輸入規則と留意点を教えてください。

回答

米国に携帯電話(Mobile Telephone)、WiFi機器およびBluetooth機器などの無線通信機器を輸入するには、Title 47 of Code of Federal Regulations (連邦規則集:CFR) 2.1204が定める条件を満たす必要があり、原則として、通信や電波の利用を管理する連邦通信委員会(Federal Communication Commission: FCC)の認証を取得する必要があります。

I. FCC概要

FCCは、1934年に設立された連邦政府の独立行政組織です。公益のため、国内外の各種通信(有線、無線、テレビ、衛星およびケーブル通信など)に関する規制の立案と運用、管理を任務としています。FCCの無線通信局(Wireless Telecommunications Bureau)は、固定マイクロ波からモバイルブロードバンド・サービスなどの各種無線電話分野を管理し、携帯電話事業者を含む無線通信事業者に通信方式や使用周波数を割り当てます。
また、FCCは市場に出荷される機器が技術要求事項に適合するよう認証する制度を管理しています。47CFR15(Radio frequency devices)では規制の対象となる無線周波数機器の詳細を定めており、通信機器については、9キロヘルツから3百万メガヘルツまでの無線周波数を発信する機器(Intentional Radiator)が対象です。同規制には機器の動作の副作用として周波数エネルギーを発生する(エミッション)機器(Unintentional Radiator)も含まれます。

II. 無線機器の米国輸入条件

47CFR2.1204では、同条(a)に掲げる条件に該当する場合に限り、輸入を認めています。具体的には、III.で説明するFCC認証の取得及び機器が「技術的な基準を満たすか、測定等を経て確認する手続き」である供給者適合宣言(Supplier’s Declaration of Conformity: SDoC)の実施といった条件を定めています。また、4,000ユニット以下の無線機器を米国内でのFCC規制への準拠、マーケティング活動及び400ユニット以下の見本市でのデモのための販売を目的としない輸入なども認めています。これらの輸入には、FCC技術局の承認は不要ですが通関用インボイスにはFCC準拠用、マーケティング評価用もしくは見本市でのデモ用などの輸入目的を明記することが必要です。また、同条の(b)では、最終荷受人は、輸入条件の遵守及びその適用根拠の文書での記録が求められています。これらの条件の詳細については文末の47CFR 2.1204輸入条件(Import conditions)を参照ください(無線機器の輸入には、FCCフォーム740を提出する必要がありましたが、同要件は2017年11月に削除されました)。
なお、米国内の展示会他で(1)FCC認証前の機器や(2)プロトタイプを展示する場合には47CFR2.803(c)(2)(iii)で定める下記の表示が必要です。

  1. (1)This device has not been authorized as required by the rules of the Federal Communications Commission. This device is not, and may not be, offered for sale or lease, or sold or leased, until authorization is obtained.
  2. (2)Prototype. Not for Sale

III. FCC認証の手続

  1. 47CFRが定める上記II.のFCC認証のうち、Intentional Radiatorについては、47CFR15.201の機器認証要求(Equipment authorization requirement)で認証の必要性が定められています。一方、Unintentional Radiatorについては、原則として認証ではなくSDoCで代替が可能ですが、SDoCを選択した場合には同責任者が米国内の居住者である必要があります(認証を選択した場合には同責任者は米国居住者である必要はありません)。47CFR15.101には、機器(unintentional radiator)の種類とSDoCによる認証の代替の可否を示した一覧表が掲載されています。
  2. FCCへの認証申請にはフォーム731を利用します。47CFR11、15および18に該当する機器とそれ以外の機器の場合で、フォームの提出の際に添付資料として提出が求められる技術報告書(technical report)に記載すべき内容が異なります。詳細は文末の47CFR 2.1033認証申請(Application for certification)の項を参照ください。

IV. テレコミュニケーション認証機関(Telecommunication Certified Body: TCB

1999年以降、機器の認証プロセスの迅速化を図る目的で、FCCは民間の第三者機関をTCBとして採用しています。指定認証機関として登録されているTCBは文末のTelecommunications Certification Bodies (TCB) Searchを参照下さい。

V. 相互承認協定(Mutual Recognition Agreements: MRA

2007年、日本は米国との間で相互承認協定(Mutual Recognition Agreement: MRA)を締結し、日本国内で米国向けの認証を実施できるようになりました。ただし、2024年2月現在、日本国内で認定適合性評価機関としての認証を受けている機関はありません。

関係機関

参考資料・情報

連邦通信委員会(FCC):
規制関連情報(Rulemakings外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
FCCフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
FCCによるテレコミュニケーション認証機関(Telecommunication Certified Bod外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Telecommunications Certification Bodies (TCB) Search外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
e-CFR:
47CFRのWEBサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
447CFR 2.1204輸入条件(Import conditions)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
47CFR 2.803 無線機器の認証取得前マーケティング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
47CFR 2.805 無線機器の認証取得前操作(展示会でのデモを含む)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
47CFR15.201機器(unintentional radiator)と認証、SDoC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
47CFR15.101機器の種類と認証、SDoC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
47CFR 2.1033認証申請(Application for certification外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
総務省:
電気通信機器の相互承認(MRA)とは外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
適合性評価機関等の情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2024年2月

記事番号: A-001222

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