イタリアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は0.7%で前年と同水準。国内需要と輸出が下支え。
  • 輸出は上位品目などで減少も、全体では前年水準を維持。貿易黒字は拡大。
  • 対内直接投資は減少したが、大型案件もみられた。対外投資は回復。
  • 対日輸出は増勢を維持。日本からの輸入は主要上位品目などで減少し不振。

公開日:2025年11月6日

マクロ経済 
国内需要と輸出に支えられプラス成長を維持

2024年のイタリアの実質GDP成長率は0.7%で2023年から横ばいだった。需要項目別では、国内総固定資本形成は前年比0.5%増、政府最終消費支出は1.1%増、民間最終消費支出は0.4%増となった。財・サービスの輸入は0.7%減、輸出は0.4%増だった。GDP成長率は主に在庫を差し引いた国内需要と純輸出のプラス寄与に支えられた[2025年3月3日発表、イタリア国家統計局(ISTAT)速報分析結果]。財とサービスの供給面では、農業や建設、サービスなどで付加価値が増加した。

イタリア銀行の2024年の年次報告書によると、同年の投資は前年から急激に減速した。堅調だった機械・設備部門の投資が4年連続の増加の反動で減少し、住宅建設投資も政府による省エネ住宅建設に対する税優遇措置「スーパーボーナス」がさらに縮小したことが響いた。一方、非住宅建設部門は、EU基金を活用した「国家復興・レジリエンス計画(PNRR)」のプロジェクト実施が投資の増加に寄与した。

ISTATは2025年6月6日に2025~2026年の経済見通しを発表し、2025年の実質GDP成長率を0.6%と予測した。ISTATは見通しの中で、2025年の成長は国内需要に支えられる一方、米国の貿易政策を巡る不確実性が世界貿易と国際経済の成長に与える影響を考慮し、純輸出がマイナスに転じると見込んでいる。民間消費は、消費者の節約志向が続くものの、賃金と雇用の持続的な成長に支えられ、緩やかながらも安定したペースの成長が続くとした。投資については、2025年第1四半期は好調だったものの、税優遇措置の段階的減額による住宅投資の減速や、国内外の経済成長見通しの不確実性を受けて輸送機器分野での投資が減退することなどにより、2025年下期には停滞すると見込んでいる。対照的に、非住宅建設投資は第1四半期の好調な出だしを維持し、PNRRに基づく施策の実行により、比較的緩やかなペースで増加するとの予測だ。なお、ISTATは7月30日付の最新の予測で、実質成長率を0.5%に下方修正している。

表1 イタリアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.8 0.7 0.7 0.2 0.2 0.0 0.2
階層レベル2の項目民間最終消費支出 5.3 0.3 0.4 1.1 △ 0.2 0.4 0.2
階層レベル2の項目政府最終消費支出 0.8 0.6 1.1 △ 0.3 0.6 0.3 0.1
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 7.4 9.0 0.5 △ 0.6 △ 0.3 △ 1.4 1.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 9.9 0.2 0.4 △ 0.4 △ 1.5 △ 0.4 △ 0.1
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 12.9 △ 1.6 △ 0.7 △ 0.7 0.6 1.3 △ 0.2

〔注〕四半期の伸び率は前期比(季節調整済み)。
〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)

貿易 
輸出額は前年水準を維持、貿易黒字は拡大

2024年の貿易は、輸出が前年比0.4%減でほぼ横ばいの6,235億900万ユーロ、輸入は3.9%減の5,687億4,600万ユーロとなった。輸出額は最大の相手国ドイツの景気減速による需要低迷や不安定な国際情勢にもかかわらず前年の水準を維持した。貿易収支は547億6,300万ユーロの黒字となり、黒字幅は前年の340億1,100万ユーロから拡大した。

輸出を品目別にみると、最大の機械(構成比16.0%)は前年比1.3%減だった。イタリアが強みとする機械の輸出が2024年に停滞した理由として、主要輸出先であるドイツやフランスの政治・経済の不安定化による消費の低迷などが影響したと考えられる。このため、首位の米国向けは3.6%増加したが、ドイツ、フランス向けはそれぞれ6.4%減、6.0%減と落ち込んだ。こうした中、品目内訳では、主力の非家庭用冷凍・換気機器・家庭用エアコンディショナーが3.6%増加し、タップ・バルブ、自動投入・包装・梱包機械、一般用機械なども伸びた。

2位の金属製品(構成比10.1%)は前年比3.3%減となった。主力の鉄・鋳鉄・鋼鉄・合金鉄(12.2%減)、溶接パイプ・ダクトなど(5.3%減)、鉄・銅などの金属製品(7.5%減)は総じて減少した。イタリアの鉄鋼生産量の減少(5.0%減)が金属製品の減速に影響し、価格の継続的下落がさらに全体の輸出額を押し下げた。一方、貴金属および半製品(7.1%増)、アルミニウムおよび半製品(1.5%増)などは増加した。

3位の繊維・衣料品・皮革製品(構成比10.0%)は前年比4.5%減で、主力のオーダーメイドアウターウェアは0.8%増とほぼ横ばいだったものの、靴、皮革製品・鞄はそれぞれ8.3%減、9.1%減とふるわなかった。靴や皮革製品・鞄の業界では、昨今の地政学的不安定性、中国やドイツなどの主要市場の成長鈍化、信用不安による新規事業投資減少などが、企業業績に深刻な影響を及ぼしている。

4位の食品・飲料・たばこ(構成比9.6%)は前年比7.9%増で好調だった。特にバターやヨーグルトなどの乳副産物(8.5%増)、チョコレートやキャラメルなどの砂糖菓子(17.8%増)、加工果物および野菜(4.2%増)、ワイン(5.0%増)、食肉製品(8.0%増)など、上位品目は軒並み輸出を伸ばした。中でもオリーブオイルは、夏季の少雨や高温などの天候不順によりオリーブの生産が影響を受け、価格が高騰したため、輸出額は42.6%増と急増した。

一方、輸送機器(構成比9.5%)は前年比12.2%減となり、順位を前年の2位から5位に下げた。2024年のイタリア自動車産業全体の生産台数は前年比で22.7%減少し、同年1月~11月の売上高は前年同期比14.8%減(国内16.9%減、海外12.7%減)と苦戦した。輸送機器全体の主要輸出先では、首位のドイツ向けが20.3%減、2位の米国は33.1%減、3位のフランスは4.2%減と、いずれも顕著に減少した。

医薬品(構成比8.6%)は前年比9.5%増と好調で、輸出を牽引した。イタリアの医薬品産業の輸出額は2024年に540億ユーロ近くに達し、生産額は560億ユーロを超えた。同産業の海外事業は過去5年間でEU平均を上回る速度で発展しており、医薬品とワクチンが計上する貿易収支黒字は国内製造業全体の18%に相当し、黒字額では製薬企業が上位に立っている。同産業はまた、2022年から2024年までのGDP成長の主要な貢献セクターともなっている。輸出先1位の米国は25.7%増、2位のスイスは27.6%増であった。

5割超を占めるEU向け輸出は低迷、中東向けは好調

輸出を国・地域別にみると、EU(構成比51.0%)が前年比1.9%減となった。最大の輸出相手国であるドイツ(11.4%)は5.0%減で、最大品目となった医薬品は17.5%増と好調だったが、これに続く自動車が30.7%減、自動車部品が9.7%減、鉄・鋳鉄・銅・合金鉄が17.2%減と低迷した。域内2位の輸出先フランス(10.0%)も2.1%減と縮小し、主に自動車やトレーラーの車体(14.8%減)、鉄・鋳鉄・銅・合金鉄(18.7%減)などが大幅に減少した。

EU域外では、2位の輸出相手国である米国(構成比10.4%)向けが前年比3.6%減に終わった。首位の医薬品(26.3%増)をはじめ汎用機械装置(57.6%増)、香水・化粧品・石鹸(19.3%増)などが輸出を伸ばした一方、船舶用構造物(71.2%減)、自動車(28.2%減)、眼鏡フレーム(21.6%減)、貴金属・宝飾品(7.6%減)はいずれも低調だった。輸出の伸びが顕著だった国としては、トルコ(2.8%)が23.9%増となった。高インフレや国内の政治的緊張、国際情勢の不透明化などの複数要因による投資目的での宝飾品需要が高まり、貴金属・宝飾品が5.7倍となったことが輸出を押し上げた。その他、19.4%増のアラブ首長国連邦(UAE)(1.3%)では、皮革製品・鞄(61.9%増)、宝飾品(9.7%増)、溶接管・パイプ(91.7%増)、靴(24.1%増)、香水・化粧品(20.5%増)などが輸出の伸びを牽引したほか、27.9%増のサウジアラビア(1.0%)では、バルブ(82.5%増)、医薬品(2.1倍)、石油精製品(約75倍)などが輸出増に寄与した。

最大の金属製品が輸入増の一方、輸送機器と鉱物性燃料は減少

輸入を品目別に見ると、最大の金属製品(構成比11.0%)が前年比2.6%増となった。首位の鉄・鋳鉄・鋼鉄・合金鉄の金属材料は9.7%減だったが、貴金属および半製品(25.7%増)、銅および半製品(7.1%増)、アルミニウムおよび半製品(3.4%増)などが牽引した。

2位の輸送機器(構成比10.8%)は1.7%減となった。自動車部品(11.1%減)、自動車(1.4%減)、自動車用電気・電子機器(12.0%減)など、自動車セクターが総じて減少した一方、航空機・宇宙船および関連機器は15.9%増と伸長した。EU域内の主要貿易相手国からの輸入は減少したが、トルコや中国からの自動車の輸入はそれぞれ19.8%増、7.9%増と拡大した。

3位の化学品(構成比9.3%)は前年比0.6%増となった。中国からの輸入が44.0%増で首位ドイツに次ぐ供給国となり、特に有機基礎化学品の輸入が59.4%増と急増した。欧州のエネルギーコスト高により、総じて価格競争力の高い国からの輸入が伸びた。

4位の鉱物・石油・天然ガス(構成比9.1%)は前年比25.2%減となり、中でも主力の原油は25.4%減(輸入量では22.8%減)となった。調達元の上位3カ国を見ると、リビア5.6%減(4.0%減)、アゼルバイジャン35.6%減(33.9%減)、カザフスタン7.5%減(4.3%減)といずれも縮小した。同じく主力の天然ガスも24.4%減(2.9%減)と減少し、調達元上位3カ国は、アルジェリア23.5%減(9.4%減)、アゼルバイジャン25.6%減(4.5%増)、カタール22.0%減(2.4%減)となった。一方、ロシアからの天然ガスの輸入は40.3%増(2.1倍)と前年比で大幅に増加したが、数量では2022年比で半分以下となっている。

輸入を国・地域別で見ると、EU(構成比57.7%)が前年比2.2%減となった。最大の相手国ドイツ(14.9%)は3.3%減で、品目別首位の自動車は横ばい(0.1%増)だったが、その他の主要品目である医薬品(25.8%減)、自動車部品(4.2%減)、鉄、鋳鉄などの金属材料(6.4%減)などが輸入額を押し下げた。

EU域外では、ドイツに次ぐ輸入相手国である中国(構成比8.7%)が前年比1.9%増と微増した。前述のとおり有機基礎化学品の輸入額と増加率が最大となったほか、家庭用電気機器(9.9%増)、自動車(7.9%増)などが伸びた。そのほか前年比で減少したものの、電気通信用電気・電子機器(1.8%減)、コンピューターおよび周辺機器(6.4%減)、鉄・鋳鉄・銅・合金鉄の金属材料(22.6%減)などが上位を占めた。米国(4.6%)は2.6%増で、首位の医薬品原料が2.0倍と牽引した。原油は42.0%減、天然ガスは23.6%減だったが、調達元としてはそれぞれ金額ベースで4位、6位となった。

表2 イタリアの主要品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械 101,162 99,842 16.0 △ 1.3 42,229 39,765 7.0 △ 5.8
金属製品 65,269 63,116 10.1 △ 3.3 60,893 62,499 11.0 2.6
繊維・衣料品・皮革製品 65,204 62,264 10.0 △ 4.5 38,527 37,649 6.6 △ 2.3
食品・飲料・たばこ 55,439 59,829 9.6 7.9 42,632 45,622 8.0 7.0
輸送機器 67,579 59,315 9.5 △ 12.2 62,693 61,638 10.8 △ 1.7
医薬品 49,139 53,829 8.6 9.5 38,522 42,661 7.5 10.7
化学品 39,853 40,635 6.5 2.0 52,745 53,066 9.3 0.6
その他製造業の製品 36,007 40,461 6.5 12.4 18,160 18,381 3.2 1.2
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品 32,960 32,562 5.2 △ 1.2 21,847 21,857 3.8 0.0
電気機器 32,087 32,085 5.1 △ 0.0 29,283 26,879 4.7 △ 8.2
コンピューター・電子・光学機器 21,766 22,470 3.6 3.2 39,319 36,616 6.4 △ 6.9
燃料・石油精製品 19,224 16,266 2.6 △ 15.4 12,777 12,042 2.1 △ 5.8
木材・木工品・紙製品・印刷物 10,724 10,754 1.7 0.3 13,243 14,161 2.5 6.9
農林水産物 8,815 9,262 1.5 5.1 20,852 22,465 3.9 7.7
鉱物・石油・天然ガス 2,708 1,832 0.3 △ 32.4 69,471 51,937 9.1 △ 25.2
合計(その他を含む) 625,950 623,509 100.0 △ 0.4 591,939 568,746 100.0 △ 3.9

〔注〕 EU 域外貿易は通関ベース(輸出はFOB,輸入はCIF)、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕 イタリア国家統計局(ISTAT)

表3 イタリアの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 324,124 318,111 51.0 △ 1.9 335,717 328,423 57.7 △ 2.2
階層レベル2の項目ユーロ圏 264,771 259,641 41.6 △ 1.9 276,402 273,790 48.1 △ 0.9
階層レベル3の項目ドイツ 74,727 70,970 11.4 △ 5.0 87,892 84,953 14.9 △ 3.3
階層レベル3の項目フランス 63,567 62,247 10.0 △ 2.1 45,015 45,765 8.0 1.7
階層レベル3の項目スペイン 33,113 34,525 5.5 4.3 33,051 33,900 6.0 2.6
階層レベル3の項目ベルギー 19,301 19,341 3.1 0.2 26,220 26,080 4.6 △ 0.5
階層レベル3の項目オランダ 18,498 19,326 3.1 4.5 36,178 36,398 6.4 0.6
階層レベル3の項目オーストリア 14,196 12,516 2.0 △ 11.8 12,787 12,561 2.2 △ 1.8
階層レベル2の項目非ユーロ圏 57,509 57,062 9.2 △ 0.8 56,456 54,376 9.6 △ 3.7
階層レベル3の項目ポーランド 19,768 19,771 3.2 0.0 16,570 15,898 2.8 △ 4.1
階層レベル3の項目ルーマニア 10,286 10,028 1.6 △ 2.5 9,219 8,862 1.6 △ 3.9
階層レベル3の項目チェコ 8,399 8,202 1.3 △ 2.3 8,980 9,165 1.6 2.1
階層レベル3の項目スウェーデン 6,123 6,018 1.0 △ 1.7 6,059 5,704 1.0 △ 5.9
階層レベル3の項目ハンガリー 5,815 5,838 0.9 0.4 8,470 7,657 1.3 △ 9.6
階層レベル3の項目デンマーク 3,751 3,855 0.6 2.8 3,561 3,529 0.6 △ 0.9
階層レベル3の項目ブルガリア 3,367 3,350 0.5 △ 0.5 3,597 3,561 0.6 △ 1.0
スイス 30,479 30,194 4.8 △ 0.9 17,988 15,724 2.8 △ 12.6
英国 26,053 27,430 4.4 5.3 8,755 8,065 1.4 △ 7.9
トルコ 14,223 17,623 2.8 23.9 11,547 12,055 2.1 4.4
ウクライナ 1,749 2,132 0.3 21.9 1,710 1,851 0.3 8.2
ロシア 4,633 4,299 0.7 △ 7.2 4,061 3,490 0.6 △ 14.1
アジア大洋州 61,976 59,191 9.5 △ 4.5 85,518 84,242 14.8 △ 1.5
階層レベル2の項目中国 19,170 15,344 2.5 △ 20.0 48,652 49,578 8.7 1.9
階層レベル2の項目ASEAN 9,729 10,736 1.7 10.3 12,348 12,570 2.2 1.8
階層レベル2の項目日本 8,035 8,236 1.3 2.5 5,439 4,405 0.8 △ 19.0
階層レベル2の項目韓国 6,682 6,214 1.0 △ 7.0 5,765 5,238 0.9 △ 9.1
階層レベル2の項目オーストラリア 5,235 5,463 0.9 4.4 824 585 0.1 △ 29.0
階層レベル2の項目インド 5,170 5,223 0.8 1.0 9,197 9,024 1.6 △ 1.9
階層レベル2の項目香港 4,988 5,024 0.8 0.7 478 399 0.1 △ 16.4
階層レベル2の項目シンガポール 2,840 3,248 0.5 14.3 677 1,211 0.2 79.0
北米 79,658 77,533 12.4 △ 2.7 28,284 30,393 5.3 7.5
階層レベル2の項目米国 67,166 64,759 10.4 △ 3.6 25,236 25,889 4.6 2.6
階層レベル2の項目メキシコ 6,177 6,634 1.1 7.4 1,191 1,481 0.3 24.3
階層レベル2の項目カナダ 6,315 6,139 1.0 △ 2.8 1,857 3,023 0.5 62.8
中東 24,920 26,288 4.2 5.5 29,360 21,966 3.9 △ 25.2
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦(UAE) 6,667 7,961 1.3 19.4 2,179 2,038 0.4 △ 6.5
階層レベル2の項目サウジアラビア 4,870 6,230 1.0 27.9 5,989 4,090 0.7 △ 31.7
階層レベル2の項目イスラエル 3,375 3,337 0.5 △ 1.1 997 1,009 0.2 1.2
階層レベル2の項目カタール 2,636 2,388 0.4 △ 9.4 3,005 2,390 0.4 △ 20.5
アフリカ 20,440 20,073 3.2 △ 1.8 39,225 34,851 6.1 △ 11.1
階層レベル2の項目チュニジア 3,345 3,306 0.5 △ 1.2 3,526 3,419 0.6 △ 3.0
階層レベル2の項目アルジェリア 2,813 2,890 0.5 2.7 14,077 11,057 1.9 △ 21.5
階層レベル2の項目エジプト 3,358 2,801 0.4 △ 16.6 2,633 2,459 0.4 △ 6.6
階層レベル2の項目モロッコ 2,773 2,783 0.4 0.4 1,976 2,229 0.4 12.8
階層レベル2の項目リビア 1,699 2,280 0.4 34.2 7,450 6,377 1.1 △ 14.4
階層レベル2の項目南アフリカ 2,213 2,200 0.4 △ 0.6 2,321 2,066 0.4 △ 11.0
中南米 19,668 20,992 3.4 6.7 11,710 12,454 2.2 6.3
階層レベル2の項目ブラジル 5,364 5,798 0.9 8.1 4,554 4,541 0.8 △ 0.3
合計(その他を含む) 625,950 623,509 100.0 △ 0.4 591,939 568,746 100.0 △ 3.9

〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。北米は、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。
〔注2〕ユーロ圏と非ユーロ圏の合計がEUと合致しないのは統計上どの国にも分類できない誤差脱漏が含まれていないため。
〔注3〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕 イタリア国家統計局(ISTAT)

対内・対外直接投資 
対内投資は地政学的不確実性などにより減少

イタリア銀行(以下、中銀)によると、2024年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比48.4%減の200億8,000万ユーロとなった。主要な投資元であるEUは79.4%減となり、このうちフランスは39.4%減、ルクセンブルクは58.5%減だったほか、ドイツやオランダは引き揚げ超過に転じた。EU以外では、カナダが9.3倍、スイスが2.2倍、英国が48.2%増、米国が88.5%増と拡大した。

2024年の主な対内直接投資案件(M&A以外)をみると、スイスのSTマイクロエレクトロニクス(ST Microelectronics)は2024年5月、パワー・デバイスおよびパワー・モジュールを製造する新しい200ミリメートルSiC(炭化ケイ素)製造施設をシチリア州カターニャに建設することを発表し、投資総額は約50億ユーロを見込む。そのほか、ウクライナのメティンベスト(Metinvest)とイタリアの企業・メイドインイタリー省は11月、トスカーナ州ピオンビーノ市に、年間270万トンの生産能力を有する先進的なグリーン製鉄所の建設を行う共同宣言文書に署名し、約25億ユーロ規模のプロジェクトとなる見込みだ。

コンサルティング企業アーンスト・アンド・ヤング(EY)によると、2024年の海外からイタリアへの対内M&A案件は、一部海外企業による10億ユーロ超の大型案件(メガディール)が主導したが、全体の取引件数では前年比横ばいとなった。これは地政学的な不確実性も背景となっている。また、イタリアの国家安全保障やエネルギー、運輸、通信など、特定分野の株式または資産の取得については、政府がその取引に対して、拒否権行使や特別条件付加などの介入を可能にする外国投資規制「ゴールデン・パワー」があるため、本制度の適用による取引遅延の影響も少なからずあったとEYは分析している。

海外企業によるM&A案件では、テレコムイタリア(TIM)が2024年7月、固定通信ネットワークインフラおよび回線卸売の事業部門子会社を、米国のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に220 億ユーロで売却した。また、脱炭素化、デジタル化などへの投資を行うスイスのエナジー・インフラストラクチャー・パートナーズ (Energy Infrastructure Partners)は2025年3月、イタリアの石油・ガス大手エニ(ENI)の子会社で再生可能エネルギーを中心とする統合型エネルギー転換企業のプレニチュード(Plenitude)への追加投資を完了し、総投資額は約8億ユーロとなった。

対外投資は欧米諸国を中心に回復

中銀によると、2024年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比11.3%増の314億5,900万ユーロと、前年の減少から増加に転じた。主要投資先のEU加盟国の中ではフランスやスペインがそれぞれ2.4倍、8.8倍と拡大したが、ドイツやオランダはそれぞれ60.3%減、99%減と縮小した。EU以外では、英国が63.7%減、米国は5.8%増となった。

2024年以降の主な対外直接投資案件をみると、エネル・グリーン・パワー(EGP)と日本のINPEXが共同出資するEGPオーストラリア(EGPA)は2024年6月、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州におけるクォーンパーク太陽光・蓄電池事業への投資を最終決定し、総投資額1億9,000万ドルを超えるハイブリッド電源プロジェクトを進める。そのほか、グリーンセシス(Greenthesis)とUAEの環境ソリューション企業ベア(BEEAH)は2025年2月、中東・北アフリカ・欧州での廃棄物処理および資源回収プラントの建設を目的とした協力協定を締結した。グリーンセシスは、中東における統合廃棄物管理のリーダー企業との高い相乗効果により、グループ全体の国際展開をさらに拡大していく。

EYによると、2024年のイタリア企業による海外M&A案件は、前年比で件数は増加し、投資金額は2019年~2023年の平均と同水準だった。投資先国を件数でみると、ドイツ、スペイン、フランスなどのEU地域、英国や米国などが多く、文化的親和性が高く、長期的なビジネス関係が既に確立されている国々への投資傾向がみられた。

イタリア企業によるM&A案件では、電線・通信ケーブル大手のプリズミアン(Prysmian)が2024年7月、米国の同業メーカー、エンコア・ワイヤー(Encore Wire)の買収完了を発表した。プリズミアンは、データセンターの増大や電力網のアップグレードなどで拡大する北米市場での事業を強化する。そのほか、エンジニアリング大手マイレ(Maire)の子会社であるネクスト・ケム(NextChem)は同年5月、水素、メタノール、オレフィン、ガソリンなどの低炭素化学品の合成に関する80件超の特許を有するドイツのガス・コン・テック(GasCon Tec)の全株式の取得を完了した。

表4 イタリアの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年 伸び率
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 33,666 6,931 △ 79.4 17,113 21,342 24.7
階層レベル2の項目フランス 12,370 7,493 △ 39.4 1,501 3,653 143.4
階層レベル2の項目ルクセンブルク 6,739 2,800 △ 58.5 3,692 3,770 2.1
階層レベル2の項目アイルランド 1,861 1,244 △ 33.2 △ 952 197
階層レベル2の項目スペイン △ 731 1,025 515 4,556 784.7
階層レベル2の項目ベルギー △ 1,372 1,013 △ 2,325 1,385
階層レベル2の項目スウェーデン 327 633 93.6 △ 300 104
階層レベル2の項目オーストリア △ 29 614 729 1,107 51.9
階層レベル2の項目キプロス 270 440 63.0 124 8 △ 93.5
階層レベル2の項目ドイツ 5,361 △ 2,939 4,014 1,593 △ 60.3
階層レベル2の項目オランダ 6,840 △ 6,174 7,506 76 △ 99.0
スイス 2,312 5,188 124.4 △ 1,706 570
英国 1,171 1,735 48.2 1,313 477 △ 63.7
ロシア △ 659 80 660 1,471 122.9
ウクライナ △ 60 2 123 20 △ 83.7
アフリカ 528 △ 78 3,213 311 △ 90.3
階層レベル2の項目南アフリカ △ 5 13 61 37 △ 39.3
階層レベル2の項目ナイジェリア △ 1 9 960 9 △ 99.1
階層レベル2の項目エジプト 156 5 △ 96.8 △ 1,056 29
階層レベル2の項目モロッコ 19 2 △ 89.5 125 253 102.4
階層レベル2の項目アルジェリア △ 36 0 △ 100.0 △ 444 △ 226 △ 49.1
北米 1,653 4,419 167.3 6,229 3,400 △ 45.4
階層レベル2の項目米国 1,442 2,718 88.5 2,670 2,825 5.8
階層レベル2の項目カナダ 183 1,706 832.2 475 381 △ 19.8
階層レベル2の項目メキシコ 28 △ 5 3,084 194 △ 93.7
南米 △ 156 131 1,114 1,911 71.5
階層レベル2の項目ブラジル △ 102 159 960 1,359 41.6
階層レベル2の項目アルゼンチン 39 4 △ 89.7 79 64 △ 19.0
階層レベル2の項目チリ △ 27 △ 3 △ 88.9 494 172 △ 65.2
階層レベル2の項目パナマ 12 △ 5 △ 239 186
階層レベル2の項目ベネズエラ △ 62 △ 36 △ 41.9 △ 234 △ 108 △ 53.8
アジア大洋州 1,296 2,126 64.0 △ 969 1,077
階層レベル2の項目中国 786 1,265 60.9 △ 244 532
階層レベル2の項目日本 212 344 62.3 47 78 66.0
階層レベル2の項目韓国 53 150 183.0 401 156 △ 61.1
階層レベル2の項目インド 60 108 80.0 △ 125 12
階層レベル2の項目シンガポール △ 104 98 △ 83 133
階層レベル2の項目香港 304 63 △ 79.3 △ 368 △ 83 △ 77.4
階層レベル2の項目タイ △ 2 54 △ 36 58
階層レベル2の項目台湾 △ 15 45 179 10 △ 94.4
階層レベル2の項目マレーシア △ 32 4 36 36 0.0
階層レベル2の項目オーストラリア 18 △ 4 △ 594 171
中東 △ 592 △ 532 △ 10.1 617 753 22.0
階層レベル2の項目サウジアラビア △ 1 1 131 99 △ 24.4
階層レベル2の項目イラン △ 7 1 △ 8 13
階層レベル2の項目UAE △ 71 △ 4 △ 94.4 1,092 154 △ 85.9
階層レベル2の項目トルコ △ 468 △ 42 △ 91.0 826 554 △ 32.9
階層レベル2の項目イスラエル 3 △ 62 81 49 △ 39.5
階層レベル2の項目カタール 20 △ 329 △ 106 △ 135 27.4
合計(その他含む) 38,889 20,080 △ 48.4 28,265 31,459 11.3

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+ 6 (日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
北米は、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。EU、アフリカ、中南米、中東は表に掲載していない国も含む。
〔出所〕イタリア銀行

表5-1 イタリアの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
半導体 STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics) スイス 2024年5月 約50億ユーロ スイスのSTマイクロエレクトロニクスは、パワー・デバイスおよびパワー・モジュールを製造する新しい200ミリメートル SiC(炭化ケイ素)製造施設をシチリア州カターニャに建設することを発表した。同施設はテスト工程やパッケージング工程を含み、同じ拠点で準備中のSiC基板の製造施設と合わせて、同一拠点でSiCを大量生産するための世界初の完全統合型SiC製造施設となる。2026年に生産を開始し、2033年までにフル稼働することを目指し、投資総額は約50億ユーロを見込む。
半導体 シリコン・ボックス (Silicon Box) シンガポール 2024年3月 36億ドル シンガポールのスタートアップ企業シリコン・ボックスは、イタリア政府との協業により、北イタリアに新たな最先端半導体チップの組立およびテスト拠点を建設するため、最大36億ドルを投資する方針を発表した。同拠点において人工知能(AI)、高性能計算(HPC)、大規模言語モデル(LLM)、電気自動車、エッジコンピューティングなど、今後高い需要が見込まれる次世代アプリケーション向けの半導体チップを製造し、約1,600人の新規直接雇用創出を見込む。
鉄鋼 メティンベスト(Metinvest ) ウクライナ 2024年11月 約25億ユーロ ウクライナのメティンベストとイタリアの企業・メイドインイタリー省は、イタリア・トスカーナ州ピオンビーノ市における年間270万トンの生産能力を有する先進的なグリーン製鉄所の建設に関する、共同宣言文書に署名した。25億ユーロ規模のプロジェクトで、電気炉技術とウクライナ産のスクラップ、銑鉄、直接還元鉄などのリサイクル材料を活用し、欧州で最も先進的な環境負荷の少ないグリーン製鉄所の1つとなる見込み。イタリア鉄鋼会社JSWスチールイタリアの既存工場区域に建設される予定で、イタリアの鉄鋼輸入依存度の低減およびピオンビーノの鉄鋼産業再興も目的としている。
エネルギー GEヴェルノヴァ(GE Vernova ) 米国 2024年9月 非公開 米国のGEヴェルノヴァは、イタリアのリザード・リニューアブルズ(Lizard Renewables)と、イタリアにおける再生可能エネルギー(再エネ)プロジェクトの共同開発を目的とし、折半出資による合弁会社アルバパワー(Alva Power)を設立したと発表した。既にリザードが選定・準備を進めている風力発電、バッテリーエネルギー貯蔵システム、太陽光発電などのプロジェクトを含め、総発電容量1ギガワット超の再エネ発電設備を建設可能な段階まで進めることを初期目標とする。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 イタリアの主な対内直接投資案件(2024年~2025年3月)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
通信 テレコムイタリア(TIM) コールバーグ・クラビス・ロバーツ (KKR) 米国 2024年7月 220億ユーロ テレコムイタリア(TIM)は、同社の固定通信ネットワークインフラおよび回線卸売の事業部門子会社であるネットコ(NetCo) の米国KKRへの売却完了を発表した。TIM が58%を所有する子会社ファイバーコップ(FiberCop)にNetCoを譲渡し、その後、KKR の子会社であるオプティクス・ビッドコ(Optics BidCo)がファイバー・コップの全株式を取得することで成立した。NetCo の売却額は220 億ユーロで、TIM は純金融負債を削減する。
エネルギー プレニチュード(Plenitude) エナジー・インフラストラクチャー・パートナーズ (Energy Infrastructure Partners) スイス 2025年3月 総額約8億ユーロ 脱炭素、デジタル、セキュリティ分野などへの投資を行うスイスのEIPは、プレニチュードへの追加投資を完了したと発表した。株式保有比率を10%に拡大し、総投資額は約8億ユーロ。プレニチュードは、イタリアの石油・ガス大手エニ(ENI)の再エネ子会社で、世界15カ国以上で事業展開している。同社は総発電容量4ギガワット超の再エネ発電設備を有し、1,000万以上の在欧顧客へのエネルギー販売やエネルギーソリューション提供、2万1,000カ所以上の電気自動車用充電ポイント設置など、グローバルな統合型エネルギー転換企業。
半導体 テクノプローブ(Technoprobe ) テラダイン (Teradyne) 米国 2024年5月 約4億8,000万ユーロ 米国のエレクトロニクス産業向け自動検査装置の大手メーカーテラダインは、オランダの子会社を通じて、半導体検査用プローブカードメーカーのテクノプローブの株式10%を約4億8.000万ユーロで取得した。またテクノプローブは、テラダインからデバイス・インターフェース・ソリューションズ(DIS)事業部門を買収した。両社は戦略的提携により、顧客向けの新たな高度検査ソリューションの共同開発をはじめとする、ロードマップ共有、技術開発、共同マーケティング活動を通じて、双方の成長を加速させていく方針。
石油 サラス(Saras) ヴィトル(Vitol) オランダ 2024年6月 非公開 オランダの総合エネルギー大手ヴィトルは、特別目的会社ヴァラス(Varas)を通じて、イタリアのマッシモ・モラッティ(Massimo Moratti)、エンジェル・キャピタル・マネジメント(Angel Capital Management)などモラッティ・ファミリー系企業が保有する、石油精製会社サラスの株式約35%の取得を完了したと発表した。これにより、ヴィトルは直接・間接的に45.48%を所有する。その後、同年9月にヴァラスによる残りの株式の取得が完了した。サラスは、イタリア・サルデーニャ島に製油所を有し、イタリアやその他欧州諸国向けの石油製品供給のほか、171メガワット容量の風力発電所の保有・運営や新規の風力・太陽光発電プロジェクトを有するなど、再生可能エネルギーの事業ポートフォリオも持つ。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 イタリアの主な対外直接投資案件(2024年~2025年2月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
エネルギー エネル・グリーン・パワー (EGP) オーストラリア 2024年6月 1億9,000万ドル エネル・グリーン・パワーと日本のINPEXが共同出資するエネル・グリーン・パワー・オーストラリア(EGPA)は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州におけるクォーンパーク太陽光・蓄電池事業への投資を最終決定した。総投資額1億9,000万ドルを超える同プロジェクトは、交流容量80メガワットの太陽光発電と40メガワット時の蓄電池を併設し、1つに統合した設備から送電系統に接続するハイブリッド電源で、同国内で最も先行したハイブリッド電源プロジェクトの1つ。太陽光からの発電量の一部を効率的に蓄電池で蓄・放電し、送電系統の電力調整機能を担うことで、収益の最大化と系統の安定化に貢献することが期待される。
環境 グリーンセシス (Greenthesis) アラブ首長国連邦(UAE) 2025年2月 非公開 廃棄物管理を専門とするグリーンセシスは、UAEの環境ソリューション会社ベア(BEEAH)と、中東・北アフリカおよび欧州での廃棄物処理・資源回収リサイクルのための統合廃棄物管理施設の建設を、共同で推進することを目的とした協力協定を締結した。プロジェクト第一弾として、UAEのシャルジャに中東初のポリエチレンフィルムの最先端リサイクルプラントを建設する。
エネルギー プレニチュード (Plenitude) 米国 2025年1月 非公開 イタリアの石油・ガス大手エニ傘下のプレニチュードは、子会社のエニ・ニュー・エネルギーUS(Eni New Energy US)を通じて、米国テキサス州に、リン酸鉄系のリチウムイオン電池を活用した同社最大規模(容量200メガワット)のバッテリーエネルギー貯蔵システムを建設した。同社の太陽光発電所「コラゾン・ソーラー・ファーム」に隣接したことで、再生可能エネルギーで発電された電力を効率的に蓄電し、電力需要が高い時間帯に供給するとともに、同地域電力網の安定化に貢献する。2025年半ばに商業運転開始予定。
通信 リーフ・スペース (Leaf Space) チリ 2024年6月 非公開 衛星通信における地上局の機能をクラウドにて提供するサービス(Ground Segment as a Service:GSaaS)の会社であるリーフ・スペースは、チリのプンタ・アレナスに自社の新テレポートを設置した。この新拠点は、同社サービスのネットワーク容量を拡大し、米州向けの衛星による通信遅延を大幅に削減する。同社は2024年時点で、世界16カ所に26の地上局を保有・運営し、衛星通信事業会社へGSaaSを提供している。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 イタリアの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
ネクスト・ケム(NextChem) 化学品 ガス・コン・テック(GasConTec) ドイツ 2024年5月 3,000万ユーロ イタリアのエンジニアリング大手マイレ(Maire)の子会社であるネクスト・ケムは、ドイツのガス・コン・テックの全株式取得を完了したと発表した。ガス・コン・テックは、水素、メタノール、アンモニア、オレフィン、ガソリンなどの低炭素化学品の合成に関する80件を超える特許を有し、特に高効率な低炭素水素製造技術を強みとする。ネクスト・ケムが持つ2,200件を超える特許ポートフォリオに追加することで、特に大規模プラント向けの高効率でコスト効果の高い低炭素・循環型のグリーン化学品の製造・エンジニアリングソリューション力を強化する。
プリズミアン (Prysmian) 電線・通信ケーブル エンコア・ワイヤー(Encore Wire) 米国 2024年7月 非公開 イタリアの電線・通信ケーブル大手メーカーであるプリズミアンは、米国の同業メーカーのエンコア・ワイヤーの買収を完了したと発表した。同買収により、プリズミアンはデータセンターの増大と電力網のアップグレードなどで拡大する北米市場での事業を強化し、低炭素経済への移行加速に貢献していく。
レテックス(Retex) IT ティアワン・テクノロジー(Tier1 Technology) スペイン 2024年12月 非公開 イタリアの小売り向けデジタル・マーケティング・ソリューション企業のレテックスは、スペインの同業ティアワン・テクノロジーの株式98.02%を取得完了したと発表。レテックスは、ティアワン・テクノロジーの高い技術力との融合およびスペイン市場でのプレゼンスを活かし、欧州市場での競争力を強化する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日輸出は微増、輸入は19%減と不振

2024年の対日貿易は、輸出が2.5%増の82億3,600万ユーロ、輸入が19.0%減の44億500万ユーロだった。貿易収支は38億3,100万ユーロの黒字となり、黒字額は前年から47.6%拡大した。

対日輸出を品目別にみると、繊維・衣料品・皮革製品(構成比27.3%)が最大で、前年比4.4%増だった。特に上位の鞄・皮革製品(8.1%増)、アウターウェア(8.3%増)、靴(0.2%増)が輸出を牽引した。イタリアのファッション・アクセサリー業界は、2024年の売上高が前年比8.6%減の約300億ユーロ、輸出は8.2%減の250億ユーロに落ち込むなど、業界やサプライチェーンが危機に直面している。こうした中、対日輸出は約12億ユーロ(2023年比6.8%増、2019年比56.0%増)と堅調で、国別の輸出先で日本は5位となった。2位の食品・飲料・たばこ(23.1%)は13.6%増となり、輸出増加に大きく寄与した。特に金額ベースで首位のたばこが18.3%増の約9億ユーロとなり輸出額を押し上げた。3位の輸送機器(13.7%)は16.1%減で、中でも最大の金額を占める自動車は21.0%減となった。一方、同品目内では、宇宙・航空機が21.9%増、自動車部品が9.0%増、二輪車の部品が13.1%増と好調だった。

対日輸入を品目別にみると、最大の輸送機器(構成比34.5%)が前年比17.5%減と低迷した。同品目内で金額が大きい順に、自動車8.9%減、二輪車13.1%減、二輪車部品7.6%減、自動車部品70.4%減となり、主要品目がいずれも輸入額を押し下げた。2位の機械(17.8%)も30.7%減と大きく減少した。内燃機関(輸送機器用除く)(46.4%減)、鉱山・建設現場用機械(43.8%減)、金属成形用工作機械(49.5%減)の落ち込みなどが影響した。3位の金属製品(9.4%)は37.0%減となった。特に主要品目の鉄・鋼鉄・合金鉄などの金属材料は、イタリア鉄鋼市場の需要低迷などの影響で42.5%減(数量では40.3%減)だった。

日本との直接投資は対内・対外ともに増加

2024年の日本からイタリアへの対内直接投資額は、3億4,400万ユーロで前年比62.3%増となった。 オリックスの子会社である再エネ事業会社エラワン・エナジー(Elawan Energy、本社:スペイン)は同年6月、イタリアでの太陽光発電プロジェクト開発を目的とした、ポーランドの再エネ発電大手アールパワーのオランダ子会社(R.Power Investment)との合弁会社設立を発表した。本プロジェクトは、イタリア中部から南部およびサルデーニャ島やシチリア島も含む同国全土に分布する。総発電容量は最大2.0ギガワットに達し、2030年までに順次着工となる見込みだ。また鉄鋼専門商社のメタルワンは、同年7月、変圧器用コア製造販売会社のラゴア(LAGOR)の株式を取得し子会社化したと発表した。自動車の電動化の進展や、大規模データセンターの増加などを背景に、再エネ普及による低・脱炭素化が進む欧州では、新たな電源立地から電力需要地への送電能力整備が急務となっている。ラゴアの高い品質と技術力、およびメタルワンのグローバルネットワークの相乗効果により、急成長が見込まれる送配電網向けの変圧器用コア需要に対応していく。

2024年のイタリアの対日直接投資額は、7,800万ユーロで前年比66.0%増となった。イタリア企業による対日投資事例としては、同年4月、アルコール飲料のCTスピリッツ・ジャパン(CT Sprits Japan)が、カンパリ(CAMPARI)グループによる100%子会社化に伴い、カンパリ・ジャパンへの商号変更と日本拠点の移転を行った。カンパリグループの完全子会社化により、日本国内における洋酒市場のさらなる発展および事業拡大を目指す。またPET容器の製造や充填などソリューション提供を行うシパ(SIPA)ジャパンが新たに東京にオフィスを設置し、大阪に次ぐ日本での2拠点目となった。そのほか、デザイン、設計・施工を行う総合エンジニアリング会社のリモンドは、大阪・関西万博を契機に、日本での事業展開を目的として、同年4月、大阪市に日本拠点リモンド・ジャパンを設立した。先進的なデザインとイノベーション主導のアプローチで、同万博でのサウジアラビア、UAE、モナコ、ポルトガル、北欧、フランスのパビリオン設計や総合施工を手掛けた。

表7-1 イタリアの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
繊維・衣料品・皮革製品 2,151 2,246 27.3 4.4
食品・飲料・たばこ 1,678 1,906 23.1 13.6
輸送機器 1,349 1,131 13.7 △ 16.1
医薬品 576 727 8.8 26.3
機械 686 656 8.0 △ 4.4
化学品 487 432 5.2 △ 11.3
その他製造業の製品 365 395 4.8 8.0
コンピュータ・電子・光学機器 183 168 2.0 △ 8.5
電気機器 141 156 1.9 10.7
金属製品 154 153 1.9 △ 0.7
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品 154 141 1.7 △ 8.8
農林水産物 28 34 0.4 18.7
木材・木工品・紙製品・印刷物 31 33 0.4 6.4
鉱物・石油・天然ガス 4 2 0.0 △ 47.3
燃料・石油精製品 2 1 0.0 △ 26.0
合計(その他を含む) 8,035 8,236 100.0 2.5

〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)

表7-2 イタリアの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
輸送機器 1,840 1,519 34.5 △ 17.5
機械 1,135 786 17.8 △ 30.7
金属製品 656 413 9.4 △ 37.0
化学品 391 398 9.0 1.9
その他製造業の製品 244 289 6.6 18.2
コンピュータ・電子・光学機器 269 240 5.5 △ 10.6
繊維・衣料品・皮革製品 240 236 5.4 △ 1.5
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品 187 202 4.6 8.0
電気機器 158 140 3.2 △ 11.5
医薬品 252 118 2.7 △ 53.2
食品・飲料・たばこ 23 27 0.6 14.3
木材・木工品・紙製品・印刷物 17 19 0.4 12.2
農林水産物 7 7 0.2 3.5
鉱物・石油・天然ガス 3 2 0.0 △ 24.7
燃料・石油精製品 0 0 0.0 △ 6.2
合計(その他を含む) 5,439 4,405 100.0 △ 19.0

〔出所〕イタリア国家統計局(ISTAT)

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 4.8 0.7 0.7
1人当たりGDP (米ドル) 35,672 39,074 40,224
消費者物価上昇率 (%) 8.1 5.7 1.0
失業率 (%) 8.2 7.8 6.6
貿易収支 (100万ユーロ) △ 26,227 36,503 64,044
経常収支 (100万ユーロ) △ 34,469 2,939 24,763
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 81,715 84,819 84,875
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 2,491,470 2,535,388 2,641,074
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.9496 0.9248 0.9239


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:イタリア国家統計局(ISTAT)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):イタリア銀行(中央銀行)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF