スタンドバイ信用状にD/Pないしは送金決済方式を組み合わせた決済:日本

質問

輸出者宛ての支払い保証としてスタンドバイ信用状を開設し、実際の取引決済はD/P(手形支払い書類渡し)ないし送金決済方式を外国の輸出者から提示されています。この方式のメリット、デメリットを教えてください。また、決済について他の方法はありますか。

回答

スタンドバイ信用状(以下、SBLC)は、信用状(Letter of Credit、以下L/C)の一種です。輸入者による不払いに伴う輸出者にとってのリスク(信用リスク)をSBLC発行銀行が輸出者(SBLCの受益者)に対して保証するという観点からは通常のL/Cと同様の効果を持ちます。通常のL/Cによる強制力がなくても船積み時期、数量、品質などの契約条項を輸出者が履行し、かつ船積みの頻度が高い場合には取引銀行と相談しながらSBLCの使用を検討ください。

I. スタンドバイ信用状の発行日数と機能について

通常のL/Cの場合は船積みごとにL/Cを通じた決済が行われますが、SBLCを使用する場合は、個別取引の決済はD/Pないし送金などにより行われ、SBLCによる決済は行われません。D/Pないし送金などによる決済が何らかの事情で行われなかった場合にのみSBLCによる支払いが行われます。SBLCはL/Cの一形態であることから、L/Cに指定されたとおりの書類をL/C指定の期日などに従って呈示することにより支払いが行われることはL/Cと同じです。しかし、通常のL/Cの場合の必要書類は、インボイス、船荷証券などの船積書類となるのに対し、SBLCの場合は債務不履行が発生したことについての証明書(通常は受益者のステートメント)が要求されます。また、信用状統一規則上の「信用状独立の原則」並びに「書類取引の原則」はSBLCにも当てはまります。

II. 銀行手続き上のメリット・デメリット

SBLCは、日本の輸入者が取引銀行に依頼し、外国の輸出者を受益者として発行することになり、有効期間の全期間にわたり発行金額の全額を対象としています。従って発注のつど個別のL/Cを開設する必要はありませんので、手間が省け、事務処理のコスト削減につながる可能性があります。一方、SBLCの開設料(手数料、保証料)は、条件または銀行により異なる可能性がありますので、取引銀行の開設料を事前に確認しておく必要があります。銀行によっては、同じ3か月間でもSBLCの開設料を個別のL/C開設料より高く設定しているところもあります。また、担保の有無や与信枠に影響してくる場合があります。さらに年間の船積みの頻度も考慮すべきです。SBLCはある程度長期間を前提に開設しますが、その全期間にわたり開設料がかかります。1年に2回しか船積みがないのに1年中SBLCを開設しておくのは経済的ではありません。逆に毎月船積みがある場合には個別にL/Cを開設するのは不経済といえます。

III. 貿易上のメリット、デメリット

SBLCの場合、個別L/Cのように個々の船積みの条件を設定できませんので、輸出者には別途船積みの指示を行わなければなりません。特に船積み時期については、通常のL/Cは強制力を持ちますが(期限内に船積みをしなければ支払いを受けられない)、SBLCの場合はこの強制力がなくなることに注意する必要があります。数量や品質についても同様のことがいえます。一方、SBLCとD/A手形ないし送金決済方式の組み合わせの場合、船積書類は銀行与信の担保とする必要がないので、船荷証券など譲渡性のない書類でもよいことになり、Sea WaybillやSurrendered B/Lの使用が容易となる効果があります。これにより、近距離からの輸入で「銀行経由の書類が通関に間に合わない」という事態(いわゆる「船荷証券の危機」)を防ぐことができます。

IV. SBLCの留意点

SBLCの準拠ルールとしては、通常のL/Cに適用されるICC信用状統一規則(UCP600)ないしICCスタンドバイ規則(ISP98)が指定されます。どの規則を適用するかはSBLC発行銀行にご相談ください。SBLCは、上記目的の他、入札保証、契約履行保証、前受金返還保証、発行依頼人の借入金保証などの目的にも使用されます(ISP98に詳細が規定されています)。

関係機関

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参考資料・情報

ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A「信用状取引の特徴および信用状で使用される用語の解釈:日本

調査時点:2012/11
最終更新:2018/02

記事番号: A-000A35

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