オーストラリアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は1.0%に鈍化も、政府支出や公共投資が下支え。
  • 貿易は輸出減、輸入増で黒字幅が縮小。主力の資源輸出は軒並み減少。
  • 対内直接投資は大幅増。鉱業は減少も、製造業が前年比7.8倍と好調。
  • 日本からの直接投資は約183億豪ドルで首位に躍進。

公開日:2025年7月25日

マクロ経済 
個人消費は鈍化も、政府支出や公共投資が成長下支え

2024年のオーストラリアの実質GDP成長率は1.0%(2025年3月5日時点、季節調整済)で、2021年のピーク(5.4%)を境に3年連続で減速した。2024年は前年と比べて、個人消費の伸びが弱く、民間投資も伸びが鈍化した一方、公共投資や政府支出が増加し成長を支えた。

需要項目別にみると、実質GDPの50.0%を占める民間最終消費支出は前年比0.6%増にとどまり、前年の2.5%増と比べて伸びが弱かった。長引くインフレによる生活費高騰と金利上昇で特に旅行、宿泊、外食などの裁量的支出が伸び悩んだ。特に第2四半期は前期比0.2%減とマイナスに転じ、コロナ禍の2021年第3四半期に次ぐ低成長を記録した。政府最終消費支出は、4.7%増に加速し、項目別で最も高い伸びとなった。生活費高騰対策として、政府が全世帯や中小企業への電気料金の払い戻しを開始したことに加え、社会保障制度関連の支出増加や公務員給与の引き上げが影響した。国内総固定資本形成は2.2%増となり、前年(4.7%増)から減速した。第一四半期は鉱業など非住宅部門の建設投資が減少し、前期比でマイナスとなった。その後、政府による防衛装備品の調達、病院や道路へのインフラ投資、州政府などによる再生可能エネルギー向け投資が増加し、第3四半期には前期比1.8%の増加に転じた。財・サービスの輸出は0.9%増だった。オーストラリアへの旅行者や留学生の増加によりサービス輸出は伸びた一方、中国をはじめとする世界的な需要低迷によりコモディティ製品の需要が落ち込み、資源価格の下落も影響した。財・サービスの輸入は5.5%増となった。特に第1四半期は、医療品、洋服、家電製品などの消費財に加え、国内の肥料製造の一時停止を受けて肥料の輸入が増え、前期比5.6%増となった。

産業別にみると、オーストラリアの主要産業の一つである農林水産業が前年比5.2%増となり、全産業で最も高い成長率となった。特に第3四半期から第4四半期にかけて、天候に恵まれたことによる穀物生産の増加、米国でのオーストラリア産牛肉への需要の高まりを反映し、畜産物の生産額が高水準で推移した。また、運輸・郵便・倉庫業(3.9%増)、医療サービス業(3.0%増)、不動産業(2.5%増)などのサービス産業も好調だった。一方、主要産業である鉱業は、前年比0.5%減と振るわなかった。中でも、石油・ガスは1.2%減だった。第1四半期はLNGの増産により前期比2.6%増となったが、その後は天候不良やメンテナンスによる一時的な生産停止などが影響し、マイナス成長が続いた。鉄鉱石も1.1%減だった。メンテナンス終了により生産が再開した第2四半期(前期比3.2%増)を除き、マイナス成長となった。石炭は、雨天などの天候不良が影響し、前年比0.3%減だった。

基調インフレ率が高止まり、労働市場は生産性向上に課題

消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は、2022年第3四半期に前年同期比7.8%とピークを迎えたあと徐々に低下しており、2024年の四半期別では第1四半期以降、前年同期比で3.6%、3.8%、2.8%、2.4%と推移した。オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)はインフレ率の低下について、政府の生活費高騰対策により燃料費と電気料金が下がったもので、一時的な動きと分析した。また、RBAは、第4四半期に基調的なインフレを反映するトリム平均値(基調インフレ率)が前年同期比3.2%とRBAの目標圏内(2~3%)の中間値(2.5%)を上回っていることを指摘しており、基調インフレ率が目標圏内に戻るまで、金融政策の引締めを継続するとした。RBAは2024年の1年間、政策金利を4.35%に据え置いた。

失業率(季節調整済)は、年間を通じて3.9~4.2%の低水準で推移し、求人ポストが埋まらないほど労働需要が旺盛な状況が続いた。また、就業者数も増えており、労働参加率は過去最高水準に達した。一方、賃金上昇の伸びは鈍化しており、賃金価格指数は年率3.2%となり、前年の4.3%から低下した。また、2022年のコロナ禍以降、労働生産性の低下が続き、政府の生産性委員会によると、2024年12月の労働生産性が前年同月比で1.2%減少した。2020年までの過去10年間を見ても労働生産性は改善しておらず、オーストラリア経済界は低迷する労働生産性の向上に向けた改革を求めている(2024年12月9日付ビジネス短信参照)。

2025年3月、OECDは米国関税障壁の高まりも考慮し、2025年のオーストラリア実質GDP成長率が1.9%、2026年は1.8%になると予測した。

表1 オーストラリアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.1 2.1 1.0 0.2 0.2 0.3 0.6
階層レベル2の項目民間最終消費支出 7.4 2.5 0.6 0.5 △ 0.2 △ 0.1 0.4
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.1 1.9 4.7 1.4 1.5 1.4 0.7
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 2.3 4.7 2.2 △ 0.2 0.3 1.8 0.7
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 2.6 6.9 0.9 0.2 0.6 0.2 0.7
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 13.7 6.8 5.5 5.6 0.4 △ 0.2 0.1

〔注〕四半期の伸び率は前期比、季節調整済み
〔出所〕オーストラリア統計局(ABS)

貿易 
主力の鉄鉱石、石炭、天然ガスの輸出は全て前年より減少

2024年の貿易 (通関ベース)は、輸出が前年比7.5%減の5,170億オーストラリア・ドル(約48兆824億8,800万円、豪ドル、1豪ドル=約93円)、輸入が3.9%増の4,299億豪ドルとなった。貿易収支は、871億豪ドルの黒字で、黒字幅は前年から577億豪ドル(39.9%)減少した。

輸出を品目別にみると、1位の鉄鉱石(構成比24.1%)が前年比8.6%減の1,245億豪ドルに落ち込んだ。鉄鉱石輸出の84.2%を占める中国(前年比9.4%減)をはじめ、日本(8.4%減)、韓国(2.9%減)も軒並み前年割れとなった。中国の鉄鋼需要の30%を占めるとされる不動産セクターの低迷が主な原因とみられる。また、下半期には、オーストラリア国内鉱山の生産性向上と新規鉱山の増産継続により鉄鉱石の輸出が増加したことで世界的に供給が需要を上回り、鉄鉱石の価格が下落したことも影響した。2位の石炭(16.5%)は17.5%減の852億豪ドルとなった。石炭のうち、原料炭は輸出量が増えたが、価格下落により輸出額が落ち込んだ。一般炭は、アジア諸国の猛暑による電力需要の高まりや降水量の変動による水力発電量の増減の影響を受けたが、輸出額は微減にとどまった。石炭輸出は、日本向け(構成比31.8%)が原子力発電の増加により23.9%減、インド(15.5%)もモンスーンの降雨で気温の低下と水力発電が増加したため22.3%減と大きく落ち込んだ。インドは国内の石炭需要の87%(2024年)を自国生産で賄っているが、近年の急激な都市化と電化による電力網増強の需要が、国内生産をはるかに上回ると予想される。そのため、連邦政府産業科学資源省は、インドを今後10年間で石炭消費量と輸入量の伸びが見込まれる数少ない大規模市場の一つと見る。3位の天然ガス(13.0%)も9.2%減の675億豪ドルとなった。日本が前年に続き最大の輸出先だったが、原子力発電の増加により14.9%減となった。天然ガスの輸出先2位の中国は、石炭からガスへの転換を推奨する国内政策の影響、大型車両におけるLNG利用の拡大、記録的な気温上昇による長期間にわたる冷房需要の増加などが影響し、4.3%増となった。輸出品目別で前年に9位だったボーキサイト(アルミナ含む)は31.3%増と大きく伸び、6位にランクアップした。供給減少による価格上昇が影響した。輸出先は、1位が中国(構成比21.9%)で35.0%増加し、次いでバーレーン(16.6%)が39.9%増、3位のアラブ首長国連邦(UAE)(12.7%)は56.4%増となった。

農畜産品の輸出をみると、輸出品目全体で5位の牛肉は、前年比22.5%増と好調だった。有数の赤身肉消費国である米国で数年にわたる干ばつにより国内生産量が減少し供給不足となったことから、米国向け輸出は前年比66.6%増と大きく伸びた。一方、8位の小麦は前年比39.6%減だった。世界的な需要低迷に伴う価格下落が影響し、輸出先1位のインドネシア向けは29.0%減、2位の中国向けは55.8%減、3位のフィリピン向けは21.3%減と軒並み減少した。

輸出を国・地域別にみると、中国向けが1,792億豪ドルで全体の34.7%を占め、前年に続き最大となったが、前年比12.3%減に落ち込んだ。対中輸出の58.5%が鉄鉱石だった。2位の日本は17.3%減で726億豪ドル(構成比14.0%)、3位の韓国は6.3%減で392億豪ドル(7.6%)となった。いずれも前述のとおり資源輸出の減少が影響した。5位の米国は13.5%増加し244億豪ドルだった。最大の輸出品目である牛肉のほか、2位の非貨幣用金(79.7%増)、3位の医薬品(30.2%増)がいずれも2桁増を記録した。輸出先上位10カ国・地域のうち7位のシンガポール、8位のインドネシアは増加したが、ほとんどの主要国・地域で前年より落ち込んだ。

米中からの輸入増加、中国による輸入制限は全面撤廃

輸入を品目別にみると、1位は前年に続き石油精製品(構成比11.0%)で前年比6.7%減の473億豪ドルだった。主な輸入先は韓国(構成比28.6%)、シンガポール(21.7%)だった。2位の乗用車(8.3%)は1.5%減、3位の通信機器・同部品(4.0%)は1.9%減、4位の貨物自動車(3.9%)は5.5%減といずれも減少した。一方、機械・機器類は増加し、5位のコンピュータは20.9%増、6位のその他電気機械・同部品は46.9%増、13位の冷暖房器具・同部品は50.1%増と大幅に増加した。乗用車に関連して、2024年のオーストラリアの新車販売台数は122万台に達し、前年に続き過去最高を記録したものの、前年比で伸び率は低下し、2024年後半からのインフレによる生活費高騰や金利上昇の影響を受けた。

輸入を国・地域別でみると、最大の輸入相手国である中国(構成比25.7%)は1,104億豪ドルで前年比5.4%増加した。対中輸入品目のうち、通信機器・同部品(前年比5.7%減の91億豪ドル)、コンピュータ(3.8%減の67億豪ドル)、乗用車(15.6%減の53億豪ドル)は落ち込んだ一方、5位のその他電気機械・同部品が40.7%増の43億豪ドルと大きく増加した。2位の米国は518億豪ドルで前年比8.5%増に拡大し、全体の12%を占めた。主な輸入品目では、航空機・宇宙船・同部品(66.7%増の34億豪ドル)、その他電気機械・同部品(97.4%増の23億豪ドル)、コンピュータ(2.1倍の19億豪ドル)が大幅に増加し、貨物自動車(9.5%増の24億豪ドル)も堅調に増加した。3位の日本からの輸入は252億豪ドル(5.9%)で前年から3.7%減少した。主要品目は、乗用自動車、貨物自動車、石油精製品だった。

なお、最大の貿易相手国である中国との間では、2020年にオーストラリアによる新型コロナウイルスの起源に関する独立調査要求に中国が反発し、オーストラリアの主要輸出産品に輸入制限を課していた。しかし、2022年5月のアルバニージー政権発足後に豪中関係が改善し、中国政府は制限を段階的に解除してきた。具体的には、中国は2023年2月に石炭、5月に木材の輸入を再開した。また、同年8月には大麦の追加関税を、2024年3月にワインの追加関税を撤廃し、12月末からロブスターの輸入を再開した。牛肉については、主要食肉輸出施設に対する輸入停止措置が、2023年12月に3施設、2024年5月に5施設、7月に1施設と順次解除され、残る2施設も12月に解除されたことで、中国によるオーストラリアへの全ての輸入制限が撤廃された。

表2‐1 オーストラリアの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉄鉱石 136,262 124,545 24.1 △ 8.6
石炭 103,188 85,170 16.5 △ 17.5
天然ガス 74,322 67,465 13.0 △ 9.2
非貨幣用金 28,352 35,702 6.9 25.9
牛肉 11,462 14,038 2.7 22.5
ボーキサイト(アルミナ含む) 9,846 12,924 2.5 31.3
原油 11,467 10,644 2.1 △ 7.2
小麦 13,959 8,435 1.6 △ 39.6
肉(牛肉除く) 6,168 7,101 1.4 15.1
銅鉱 6,677 6,544 1.3 △ 2.0
アルミニウム 5,236 5,717 1.1 9.2
5,234 5,554 1.1 6.1
非公開項目 7,272 5,277 1.0 △ 27.4
採油用の種・果実 5,502 4,996 1.0 △ 9.2
石油精製品 4,323 4,983 1.0 15.3
合計(その他含む) 558,687 517,016 100.0 △ 7.5

〔注〕CV(Custom Value)は、FOB価格とほぼ同値
〔出所〕オーストラリア外務・貿易省

表2‐2 オーストラリアの主要品目別輸入(CV)[通関ベース](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
石油精製品 50,724 47,345 11.0 △ 6.7
乗用車 36,293 35,758 8.3 △ 1.5
通信機器・同部品 17,407 17,072 4.0 △ 1.9
貨物自動車 17,776 16,797 3.9 △ 5.5
コンピュータ 10,460 12,649 2.9 20.9
その他電気機械・同部品 6,777 9,956 2.3 46.9
非貨幣用金 8,564 9,878 2.3 15.3
薬剤(家畜用含む) 9,162 9,081 2.1 △ 0.9
医薬品(薬剤除く) 7,838 7,932 1.8 1.2
原油 7,915 7,751 1.8 △ 2.1
土木重機・同部品 8,200 7,078 1.6 △ 13.7
家具 5,336 5,993 1.4 12.3
冷暖房器具・同部品 3,992 5,991 1.4 50.1
その他自宅用電気機器 4,583 5,288 1.2 15.4
その他プラスチック製品 4,659 5,115 1.2 9.8
合計(その他含む) 413,869 429,923 100.0 3.9

〔注〕CV(Custom Value)は、FOB価格とほぼ同値
〔出所〕オーストラリア外務・貿易省

表3 オーストラリアの主要国・地域別輸出入 [通関ベース](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CV)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 472,850 424,964 82.2 △ 10.1 259,725 267,829 62.3 3.1
階層レベル2の項目日本 87,811 72,638 14.0 △ 17.3 26,210 25,236 5.9 △ 3.7
階層レベル2の項目中国 204,386 179,232 34.7 △ 12.3 104,740 110,419 25.7 5.4
階層レベル2の項目韓国 41,812 39,166 7.6 △ 6.3 26,383 24,316 5.7 △ 7.8
階層レベル2の項目台湾 22,236 18,688 3.6 △ 16.0 9,411 9,351 2.2 △ 0.6
階層レベル2の項目ASEAN 68,575 65,470 12.7 △ 4.5 75,480 78,887 18.3 4.5
階層レベル3の項目シンガポール 17,267 18,445 3.6 6.8 16,214 15,051 3.5 △ 7.2
階層レベル3の項目インドネシア 12,580 13,375 2.6 6.3 5,637 8,416 2.0 49.3
階層レベル3の項目ベトナム 12,075 10,510 2.0 △ 13.0 9,863 11,831 2.8 19.9
階層レベル3の項目マレーシア 11,357 11,048 2.1 △ 2.7 18,643 17,333 4.0 △ 7.0
階層レベル3の項目タイ 9,136 7,018 1.4 △ 23.2 19,353 20,207 4.7 4.4
階層レベル2の項目インド 25,439 25,055 4.8 △ 1.5 9,063 11,474 2.7 26.6
階層レベル2の項目ニュージーランド 12,787 12,775 2.5 △ 0.1 7,433 7,513 1.7 1.1
EU27 17,847 17,300 3.3 △ 3.1 62,660 64,022 14.9 2.2
英国 5,967 9,717 1.9 62.8 8,069 7,746 1.8 △ 4.0
中東 13,668 14,444 2.8 5.7 5,920 7,230 1.7 22.1
北米 24,407 27,491 5.3 12.6 51,987 55,530 12.9 6.8
階層レベル2の項目米国 21,456 24,355 4.7 13.5 47,706 51,752 12.0 8.5
アフリカ 3,488 3,684 0.7 5.6 3,897 4,524 1.1 16.1
中南米 4,729 4,058 0.8 △ 14.2 8,132 8,848 2.1 8.8
合計(その他含む) 558,687 517,016 100.0 △ 7.5 413,869 429,923 100.0 3.9

〔注1〕アジア・大洋州は、ASEAN+3(日本、中国、韓国)に、ニュージーランド、インド、香港、台湾を加えた合計値。
〔注2〕CV(Custom Value)は、FOB価格とほぼ同値。
〔出所〕オーストラリア外務・貿易省

通商政策 
UAEと包括的経済連携協定署名、EUともFTA交渉再開目指す

オーストラリアの貿易政策は、自由貿易の推進を重視し、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の締結に積極的である。2025年5月時点で18の協定を締結し、貿易総額に占めるFTA/EPA締結国・地域との貿易額(カバー率)は、81.6%に達している。中でも2022年1月に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定は、輸出相手上位15カ国・地域中9カ国が加盟しており、2024年の貿易総額の65.0%、輸出額の71.4%を占める。2023年5月にFTAが発効した英国は輸出相手国・地域として13位(2024年)と輸出全体の構成比(1.9%)は少ないものの、前年比62.8%増と前年(88.4%増)に続いて大幅に拡大した。輸出品目の1位は非貨幣用金(2.3倍)、2位は鉛(0.2%増)、3位が雑工業品(15.3倍)だった。

15番目の輸出相手国であるアラブ首長国連邦(UAE)とは、2024年9月17日に包括的経済連携協定(CEPA)交渉を妥結し、11月6日に署名した。これによりオーストラリアからUAEへの輸出品目の99%の関税が撤廃される。2024年の輸出品目は、1位がボーキサイト(アルミナ含む)、2位が採油用種果実、3位が原油であり、今後これらの輸出品目で関税引き下げの恩恵を受けることが期待される。

貿易総額の8.6%(2024年)を占めるEUとのFTA交渉は、EUによるオーストラリア産農産物の関税引き下げやEUの地理的表示(GI)の保護などを巡る隔たりで、2023年以降停滞していた。しかし、2025年5月の連邦議会総選挙で勝利し、続投が決まったアルバニージー首相は、初の外遊先であるインドネシアに次いで、5月18日に欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談し、FTAについて協議を行った。その後、6月4日にドン・ファレル貿易相とマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員(貿易・経済安全保障担当)が会談し、FTA交渉が再開した。

また、2025年4月21日にはASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)の第2議定書が発効した。同協定書ではパンデミックなど危機時を含む貿易円滑化のほか、政府調達、持続可能性などに関わる新たな規律が導入された。同協定は、オーストラリアの貿易総額の17.4%を占める。

表4 オーストラリアのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)
FTA 発効日 オーストラリアの貿易に占める構成比(2024年)
往復 輸出 輸入
発効済み オーストラリア・ニュージーランド経済緊密化協定(ANZCERTA) 1983年1月1日 2.1 2.5 1.7
シンガポール・オーストラリア自由貿易協定(SAFTA) 2003年7月28日 3.5 3.6 3.5
米国・オーストラリア自由貿易協定(AUSFTA) 2005年1月1日 8.0 4.7 12.0
オーストラリア・タイ自由貿易協定(TAFTA) 2005年1月1日 2.9 1.4 4.7
オーストラリア・チリ自由貿易協定(ACLFTA) 2009年3月6日 0.1 0.1 0.1
ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA) 2010年1月1日 17.4 15.1 20.1
マレーシア・オーストラリア自由貿易協定(MAFTA) 2013年1月1日 3.0 2.1 4.0
韓国・オーストラリア自由貿易協定(KAFTA) 2014年12月12日 6.7 7.6 5.7
日本・オーストラリア経済連携協定(JAEPA) 2015年1月15日 10.3 14.0 5.9
中国・オーストラリア自由貿易協定(ChAFTA) 2015年12月20日 30.6 34.7 25.7
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) 2018年12月30日 23.2 25.3 20.8
香港・オーストラリア自由貿易協定(A-HKFTA) 2020年1月17日 1.3 2.3 0.1
オーストラリア・ペルー自由貿易協定(PAFTA) 2020年2月11日 0.0 0.0 0.0
オーストラリア・インドネシア包括的経済連携協定(IA-CEPA) 2020年7月5日 2.3 2.6 2.0
太平洋諸国経済緊密化協定(PACER-Plus) 2020年12月13日 2.2 2.5 1.8
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 2022年1月1日 65.0 71.4 57.3
インド・オーストラリア経済協力・貿易協定(ECTA) 2022年12月29日 3.9 4.8 2.7
英国・オーストラリア自由貿易協定(A-UKFTA) 2023年5月31日 1.8 1.9 1.8
合計(重複している国を除く) 81.6 86.1 76.1
署名済み オーストラリア・アラブ首長国連邦(UAE)包括的経済連携協定(CEPA) 0.8 1.1 0.5
交渉中 オーストラリア・EU自由貿易協定 8.6 3.3 14.9
オーストラリア・インド包括的経済協力協定(CECA) 3.9 4.8 2.7
検討中 湾岸協力会議(GCC)諸国 1.6 2.2 1.0
太平洋同盟 0.7 0.3 1.3

〔注1〕構成比については、輸出は輸出総額、輸入は輸入総額を使用。
〔注2〕PACER-Plusは、オーストラリアに加え、クック諸島(ニュージーランド)、ミクロネシア連邦、キリバス、ナウル(未発効)、ニュージーランド、ニウエ島(ニュージーランド)、パラオ、パプア・ニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツで構成。
〔注3〕太平洋同盟はチリ、コロンビア、メキシコ、ペルー。
〔出所〕オーストラリア外務・貿易省

対内・対外直接投資 
対内直接投資フローは前年比2.1倍、日本が首位に

2024年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比76.0%増の810億300万豪ドルと大きく増加した。国・地域別にみると、日本が前年から約2.1倍の182億8,100万豪ドルで1位となった。2位の米国は前年比62.3%減の148億4,700万豪ドルと減少したほか、3位の英国も54.4%減の98億800万豪ドルだった。前年1位の米国と2位の英国がそれぞれ大幅に減少し順位を下げた一方で、前年3位の日本が大幅に増加し1位へ上昇した。中国からの投資は8億4,200万豪ドルで13位となり、残高も全体の2.8%にとどまり、2021年以降は投資額(フロー)が10億豪ドルを下回っている。

対内直接投資残高は1兆2,804億1,200万豪ドルで、前年比8.3%増加した。1位の米国が2,352億9,400万豪ドルと全体の18.4%を占め、2001年以降、最大の投資国となっている。日本は英国を抜いて2位となり、1,594億7,900万豪ドルで全体の12.5%を占めた。

業種別(国際収支、ネット、フロー)では、1位の鉱業が前年比46.3%減の206億5,500万豪ドルに減少した。一方、2位の製造業は前年比7.8倍の167億7,200万豪ドルへと大幅に増加し、2020年以降で初めて150億豪ドルを上回った。3位の金融・保険業も2.2倍の138億5,600万豪ドルに増加した。対内直接投資残高でみると、鉱業が4,076億9,900万豪ドルで、全体の31.8%を占め最大だった。次いで金融・保険業(1,609億4,200万豪ドル、12.6%)、3位の不動産業(1,453億4,900万豪ドル、11.4%)が続いた。

2024年の外国企業による主な直接投資案件をみると、対内直接投資残高国別で1位の米国からは、米国のアルミニウム製造大手アルコア(Alcoa)による同業アルミナ(Alumina)の買収(約28億米ドル)、米国の果実販売大手ドリスコールズ(Driscoll’s)など3社のコンソーシアムによる同業のコスタ(Costa)の買収(取得額未公表)などが発表された。欧州からは、フランスの建築材料資材企業のサンゴバン(Saint-Gobain)による同業CSRの買収案件(約43億豪ドル)、アイルランドの建築資材大手CRHによるセメント製造アドブリ(Adbri)の買収(11億豪ドル)があった。両社はオーストラリアの人口増加や住宅不足による建設需要拡大への期待を示した。このほかに、アルドナグループ(Ardonagh Group)傘下の英国の保険大手ローズデールビデコ(Rosedale Bidco)による同業PSCインシュアランス(PSC Insurance)の買収(23億豪ドル)などが発表された。

対外直接投資(フロー)は鉱業に代わり金融・保険業が首位

2024年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比24.1%増の213億1,900万豪ドルと増加した。国・地域別にみると、米国が前年比2.5倍の167億100万豪ドルで1位となった。次いで英国が95億2,100万豪ドルとなり、前年からは20.7%減少した。3位はシンガポールで前年から13.2倍増加し39億400万豪ドルだった。業種別(国際収支ベース、ネット、フロー)にみると、金融・保険業が前年比2.1倍の172億8,400万豪ドルに増加し、これまで首位だった鉱業を上回った。2位は鉱業で44.8%増の165億9,400万豪ドル、3位は不動産業で9.1倍に増加した。対外直接投資を残高でみると、金融・保険業が2,639億5,700万豪ドルで全体の22.0%を占め、次いで鉱業(2,280億4,900万豪ドル、19.0%)、製造業(2,167億4,000万豪ドル、18.1%)が続いた。

表5 オーストラリアの国・地域別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー、残高](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 残高 金額 金額 伸び率 残高
アジア大洋州 9,979 26,474 165.3 303,397 9,209 2,429 △ 73.6 170,081
階層レベル2の項目日本 8,914 18,281 105.1 159,479 122 66 △ 45.9 1,312
階層レベル2の項目香港 475 3,001 531.8 26,402 617 145 △ 76.5 9,666
階層レベル2の項目中国 △ 463 842 36,483 △ 447 △ 676 1,553
階層レベル2の項目韓国 △ 56 87 7,228 72 31 △ 56.9 909
階層レベル2の項目ASEAN 1,070 4,742 343.2 64,437 △ 74 2,154 27,931
階層レベル3の項目シンガポール △ 454 3,729 44,268 296 3,904 1,218.9 23,647
階層レベル3の項目マレーシア 1,333 563 △ 57.8 14,106 △ 165 △ 968 4,439
階層レベル3の項目タイ △ 41 171 5,557 △ 233 △ 25 n.a.
階層レベル2の項目インド 89 △ 29 527 336 203 △ 39.6 2,082
階層レベル2の項目ニュージーランド △ 188 △ 77 5,161 9,818 796 △ 91.9 126,628
階層レベル2の項目パプアニューギニア n.a. 70 n.a. n.a. n.a. 1,563 n.a. 26,239
階層レベル2の項目EU27 △ 8,643 13,663 126,483 1,451 2,625 80.9 30,080
階層レベル3の項目ドイツ 965 n.a. n.a. 23,879 536 1,238 131.0 14,450
階層レベル3の項目オランダ △ 12,265 2,447 44,453 856 845 △ 1.3 10,398
階層レベル3の項目フランス 1,780 4,341 143.9 19,057 n.a. 516 n.a. 4,863
階層レベル2の項目英国 21,504 9,808 △ 54.4 156,351 12,007 9,521 △ 20.7 210,200
階層レベル2の項目米国 39,352 14,847 △ 62.3 235,294 6,609 16,701 152.7 243,098
階層レベル2の項目カナダ △ 983 1,383 83,968 △ 1,884 1,964 40,916
合計(その他含む) 46,024 81,003 76.0 1,280,412 17,180 21,319 24.1 1,199,136

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕オーストラリア統計局(ABS)

表6 オーストラリアの業種別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー、残高](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 残高 金額 金額 伸び率 残高
農林水産業 △ 54 n.a. n.a. 4,212 n.a. n.a. n.a. n.a.
鉱業 38,430 20,655 △ 46.3 407,699 11,458 16,594 44.8 228,049
製造業 2,150 16,772 680.1 128,814 7,399 625 △ 91.6 216,740
電気・ガス・水道業 1,198 5,524 361.1 26,946 n.a. n.a. n.a. 6,567
建設業 △ 89 n.a. n.a. 21,091 663 348 △ 47.5 7,676
卸売・小売業 6,338 3,082 △ 51.4 75,008 1,498 573 △ 61.7 8,721
ホテル・飲食業 788 1,528 93.9 11,181 35 △ 17 △ 53
運輸・郵便・倉庫業 1,940 3,444 77.5 37,854 △ 776 282 3,962
情報通信業 371 3,250 776.0 53,909 △ 1,378 n.a. n.a. n.a.
金融・保険業 6,161 13,856 124.9 160,942 8,162 17,284 111.8 263,957
不動産業 △ 8,728 4,391 △ 150.3 145,349 302 2,739 807.0 23,981
専門・科学技術サービス業 1,226 9,842 702.8 25,866 274 885 223.0 20,495
業務支援サービス業 159 2,559 1,509.4 8,242 40 n.a. n.a. 5,853
医療・社会事業 △ 736 755 6,555 8 97 1,112.5 n.a.
合計(その他含む) 46,024 81,003 76.0 1,280,412 17,180 21,319 24.1 1,199,136

〔出所〕 オーストアリア統計局(ABS)

投資環境・外資誘致政策 
外投審査合理化、安保の重要分野は審査強化

オーストラリア財務省は、2024年5月1日に外国投資審査枠組みの合理化方針を発表した。外国投資を呼び込みつつ、国家を安全保障上の脅威から守ることが目的だ。また、ネットゼロ、住宅、重要鉱物、重要技術など優先分野への外国投資を歓迎すると発表した。

合理化措置として、コンプライアンス遵守実績の高い外国投資家による非センシティブ分野(例:製造業、専門サービス、商業不動産、新築住宅、重要鉱物以外の鉱業)への投資審査を迅速化する。具体的には、2025年1月1日から、投資申請案件の半数を法定審査期間である30日以内に処理することを目指す。また、中古賃貸住宅(Build to Rent)物件への投資については、申請手数料を引き下げる。一方で、防衛などの重要インフラ施設、重要鉱物、重要な技術などセンシティブ分野の投資案件には、より厳格な審査を適用する。なお、審査の迅速化の進捗について、2024年の第4四半期(10月~12月)に審査が30日以内で終わった提案の割合は50%を超えたと財務省は発表した。

2025年3月25日に発表した2025/2026年度(2025年7月~2026年6月)の予算案では、生活費高騰対策、住宅供給、公的医療制度の充実やサイクロン被害復興支援などに加えて、2050年ネットゼロ達成に向け新産業の自国生産を支援する「フューチャー・メード・イン・オーストラリア」枠組みへの予算措置も継続する。主なものとして、クリーンエネルギー金融公社(CEFC)への追加資金提供、グリーンアルミ生産の支援策、「フューチャー・メード・イン・オーストラリアイノベーション基金」を通じたクリーンエネルギー技術への支援、低炭素液体燃料への支援などが盛り込まれた。また、2024年度予算案で発表された水素や重要鉱物を対象とする生産税制優遇措置は、2025年に関連法案が国会審議を経て2025年2月に成立した。同措置は2027年度から開始する。2025年5月3日の連邦議会総選挙を経て2期目に入ったアンソニー・アルバニージー首相率いる労働党政権下で、これらの施策が進められる。

対日関係 
日本の投資が倍増、投資分野は多様化

日本はオーストラリアにとって主要な貿易相手国であり、輸出で2位(輸出額の14.0%)、輸入で3位(輸入額の5.9%)を占める。

2024年の対日貿易をみると、輸出が前年比17.3%減の726億3,800万豪ドル、輸入が3.7%減の252億3,600万豪ドルで、輸出入ともに前年を下回った。輸出を品目別にみると、1位の石炭は23.9%減、2位の天然ガスは14.9%減、3位の鉄鉱石は8.4%減と軒並み減少した。これら上位3品目の輸出額に占める割合は78.7%で、前年とほぼ変わらなかった。石炭輸入額の減少は価格の下落や為替の影響とみられる。天然ガスは、2024年10月の女川原発第2号機の再稼働などによるガス火力発電から原子力発電への移行で需要が減少したことが影響したとみられる。今後の見通しについて、連邦政府の産業科学資源省は、2025年2月に日本政府が発表した第7次エネルギー基本計画に基づき、2040年まで日本が相当量のLNGの輸入を継続するとの分析を示した。輸入を品目別みると、乗用車が前年比0.8%減の123億2,800万豪ドルとほぼ横ばいで前年に続き1位(全体の48.9%)、2位は貨物自動車で15.8%増の31億3,100万豪ドル(12.4%)、3位は石油精製品で24.6%減の19億4,400万豪ドル(7.7%)となった。

2024年の日本からの対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比2.1倍の182億8,100万豪ドルへと大幅に増加した。2024年は石油ガスなど従来のエネルギー分野に加え、多様な分野への投資がみられた。金融分野ではグローバル展開の一環として年金などの資産管理会社を買収する案件や、エネルギー分野では新エネルギー分野への投資も行われた。また、EVに対するフリンジ・ベネフィット税の免税制度の影響でEVリース市場でのEV利用も増加し、日本企業の投資案件もみられた。

同年の日本企業による具体的投資案件としては、三菱UFJ信託銀行による年金運営管理サービス大手リンク・アドミニストレーション・ホールディングス(Link Administration Holdings)の買収(11億豪ドル)、JERAオーストラリアによる、エネルギー大手ウッドサイドエナジー(Woodside Energy)からのオーストラリアのスカボローガス田の権益(15.1%)取得(約14億米ドル)、電源開発による再生可能エネルギー開発企業ジェネックスパワー(Genex Power)の買収(3億5,100万豪ドル)、極東開発工業によるバキューム車や散水車などの特殊車両製造企業STGグローバルホールディングス(STG Global Holdings)の買収(約1億豪ドル)、三菱電機モビリティによる自動車運転支援DMSソフトウェアプロバイダ大手シーイングマシーンズ(Seeing Machines)への追加出資(4,000万ポンド)、三菱自動車工業による自動車リース大手フリートパートナーズ(FleetPartners)への出資(5%)(金額未公表)などがあった。

また、2024年は住宅・不動産分野への参入発表も相次いだ。6月に東京ガス不動産が西オーストラリア州の分譲マンション開発事業への参画、7月に三井不動産がシドニービジネス地区のオフィスビル開発事業への参画を発表した。また、9月には、阪急阪神不動産が4都市(シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース)での物流不動産の賃貸・開発事業への参画、住友林業が豪州最大手の住宅会社メトリコン(Metricon)グループの持分51%の取得による買収、三菱地所がシドニーの分譲住宅を中心とした複合開発事業への参画を発表した。さらに、11月には関電不動産がニューサウスウェールズ州ウロンゴン市の分譲マンション開発事業への参画、12月には住友商事がシドニーの住宅開発分譲事業への参画、東京建物がシドニーにて分譲住宅開発事業への参入を発表した。移民の流入による人口増加の一方で住宅供給が不足しているところ、特に都市部やその近郊での住宅需要の拡大に対応した動きだ。

表7‐1 オーストラリアの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
石炭 35,584 27,092 37.3 △ 23.9
天然ガス 26,765 22,782 31.4 △ 14.9
鉄鉱石 7,986 7,314 10.1 △ 8.4
非公開項目 5,356 2,759 3.8 △ 48.5
牛肉 1,830 2,052 2.8 12.1
アルミニウム 1,196 1,308 1.8 9.3
液化石油ガス 1,114 961 1.3 △ 13.7
砂糖・糖蜜・蜂蜜 969 803 1.1 △ 17.1
採油用種果実 1,011 802 1.1 △ 20.6
銅鉱 0 644 0.9
合計(その他含む) 87,811 72,638 100 △ 17.3

〔注〕 CV (Custom Value) は、FOB価格とほぼ同値。
〔出所〕 オーストラリア外務・貿易省

表7‐2 オーストラリアの対日主要品目別輸入(CV)[通関ベース](単位:100万豪ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用自動車 12,422 12,328 48.9 △ 0.8
貨物自動車 2,705 3,131 12.4 15.8
石油精製品 2,577 1,944 7.7 △ 24.6
土木重機・同部品 1,259 995 3.9 △ 20.9
タイヤ 907 989 3.9 9.0
自動車部品・付属品 346 380 1.5 9.8
無機化学元素 339 255 1.0 △ 24.7
その他電気機械・同部品 228 231 0.9 1.3
内燃ピストンエンジン 265 231 0.9 △ 12.9
事務用機器 199 218 0.9 9.5
合計(その他含む) 26,210 25,236 100.0 △ 3.7

〔注〕 CV (Custom Value) は、FOB価格とほぼ同値。
〔出所〕 オーストラリア外務・貿易省

日本企業の課題 
日系企業の黒字割合は高水準、人件費高騰が課題

安定したビジネス環境を背景に、現地進出日系企業の黒字割合は高く、今後の事業拡大や新規事業開発に意欲的だ。2024年にジェトロが実施した「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」では、在オーストラリア日系企業の76.2%が2024年の営業利益見込みを「黒字」と回答し、アジア・オセアニア地域では台湾、韓国、インド、パキスタンに次いで5番目に高い。今後1~2年の事業展開の方向性についても50.3%が「拡大」と回答し、地域平均(43.8%)を上回った。アフターコロナに新規事業開発を実施した日系企業も40.8%と、同地域でパキスタン、ラオス、インド、バングラデシュに続いて5番目に高い割合となっている。

一方、投資環境上のリスクは、例年と同様に人材に関する項目が上位を占めた。「人件費の高騰」が89.5%、「土地/事務所スペースの不足・地価/賃料の上昇」が40.5%、「労働力の不足・人材採用難(専門職・技術職、中間管理職)」が36.6%の順となり、人件費の高騰を挙げる企業の割合が突出した。なお、オーストラリアの賃金は世界的に見ても高く、最低賃金(時給ベース)は、2024年度に24.10豪ドル(前年比3.75%増)、2025年度には24.95豪ドル(3.5%増)に引き上げられた。

加えて、米国のトランプ政権は2025年4月2日、オーストラリアに対して10%の相互関税を課すと発表した。米国のオーストラリアからの輸入に占める相互関税対象外品目の比率は、金額ベースで19.7%にとどまり、大部分が相互関税の対象となる。米国の輸入品目の1位は牛肉(切り身、骨なし、未加工、冷凍)(HTSコード2023050、シェア9.8%)で、相互関税の対象品目だ。ジェトロが日系企業複数社にヒアリングを行ったところ、日系企業への直接的な影響は限定的だが、安価な中国製品の国内市場流入による日本製品との競争激化や、中国の景気後退によるオーストラリアからの資源輸出の落ち込み、国内経済への負の影響などが、間接的な影響として懸念されるとの声が挙がった。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 4.1 2.1 1.0
1人当たりGDP (米ドル) 65,574 64,652 66,248
消費者物価上昇率 (%) 7.6 4 2.4
失業率 (%) 3.7 3.7 4.0
貿易収支 (100万豪ドル) 161,517 124,651 68,515
経常収支 (100万豪ドル) 7,973 △ 8,107 △ 51,917
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 53,385 56,605 54,455
対外債務残高(グロス) (100万豪ドル) 2,267,886 2,339,823 2,646,548
為替レート (1米ドルにつき、豪ドル、期中平均) 1.44 1.51 1.52


実質GDP成長率、消費者物価上昇率、経常収支:各四半期の数値の合計値から算出
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、一人当たりGDP、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高:オーストラリア統計局(ABS)
一人当たりGDP、外貨準備高、為替レート:IMF