中古機械の現地輸入規則および留意点:タイ向け輸出
質問
タイへ中古機械を輸出する際の現地輸入規制について教えてください。
回答
タイでは、国内産業保護、外貨流出防止のため、商務省が輸入規制対象品目を指定し、許可取得の義務付けによる輸入規制を行っています(輸出入管理法:Export and Import of Goods Act, B.E.2522(1979))。
実際の取引の際には、輸出しようとする機械が輸入規制に該当しないか、輸入許可が必要な場合は許可申請方法などについて事前にタイ商務省、取引相手先などに問い合わせ、確認しておくことをお勧めします。
I. 機械を中心とした輸入規制
タイでは輸出入管理法(Export and Import of Goods Act, B.E.2522(1979))に基づき、機械関係では以下の品目に規制があります。
- 輸入禁止品目(5品目)
ゲーム機、クロロフルオロカーボン(CFC)使用の冷蔵庫、モーターバイクの中古エンジン・部品および備品、中古タイヤ、クレーン車と救急車を除く中古車(HSコード:8701、8702、8703、8704、9706(注1)) - 輸入許可必要品目(7品目)
中古車(注2)、中古二輪車、中古輸送用機械(30人以上の乗客用)、中古ディーゼルエンジン、違法コピー品製造用機械、凹版印刷およびカラーコピー機、ガス給湯器
従って、ビジネスとしての中古車輸入は事実上不可能です。国内産業保護育成と環境保全の観点から、中古自動車の輸入許可条件は、個人用、政府関係、再輸出関係等に限られています。
- (注1)
HSコード9706は、製造後100年を超えた「骨董(こっとう)」で、自動車でいえばビンテージカーを指す。 - (注2)
- 外務省(MFA)が認可した、外国の大使館、総領事館、国際組織、貿易投資促進機関、特権を与えられた外国の機関および個人の中古車
- MFAが認可した、防災を目的として政府など公的団体へ寄付された中古車
- 税関の事前手続きを経た、一時的に外国へ輸出し再びタイへ返送される中古車。または一時的にタイに輸入し、再び外国へ返送される中古車(注、観光目的で車両を一時的に輸出入して使用する場合は、観光滞在する期間内でなければならない。)
- 1度タイで自動車登録し輸出したが、外国で通関できず2年以内にタイへ返送された中古車
- 工業団地公社(IEAT)および税関が定めるフリーゾーン(FZ)で修理を行うために、一時的に輸入する中古車
- 物品税局(Excise Department)から物品税の免除を受けた、研究や性能の検査を目的とした中古車
- 芸術局(Fine Arts Department)から承認を得た、博物館での展示を目的とした中古車
- 国防省(MOD)が武器管理法に基づいて許可した中古車
II. 中古電子・電気機器に関する輸入規制
製造日から3年以上(コピー機は5年以上)経過した中古電子・電気機器の販売・再利用目的の輸入は禁止されています。製造日から3年未満の対象品目については工業局の許可を取得することで輸入が可能です。
主な対象品目はテレビやコンピュータ、洗濯機などの家電ですが、詳細な品目リストは、文末のURL(仏暦二五四六年・中古電子・電気機械器具にかかわる輸入基準に関する工業局告知)をご参照ください。
これら品目の輸入許可取得に際し、詳しい条件(対象品目要件と輸入者要件)は、「危険物である使用済み電気機具および電子機器の輸入許可要件についての工場局告示〔仏暦二五五〇(2007年)〕」で規定があります。主な輸入条件は以下のとおりです。
- 輸入目的がタイ国内での再利用、修繕、改良のいずれかに該当すること
- 輸入者が目的に沿った法人や計画を持っていること
対象品目リストや品目の詳細は、文末のリンクをご参照ください。
III. 輸入関税と付加価値税
HS番号第84類の機械類(新品、中古を問わず)は、関税はほぼ無税となっており、また原則7%の付加価値税(VAT、課税基準はCIF価格+関税)がかかります。どの品目番号に該当するか、価格の正当性(特に中古品は低価格)が輸入通関の時点でよく問題になりますので、カタログや契約書、注文書などを用意しておくことをお勧めします。最新の関税率はジェトロ「世界各国の関税率」やタイ税関ウェブサイト等にてご確認ください。
IV. タイ投資委員会(Board of Investment: BOI)
BOIは外国からの企業誘致を促進するための政府機関で、進出企業に法人税などの減免税措置などの恩典を与えています。税の恩典を受けるために、以下のような条件も課せられるので、輸入前に確認することを推奨いたします。
- 船積前検査
性能が劣悪な機械が輸入されるのを予防するために、船積前検査が義務付けられています。輸入通関の際、税関に残存耐用年数と価格を客観的に査定した第三者の「船積前検査証明書」を提出する必要があります。
日本の船積前検査機関としては、(社)日本海事検定協会、(財)新日本検定協会などがあります。
- 残存耐用年数など
奨励事業で使用される中古機械(生産設備移転の場合を除く)については、製造日から10年以内で、安全衛生上と環境衛生上に問題ない機械であることとされています。ただし、製造年からタイに輸入するまでが10年を超える中古機械は、信頼できる機関から能力の証明があることとされています。なお、奨励事業で使用される中古機械であっても、一部業種を除き輸入関税は免除されません。
詳細(生産設備移転に伴う中古機械の使用制限含む)については下記の記事も参照ください。
「新投資奨励政策での中古機械の使用制限を緩和」
V. 日本の輸出規制
輸出貿易管理令に基づく安全保障貿易管理制度(リスト規制、キャッチオール規制)があり、通常兵器および大量破壊兵器に使用、開発等に転用される可能性のある貨物および技術は、例え中古機械でも輸出規制の対象となります。
輸出貨物が規制対象に該当するか否かは、メーカー、ならびに経済産業省安全保障貿易審査課に問い合わせ、確認してください。
また、貨物の輸出だけでなく技術提供(役務取引)もこの規制の対象となります。規制対象の場合は経済産業省の輸出許可が必要になります。また、規制貨物や技術が輸出先あるいは提供先から別の国に再輸出・再提供される場合は規制対象となります。
関係機関
関係法令
- ジェトロ:
- 輸入品目規制(輸出入管理法)
- 仏暦二五四六年・中古電子・電気機械器具にかかわる輸入基準に関する工業局告知(英語)(43KB)
- 仏暦二五五〇年・危険物である使用済み電気機具及び電子機器の輸入許可要件についての工場局告示(177KB)
参考資料・情報
- 経済産業省:
- 安全保障貿易管理
- ジェトロ:
- 世界の関税率
- 一般社団法人 日本海事検定協会
- 一般財団法人 新日本検定協会
調査時点:2015年7月
最終更新:2023年1月
記事番号: A-000965
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