日本からの輸出に関する制度

花きの輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する花きのHSコード

HSコード0601:球根、塊茎、結節根、球茎、樹冠と根茎、休眠根およびチコリ植物
HSコード0602:その他の生きている植物(根を含む)、挿穂、接ぎ穂およびきのこ菌糸
HSコード0603:切り花および花芽(生鮮のものおよび乾燥し、染色し、漂白し、染み込ませまたはその他の加工をしたもので、花束用または装飾用に適するものに限る)

注:輸入制限・検疫条件はHSコードではなく品種別で規定
本調査の対象となっているHSコード0601~0603番台の品目に対する輸入制限と検疫条件は「輸入規制」で詳述したように「品種(植物学上の種の名称)」に基づいています。
従って、所管官庁であるオーストラリア農業省(Australian Government Department of Agriculture)の公式サイト「バイオセキュリティ輸入条件データベース(BICON)」で検索する際はHSコードではなく、関連リンクのフローチャートのようにキーワード検索から調べることになります。

BICONではHSコードで検索することも可能になっていますが、仮に0601番台だけの入力検索でも次のページが表示され、「品種名」を基に適用される条件などを検索することになります。
「0601番台の検索結果(例)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

「‘Please use the 'Scientific Name Search' function in BICON to find the relevant import case(s) for your goods’」

オーストラリアの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2021年6月

オーストラリアへの花きの輸入条件は、HSコード「0601、0602」と「0603」で分かれます。

(HSコード0601、0602の場合)
生きた植物の輸入手続きになり、非常に厳格な条件が適用され個別の輸入許可(Import Permit)の申請が必要になります。オーストラリアの輸入検疫制度上、生きた動植物の輸入はすべて「Nursery Stock Import = 生きた植物の培養・繁殖目的の輸入」として扱われるためです。
具体的には品種名を農業省検疫部門のBICONウェブサイト上の「学名(Scientific Name)」タブで検索し、その品種に対する具体的な申請条件を確認することになります。
「BICONウェブサイト」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

前述のように生きた動植物の輸入許可条件に関しては体系的な規定はありませんが、農業省のサイトでは大まかな流れが説明されています。

オーストラリア到着前
Step 1: 当該品種に適用される輸入条件の確認。特に、既定の許可品種でない場合、特別申請になり1年以上かかる場合があります。
Step 2: 品種ごとに求められる培養観察などの到着時検疫手続きの事前手配
Step 3: 個別輸入許可の申請
Step 4: 包装、消毒処理などの輸出準備、および輸出前の検疫検査(必要な場合)
Step 5: 各種必要書類の準備
Step 6: オーストラリア当局側への輸入通知の提出
オーストラリア到着後
Step 7: 通関書類の審査
Step 8: 検疫検査
Step 9: 非組織培養植物に対する追加処理(必要な場合)
Step 10: 輸入後の培養、試験などを含む検疫検査(必要な場合)

さらに、生きた動植物に対しては前述の国レベルの検疫条件のほか、州ごとに厳格な検疫規定が適用されます。具体的には、次のウェブサイトから州ごとの検疫当局公式サイトおよび詳細規定を確認することができます。
「州ごとの検疫当局サイトおよび詳細規定」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(HSコード0603の場合)
HSコード「0603」に含まれるものに対しては、いくつかの許可リストをベースに体系的な輸入条件が定められており、それらを満たす場合は個別の輸入許可なしで輸入できます。 この場合の具体的な輸入条件はまず、
A「所定要件を満たす乾燥または加工処理された切り花および葉(dried and preserved flowers and foliage)」と
B「生鮮の切り花および葉(fresh cut flowers and foliage)」
によって大別されます。

所管官庁であるオーストラリア政府農業省(Australian Government Department of Agriculture)によって、A, Bそれぞれに対して、許可品種リスト(Aに対して1つ、Bに対して2つ)と伝播繁殖性のためより厳格な制限や条件が適用される特定許可品種リスト(A、Bそれぞれに対して1つ)が制定されています。

結論から言えば、表1のとおりです。

  • 許可品種リストまたは特定品種リストに記載されたものであれば輸入許可(import permit)なしで輸入できます。ただし、所定の検疫条件などを満たす必要があり、とりわけ後者の場合より厳格な条件が適用されます。
  • 許可品種リストに記載されていないもの、およびAのうち所定の処理方法を満たしていないものに関しては、既存の判断基準がないためケース・バイ・ケースで輸入許可を申請する必要があります。その場合、主に検疫リスクの観点から審査されます。
表1:花きの輸入条件
輸入条件 (Y) 許可品種リストに含まれる (N) 許可品種リストに含まれない (またはAの場合、所定加工条件を満たさない) 特定品種リスト(伝播繁殖性)に該当
* 左記(Y)、(N)いずれの場合でも
A「所定要件を満たす乾燥または加工処理された切り花および葉」 ・輸入許可不要
・花きに共通する輸入・検疫条件が適用される
・既存判断基準なし
・輸入許可の個別申請が必要
より厳格な輸入・検疫条件が適用される
B「生鮮の切り花および葉」 ・輸入許可不要
・花きに共通する輸入・検疫条件が適用される
・既存判断基準なし ・輸入許可の個別申請が必要 より厳格な輸入・検疫条件が適用される

具体的には、次のとおりです。

A「所定要件を満たす乾燥または加工処理されたもの」
B「生鮮の切り花および葉」

* 特定品種リストは許可リストに記載されたものも含め、より多くの「伝播繁殖性」の品種を定義したものです。
「特定品種リストについて」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

特定品種リストに含まれる品種に関しては、次のとおりより厳格な輸入条件が課されます。

  • A、Bそれぞれの場合、品種ごとに輸入できる部分(花、葉、実など)が制限されます。
  • Bの場合、許可リストに含まれた一般的な品種は次の1から3の検疫条件のいずれか1つを満たせばよいのに対して、特定品種リストに該当する場合はそのうち複数(大多数の場合すべて)を満たす必要があります。
  • さらに一部の品種に関しては、次の4つの輸入条件も満たす必要があります。
    1. 原産国の国立植物保護機関(National Plant Protection Organisation、以下NPPO)が定める栽培、包装、出荷、輸送などに関する基準(Systems Approach)を満たすこと
    2. 所定基準を満たした輸出前のメチル臭化物による燻蒸処理
    3. その他の方法による輸出前消毒処理
    4. 繁殖能力除去処理(Devitalisation treatment)
    なお、これらの各輸入条件、検疫条件の詳細については各該当項目で詳述しています。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2022年1月

日本からオーストラリアへ花きを輸入するためには、輸出者側で施設登録/輸出事業者登録をする必要はありません。ただし、条件に応じて輸出前に所定の処理を施したことや各輸入条件(「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」を参照)を満たすことを示す書類を提示する必要があります。

A「所定要件を満たす乾燥または加工処理されたもの」
  • (A-1) 完全乾燥されたもの外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    この場合、通常の検疫措置(内容物や包装に検疫リスクとなる汚染がないことの確認)だけが適用されます。
    次の(A-2)(A-3)の場合に必要となる植物名に関する情報を明記したインボイス、コマーシャルインボイス、サプライヤー証明書(※)、製品ラベルまたは生産者証明書は不要です。
  • (A-2) 所定要件を満たす加工処理外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

所定条件を満たす加工処理とは、次のいずれかである:

  1. グリセリンまたはアルコールに完全に浸す
  2. 樹脂に完全に封入
  3. 摂氏80度の温度下で3時間以上乾燥させた後、染色し、さらに40%濃度の塩化マグネシウムで処理
  4. 摂氏60 度の温度下で2日間以上乾燥させた後、染色し、さらに40%濃度の塩化マグネシウムで処理

この場合、次の2つの書類が必要になります(「1」の必要情報を生産者証明書に明記する場合は、1つの書類でよい):

  1. 植物名(生物学名を含む)に関する情報を明記したインボイス、コマーシャルインボイス、サプライヤー証明書(※)、製品ラベルまたは生産者証明書(※)のいずれかの書類
  2. 前述の「所定条件を満たす加工処理」のいずれかを施したことを示す生産者証明書

サプライヤー証明書(Supplier's declaration)の詳細要件外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
前述の輸入条件で求められる情報、発行会社のレターヘッド(社名と所在地を含む)、作成者の氏名と肩書を明記し、過去6カ月以内で発行されたもの。

製品ラベルに関する詳細要件外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
製品に関する説明、植物名、重量または体積、原産国の明記が必要。

生産者証明書(Manufacturer's declaration)関する詳細要件外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
前述の輸入条件で求められる情報、発行会社のレターヘッド(社名と所在地を含む)、作成者の氏名と肩書を明記し、過去6カ月以内で発行されたもの。

(A-3) 漆、ペイントまたは金属のコーキング剤による完全被覆外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

この場合、次の書類が必要になります:
植物名(生物学名を含む)に関する情報を明記したインボイス、コマーシャルインボイス、サプライヤー証明書(※)、製品ラベルまたは生産者証明書(※)のいずれかの書類 (つまり、前述A-2の場合に必要となる2つの書類のうち「a」のみ)

* 前述の各要件を所定の書類により証明できない場合は、許可品種リスト(A)に該当する品種でも個別の輸入許可を申請する必要があります。

B「生鮮の切り花および葉」
生鮮の切り花および葉の場合、次の書類が必要になります:
  1. 完全な植物名(属および種または属レベル)を明記した、輸出国NPPO 発行の植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)。
    * 日本国のNPPO は農林水産省所轄の植物防疫所です。
    「植物防疫所輸出検査について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 前述のa.の植物検疫証明書に、次の1~3いずれかの処理を施したことを証明する内容を記載する。

    1.原産国のNPPOが定める栽培、包装、出荷、輸送などにおける体系だった害虫防止や植物保護基準(Systems Approach)を満たすこと
    「原産国のNPPOが定める基準を満たした場合の輸入規則(BICONの検索結果例)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    2.所定基準を満たした輸出前のメチル臭化物による燻蒸処理
    「メチル臭化物による輸出前燻蒸処理を行った場合の輸入規則(BICONの検索結果例)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

    この場合、さらに表2の技術基準を満たすことを示す「メチル臭化物燻蒸処理証明書」を別途添付する必要があります:
    「メチル臭化物燻蒸処理証明書について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

表2:メチル臭化物燻蒸処理の技術基準
温度 最低初期投薬率 暴露期間
摂氏21度以上 32 g/m³ 2時間
摂氏16~20.9度 40 g/m³ 2時間
摂氏11~15.9度 48 g/m³ 2時間
摂氏10~10.9度 56 g/m³ 2時間

3. その他の方法による輸出前消毒処理外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

この場合、さらに植物検疫証明書に次の内容を明記する必要があります。

  1. 当該消毒処理の詳細(使用薬剤、濃度、暴露期間など)
  2. 当該消毒処理を実施した機関
  3. 「当該積荷に対して検疫検査が実施され、検疫対象となる生きた害虫がないことを確認した」旨を示す証明

また、特別品種リストに該当し、かつ同リストの詳細規定により失活(繁殖能力除去)処理(Devitalisation treatment)が求められるものに関しては、さらにその処理方法の詳細(使用薬剤、濃度、暴露期間など)を示す内容を明記する必要があります。
前述の各情報は花きの輸入条件に関連して特に必要な内容ですが、「植物検疫証明書」には原産地など一般的に記載すべき情報もすべて明記する必要があります。
詳しくは次のサイトを参照してください。
「植物検疫証明書について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2021年6月

日本から花きを含む植物を輸出する場合は、相手国の植物検疫の条件に適合しているか確認するための「輸出検査」を植物防疫所に申請する必要があります。同所のウェブサイトには申請の流れが説明されています。
「植物防疫所輸出検査について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

この輸出検査に合格したものについて、「植物検疫証明書(Phytosanitary certificate)」が発行され、この証明書はオーストラリアへの輸入通関時に必要になります。

同証明書の発行を受けるための「輸出検査」申請の申請書様式や具体的な記入内容は、次のサイトから確認することができます。
「植物防疫所輸出検査申請書」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

なお特に注意が必要な点として、「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」で詳述している各ケースにおいて、オーストラリアの検疫当局が求めている処理方法や必要条件を「植物検疫証明書(phytosanitary certificate)」に記載することが求められます。そのためには、植物検疫所に提出する申請書にこれらの必要事項を明記する必要があります。

オーストラリアでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2021年6月

輸入規制の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」を参照してください。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2021年6月

輸入規制の「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」を参照してください。

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2021年6月

日本から花きを輸出する場合は、通関時に「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類」で述べた必要書類以外に次の各項目を調べる検疫検査の対象になります。

A「所定要件を満たす乾燥または加工処理されたもの」
所定の加工または乾燥処理が完全に実施され、生鮮の花きが含まれていないこと。
B「生鮮の切り花および葉」
  1. 包装容器に関する条件 – 次のいずれかを満たすこと。
    1. 換気口のない、完全に密封されたカートンによる包装。
    2. メッシュまたはスクリーン状の換気口付きカートンによる包装。ただし、個々の換気口の大きさが1.6ミリ以下に収まるか、開口部をテープで覆うこと。
    3. 換気口付きカートンに、ポリエチレンの内包装または内袋を追加した包装。
    4. メッシュまたはプラスチックで覆われたパレットまたはUnit Load Devices (ULDs).
    5. 完全に密封した容器内のカートン包装
  2. 積荷ごとに、新しいかつ清潔な包装に入れること。
  3. 昆虫類、種子、果実またはベリー(明示的に許可された場合を除き)、その他の動植物片、土壌またはバイオセキュリティリスクとなるその他の物質が付着していないこと。
    * 生きた昆虫またはその他バイオセキュリティリスクとなる物質が発見された場合、輸入者負担の追加処理を課されるか、輸入拒否または廃棄処分措置となる場合があります。(ただし、追加のメチル臭化物による燻蒸処理はバイオセキュリティリスクとなる害虫のみに対して課される)。

4. 販売許可手続き

調査時点:2021年6月

なし

5. その他

調査時点:2021年6月

なし

オーストラリア内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2021年6月

日本から輸入される花きはすべて免税措置の対象となり、関税はかかりません。

日本からの輸入で関税を免除されない品目はすべてオーストラリア国境警備隊(Australian Boarder Force)のウェブサイト「関税率表(CURRENT TARIFF CLASSIFICATION)」の「Schedule 11」にHSコードベースで明記されており、花きを含む0601、0602、0603番台は当スケジュールに該当しません。

関連リンク

2. その他の税

調査時点:2021年6月

なし

3. その他

調査時点:2021年6月

繁殖能力除去処理(Devitalisation treatment)が必要な品種に関する新しい検疫検査方法が2021年7月からトライアルベースで導入されます。
従来の検査方法との主な違いは、サンプル数600本ごとに10本をランダムに選出する抜き打ち検査方式です。

農業省通達114-2021:繁殖可能な種の生鮮切り花と葉が輸出前に失活処理されたことを確認するための新しいテストの試験導入
農業省通達114-2021外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます