日本からの輸出に関する制度 菓子の輸入規制、輸入手続き

オーストラリアの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2022年7月

未調理の乳成分を含み、それが製品全体の乾燥重量の10%以上(詳しい定義や計算方法は次の節を参照)を占める場合、菓子類であっても検疫上「乳製品」と見なされるため次の輸入規制を受けます。

前述の乳成分が検疫当局であるオーストラリア農林水産省(以下「DAFF」)発表の「口蹄疫安全国リスト」、および「ランプスキン病安全国リスト」の両方に記載された国・地域原産のものでなければなりません。この条件を満たさない場合は、輸入が禁止されます。

なお日本は両方のリストに記載されていますが、周辺国においては、例えば中国、韓国、ベトナムなどは記載されていないため最終加工が日本国内であっても規制の対象となります。

2. 施設登録、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)

調査時点:2022年7月

菓子のHSコードに含まれるすべての品目に関しては

  • 「未調理の乳成分」および「未調理の卵成分」の「製品全体の乾燥重量に占める比率」が10%未満の場合、輸入許可を申請する必要はありません(*)。
  • 「未調理の乳成分」および「未調理の卵成分」の「製品全体の乾燥重量に占める比率」が10%以上の場合、「乳製品」や「卵製品」としての輸入許可を申請する必要があります。

ここでの「未調理成分」および「製品全体の乾燥重量に占める比率」の定義と詳しい計算方法に関しては、税関当局による詳しい解説がありますので、次にその内容を抜粋します。

  1. 比率計算で分子となる「未調理の乳成分」と「未調理の卵成分」に関して:
    1. 「乳糖および乳糖誘導体」、「ギ―」、「チョコレート(菓子類の一部として使われるチョコレート、それ自体の乳成分含有率にかかわらず)」は算入しない
    2. 加熱調理を受けた部分(例:クッキーやケーキの生地)に含まれる乳成分や卵成分は算入しない
    3. 加熱調理せずに詰めたり載せたりする部分(クリームなどのフィリング)に含まれる乳成分や卵成分のみ算入する
  2. 一方、分母となる「製品全体の乾燥重量」は、調理の有無にかかわらず製品を構成する全成分の重量合計から「水分」の重量だけを差し引いて算出する
  3. 計算例:
    調理を受けた生地(でんぷん30%、チーズ10%、乳糖5%、チョコレート20%、水分10%)+未調理のトッピング(ミルクチョコレート10%、生クリーム15%)のケーキ(各成分に続く%は製品全体に対する重量比)の場合: 分子=15(チーズは調理済み部分に入っているため算入せず、トッピング中の生クリームのみ)
    分母=90(全体-水分)
    未調理乳成分の乾燥重量比=15/90(16.7%)

なお、「調理」の基準となる具体的な加熱処理の方法などに関する規定は、「3. 動植物検疫の有無」の当該箇所を確認してください。

また、従前より輸入許可不要のもう1つの条件として課されていた「商業的に加工・包装されたもの」は2022年6月より削除されました。ただし、前述「1- a.」の適用を受けるためには、本条件を満たす必要があります。

関連リンク

関係省庁
オーストラリア農林水産省(DAFF)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
オーストラリア輸入検疫条件(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
(検索画面にキーワードを入れて検索し、該当する条件を選択していくと、結果が表示されます。)

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2022年7月

菓子類は原則として農業・水資源省(DAFF)による輸入許可を取得する必要がなく、検疫検査の対象外のため、日本からの輸出時およびオーストラリアへの輸入時も特段の準備を要する検疫手続きはありません。
ただし、前章で説明した規定により「乳製品」や「卵製品」としての輸入許可が必要になる場合は検疫対象となり、それぞれ次の書類の事前取得と提出が求められます:

「乳製品」の場合、輸出国の検疫当局が発行し、次の情報を記載した健康証明書:
原料となる牛乳を生産した個体の生物種、所在国、健康状況、原乳の生産日
適切な加熱滅菌処理を受けた旨、および選択した滅菌方法(72℃以上の低温滅菌を15秒以上、または132℃の高温滅菌を1秒以上のいずれか)
「卵製品」の場合、輸出国の検疫当局が発行し、次の情報を記載した健康証明書:
原料となる卵はすべて「ニワトリ種」由来のものである旨
適切な加熱滅菌処理を受けた旨、および選択した滅菌方法(商業加熱処理施設において、70℃以上の最低中心温度を8.2分間以上維持する加熱処理、または同等の効果が得られる方法)

オーストラリアでの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2022年7月

オーストラリアへの菓子類の輸入に際して、本ページの各章節に記載した範囲以上の関連食品規格は見当たりません。

2. 残留農薬および動物性薬品

調査時点:2022年7月

菓子類に関しては、特に該当する規制はありません。
(農産品や畜産物・水産物などの農薬規制対象食品を直接的な原料としていないため該当しません。)

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2022年7月

菓子類は重金属および汚染物質規制の対象となります。オーストラリア・ニュージーランド食品基準コード(FSANZ)のStandard 1.4.1および付属Schedule 19の表において、許容されるものとその許容条件(対象食品、上限)をポジティブリスト形式で規定しています。同表に明記されている物質以外の汚染物質、また有毒物質の含有は禁止されています。

菓子類に適用される許容物質はごく限られているため、次に示します:

S19—4(金属類)
「カドミウム」:チョコレートおよびココア製品に対して0.5 mg/kgまで許容されています。
S19—5(非金属類)
「アクリロニトリル」:全食品に対して一律0.02mg/kgまで許容されています。
「クロロエチレン(別名:塩化ビニル)」:包装飲料水を除く全食品に対して一律0.01mg/kgまで許容されています。
S19—6(天然毒性を有する物質)
「シアン化水素酸類(合計値)」:菓子類に対して25mg/kgまで許容されています。
「プレゴン」:菓子類に対して350mg/kgまで許容されています。

4. 食品添加物

調査時点:2022年7月

菓子類は食品添加物規制の対象となります。オーストラリアでは使用される食品添加物についてポジティブリスト制を採用しており、オーストラリア・ニュージーランド食品基準コード(FSANZ)のStandard 1.3.1によって、対象食品ごとに規定されています。許容食品添加物・着色料およびその上限基準は、Standard 1.3.1に付属するSchedule 15、 Schedule 16で確認することができます。

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2022年7月

まず、全輸入食品共通の検疫条件として食品用の容器・包装に関して、個々の包装は新品かつ昆虫、種子、土壌、泥、動植物の一部などの汚染物が付着していない清潔な容器で行わなければなりません。この検疫条件を満たさない場合、または包装が完全・清潔でない場合、検疫検査・検疫処置の対象となることがあります。

次に、一部食品を対象にした検疫条件として、特定食品に対する容器の種類、性状や密封性に関する規制があります。これらに関しては「輸入手続き」の「2.輸入通関手続き」および「3.輸入時の検査・検疫」の動植物検査検疫を参照してください。

最後に、食物安全・有害物質含有防止の観点からの食品包装規制として、オーストラリア・ニュージーランド食品基準コード(FSANZ)による規定と、プラスチックの食品接触用途に関するオーストラリア・スタンダード(AS 2070-1999)があります。

FSANZによる規定はさらに3つのスタンダードに大別されます。

  1. 「3. 重金属および汚染物質」で詳述したStandard 1.4.1による規制(容器との接触により、同スタンダードの規定により禁止されている物質や上限値を超えた物質を食品に含有させないことが求められます)
  2. Standard 3.2.2(食品安全に関する措置および一般要件)に含まれる食品包装に関する規定9(a)-9(c)
    • 食品包装材料は所期の包装目的に適したもののみ使用すること
    • 食品に汚染を及ぼすリスクのない包装材料のみ使用すること
    • 包装作業の過程における食品汚染のリスクを排除すること
  3. Standard 1.1.1の包装材の形状・性状に関する規定10(11),12
    食品の包装材や、包装に含まれる乾燥剤・酸化防止剤などは、口の中に誤って入れた場合に飲み込まれて、気道や消化管をふさいだり、ほかのかたちで人体に傷害や不快感を与えるたりするような形状・性状であってはなりません。

プラスチックの食品接触用途に関するオーストラリア・スタンダード(AS 2070-1999)は、新品および再生プラスチックの食品包装への使用に関して次のとおり規定しています。

新品プラスチック
  1. 食品接触用途に使用される新品プラスチック材料は、次のいずれかの国際基準を満たすこと
    1. 米国Food and Drugs Administration(FDA)によるFederal Regulations 21CFR Parts 170-199の関連規定(関連修正案などを含む)
    2. 欧州委員会によるCommission Directives 89/109/EEC (Framework Directive) および 90/128/EEC(82/711/EEC および 85/572/EECなどの関連修正案などを含む)
  2. 食品接触用途に使用される新品プラスチック材料に使用される着色料は欧州理事会による Resolution AP (89) 1, Resolution on the use of colourants in plastics materials coming into contact with food(関連修正案などを含む)を満たすこと
再生プラスチック
  1. 一度一般消費者による使用、または印字を経た再生プラスチックは直接食品に接触する用途に利用しないこと
  2. 新品プラスチックを用いた容器製造過程におけるリサイクルによって得られ、ほかのソースからのプラスチックによる混入がなく、かつ先に述べた1、2を満たす再生プラスチックのみを直接食品に接触する用途に利用すること

6. ラベル表示

調査時点:2022年7月

オーストラリアで販売する菓子は、オーストラリア・ニュージーランド食品基準コード(FSANZ)および「原産地ラベリング情報に関する2016年基準法」により、次の項目の表示が義務付けられています。

  1. 食品名、ロット識別情報、供給業者と所在地
  2. 原料成分表示
  3. 原産地表示
  4. 賞味期限、消費期限のいずれか(期限が2年以上の場合を除く)
  5. 使用方法および保存方法(必要に応じて)
  6. アレルギー成分などに関する警告・注意喚起・告知
  7. その他の特定含有成分
  8. 遺伝子組み換え技術による加工(該当する場合)
  9. 栄養情報パネル
  10. 食品またはその原料に対する放射線照射

健康を標榜する(health claims)食品表示制度(Standard 1.2.7)は順次改正されており、「低脂肪」、「食物繊維・鉄分ミネラル・カルシウム豊富」、「高タンパク」、「低糖・低塩」、「ダイエットの効果がある」、「病気の予防に役立つ」といった健康に関する効果を表示する際の成分基準が明確に定義されました。栄養情報基準(Nutrient Profiling Scoring Criterion: NPSC)の計算に基づき、一定の栄養成分を含んだ食品に限り健康に関する表示が認められます。また、特定成分の含有量が通常の同種食品よりも低い旨の表記に関しては、定量的要件を満たす必要がある場合があります(例:「低塩」食品は食品100グラム当たり塩分120ミリグラムまで)。

7. その他

調査時点:2022年7月

食品安全・衛生規制
オーストラリアへ輸入される食品に関する安全・衛生規制はすべてオーストラリア・ニュージーランド食品基準コード(FSANZ)によって規定されています。菓子の場合、「2. 重金属および汚染物質」「5. 食品包装(食品容器の品質または基準)」に加え、Standard 1.5.2 による「遺伝子組み換え技術により生産された食品」に関する規制、Standard 1.6.1 による「微生物検出基準」が該当します。

オーストラリアの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2022年7月

菓子類であっても「乳製品」や「卵製品」としてオーストラリア農林水産省(DAFF)に対して輸入許可を申請する必要がある場合、積荷がオーストラリアの港または空港に到着する前に申請手続きを終える必要があります。

申請手続きはDAFFが運営するBICONウェブサイト上でアカウントを作成し、オンラインで行います。一般的な手続きや必要情報に関してはオンライン申請の各ステップ画面で案内されますが、「乳製品」として申請する場合は乳製品質問票(Dairy Questionnaire)に記入して提出する必要があります。

また、「輸入規制」の「3.動植物検疫の有無」に記載の「健康証明書」の提出も必要になります。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2022年7月

共通の必要書類として、次の情報を含む通関書類を提出すること:

  1. 各積送品(Consignment)を特定する情報(entry numberなど)
  2. 各積送品(Consignment)に含まれるすべての輸入製品を特定する情報(インボイス、waybill またはimporter’s manifest
  3. ほかの書類上の製品名などの記述だけでは具体的な製品・内容物が明らかでない場合、当該内容が分かるような情報(例:Product AXSynthetic antibiotic;ComteCheese

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2022年7月

動植物検査検疫

商業的に包装された菓子は、検疫規制の対象ではありません。

ただし、次の検疫条件を満たす製造者申告書の提出が必要になります:

未調理の乳製品または卵由来の成分を含まず、かつ商業的な包装をされたもの
  1. 餡やトッピングを含め、完全に調理されていること
  2. 安定した品質が保たれること、すなわち
    • 商業的に生産されたこと
    • 生産者によって包装されたこと
    • 生産時から同一包装のままであること
    • これらの包装が完全性を保ち、開封されていないこと
    • 室温または通常の環境温度で保存できること
    • 開封前に冷凍や冷蔵保存を必要としないこと
  3. 肉または肉由来の成分を含まないこと
未調理の乳製品または卵由来の成分を含むが、これらの成分の含有率が乾燥重量ベースで10%未満かつ商業的な包装をされたもの
  1. 餡やトッピングを除き、完全に調理されていること
  2. 安定した品質が保たれること、すなわち
    • 商業的に生産されたこと
    • 生産者によって包装されたこと
    • 生産時から同一包装のままであること
    • これらの包装が完全性を保ち、開封されていないこと
    • 室温または通常の環境温度で保存できること
    • 開封前に冷凍や冷蔵保存を必要としないこと
  3. 未調理の乳製品由来成分が10%未満であること(乾燥重量ベース)
  4. 未調理の卵由来成分が10%未満であること(乾燥重量ベース)
  5. 未調理の部分に、固形の状態で分離可能な未調理の乳製品または卵由来成分を含まないこと
  6. 肉または肉由来の成分を含まないこと
残留農薬検査
規制対象ではありますが、特に通関の際の検査規定はありません。
重金属等検査
規制対象ではありますが、特に通関の際の検査規定はありません。

4. 販売許可手続き

調査時点:2022年7月

菓子類全般に対して、「人間の食用のみを目的とする輸入」が条件となっており、飼料や肥料、生物製剤または獣医薬の利用を目的とした販売はできません。

5. その他

調査時点:2022年7月

なし

オーストラリア内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2022年7月

オーストラリアに輸入される日本産の菓子は、関税を免除されます。

2. その他の税

調査時点:2022年7月

GST(商品・サービス税)が付加価値税(VAT)に該当します。オーストラリア国内で消費される商品のうち、コメや生鮮食品、小麦粉など、生活を維持するために最低限必要な食糧品などの一部例外を除き、ほぼすべての商品・サービスに課されます。
GSTはFOB価格、海上/航空運賃、関税、保険を合わせた金額に対して10%が課されます

3. その他

調査時点:2022年7月

通関費用(豪ドル)
申請方法 Consignment Value(CIF価格) 通関費用(2016年1月1日~)
電子申請 ≦$1,000 なし
>$1,000 ~ <$10,000 $50.00
≧$10,000 $152.00
紙書類申請 >$1,000 ~ <$10,000 $90.00
≧$10,000 $192.00