カナダの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のカナダの実質GDP成長率は1.7%で、2020年以来の低水準に。
  • 通商政策はトランプ政権の関税措置への対策と非米国市場との関係強化に重点。対米依存脱却を目指す。
  • 輸出は原油価格の下落が響き減少、輸入は増加。
  • 対外直接投資は米国向けが大幅減。

公開日:2026年7月30日

マクロ経済

前年から鈍化もプラス成長を維持、住宅投資は4年ぶりプラスに

2025年のカナダの実質GDP成長率は1.7%で、最大の落ち込みを見せた2020年に次ぐ低い水準となった。実質GDP成長率の推移を四半期ベースでみると、第1四半期は前期比年率2.1%増、第2四半期は0.9%減、第3四半期は2.4%増、第4四半期は0.6%減と変動がみられた。

支出項目を前年比でみると、GDPの5割強を占める家計最終消費支出が前年比2.3%増(寄与度1.3ポイント)と、2024年の2.2%増から0.1ポイントの伸びを見せ、最も押し上げに寄与した。政府消費支出は、2.4%増(寄与度0.5ポイント)と、項目別で最も高い伸びとなった。住宅投資は、連邦政府が手頃な価格の住宅建設を目的とする連邦政府機関「ビルド・カナダ・ホームズ(BCH)」を設立するなど、住宅建設を積極的に支援したことから、1.0%増(寄与度0.1ポイント)と4年ぶりにプラスに転じた。

一方、非住宅・設備投資が0.3%減(寄与度マイナス0.03ポイント)と低迷したほか、輸出が1.7%減(寄与度マイナス0.5ポイント)と減少したことが、成長率を減速させた。インフレ率の指標となる消費者物価指数(CPI)は2025年通年で前年比2.1%上昇し、カナダ中央銀行(以下、中銀)の目標である2.0%付近で推移している。一方、中東情勢の悪化に伴うエネルギー価格の上昇がインフレを悪化させる懸念があるとして、中銀は金利の引き下げに慎重な姿勢を見せている。

なお、カナダ財務省が2026年4月に発表した「春季経済見通し」では、実質GDP成長率は2026年には1.1%に鈍化し、2027年には1.9%へ回復すると予測している。

表1 カナダの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕季節調整済み、四半期の伸び率は前期比年率。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.0 2.0 1.7 2.1 △0.9 2.4 △0.6
家計最終消費支出 2.2 2.2 2.3 1.2 4.7 △0.8 1.7
政府最終消費支出 2.4 3.8 2.4 1.4 4.5 △2.7 3.1
民間総固定資本形成 △ 2.3 △ 0.5 0.3 △5.0 △0.5 △0.9 △0.2
住宅投資 △ 9.5 △ 0.2 1.0 △11.1 2.0 5.0 △4.4
非住宅・設備投資 3.1 △ 1.4 △ 0.3 △0.6 △2.4 △5.3 2.0
財・サービスの輸出 6.2 0.9 △ 1.7 4.0 △23.6 3.8 6.1
財・サービスの輸入 1.2 0.7 △ 0.4 4.0 0.4 △11.0 1.0

〔注〕季節調整済み、四半期の伸び率は前期比年率。

〔出所〕カナダ統計局

貿易

資源、自動車関連の減少により輸出額は微減

2025年のカナダの財貿易(通関ベース)は、輸出は前年比0.2%減の7,790億カナダ・ドル(以下、Cドル)、輸入は2.8%増の7,890億Cドルとなった。貿易収支は、前年の136億Cドルの黒字から、100億Cドルの赤字に転じた。

財輸出を品目別にみると、構成比上位を占める鉱物性生産品(HSコード25~27類、構成比27.2%)および自動車・同部品など(87類、構成比9.4%)が全体を押し下げた。鉱物性生産品では、原油(2709項)の輸出量が前年比2.5%増となったものの、原油価格の下落から輸出額は4.8%減となった。対米輸出が9割を占める自動車・同部品などは、米国が2025年4月に、1962年通商拡大法232条に基づき関税を発動したことが響いた。同じく同条の対象となったアルミニウム(76類、構成比2.2%)は4.7%減、鉄鋼(72類、構成比1.2%)は27.5%減となり、卑金属(72~83類、構成比6.5%)の輸出減少につながった。

一方、輸出が伸びた品目は、一般機械(84類、構成比7.5%)だ。ターボジェット、ターボプロペラ、その他のガスタービン(8411項)の輸出が大きく拡大し、前年比4.6%増の587億Cドルとなった。カナダ政府およびカナダ輸出開発公社によると、カナダの航空宇宙産業への需要は新型コロナ禍以降拡大しており、2025年には前年を上回る好調さだった。次いで、動物性および植物性生産品(1~14類、構成比7.9%)は、2.0%増の616億Cドルと伸びた。カナダ政府は農林水産品を輸出拡大に向けた重点分野と位置付け、市場アクセスの拡大に取り組んでいる。2025年の小麦の輸出量は、1,700万トンと過去最高を記録した。

財輸出を国・地域別にみると、米国以外の主要輸出相手国・地域で増加がみられた。最大の輸出先である米国は、前年比5.3%減の5,646億Cドルとなった。1962年通商拡大法232条関税の対象品目を中心に減少が目立ち、自動車・同部品など(構成比11.8%)は7.9%減、鉄鋼(構成比1.4%)は27.5%減、鉄鋼製品(73類、構成比1.0%)は30.7%減、アルミニウム(構成比2.4%)は14.0%減、医薬品(構成比1.7%)は20.2%減となった。他方で、米国がカナダに依存している貴石・貴金属(71類、構成比2.8%)は13.8%増、一般機械(構成比8.0%)は1.9%増だった。

米国に次いで国別構成比が大きい英国(構成比6.0%)は、前年比62.2%増の466億Cドルとなり、そのうち貴石・貴金属(構成比86.9%)が金の価格上昇により、78.3%増加した。EU(構成比5.5%)も23.4%増の428億Cドルとなり、そのうち構成比12.3%を占めた鉱物性燃料(27類)が53.7%増と大きく伸びた。エネルギー調達の脱ロシア化を進めるEUとカナダの海上輸送能力の向上および輸出先多角化政策が合致したことが、輸出拡大に寄与した。

アジア大洋州(構成比10.4%)も前年比5.8%増の811億Cドルとなり、特にASEAN(構成比1.5%)は22.6%増の115億Cドルだった。品目別では、鉱物性燃料(構成比13.0%)が2.2倍の15億Cドルで、寄与度が最も高かった。また、一般機械(構成比13.7%)や肥料(31類、構成比10.3%)も輸出が拡大した。

米国からの輸入、カナダの対抗措置が影響し減少

財輸入を品目別にみると、全体的に堅調だった前年と比べ、2025年は一部の主要品目で減少がみられた。自動車・同部品など(構成比15.5%)が前年比2.7%減の1,222億Cドルにとどまったことがその一例である。

一方、一般機械(構成比15.5%)、食料品・飲料など(16~24類、構成比5.1%)、動物性および植物性生産品(構成比4.6%)が、輸入全体の増加を下支えした。なお、最大の輸入相手国である米国からの飲料・アルコール(22類)は、前年比7.8%減となった。これは、米国が2025年3月にIEEPA関税を発動したことに対し、カナダの2州を除く全ての州・準州が報復措置として米国産アルコール飲料の取引を2025年末まで停止したことが影響した。

財輸入を国・地域別にみると、主要国・地域の多くで増加がみられた。カナダが関係深化に取り組んでいるASEAN(構成比5.2%)は、前年比23.9%増の409億Cドルとなった。このうちベトナム(構成比2.4%)は31.0%増となり、一般機械、電気機器(85類)、玩具(95類)が輸入増に寄与した。最大の米国に次ぐ輸入先のEU(構成比11.6%)は、5.9%増の916億Cドルとなり、品目別では、一般機械(12.6%増、214億Cドル)や自動車・同部品など(2.6%増、107億Cドル)が好調だった。

一方、米国(構成比45.8%)は、カナダの対米輸入需要の減少に加え、米国の関税政策に対するカナダ側の対抗措置の影響を受け、前年比4.2%減の3,617億Cドルとなった。品目別では、特に米国からの中間財の輸入が多い自動車・同部品など(構成比17.9%)が9.0%減の649億Cドルとなり、最大の押し下げ要因となった。鉱物性燃料(構成比10.4%)のほか、カナダが品目別報復関税を設定している鉄鋼(構成比1.4%)なども減少した。

表2 カナダの主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万カナダ・ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕輸出は再輸出を除いた数値。
品目 (HSコード、2桁) 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性生産品 (25-27) 217,637 212,221 27.2 △ 2.5 56,179 54,727 6.9 △ 2.6
自動車・同部品等 (87) 79,190 73,587 9.4 △ 7.1 125,638 122,246 15.5 △ 2.7
動物性および植物性生産品 (01-14) 60,409 61,602 7.9 2.0 32,711 35,913 4.6 9.8
一般機械 (84) 56,049 58,654 7.5 4.6 114,738 112,430 15.5 6.7
卑金属 (72-83) 56,399 50,487 6.5 △ 10.5 50,431 49,692 6.3 △ 1.5
化学工業生産品 (28-38) 53,093 48,930 6.3 △ 7.8 76,180 76,142 9.7 △ 0.1
食料品、飲料など (16-24) 33,900 33,955 4.4 0.2 38,263 40,448 5.1 5.7
プラスチック・ゴム (39、40) 27,085 25,678 3.3 △ 5.2 36,564 36,915 4.7 1.0
電気機器 (85) 23,872 24,025 3.1 0.6 71,971 72,606 9.2 0.9
航空機・同部品 (88) 18,156 19,160 2.5 5.5 12,303 12,809 1.6 4.1
パルプなど (47-49) 19,894 18,581 2.4 △ 6.6 13,261 13,013 1.6 △ 1.9
木材など (44-46) 18,575 17,151 2.2 △ 7.7 4,799 4,563 0.6 △ 4.9
精密機器など (90-92) 11,800 12,580 1.6 6.6 22,880 24,002 3.0 4.9
家具・玩具など (94-96) 10,883 10,570 1.4 △ 2.9 22,349 24,110 3.1 7.9
繊維および関連製品 (50-63) 4,296 3,993 0.5 △ 7.1 21,385 23,041 2.9 7.7
その他 (上記以外) 89,616 107,864 13.8 20.4 67,643 76,308 9.7 12.8
合計 780,854 779,006 100.0 △ 0.2 767,294 788,971 100.0 2.8

〔注〕輸出は再輸出を除いた数値。

〔出所〕カナダ統計局

表3 カナダの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万カナダ・ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕 輸出は再輸出を除いた数値。 アジア大洋州は、ASEAN+ 6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
CUSMA 604,600 573,537 73.6 △ 5.1 424,991 415,079 52.6 △ 2.3
米国 595,939 564,647 72.5 △ 5.3 377,504 361,667 45.8 △ 4.2
メキシコ 8,662 8,889 1.1 2.6 47,487 53,412 6.8 12.5
アジア大洋州 76,655 81,066 10.4 5.8 180,032 193,890 24.6 7.7
中国 30,003 34,424 4.4 14.7 88,920 90,642 11.5 1.9
日本 14,991 14,571 1.9 △ 2.8 21,339 21,069 2.7 △ 1.3
韓国 7,622 7,069 0.9 △ 7.2 17,081 17,895 2.3 4.8
香港 3,678 3,770 0.5 2.5 300 359 0.0 19.5
台湾 2,035 1,989 0.3 △ 2.3 7,248 7,985 1.0 10.2
ASEAN 9,417 11,545 1.5 22.6 32,993 40,864 5.2 23.9
シンガポール 2,252 3,188 0.4 41.6 1,486 1,755 0.2 18.2
インドネシア 2,313 3,047 0.4 31.7 3,295 3,625 0.5 10.0
マレーシア 1,331 1,699 0.2 27.6 3,865 4,418 0.6 14.3
ベトナム 1,018 1,322 0.2 29.9 14,731 19,296 2.4 31.0
タイ 1,032 1,145 0.1 10.9 5,346 6,231 0.8 16.5
フィリピン 1,403 1,053 0.1 △ 24.9 1,745 2,327 0.3 33.4
その他 69 91 0.0 32.6 2,526 3,111 0.4 27.1
インド 5,313 3,880 0.5 △ 27.0 8,031 9,687 1.2 20.6
オーストラリア 3,144 3,357 0.4 6.8 2,989 3,976 0.5 33.0
ニュージーランド 452 460 0.1 1.8 1,131 1,415 0.2 25.1
EU27カ国 34,659 42,767 5.5 23.4 86,437 91,579 11.6 5.9
オランダ 7,106 9,501 1.2 33.7 4,643 4,403 0.6 △ 5.2
ドイツ 6,733 9,172 1.2 35.4 23,630 25,112 3.2 6.3
フランス 4,406 5,028 0.6 14.1 9,878 10,214 1.3 3.4
イタリア 3,310 3,913 0.5 18.2 12,468 13,643 1.7 9.4
ベルギー 3,854 3,875 0.5 0.6 4,537 4,197 0.5 △ 7.5
スペイン 2,035 2,694 0.3 32.4 4,150 4,577 0.6 10.3
ポーランド 1,125 1,531 0.2 36.1 3,475 3,804 0.5 9.5
その他 6,050 7,053 0.9 16.6 23,656 25,629 3.2 8.3
英国 28,758 46,647 6.0 62.2 9,863 9,944 1.3 0.8
ブラジル 2,496 3,128 0.4 25.3 10,232 11,598 1.5 13.4
UAE 2,578 2,835 0.4 10.0 802 679 0.1 △ 15.3
スイス 6,181 2,553 0.3 △ 58.7 8,069 10,349 1.3 28.3
ノルウェー 2,302 2,251 0.3 △ 2.2 897 1,561 0.2 74.0
アルジェリア 1,392 1,620 0.2 16.4 206 310 0.0 50.5
ペルー 1,641 1,426 0.2 △ 13.1 6,148 7,741 1.0 25.9
サウジアラビア 2,017 1,275 0.2 △ 36.8 2,081 2,236 0.3 1.6
トルコ 1,258 1,137 0.1 △ 9.6 3,146 3,197 0.4 7.5
合計(その他含む) 780,854 779,006 100.0 △ 0.2 767,294 788,971 100.0 2.8

〔注〕 輸出は再輸出を除いた数値。
アジア大洋州は、ASEAN+ 6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕カナダ統計局

通商政策

米国トランプ政権の通商政策に対抗措置を講じるカナダ

2025年のカナダの通商政策は、米国トランプ政権の関税措置への対策と非米国市場との関係強化に主軸を置いた。米国による追加関税への対応として報復措置を講じる一方で、非米国市場に対しては、自由貿易協定網の拡張を進めた。

2025年1月20日に第2次トランプ政権が発足して以降、米国との関係は一変した。カナダ政府は、トランプ政権が2月以降、矢継ぎ早に発動する追加関税措置に対し、報復措置を講じる方針を採った。州レベルでも、米国からの輸入品に対する報復措置を採り、対立が深刻化した。同年3月に退任したジャスティン・トルドー首相を引き継いだマーク・カーニー首相はこうした事態を踏まえ、8月、米国との新たな貿易・安全保障関係に関する声明を発表し、9月1日付で300億Cドル相当のカナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)対象品目への報復関税措置を撤廃する方針を示した。米国による関税下であっても、カナダから米国に輸出される品目の85%が無税だったことを撤廃の理由として挙げている。一方で、232条関税に対する報復措置は、同関税がカナダの鉄鋼・アルミや自動車産業に大きな打撃を与えていることを背景に維持した。

米国依存からの脱却を目的に非米国市場との関係拡大に移行

2024年時点で貿易額の75%超を米国に依存していたカナダだが、トランプ政権との関係悪化に伴い、米国への貿易依存からの脱却を図るべく、通商政策の重点を非米国市場との関係拡大に移行させた。とりわけ2022年11月から進めているインド太平洋戦略を基盤に、同地域との経済連携の推進を目指し、二国間・多国間の双方で枠組み整備が具体化した。カーニー首相が2026年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において、「中堅国(ミドルパワー)は協力しなければならない。我々が(交渉)テーブルに付いていなければ、我々はメニュー(食べられる側)に載ることになる」と述べ、大国に頼るのではなく、ミドルパワー同士での協力が重要だと世界に問いかけたことは、カナダの対米政策の転換を伝える機会となった。

米国依存からの脱却を図る象徴的な動きとして、2026年1月のカーニー首相の訪中が挙げられる。2018年12月に米国の要請に応じ、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)を逮捕して以降、悪化していた対中関係は、カナダが米国の対中追加関税措置に足並みをそろえる姿勢をとったことで一層悪化していた。1月の中国の習近平国家主席との会談を経て発表された共同声明と両国の新たな戦略的パートナーシップでは、関係強化のため、貿易障壁の撤廃と関税削減のための画期的な措置を含む予備的な原則合意がまとめられた。カナダが100%の関税を課していた中国製EVに関しては、年間4万9,000台の国別割当てを提供し、最恵国待遇(MFN)税率6.1%を定めた。また、鉄鋼・アルミに関しても、カナダ国内で供給が不足している特定の中国製鉄鋼・アルミ製品に対し、2026年末まで従来の減免措置の延長と免除範囲の拡大を発表した。中国からは、カナダに対する報復関税品目のうち(菜種油の原料となる)カナダ産キャノーラ種子の税率を現在の合計関税水準84%から約15%に引き下げるとした。キャノーラ種子以外の品目については、中国による報復的関税の対象外とするとしている。カナダはまた、この関係を強化するため、2030年までに中国への輸出を50%増やすという新たな目標を設定した。

また、2023年にカナダ国籍のシーク教徒指導者がバンクーバー近郊で殺害されたことを発端に関係が冷え込んでいたインドとの関係修復も図られた。初めてインドを公式訪問したカーニー首相は2026年3月にインドのナレンドラ・モディ首相と首脳会談を行い、両国の関係強化の重要性を確認した。前年11月に開かれたG20サミットで包括的経済連携協定(CEPA)の交渉を再開することに合意しており、2026年内のCEPA締結を目標として交渉を行う方針が示された。

その他、カナダの二国間交渉における成果として、2025年9月に署名されたインドネシアとのCEPAが挙げられる。同CEPAはカナダにとって初のASEAN諸国との二国間貿易協定として位置付けられる。同CEPAは物品・サービス・投資などを含む26章で構成され、関税撤廃、非関税障壁の削減などのほか、投資、経済および技術協力などの整備を含む、広範な制度的枠組みを構築するものだ。カナダからインドネシアに輸出する品目については、冷凍牛肉、小麦、ジャガイモ、海産物、加工食品など関税品目ベースで約85.5%、約9,764品目の関税が撤廃あるいは削減されるとした。対して、インドネシアからカナダに輸出される品目は、関税品目ベースで約90%の約6,573品目が優遇措置を受ける。

また、カーニー首相とプラボウォ・スビアント大統領は、カナダ輸出開発省(EDC)とインドネシア投資庁(INA)との間で新たなマーケットリーダー・パートナーシップ協定を発表した。同パートナーシップの下、EDCはINAに対して最大8億2,500万Cドルの債務資金を提供し、インフラ、デジタルサービス、再生可能エネルギー、先進製造業などインドネシア全土の優先セクターにおいて、カナダの輸出業者などに新たなビジネス機会を創出するために協力して取り組むとしている。

さらに、オーストラリアとも、両国が重要鉱物や希土類金属(レアアース)を保有し、志を同じくする生産国であるとして、重要鉱物協力に関する共同意思表明(JDI)を締結し、重要鉱物に関するイノベーション、ルールに基づく貿易、投資、協力を促進することに前向きな姿勢を見せている。

多国間枠組みの面では、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を軸としたルール形成への関与を強化している。カナダは2024年の議長国として協定の一般見直しを主導し、2025年にかけては電子商取引、金融サービス、サプライチェーン強靱化などの分野で制度更新に向けた議論を展開した。さらに、新規加盟国の受け入れ(拡大プロセス)を推進し、協定の地理的拡張と経済圏の拡大を進めた。

2025年は、これらの国・地域以外にも、カーニー首相を筆頭に、大臣らが積極的な外遊を重ね、ミドルパワー国家同士の協力構築を数多く発表した。

対内・対外直接投資

対内直接投資は前年比増も、多くの業種で増減著しく

2025年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー。対外も同様)は、前年比2.2%増の936億Cドルだった。米国からは1.1%増で、米国からのその他投資が約2.3倍と、金額の増加に寄与した。一方、米国からのM&Aは18.6%減、再投資収益は2.4%減と低調だった。米国以外からは、M&Aが68.4%増、再投資収益が55.4%増となったものの、その他の投資が72.4%減となり、全体では3.8%増の409億Cドルにとどまった。業種別では2024年は好調だったエネルギー・鉱業が43.6%減の96億Cドル、製造業が74.1%減の112億Cドルといずれも前年を大幅に下回った。一方、金融・保険は約6.8倍の111億Cドル、持ち株会社は約31倍の145億Cドルだった。

対内直接投資残高は、前年比6.9%増の1兆6,005億Cドルとなった。2024年に続いて最大の投資元は米国で、7.9%増で全体の46.1%を占めた。次いで構成比の大きい欧州は、英国(17.3%増) やルクセンブルク(8.4%増)、オランダ(3.5%増)などが押し上げ、欧州全体では6.6%増と堅調だった。中南米・カリブ諸国は同地域の構成比最大のバミューダ諸島が0.5%減となったが、ケイマン諸島が79.8%増と大幅に増加し、地域全体では14.6%増となった。アジア大洋州は5.3%増で、前年に続いて同地域の1位から6位までの全主要国・地域で増加した。

2025年以降に実施または発表された対内直接投資の大型案件としては、米国のエネルギー企業スノコLP(Sunoco LP)がカナダのエネルギー企業パークランドコーポレーション(Parkland Corporation)を91億ドルで買収した(2025年10月完了)。スノコLPは買収後も、パークランドコーポレーションが計画していたカナダでのエネルギーインフラの拡張やブリティッシュコロンビア(BC)州のバーナビー製油所への投資を継続するとしている。

アラブ首長国連邦(UAE)の資産運用会社ムバダラ・キャピタル(Mubadala Capital)は、カナダの資産運用会社CIファイナンシャル(CI Financial)を121億Cドルで買収した(2025年8月完了)。また、米国の投資ファンドアポロ(Apollo)の運用ファンドおよび投資ファンドBCパートナーズ(BC Partners)は、GFLエンバイロメンタル(GFL Environmental)が運営する環境サービス事業を80億ドルで買収することを発表した(2025年1月)。

グリーンフィールド投資では、マイクロソフト(Microsoft)が、2026年から2年間で75億Cドルを投資し、カナダ国内に新たなデジタル・AI関連インフラを構築すると発表した(2025年12月)。ノルウェーの人造黒鉛メーカーのビアノード(Vianode)は、オンタリオ州に低炭素人造黒鉛負極材の大量生産を行う施設を建設すると発表した(2025年10月)。同事業は数十億Cドル規模の投資になる見通しで、初期段階として20億Cドル超の投資を行うとしている。スイスの重電大手のABBは、1億3,000万Cドルを投資し、ケベック州モントリオールに自動化とデジタル技術分野の新たな製造・研究開発施設を設立すると発表した(2025年8月)。また、日立エナジーは3,000万Cドルを投資し、オンタリオ州の変電設備の改修と新たな電力施設の運営を行うと発表した(2025年12月)。

対外直接投資はAI関連が牽引も、米国向けの減少が押し下げ

2025年の対外直接投資は、前年比40.3%減の762億Cドルだった。米国向けは57.9%の大幅減で276億Cドルだった。M&Aが大幅な引き揚げ超だったほか、その他投資も68.1%減で35億Cドルとなり、低調だった。再投資収益は、10.0%増の352億Cドルだった。米国以外は、21.9%減で486億Cドルだった。その他投資が大幅な引き揚げ超となり、全体を押し下げた。業種別では、製造業は28.1%増の99億Cドルと大きく伸びた。反対に、エネルギー・鉱業が41億Cドルの引き揚げ超と大きく落ち込んだほか、金融・保険は76.9%減、貿易・輸送は26.5%減を記録するなど、製造業を除く全ての業種で前年を下回った。

対外直接投資残高は、前年比2.8%増の2兆4,289億Cドルだった。全体の構成比で最大(52.3%)を占める北米は0.4%とわずかに増加したが、米国は0.8%減でメキシコが押し上げた。次いで構成比の大きい欧州は8.6%増で、域内の国別構成比が最大の英国は10.6%増、続くオランダが9.8%増、ルクセンブルクも0.3%増と主要国は軒並み堅調だった。アジア大洋州は域内の国・地域別構成比で最大のオーストラリア(3.6%増)やシンガポール(7.9%増)などが押し上げ、全体では7.4%増だった。中南米・カリブ諸国は1.1%増だった。

2025年以後に実施または発表された対外直接投資の大型案件として、カナダ最大の通信会社BCEが米国北西部を拠点とする通信プロバイダのジプリーファイバー(Ziply Fiber)を50億Cドルで買収した(2025年8月完了)。カナダのアパレル製造メーカーギルダン(Gildan)は、米国のアパレル大手ヘインズブランズ(Hanes Brands)を44億ドルで買収する最終合併契約を締結したと発表した(2025年8月)。カナダの電力会社キャピタルパワー(Capital Power)は、米国ペンシルベニア州およびオハイオ州の天然ガス発電施設2カ所の株式を22億ドルで取得すると発表した(2025年4月)。カナダの大手投資会社ブルックフィールド(Brookfield)は、英国の電気機器メーカーエヌベント(nVent)の熱管理事業を17億ドルで買収した(2025年1月完了)。

グリーンフィールド投資では、ブルックフィールドによる人工知能(AI)・データセンター関連投資が活発だった。同社は2025年2月、在フランスの同社子会社で欧州最大級のデータセンター企業の1つであるデータ4(Data4)を通じ、総額150億ユーロを投じて500メガワット(MW)超の容量を備える複数のデータセンターを建設するとともに、50億ユーロ規模のAI関連インフラを構築すると発表した。2025年6月には、スウェーデンで最大100億ドルの投資を行い、既存のデータセンターを750MW規模に拡張すると発表した。さらに、同社の子会社であるDCIデータセンターズ(DCI Data Centers)は2025年8月、韓国において40MWのハイパースケール・データセンターを建設すると発表した。カナダの鉱山会社Gマイニングベンチャー(G Mining Ventures)は2025年10月、ガイアナ協同共和国に所有するオコウエスト(Oko West)鉱山での金採掘プロジェクトの開始を決定した。本プロジェクトにおける初期投資費用は9億7,300万ドルで、2026年4月に同社が買収したガイアナの鉱山開発企業G2ゴールドフィールズ(G2 Goldfields)が所有していたオコガニー(Oko-Ghanie)プロジェクトと合わせて、平均500キロオンス(約1万4,715キログラム)超の金の生産が可能となる。カナダのエネルギー貯蔵システム開発会社のハイドロスター(Hydrostor)は2025年12月、米国カリフォルニア州エネルギー委員会から、圧縮空気エネルギー貯蔵施設(A-CAES)プロジェクトの承認を受け、2026年2月に米国の電力会社カリフォルニア・コミュニティ・パワー(California Community Power)と50MWのオフテイク契約を締結した。

表4 カナダの対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万カナダ・ドル、%)(△はマイナス値)
国・投資形態別業種別 対内直接投資 対外直接投資
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
国別 米国 M&A 30,899 25,156 △ 18.6 22,688 △ 11,064 △ 148.8
再投資収益 16,259 15,861 △ 2.4 32,022 35,214 10.0
その他投資 4,980 11,694 134.8 10,824 3,454 △ 68.1
52,137 52,711 1.1 65,535 27,603 △ 57.9
米国以外 M&A 10,977 18,482 68.4 19,687 8,090 △ 58.9
再投資収益 11,413 17,741 55.4 37,254 45,166 21.2
その他投資 17,052 4,704 △ 72.4 5,308 △ 4,610 △ 186.9
39,442 40,927 3.8 62,247 48,645 △ 21.9
業種別 エネルギー・鉱業 17,087 9,632 △ 43.6 5,677 △ 4,073 △ 171.7
製造業 43,147 11,192 △ 74.1 7,762 9,944 28.1
貿易・輸送 11,497 23,643 105.6 33,318 24,484 △ 26.5
金融・保険 1,628 11,129 583.6 38,840 8,959 △ 76.9
持ち株会社 469 14,519 2,995.7 25,013 21,539 △ 13.9
その他 17,751 23,524 32.5 17,173 15,396 △ 10.3
合計 91,578 93,638 2.2 127,783 76,248 △ 40.3

〔出所〕 カナダ統計局

表5 カナダの主要国・地域別対内・対外直接投資残高〔国際収支ベース、ストック〕(単位:100万カナダ・ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕中南米地域の分類はカナダ統計局、中東地域の分類は日本外務省に基づく。
国・地域 対内直接投資残高 対外直接投資残高
2024年末 2025年末 2024年末 2025年末
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
北米 686,088 739,749 46.2 7.8 1,264,099 1,269,387 52.3 0.4
米国 683,626 737,307 46.1 7.9 1,212,601 1,203,419 49.5 △ 0.8
メキシコ 2,463 2,444 0.2 △ 0.8 51,497 65,968 2.7 28.1
中南米・カリブ諸国 46,010 52,738 3.3 14.6 446,745 451,822 18.6 1.1
バミューダ諸島 26,062 25,931 1.6 △ 0.5 138,404 141,033 5.8 1.9
ケイマン諸島 6,787 12,201 0.8 79.8 80,053 79,684 3.3 △ 0.5
英国領バージン諸島 8,399 8,656 0.5 3.1 13,999 14,132 0.6 1.0
欧州 496,771 529,527 33.1 6.6 469,676 510,288 21.0 8.6
オランダ 176,715 182,866 11.4 3.5 82,833 90,955 3.7 9.8
英国 92,156 108,071 6.8 17.3 127,890 141,467 5.8 10.6
ルクセンブルク 70,337 76,229 4.8 8.4 107,582 107,950 4.4 0.3
スイス 44,962 44,186 2.8 △ 1.7 17,515 20,313 0.8 16.0
フランス 28,978 30,362 1.9 4.8 13,471 14,095 0.6 4.6
ドイツ 25,272 26,247 1.6 3.9 17,129 22,280 0.9 30.1
アイルランド 10,759 11,294 0.7 5.0 22,153 26,056 1.1 17.6
アジア大洋州 174,431 183,657 11.5 5.3 159,889 171,789 7.1 7.4
日本 45,825 46,688 2.9 1.9 5,351 5,840 0.2 9.1
香港 38,586 39,323 2.5 1.9 27,211 26,604 1.1 △ 2.2
オーストラリア 32,936 36,431 2.3 10.6 48,406 50,130 2.1 3.6
中国 23,853 24,639 1.5 3.3 13,370 15,040 0.6 12.5
韓国 12,685 14,421 0.9 13.7 2,657 3,790 0.2 42.6
シンガポール 8,908 10,281 0.6 15.4 32,119 34,660 1.4 7.9
中東 18,357 18,948 1.2 3.2 6,776 7,005 0.3 3.4
UAE 6,494 6,704 0.4 3.2 687 767 0.0 11.6
イスラエル 6,270 6,621 0.4 5.6 1,833 2,766 0.1 50.9
アフリカ 384 376 0.0 △ 2.1 15,675 18,428 0.8 17.6
世界 1,497,518 1,600,470 100.0 6.9 2,363,041 2,428,900 100.0 2.8

〔注〕中南米地域の分類はカナダ統計局、中東地域の分類は日本外務省に基づく。

〔出所〕カナダ統計局

対日関係

輸出・輸入ともに減少、輸出は資源価格の下落が主因に

2025年の対日財貿易は、輸出が前年比2.8%減の146億Cドル、輸入は1.3%減の211億Cドルだった。これにより、対日貿易収支は65億Cドルの赤字となった。

輸出では、輸出量が大幅に増加した菜種(1205項)が75.2%増、豚肉(0203項)が20.6%増と押し上げに大きく貢献したものの、主力品目である資源の輸出が伸びず、全体では輸出減となった。資源価格下落の影響で、鉱物性燃料(27類、構成比18.7%)のうち、石炭(2701類)が34.7%減の17億Cドルとなったほか、鉱石(26類、構成比12.9%)のうち、鉄鉱(2601類)が25.0%減で大きな押し下げ要因だった。また、輸出量が減少した銅鉱(2603類)も22.6%減で、資源輸出の減少要因となった。

輸入では、最大の輸入品目である自動車・同部品等(87類、構成比48.8%)が4.0%増で押し上げに貢献したが、電子機器(85類、構成比6.7%)は16.0%減だったほか、金(7108項、99.2%減)の輸入が激減し、全体で減少した。

表6 カナダの対日主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万カナダ・ドル、%)(△はマイナス値)
項目 (HSコード、2桁) 輸出(FOB) 輸入(FOB)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
動物性および植物性生産品 (01-14) 4,593 5,494 37.7 19.6 97 131 0.6 35.2
鉱物性生産品 (25-27) 6,447 4,603 31.6 △ 28.6 30 87 0.4 193.3
化学工業生産品 (28-38) 961 1,047 7.2 8.9 798 956 4.5 19.9
木材など (44-46) 849 883 6.1 4.0 3 2 0.0 △ 8.7
卑金属 (72-83) 296 428 2.9 44.6 976 1,096 5.2 12.3
一般機械 (84) 298 332 2.3 11.4 4,377 4,392 20.8 0.4
食料品、飲料など (16-24) 266 319 2.2 19.8 128 151 0.7 18.2
精密機器など (90-92) 255 289 2.0 13.5 795 819 3.9 3.1
航空機・同部品 (88) 220 232 1.6 5.5 134 154 0.7 15.3
パルプなど (47-49) 231 231 1.6 0.1 43 63 0.3 46.3
電気機器 (85) 201 202 1.4 0.9 1,668 1,402 6.7 △ 15.9
自動車・同部品等 (87) 39 56 0.4 43.7 9,887 10,284 48.8 4.0
プラスチック・ゴム (39、40) 48 52 0.4 9.1 762 806 3.8 5.7
繊維および関連製品 (50-63) 75 47 0.3 △ 37.0 78 84 0.4 8.0
家具・玩具など (94-96) 24 32 0.2 32.9 212 331 1.6 56.5
その他 (上記以外) 188 323 2.2 72.0 1,353 310 1.5 △ 77.1
合計 14,991 14,571 100.0 △ 2.8 21,339 21,069 100.0 △ 1.3

〔出所〕カナダ統計局

日本からの直接投資残高は、エネルギー中心に上昇基調継続

2025年末の日本からの対カナダ直接投資残高は、前年比1.9%増の467億Cドルだった。2025年は、国際情勢の変化に伴う、経済安全保障リスクの高まりを背景に、エネルギー・資源分野での投資が目立った。日本製鉄は、カナダのチャンピオン・アイアン(Champion Iron:CI)および双日と、ニューファンドランド・ラブラドール州のカミスティアチュセット鉱山の開発・操業を行う合弁会社を設立し、同鉱山の権益対価1億5,000万Cドルのうち4,200万Cドルを支払うことで同合弁会社の持分の30%を取得した(2025年9月)。権益対価の残額1億800万Cドルは、フィージビリティ・スタディの結果を踏まえ、支払うとしている。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、カナダのFPXと、ニューファンドランド・ラブラドール州で、アワルワ鉱を対象とするニッケル共同探鉱を実施する契約を締結した(2025年7月)。調査費用として今後3年間で163万5,000Cドルを拠出し、探鉱を実施する地域の権益48%を取得するオプション権を得るとしている。東京ガスは、カナダで合成メタン(e-methane)の事業開発を推進するテラルタ・ハイドロジェン・ソリューションズ(Teralta Hydrogen Solutions)と、マニトバ州における合成メタン事業の開発プロジェクトに関する合意書を締結した(2025年12月発表)。同社は、水力発電由来の電力に基づく副生グリーン水素を利用し、2030年度までに年間約3万トンの合成メタンの製造を目指す。

その他の分野では、積水化学工業は鉄骨モジュラーの設計・製造を行う新会社を設立した(2025年11月)。今後同社は、オンタリオ州に鉄骨モジュラー製造工場を立ち上げ、モジュラーの設計・製造・販売体制の構築を目指す。カナダでは、住宅不足や住宅価格・家賃の高騰が社会問題化しており、建設工期の短いモジュラー建築は住宅供給量を迅速に拡大する手段として注目が集まっている。日立エナジーは、1億9,500万ドルを投じ、ケベック州の大型変圧器工場を拡張すると発表した(2025年9月)。同工場の年間製造能力を約3倍に拡大し、約500人の新規雇用を見込む。三井物産は、コンドミニアム居住者向けの電気自動車(EV)シェアリングサービスを展開するカイトモビリティ(Kite Mobility)への出資を発表した(2025年10月)。

カナダから日本への直接投資残高は、9.1%増の58億Cドルだった。グリーンフィールド投資では、AIを活用し、エネルギーの最適化を図るソフトウェアを開発するブルーウェーブai(BluWave-ai)が日本に子会社を設立すると発表した(2025年4月)。リチウムイオンバッテリーの技術開発と製造を行うエレクトロバヤ(electrovaya)も、子会社の設立を発表し、顧客支援や技術連携、事業開発を行う予定としている(2025年10月)。高純度アルミナを生産するアドバンスド・エナジー・ミネラルズ(Advanced Energy Minerals)は、日本法人を設立し、顧客へのサービスを開始すると発表した(2025年3月)。

日本の重要性を強調し、両国関係を強化

カナダが米国依存からの脱却を進めるうえで、日本はカナダにとって特に重要な立ち位置を占める。2025年6月、G7カナナスキス首脳会議のためカナダを訪問した石破茂首相(当時)とカーニー首相が会談を行い、日加戦略的パートナーシップの強化を歓迎した。また、両首脳は、LNGカナダや日本企業が関与する小規模モジュール式原子炉プロジェクトでの進展を歓迎したほか、バッテリーや重要鉱物を含むさまざまな分野での両国間の協力の可能性についても議論した。

ちなみに、G7では地政学的緊張の高まり、経済不安、気候変動による自然災害の頻発といった課題を踏まえ、「地域社会と世界の保護」「エネルギー安全保障の構築とデジタル移行の加速」「経済連携の確保」の3分野が優先課題として議論された。各国・地域から協調的な姿勢が示され、6項目の共同声明に至り、そのうちの1つである「重要鉱物に関する共同声明」ではカナダ主導で新たに重要鉱物生産同盟(Critical Minerals Production Alliance)を立ち上げることが発表された。

また、カーニー首相は2026年3月、高市早苗首相と会談し、2025年のG7での首脳会談で語られた「日本・カナダ包括的戦略的パートナーシップ」の創設および日本をカナダの包括的戦略的パートナーとして格上げし、さらなる関係強化を行うことを発表した。同パートナーシップを通じ、両国は首脳や大臣間の定期的な相互訪問を含むあらゆるレベルでの交流を強化する。さらに、同パートナーシップを実践的に生かすため、「日本・カナダ包括的戦略的ロードマップ」を策定し、今後の協力の具体的な方向性として(1)安全保障・防衛協力の強化、(2)経済安全保障、サプライチェーンおよび技術的強靭(きょうじん)性、(3)貿易・投資、(4)エネルギー安全保障および食料安全保障、(5)北極、環境、気候変動協力、(6)人的交流、学術・文化交流、の6点を発表した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 2.0 2.0 1.7
1人当たりGDP (米ドル) 55,002 55,209 55,765
消費者物価上昇率 (%) 3.9 2.4 2.1
失業率 (%) 5.4 6.3 6.8
貿易収支 (100万カナダ・ドル) △ 933 △ 7,174 △ 31,101
経常収支 (100万カナダ・ドル) △ 20,429 △ 14,974 △ 30,407
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 117,551 119,778 125,627
対外債務残高(グロス) (100万カナダ・ドル) 7,426,752 8,415,478 9,601,488
為替レート (1米ドルにつき、カナダ・ドル、期中平均) 1.35 1.37 1.40

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):カナダ統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF