オランダの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は1.1%と緩やかな回復傾向
  • 輸出入共に減少したが、貿易黒字は史上最高額を更新
  • 対内・対外直接投資は引き揚げ超過幅が縮小、安定化に向かう
  • 2024年の対日貿易は前年比で往復ともに減少も、直接投資は双方向で大幅増

公開日:2025年9月22日

マクロ経済 
2024年第2四半期から緩やかな回復傾向

オランダ経済は、新型コロナ禍から急回復した2022年の実質GDP成長率5.0%から、2023年の反動減のマイナス成長(マイナス0.6%)を経て、2024年は安定感を取り戻し、実質GDP成長率は1.1%となった。2024年の経済を牽引したのは消費支出で、政府最終消費支出が3.6%増、民間最終消費支出が1.1%となり、官民消費とも成長した。

オランダ国立銀行(De Nederlandsche Bank、以下中銀)は2025年6月、同年のオランダの実質経済成長率を1.1%、消費者物価上昇率を3.0%と予測している。いずれも前年並みの水準であるが、経済成長については各国の関税措置の影響に左右され、インフレ圧力は景気と賃金上昇の鈍化でやや緩和されると中銀では見込んでいる。

表1 オランダの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 5.0 △ 0.6 1.1 △ 0.3 0.9 1.7 2.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 6.9 0.7 1.1 1.5 0.3 1.6 1.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.3 2.8 3.6 3.9 4.2 3.1 3.1
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 3.4 1.5 △ 0.4 △ 4.7 △ 2.2 △ 0.3 6.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 4.4 △ 3.0 △ 0.2 △ 4.4 △ 0.6 2.7 1.7
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 4.4 △ 3.9 0.1 △ 4.8 △ 0.4 3.8 1.9

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS) (2025年7月30日時点)

貿易 
輸出入共に減少したが、貿易黒字は史上最高額を更新

2024年の貿易(国際収支ベース)は、輸出が前年比2.7%減の8,117億8,200万ユーロ、輸入は3.5%減の6,778億7,900万ユーロと、輸出入ともに2022年のピークから2年連続で減少した。貿易収支は1,339億300万ユーロの黒字で、前年の1,318億700万ユーロを上回り史上最高額を更新した。輸出の40.4%を占める再輸出は0.6%減の3,282億9,900万ユーロ、同じく輸出の59.6%を占めるオランダ原産品の輸出額は4.0%減の4,834億8,300万ユーロとなった。

2024年の輸出を品目別にみると、最大の機械類・輸送用機器(構成比22.0%)が前年比2.5%減、鉱物性燃料(11.3%)が18.2%減と低調だったものの、食料品・動物(11.2%)が6.9%増、化学製品(13.1%)が3.4%増と好調だった。北部フローニンゲンの天然ガス田が、採掘に伴い頻発した地震を理由に2024年10月に完全閉鎖されたことも影響し、重要輸出品である鉱物性燃料は2年連続の大幅減となった。一方、伸び率が高かった品目では、化学製品のうち医薬品(4.4%)が16.4%増、雑製品(10.3%)のうち衣類(1.7%)が8.7%増、食料品・動物(11.2%)のうち果実および野菜(3.1%)が5.4%増、酪農製品および鳥卵(1.6%)が5.2%増となった。

次に2024年の国・地域別輸出額をみると、全体の57.7%を占めるEUは前年比2.4%減だった。過去10年間でEU向けの輸出額は52.4%増加した。2024年は、最大の輸出先であるドイツ(構成比19.3%)向けが同国経済の停滞により4.7%減と引き続き不振だったことが、対EU輸出の減少に影響した。その他、2位ベルギー(9.4%)は1.1%増とわずかに増加したものの、3位フランス(7.0%)の5.3%減、4位イタリア(3.7%)の5.4%減と、主要相手国向けの輸出は2年連続で減少した。一方、ポーランド(2.8%)は7.1%増、ルーマニア(0.6%)は7.3%増など東欧の一部の国では輸出が増加した。

最大の仕向け先であるドイツの主要品目別動向をみると、2023年に続き最も輸出額が大きい鉱物性燃料・潤滑油・その他(構成比19.1%)が前年比21.7%減と大きく減少したほか、機械類・輸送用機器(18.3%)が7.2%減、化学製品(13.6%)が1.5%減となった。その他製造品(11.5%)が11.5%増、食料品・動物(14.6%)が9.4%増など一部で増加したものの、全体では鉱物性燃料の大幅減が響きマイナスとなった。増加が顕著な品目としては、カカオ(1.0%、2.4倍)、靴(1.3%、79.8%増)、医薬品(4.3%、18.3%増)などがある。

EU域外向け輸出では、2024年は英国(構成比5.9%)が前年比14.0%減と大幅に減少して2位となり、米国(6.5%)が2.8%増で1位となった。米国向け輸出は新型コロナ禍に見舞われた2020年を除くと過去10年連続で増加している。品目別に見ると、米国向けは、最も輸出額が大きい機械類・輸送用機器(26.1%)が5.1%増、2位の化学製品(15.6%)が42.0%増、3位の鉱物性燃料・潤滑油・その他(8.4%)が3.6%増、4位のその他製造品(8.1%)が18.6%増と軒並み増加した。主要品目が順調に増加したものの、米国による関税政策の影響で2025年は輸送機器、化学製品などへのマイナスの影響が懸念される。

再輸出について2024年の国・地域別割合をみると全体の78.2%がEU向けで、最も多いのはドイツで26.9%、2位はベルギーで13.0%、3位はフランスで9.7%と近隣3カ国のみでほぼ5割に達する。これら3カ国およびイタリア、英国などの主要相手国向けでは2022年のピークから減少傾向となっている一方、スペイン、ポーランド、米国向けなどでは輸出全体の伸びと同様に過去10年で増加基調が続いている。

輸入総額は減少も、データ処理機器や乗用車、医薬品等は増加

2024年の輸入を品目別にみると、最大の機械類・輸送用機器(構成比22.9%)は前年比0.4%増とプラスに転じた。特に自動式データ処理機械(2.5%)が34.0%と大幅増となったほか、乗用自動車(2.0%)が8.1%増加した。化学製品(10.8%)も医薬品(3.5%)が11.9%増加し2.7%増となった。食料品・動物(8.4%)も6.0%増となったが、中でもコーヒー、茶、カカオ、スパイス等(1.2%)が、生産国における干ばつや洪水、投機的取引による国際価格の大幅上昇を背景に、前年比で35.3%増と急増した。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により高騰していた国際的な天然ガス価格が前年までと比べ低水準で推移したことを受けて、天然ガス・製造ガス(2.6%)は前年から急減(54.7%減)した。その影響もあり鉱物性燃料(13.4%)が24.4%減となり、輸入全体を押し下げた。

輸入を国・地域別にみると、全体の45.9%を占めるEUが2023年比で1.5%減となった。最大の輸入元であるドイツ(構成比17.5%)が0.7%減だったほか、2位ベルギー(8.1%)が2.2%減、3位フランス(3.7%)が0.1%減、4位ポーランド(2.3%)が4.1%減、5位イタリア(2.2%)が5.2%減と主要相手国が軒並み減少となった。EU域外についても、上位国の米国(10.3%)が11.0%減、中国(7.9%)が6.0%減、英国(4.1%)が17.2%減と、いずれも減少した。

ドイツからの主要品目別輸入については、最大の機械類・輸送用機器(構成比27.1%)が、電子機器(5.1%)の13.9%減、一般産業機械(3.8%)の5.8%減、原動機(1.1%)の28.7%減が響き前年比で5.4%減となった。このほか、その他の加工品(9.2%)が7.1%減、化学製品(13.8%)が1.6%減、鉱物性燃料・潤滑油・その他(4.9%)が22.7%減となり、輸入全体の減少につながった。

米国とは、機械類・輸送用機器(構成比19.0%)が前年比16.3%増、化学製品(12.0%)が8.7%増であったが、最大の輸入品目である鉱物性燃料・潤滑油・その他(21.6%)が、天然ガス(7.5%)の50.5%減、石油・石油製品(13.5%)の13.9%減などで31.5%減と大きく落ち込み、輸入全体も2桁の減少となった。

中国からは最大の輸入品目である機械類・輸送用機器(構成比46.1%)が前年比2.7%増となったほか、その他の加工品(20.9%)が13.2%増、工業製品(原料別製品)(8.3%)が14.2%増、化学製品(7.3%)が3.0%増となるなど、主要品目で大幅な増加となった。一方で、製品はオランダ国境を入境していないがオランダ企業が取引を管理・仲介している貿易を指す「Not physically in the Netherlands」(13.6%)が43.6%の大幅減となり、同国からの輸入全体の減少につながった。

ロシア(構成比0.5%)からの輸入は前年比47.4%減となった。ウクライナ侵攻以降の経済制裁とEUによるロシア産化石燃料依存の見直し、再生可能エネルギーへの移行の影響を受けて、鉱物性燃料・潤滑油・その他(46.8%)の輸入が65.5%減と2年連続で大幅に減少したことが大きく影響した。

表2 オランダの主要品目別輸出入[国際収支ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
項目 輸出 輸入
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 183,128 178,462 22.0 △ 2.5 154,568 155,122 22.9 0.4
化学製品 102,774 106,235 13.1 3.4 71,170 73,122 10.8 2.7
鉱物性燃料・潤滑油・その他 112,295 91,822 11.3 △ 18.2 120,163 90,829 13.4 △ 24.4
食料品・動物 85,254 91,097 11.2 6.9 53,402 56,621 8.4 6.0
雑製品 77,884 83,701 10.3 7.5 73,447 79,252 11.7 7.9
工業製品(原料別製品) 48,570 48,594 6.0 0.0 49,941 48,041 7.1 △ 3.8
原材料 27,167 27,186 3.3 0.1 15,886 15,822 2.3 △ 0.4
飲料・たばこ 6,707 6,842 0.8 2.0 4,899 4,917 0.7 0.4
動植物性油脂 5,727 5,462 0.7 △ 4.6 6,972 6,930 1.0 △ 0.6
合計(その他含む) 833,988 811,782 100.0 △ 2.7 702,181 677,879 100.0 △ 3.5

〔注〕2023、2024年ともに暫定値。再輸出を含む総額。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS) (2025年7月30日時点)

表3 オランダの主要国・地域別輸出入<国際収支ベース>(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出 輸入
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
欧州 554,481 534,020 65.8 △ 3.7 371,368 356,917 52.7 △ 3.9
階層レベル2の項目EU 480,324 468,687 57.7 △ 2.4 315,440 310,854 45.9 △ 1.5
階層レベル3の項目ドイツ 164,116 156,472 19.3 △ 4.7 119,344 118,551 17.5 △ 0.7
階層レベル3の項目ベルギー 75,511 76,375 9.4 1.1 55,897 54,686 8.1 △ 2.2
階層レベル3の項目フランス 59,974 56,815 7.0 △ 5.3 24,897 24,872 3.7 △ 0.1
階層レベル3の項目イタリア 31,985 30,252 3.7 △ 5.4 15,787 14,969 2.2 △ 5.2
階層レベル3の項目スペイン 28,075 28,217 3.5 0.5 14,390 14,655 2.2 1.8
階層レベル3の項目ポーランド 21,018 22,517 2.8 7.1 16,555 15,876 2.3 △ 4.1
階層レベル2の項目英国 55,938 48,098 5.9 △ 14.0 33,162 27,473 4.1 △ 17.2
階層レベル2の項目スイス 11,934 11,578 1.4 △ 3.0 6,115 7,224 1.1 18.1
階層レベル2の項目ノルウェー 8,154 7,555 0.9 △ 7.3 18,846 13,215 1.9 △ 29.9
階層レベル2の項目ロシア 2,491 2,973 0.4 19.3 6,158 3,239 0.5 △ 47.4
アジア・大洋州 93,158 89,517 11.0 △ 3.9 123,707 127,200 18.8 2.8
階層レベル2の項目中国 32,539 29,982 3.7 △ 7.9 56,625 53,254 7.9 △ 6.0
階層レベル2の項目ASEAN 15,355 15,309 1.9 △ 0.3 33,085 39,299 5.8 18.8
階層レベル2の項目韓国 11,245 10,846 1.3 △ 3.5 4,193 4,281 0.6 2.1
階層レベル2の項目台湾 9,298 7,719 1.0 △ 17.0 7,000 7,144 1.1 2.1
階層レベル2の項目日本 7,058 6,296 0.8 △ 10.8 8,687 7,724 1.1 △ 11.1
北米 58,578 62,829 7.7 7.3 86,413 77,089 11.4 △ 10.8
階層レベル2の項目米国 51,235 52,694 6.5 2.8 78,388 69,728 10.3 △ 11.0
中南米 28,054 35,338 4.4 26.0 46,266 46,881 6.9 1.3
階層レベル2の項目ブラジル 15,850 14,451 1.8 △ 8.8 25,332 22,683 3.3 △ 10.5
アフリカ 20,412 15,579 1.9 △ 23.7 17,855 17,045 2.5 △ 4.5
合計(その他含む) 833,988 811,782 100.0 △ 2.7 702,181 677,879 100.0 △ 3.5

〔注〕2023、2024年ともに暫定値。再輸出を含む総額。アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS)

対内・対外直接投資 
対内直接投資は引き揚げ超過幅が縮小、安定化に期待

中銀によると、2024年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、163億1,000万ユーロの引き揚げ超過となった。前年の3,195億1,800万ユーロの大幅な引き揚げ超過から安定化に向かっている。

EU加盟国からの2024年の対内直接投資は、前年の1,229億8,900万ユーロの引き揚げの後、712億5,100万ユーロの流入となった。最大の投資国はアイルランドで、前年の325億4,800万ユーロの引き揚げ超過から431億8,800万ユーロの流入に転じた。次いでフランスが、前年の114億3,500万ユーロの引き揚げ超過から82億3,400万ユーロの流入となった。

EU加盟国以外の欧州諸国では、英国が前年の892億200万ユーロの大幅な引き揚げから143億4700万ユーロの流入に転じた。

2024年の最大の引き揚げ超過は米国で、超過幅は687億7,600万ユーロに上る。

中銀によると、オランダの開放経済は歴史的に導管国的役割を担っており、多国籍企業が他国への投資の中継地としてオランダを利用してきたが、年を追ってその役割が低下している。その結果が近年の引き上げ超過に繋がっていると中銀では分析している。背景には、OECDの「税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクト」の導入に伴い、多国籍企業に対する世界共通の最低法人税率15%課税、国内の源泉徴収税法の施行など、租税回避対策の強化に向けた国内外の様々なイニシアチブや措置があるとみられる。

表4 オランダの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 金額 金額
欧州 △ 184,758 70,738 △ 196,416 88,089
階層レベル2の項目EU △ 122,989 71,251 △ 96,633 92,285
階層レベル3の項目アイルランド △ 32,548 43,188 △ 39,575 34,007
階層レベル3の項目ドイツ △ 10,596 6,803 △ 17,975 1,648
階層レベル3の項目フランス △ 11,435 8,234 △ 1,748 11,395
階層レベル3の項目ベルギー △ 7,221 2,728 6,975 3,486
階層レベル3の項目オーストリア 1,763 4,021 1,716 924
階層レベル3の項目ポルトガル 1,176 2,796 △ 127 380
階層レベル3の項目スペイン △ 21,846 1,507 7,636 5,661
階層レベル3の項目スウェーデン 212 2,392 16 436
階層レベル3の項目ルクセンブルク △ 42,923 882 △ 47,452 16,792
階層レベル3の項目イタリア △ 370 2,763 1,309 △ 3,861
階層レベル3の項目デンマーク 768 220 △ 8,779 14,763
階層レベル2の項目英国 △ 89,202 14,347 △ 50,923 12,441
階層レベル2の項目スイス 26,114 △ 19,459 △ 42,359 △ 10,907
階層レベル2の項目ノルウェー △ 699 389 △ 583 △ 1,009
階層レベル2の項目ロシア △ 3,025 500 △ 9,136 △ 5,134
ブラジル 6,066 2,344 △ 1,428 13,891
中国 1,460 1,208 4,875 △ 10,752
日本 2,841 7,733 562 6,911
香港 △ 38,145 △ 18,427 6,989 △ 5,452
インド 633 1,051 △ 10 3,943
米国 △ 123,278 △ 68,776 △ 81,872 △ 44,237
オフショア金融センター 9,347 △ 40,821 △ 4,457 △ 38,395
合計(その他含む) △ 319,518 △ 16,310 △ 335,953 △ 6,126

〔注〕欧州、オフショア金融センターの構成国はIMFの定義に従う。
〔出所〕オランダ国立銀行(DNB)

対内直接投資案件(M&A以外)としては、データセンターおよびエネルギー分野への案件が多く発表されている。2024年4月発表の米国グーグル(Google)が6億ユーロを投資するデータセンター新設や、投資額が同じく6億ユーロと公表されているフランス企業トタルエナジーズ (TotalEnergies)とエアリキッド(Air Liquide)の協業による水素製造プロジェクトなどがある。

表5-1 オランダの主な対内直接投資案件(2024年~2025年3月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
データセンター グーグル(Google) 米国 2024年4月 6億ユーロ グーグルは、グローニンゲン市のウエストポート(Westpoort)工業団地に、同国で4番目となるデータセンターの建設開始を発表。
エネルギー(グリーン水素) トタルエナジーズ(TotalEnergies)、エアリキッド(Air Liquide) フランス 2025年2月 6億ユーロ トタルエナジーズは、2030年までにヨーロッパの製油所で使用する水素を完全に脱炭素化する目標の一環として、エアリキッドと提携し、主要プロジェクトをオランダで展開することを発表。本プロジェクトは、トタルエナジーズが開発したオランジェウィンド(OranjeWind)洋上風力発電所(RWEと共同開発)からの再生可能電力を活用して水素を製造する。
データセンター ドリームホスト(DreamHost) 米国 2025年2月 非公表 ドリームホストは、アムステルダムに初の国際データセンターを開設。これまで米国内に限定されていた物理的なデータホスティング拠点を海外に拡大。
再生可能エネルギー グリーンエナジー(Greenergy International) 英国 2024年1月 非公表 グリーンエナジーはアムステルダムにあるバイオディーゼル製造プラントの拡張開始を発表。欧州における廃棄物由来のバイオ燃料の需要増加を受けて、製造容量を25%拡大する。
エネルギー(低炭素水素) エクイノール(Equinor)、リンデ(Linde) ノルウェー(Equinor)
アイルランド(Linde)
2024年1月 非公表 エクイノールとリンデは、オランダ・エームスハーヴェン(Eemshaven)工業地域にて、天然ガスを原料とした低炭素水素製造施設「H2M Eemshaven」を共同開発することを発表。CO2回収・貯留(CCS)も併せて行う。2030年からの水素製造開始を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

M&A形態の対内直接投資では2024年、食品産業関連で大規模投資があった。ルクセンブルグのJABは、同年10月に米国モンデリーズ(Mondelez)が保有するオランダJDE ピート(JDE Peet)の株式を21億6,000万ユーロで買収することに合意。JABによるJDEピートの株式保有率は68%になる。投資が引き続き盛んな物流関連では、商船三井が2025年6月にタンクターミナル業界で世界大手のLBCタンクターミナルズ(LBC Tank Terminals)の株式100%取得を完了、ケミカル物流サービス体制を強化する。半導体産業では、シンガポールの投資会社テマセク(Temasek)と米国の投資会社ワルデン・カタリスト(Walden Catalyst)が2024年7月にオランダの半導体産業向けの検査機器開発企業ニアフィールド・インスツルメンツ(Nearfield Instruments)に1億3,500万ユーロを出資した。

表5-2 オランダの主な対内直接投資案件(2024年~2025年3月)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
エネルギー OCIクリーン・アンモニア・ホールディング(OCI Clean Ammonia Holding) ウッドサイド・エナジー (Woodside Energy Group) オーストラリア 2024年9月 23億5,000万ドル ウッドサイド・エナジーは、オランダのOCIクリーン・アンモニア・ホールディングの株式100%を取得し、同社が進める米国テキサス州での低炭素アンモニアプロジェクトを買収した。
食品(コーヒー)
Food (coffee)
JDEピート(JDE Peet) ジェーエービー (JAB) ルクセンブルク 2024年10月 21億6,000万ユーロ JAB(消費財、コーヒー等)は、2024年10月に米モンデリーズ(Mondelez、菓子、食品、飲料)が保有するオランダのJDE ピート(コーヒー・紅茶)の株式取得に合意したと発表。これにより、JABによるJDEピートの株式保有率は68%になる。
物流 (タンクターミナル) LBCタンクターミナルズ(LBC Tank Terminals) 商船三井 日本 2025年3月 17億1,500万ドル 商船三井(MOL)は、LBCタンクターミナルズ.の株式100%を取得することを発表。、2025年6月に完了した。LBCはケミカルの取り扱いにおいてタンクターミナル業界で世界大手。MOLは、ケミカルロジスティクス事業を今後成長が見込める戦略的事業領域としてに位置付けており、LBC買収により、海上輸送に加え、陸上保管も事業ポートフォリオに加え、ケミカル物流サービス体制を強化する。
半導体 ニアフィールド・インスツルメンツ(Nearfield Instruments) テマセク
(Temasek)
ワルデン・カタリスト
(Walden Catalyst)
シンガポール(テマセク)
米国(ワルデン・カタリスト)
2024年7月 1億3,500万ユーロ 2024年7月、シンガポールの投資会社テマセクと米国の投資会社ワルデン・カタリスト(WaldenCatalyst)は、オランダの半導体産業向けの検査機器開発企業ニアフィールド・インスツルメンツ(Nearfield Instruments)に1億3,500万ユーロを出資した。
ヘルスケア ルーシーヘルステック(Luscii healthtech) オムロン ヘルスケア 日本 2024年4月 非公表 オムロンヘルスケアは、オランダにある欧州統轄子会社のオムロンヘルスケア・ヨーロッパを通じてルーシーヘルステック(オランダ、医療ソフトウェア)を買収した。本買収により、欧州での遠隔診療サービス事業を強化し、オムロンヘルスケアが循環器事業のビジョンとして掲げる「脳・心血管疾患の発症ゼロ」の実現を加速する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

欧州向け投資はプラスに転じたが、対米投資は引き揚げ超過続く

オランダの対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の3,359億5,300万ユーロの大幅な引き揚げ超過から、2024年には61億2,600万ユーロへと引き揚げ幅が大きく縮小した。

2024年のオランダのEU加盟国向け対外直接投資額は、922億8,500万ユーロとなった。主要受入国は、アイルランド(340億700万ユーロ)、ルクセンブルク(167億9,200万ユーロ)、デンマーク(147億6,300万ユーロ)、フランス(113億9,500万ユーロ)の4カ国だった。

EU加盟国以外の主要な欧州諸国では、対英国直接投資が2023年の509億2,300万ユーロの引き揚げ超過から、2024年には124億4,100万ユーロの投資に転じた。

オランダの対米国直接投資は2024年も引き揚げ超過が続いている。2024年の引き揚げ額は前年の818億7,200万ユーロからほぼ半減の442億3,700万ユーロになったものの、2024年も米国はオランダの対外直接投資の最大の引き揚げ先となった。

対外直接投資案件(M&A以外)では、エネルギー関連での案件が活発で、パワーツーエックス(Power2X)は2024年9月にエストニアでのグリーンメタノール製造施設の建設計画を発表。ルイ・ドレフュス(Louis Dreyfus Compan)は、ブラジルで新たなバイオガス生産プラントの建設を2025年3月に開始した。その他、ステランティス(Stellantis)と中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)は2024年12月、スペインのサラゴサに大規模なリン酸鉄リチウムイオン(LPF)バッテリー工場を建設するための合弁事業に最大41億ユーロを投資すると発表している。

表6-1 オランダの主な対外直接投資案件(2024年~2025年3月)[M&A以外]
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
車載電池 ステランティス(Stellantis) スペイン 20204年12月 41億ユーロ ステランティスと中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は、スペインのサラゴサに大規模リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場を建設するための合弁事業に最大41億ユーロを投資すると発表。生産は2026年末までに開始される予定。
エネルギー パワーツーエックス(Power2X) エストニア 2024年9月 10億ユーロ Power2X(オランダのエネルギー転換プロジェクト開発企業)は、エストニア・ニイドゥ工業地域にて、グリーンメタノール製造施設の建設計画を発表。森林資源とグリーン水素(主に洋上風力由来)を原料とし、年間最大50万トンのグリーンメタノールを生産する予定。2028年の稼働開始を目指す。
半導体 ASML オランダ 2024年9月 非公表 ASMLは、2024年9月に北海道千歳市での拠点設立が報じられた。顧客であるラピダスが同年12月に日本で初めて導入するASMLの量産対応EUV(極端紫外線)露光装置の設置を支援する。
エネルギー ルイ・ドレフュス
(Louis Dreyfus Company(LDC))
ブラジル 2025年3月 非公表 ルイ・ドレフュス(LDC)は、ブラジル・ベベドゥーロに新たなバイオガス生産プラントの建設を開始した。柑橘類の廃棄物から1日あたり5万ノルマルリューベ(Nm3)のバイオガスを生産する能力を有する。建設は2026年半ばまでに完了する見込み。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 オランダの主な対外直接投資案件(2024年~2025年1月)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
アホールド・デレーズ(Ahold Delhaize) 小売店 プロフィ・ロム・フード(Profi Rom Food ) ルーマニア 2025年1月 13億ユーロ アホールド・デレーズが2025年1月にルーマニアで約1,700店舗を運営するプロフィ・ロム・フード(スーパーマーケットチェーン)を約13億ユーロで買収を完了。本買収により、アホールド・デレーズのルーマニアにおける小売店舗数は、現在メガ・イメージブランドで運営している約1,000店舗から倍増する。
APGグループ(APG Group) インフラ(高速道路運営) イティネレ・インフラストラクトゥラス(Itinere Infraestructuras) スペイン 2024年10月 非公開 APGグループ(オランダの年金資産運用会社)は2024年10月に、スペイン北部で5つの有料道路を運営するイティネレ・インフラストラクトゥラスの買収合意を発表。APGグループは6カ国で高速道路の運営権を保有し、スペインでは鉄道と高速鉄道の運営権も保有している。
ロイヤル・スウィンケルス(Royal Swinkels) アルコール飲料 ジョージア・キャピタル(Georgia Capital) ジョージア 2024年12月 6,300万ドル ビール製造企業のロイヤル・スウィンケルスは2024年12月に、ジョージア・キャピタルのビール販売事業の株式92.4%の取得を完了した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易は輸出入ともに減少、直接投資は双方向で大幅増

2024年のオランダの対日輸出額は前年比10.8%減の62億9,600万ユーロ、対日輸入額は11.1%減の77億2,400万ユーロとなった。この結果、2024年のオランダの対日貿易赤字は14億2,800万ユーロで、前年から2億100万ユーロ減少した。また、対日再輸出の割合は25.6%で、前年から19.9%減の16億1,200万ユーロであった。2024年のオランダの対日輸出総額の74.4%を占めるオランダ製品の輸出額は、7.2%減の46億8,400万ユーロとなった。

対日輸出の品目分類を見ると、最大部門である機械・輸送用機器(構成比32.0%)は前年比10.8%増の20億1,400万ユーロとなった。これは主に、特定産業用特殊機械の輸出が前年の5億4,500万ユーロから2024年は10億3,700万ユーロに90.3%増加したためだ。2位の品目部門である化学製品は、6.6%増の11億7,400万ユーロとなった。これは主に、医薬品の輸出が15.5%増加したことによる。

オランダの対日輸入品目を見ると、2024年の輸入総額の49.4%を占める機械・輸送用機器は、前年比14.5%減の38億1,900万ユーロとなった。このうち最大区分の電子・電気機械は3.6%増の9億4,700万ユーロとなり、前年同様に2位の事務機械・自動データ処理機械は7億3,900万ユーロ、3位の道路輸送車両は57.7%増の5億8,500万ユーロであった。品目部門で2位の雑製品( 18.1%)は5.9%減の13億9,600万ユーロとなった。最大区分の専門・科学・制御機器は3.0%増の7億3,100万ユーロに達し、2位の写真機器・装置・消耗品・光学製品は16.5%減の3億4,300万ユーロとなった。

中銀によると、2024年の日本からの直接投資額は77億3,300万ユーロ(ネット、フロー)で、前年比2.7倍となった。オランダからの対日直接投資は69億1,100万ユーロで、前年比12.3倍だった。

日本企業による対内直接投資案件としては、各種電力機器や産業用ロボットを製造するダイヘンが2024年3月にロボットシステムインテグレーターのローラン・ロボティクス(Rolan Robotics)の買収決定を発表、欧州での製品ラインアップ拡充と販売力強化を図る。また耐火物などを製造する品川リフラクトリーズは10月にゴーダ・レフラクタリズ・グループ(Gouda Refractories Group)を買収、欧州・中東・アフリカにおける事業を拡大する。医療分野では2024年4月にオムロンヘルスケアがルーシーヘルステック(Luscii healthtech)を買収。食品分野では6月に極洋がノースシーフード・ホランド(Northseafood Holland)への出資を発表し、欧州の食品事業を強化する。

オランダからの対日直接投資案件では、ASMLが2024年9月、北海道千歳市に拠点を設立したと報じられた。顧客となるラピダスが同年12月に日本初となるASML製の量産対応EUV(極端紫外線)露光装置を設置、同社はこれを支援した。エネルギーおよび化学製品の貯蔵・取扱事業を世界的に展開するロイヤル・ヴォパック(Royal Vopak)は、インフラソリューションなどを通じて日本企業のエネルギー転換を支援するため、2024年6月に東京に子会社を設立した。

表7 オランダの対日主要品目別輸出入[国際収支ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
項目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送用機器 1,817 2,014 32.0 10.8 4,467 3,819 49.4 △ 14.5
化学製品 1,101 1,174 18.6 6.6 928 746 9.7 △ 19.6
雑製品 886 898 14.3 1.4 1,483 1,396 18.1 △ 5.9
食料品・動物 603 549 8.7 △ 9.0 74 82 1.1 10.8
工業製品(原料別製品) 204 187 3.0 △ 8.3 512 515 6.7 0.6
飲料・たばこ 48 99 1.6 106.3 40 51 0.7 27.5
非食品原材料 86 81 1.3 △ 5.8 84 85 1.1 1.2
鉱物性燃料・潤滑油・その他 25 9 0.1 △ 64.0 6 4 0.1 △ 33.3
動植物性油脂 9 6 0.1 △ 33.3 10 5 0.1 △ 50.0
合計(その他含む) 7,058 6,296 100.0 △ 10.8 8,687 7,724 100.0 △ 11.1

〔注〕2023、2024年ともに暫定値。再輸出を含む総額。
〔出所〕オランダ中央統計局(CBS) (2025年7月30日時点)

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021年 2022年 2023年
実質GDP成長率 (%) 6.2 4.3 0.1
1人当たりGDP (米ドル) 58,960 57,427 62,718
消費者物価上昇率 (%) 2.7 10.0 3.8
失業率 (%) 4.2 3.5 3.6
貿易収支 (100万ユーロ) 73,169 73,565 89,425
経常収支 (100万ユーロ) 105,462 88,867 104,429
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 28,629 27,665 29,218
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 3,572,836 3,590,012 3,500,190
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8454 0.9496 0.9248

注:
失業率:15~74歳。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)、全て暫定値。
経常収支:全て暫定値。
対外債務残高(グロス):2022年、2023年は暫定値。
出所:
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:オランダ中央統計局(CBS)
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2024年4月)」
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):オランダ国立銀行(DNB)
外貨準備高(グロス)、為替レート: IMF