セミナー:「米国GMAと日本企業に聞く‐米国食品安全強化法に備えて」を開催

2014年3月
ジェトロ農林水産・食品調査課

ジェトロは2014年2月17日に東京、18日に名古屋で、セミナー「米国GMAと日本企業に聞く‐米国食品安全強化法に備えて」を開催、それぞれ約200名、約80名の参加者がありました。
セミナーでは、米国の食品製造業者協会(GMA)で食品安全に携わる有識者、米国向けに食品を輸出している実務経験者、およびジェトロが登壇し、米国食品安全強化法の解説や求められる企業対応について、講演がなされました。

会場の様子

第1部 制度理解と企業内対応が必要

第1部では、強化法の内容の紹介とともにどのように備えるべきかについて解説され、制度理解と企業内対応の必要性が喚起されました。

講演1.「米国食品安全強化法の解説と企業対応等」

講師

米国食品製造業者協会(GMA)科学政策・コンプライアンス&インスペクション
ウォーレン・ストーン シニアディレクター

米国食品医薬品局(FDA)が公表した規則案に基づき、米国に求める食品安全の考え方(危害分析と予防管理措置、科学的根拠に基づく妥当性確認、外国供給業者検証プログラム等)について解説しています。また、最近発生した意図的な異物混入の例を挙げ、食品防御(フード・ディフェンス)に関する措置を講じる必要性について述べています。日本企業に求められる対応として、ストーン氏は「食品安全の管理にあたり、社内における繰り返しの研修が重要」とし、同協会が提供しているトレーニングコースや資料も紹介しています。

主な内容

講演2.「米国食品安全強化法‐ジェトロのFDA提出コメント御紹介等‐」

講師

ジェトロ・シカゴ事務所
伊藤 大介 調査・農業担当ディレクター

流通、価格、その他規制など従来からの米国向け食品輸出上の課題に加え、米国食品医薬品局(FDA)が公表した新たな規則案により、日本企業に影響が出そうな点について解説しています。また、ジェトロが提出したパブリック・コメントも紹介しています。伊藤氏は、具体的に想定される企業対応としては、「政府・産業界におけるFSMA関連の情報共有」、および「FDAに対する、日本企業各社からの積極的なパブリック・コメントの提出」を挙げています。

主な内容
  • 日本と米国の農林水産物・食品貿易
  • 輸入食品に関する規制での注意点
  • ジェトロが提出したパブリック・コメント
  • 各社で想定される対応

第1部 質疑応答

第2部 科学的根拠に基づく「食の安全」確保

第2部では、米国の食品安全の考え方の基本である科学的根拠として重要な微生物危害の検査手法やFDA検査の実例などが紹介されました。

講演3.「微生物学の観点からみた米国食品安全強化法:米国食品業界の反応と求められる準備」

講師

米国食品製造業者協会(GMA) 微生物学グループ・ディレクター
メリンダ・ヘイマン 博士

GMAのメリンダ・ヘイマン博士は、微生物学の観点から、製造現場、原料・最終製品など、食品の各製造工程において求められる検査のポイントや、米国の食品業界が主に利用している微生物検査の手法などについて解説しました。ヘイマン博士は、「ひとつの手法が全てに適用できるわけではない」ことを強調、食の安全への対応・妥当性検証は慎重になされなければいけないと訴えました。また「受身の姿勢は禁物」と述べ、日本企業にも早急な対応を呼びかけました。

主な内容
  • 米国食品安全強化法が求める微生物学上の要件
  • 危害分析・予防管理措置に関する規則案のポイント
  • 米国食品製造業者協会(GMA)の見解
  • 米国内における状況
  • 業界として対応すべきポイント

講演4.「FDA査察を受けて」

講師

理研ビタミン株式会社 千葉工場
永井 達也 品質管理課長

実際にFDA査察を受けた立場から、通知から査察までの経緯、行った準備、体制整備、及び当日の査察の流れについて説明しました。永井品質管理課長は、FDA査察は通常の監査と比べ、どのような文書が求められるのかが明確ではなかったため、「事前に準備する文書が多かった。それに伴い、翻訳作業の負担も大きかった」と振り返りました。同社の場合、HACCPプランを策定していること、ISOやFSSCなどの国際認証を取得済みであることで、査察が比較的円滑に進んだとみています。また、FDA査察の対応には、社内の国際事業部との連携、専門経験豊富な通訳との協力などが有効とも述べています。

主な内容
  • 会社概要
  • FDA査察までの経緯
  • 査察の事前準備
  • 査察の流れ
  • 査察を受けて

第2部 質疑応答

今後の課題

第1部、第2部の講演を通じて共通して強調されたのは、1.予防的管理措置の考え方を理解すること、2.その記録を適切に管理・保持すること、3.制度理解・対応について企業内態勢を十分に整備すること、などです。米国が外国の供給業者に対して求める食品安全の仕組み、要件が異なることは、これまで国内市場向けをメインに取り組んできた企業にとっては、人員、時間、費用、言語などの面が大きな負担となると考えられます。

農林水産省は、国内において米国が求めるHACCP、およびそれに準じた食品安全システムの構築・普及を、課題のひとつとして認識しています。また、ジェトロは、輸出促進の観点から米国への輸出を実施していく上では、同国の制度を十分に理解しておく必要があり、食品製造企業、輸出入業者、行政、業界団体など関係者全員での対応が必要と考えています。米国食品市場は非常に重要なマーケットのひとつであり(※)、また今回のセミナーに多くの関心が寄せられたことから、今後もセミナーや個別の情報提供を行っていきたいと考えています。

※2013年の農林水産物・食品輸出を国別にみると、第1位の香港(1,250億円、シェア22.7%)に次いで、米国は第2位(819億円、同14.9%)

セミナー:「米国GMAと日本企業に聞く~米国食品安全強化法に備えて」 概要
日時 [東京]2014年2月17日(月曜)13時00分~16:35
[名古屋]2014年2月18日(火曜)13時00分~16:35
会場 [東京]ホテルオークラ・オーチャードルーム 別館2階
[名古屋]愛知県産業労働センター(ウィンクあいち)18階セミナー室
主催 ジェトロ
講演次第
13:00~
主催者挨拶
  • [東京]
    • ジェトロ 農林水産・食品部 下村 聡 部長
    • 農林水産省 食料産業局 食品企業行動室 横田 美香 室長
  • [名古屋]
    • ジェトロ 農林水産・食品部 農林水産・食品調査課 長谷川 直行 課長
    • 農林水産省 食料産業局 輸出促進グループ 岡田 善太 海外展開専門官
13:05~
第1部 強化法の解説と企業コンプライアンス
  • 講演1.「米国食品安全強化法の解説と企業対応等」
    米国食品製造業者協会(GMA)科学政策・コンプライアンス&インスペクション ウォーレン・ストーン シニアディレクター
  • 講演2.「米国食品安全強化法‐ジェトロのFDA提出コメント御紹介等‐」
    ジェトロ・シカゴ事務所 伊藤 大介 調査・農業担当ディレクター
14:45~
第2部 FDA検査の現場から
  • 講演3.「微生物学の観点からみた米国食品安全強化法:米国食品業界の反応と求められる準備」
    米国食品製造業者協会(GMA) 微生物学グループ・ディレクター メリンダ・ヘイマン 博士
  • 講演4.「FDA検査を受けて」
    理研ビタミン株式会社 千葉工場 永井 達也 品質管理課長