フランスの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は1.1%と前年から鈍化。
  • 貿易赤字は縮小も、輸出入ともに減少。対日輸出は急伸。
  • 対内(前年比27.7%減)、対外(81.4%減)ともに直接投資は落ち込む。
  • 日仏間の直接投資も双方向で前年から大幅減。

公開日:2025年9月25日

マクロ経済 
2024年は資金調達コストの上昇で設備投資が低迷

2024年のフランスの実質GDP成長率は1.1%となり、前年の1.6%から鈍化した。財・サービスの輸出は前年比2.4%増、輸入は1.3%減となり、純輸出は実質GDP成長率を1.3ポイント押し上げたが、在庫調整が0.8ポイントの下振れ要素となった。

内需(在庫調整を除く)の寄与度は0.6ポイントと前年の1.0ポイントから減少した。民間最終消費支出の伸びは1.0%増と前年の0.7%増から加速した。パリオリンピック・パラリンピック開催の影響で、娯楽分野を中心にサービス消費が堅調な伸びを見せた。政府最終消費支出の伸びも前年からほぼ横ばいの1.4%増となり、内需を下支えした。

総固定資本形成は前年の0.7%増から1.3%減に落ち込んだ。住宅投資は5.6%減となり、減少幅は前年より2.1ポイント縮小したが、2年連続のマイナス成長となった。また、民間設備投資は、資金調達コスト上昇の影響により、前年の2.8%増から2.4%減の縮小に転じた。公共投資は、特に地方自治体による積極的な投資が牽引し、前年に続いて4.7%のプラス成長となった。

フランス銀行(中央銀行)は2025年6月11日に発表したマクロ経済予測の中で、2025年の実質GDP成長率を0.6%と予測した。経済活動は内需に支えられる一方、貿易は米国の関税引き上げやユーロ高の影響などで輸出の減速が予想されることから、経済成長にマイナスに寄与する。消費と民間投資、輸出の回復に伴い、実質GDP成長率は2026年に1.0%、2027年には1.2%に到達すると見込んでいる。

2024年のインフレ率は、食料品価格の低下と工業製品価格の安定を受け、2023年の4.9%から大きく下落し2.0%となった。エネルギー価格は、とりわけ石油製品の価格低下が寄与し、2023年の5.6%から2024年は2.3%に上昇幅が縮小した。失業率は7.3%と前年を0.2%ポイント下回ったが、2025年は7.6%、2026年は7.7%に上昇すると見込まれている。

表1 フランスの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2023年 2024年 2024年
Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率(その他含む) 1.6 1.1 0.1 0.2 0.4 △ 0.1
階層レベル2の項目民間最終消費支出 0.7 1.0 0.2 0.0 0.8 0.1
階層レベル2の項目政府消費支出 1.5 1.4 0.3 0.2 0.3 0.4
階層レベル2の項目総固定資本形成 0.7 △ 1.3 △ 0.7 0.4 △ 0.8 0.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 2.8 2.4 0.4 1.5 △ 1.1 0.9
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 0.1 △ 1.3 △ 0.8 0.8 0.7 0.7

〔注〕四半期の伸び率は前期比。
〔出所〕フランス国立統計経済研究所(INSEE)

貿易 
輸出は前年比1.6%減、エアバスの出荷機数は伸び悩み

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比1.6%減の5,778億4,000万ユーロ、輸入は4.8%減の6,734億1,900万ユーロと、ともに減少した。貿易収支は955億7,900万ユーロの赤字だが、輸入の減少幅が輸出を大幅に上回ったため、貿易赤字は前年から242億9,700万ユーロ縮小した。

輸出を品目別にみると、最大の原子炉・ボイラー・機械類(構成比11.8%)が前年比0.6%減、2位の自動車(8.9%)が8.3%減、3位の電気機器(7.4%)が5.5%減となり、上位3品目が軒並み減少に転じた。

航空機・宇宙飛行体(構成比6.4%)は前年比2.2%増となったが、前年に比べ伸びは鈍化した。このうちエアバス航空機の輸出額は246億100万ユーロ(引き渡し機数270機)と前年の225億2,600万ユーロ(262機)から9.2%増となった。エアバスの最大輸出相手地域である欧州(構成比39.6%)向けは97億3,800万ユーロで、3.0%増の伸びにとどまった。アジアは22.8%増の96億2,300万ユーロ、米州は14.4%増の29億6,600万ユーロと持ち直した。アフリカは9億7,300万ユーロと前年の2倍を超える大幅増を記録した。中近東は61.4%減の8億2,300万ユーロと落ち込んだ。

エネルギー価格の低下を受けて、鉱物性燃料(構成比4.0%)は17.9%減となり、化学品、金属などエネルギー集約型製品の輸出も縮小した。各種化学工業製品(2.3%)は2.5%減、鉄鋼(2.3%)は8.7%減、有機化学品(2.0%)は16.8%減だった。

国・地域別では、輸出全体の54.5%を占めるEUは前年比4.4%減となった。最大輸出相手国のドイツ(構成比13.4%)が5.9%減、2位のイタリア(8.3%)が8.7%減と落ち込んだ。

EU域外で最大の輸出相手国である米国(8.2%)は7.4%増とプラスに転じた。主力品目である原子炉・ボイラー・機械類(特にターボジェット)、飲料・アルコール、航空機・宇宙飛行体が牽引した。英国(構成比6.3%)は主力の自動車・部品、飲料・アルコールが減少に転じ、2.2%増と伸びが鈍化した。中国(香港含む)(5.0%)は革製品・旅行用具・ハンドバッグと航空機・宇宙飛行体が不振で、5.5%減少した。

輸入は鉱物性燃料が大幅減

輸入を品目別にみると、鉱物性燃料(構成比12.0%)はエネルギー価格の下落を受けて前年から18.3%減少した。石油ガス(主に天然ガス)が33.9%減と前年に続き大幅減を記録した。原油は5.1%減、石油は4.9%減と減少が続いたが、減少幅は前年から鈍化した。電力は価格低下と国内発電量の回復を背景に70.6%減と落ち込んだ。

自動車(構成比11.0%)の輸入は前年比8.5%減となった。乗用車は4.0%減少した。このうちバッテリー式電気自動車(BEV)は19.2%減(台数は8.5%減)と落ち込んだ。プラグインハイブリッド(PHEV)は5.9%増(台数は3.6%減)、PHEVを除くハイブリッド車(HEV)は67.9%増(台数は71.2%増)となった。BEV、PHEV、HEVが乗用車輸入に占める割合は48.7%と上昇傾向を示した。

国内の民間設備投資が減少するなか、原子炉・ボイラー・機械類(12.0%)が0.9%減、電気機器(9.0%)は4.8%減と低迷した。

国・地域別にみると、全体の53.2%を占めるEUが前年比6.5%減少した。ドイツ(構成比12.8%)、ベルギー(7.8%)、イタリア(7.5%)、スペイン(7.0%)と主要国で減少が続いた。

EU域外では、アジア大洋州(構成比18.2%)が前年比4.6%減となった。中国(香港含む)(10.5%)は2.2%減で、主力の電気機器が3.9%減となったほか、自動車が29.4%減と押し下げ要因となった。特にBEVが金額および台数ともにほぼ半減した。2023年の環境報奨金制度[電気自動車(EV)の新車購入に対する補助金制度]の改正により、中国産BEVが同制度の適用除外となったことが響いた。ASEAN(3.1%)はベトナムが牽引して1.1%増、インド(1.4%)は3.2%増となった。韓国(1.0%)は自動車、電気機器が縮小し30.8%減と落ち込んだ。

鉱物性燃料を主力とするアフリカ(構成比5.2%)と中東(1.8%)は、エネルギー価格の低下を受けて、アフリカが前年比4.4%減、中東が16.9%減と前年に引き続き減少した。

表2‐1 フランスの主要品目別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 68,355 67,929 11.8 △ 0.6
自動車(鉄道用または軌道用除く) 55,905 51,294 8.9 △ 8.3
電気機器 45,394 42,885 7.4 △ 5.5
航空機・宇宙飛行体 36,429 37,236 6.4 2.2
医療用品 35,188 35,817 6.2 1.8
精油・調整香料・化粧品類 23,734 25,364 4.4 6.9
鉱物性燃料 27,895 22,893 4.0 △ 17.9
プラスチック 21,470 21,303 3.7 △ 0.8
飲料・アルコール・食酢 20,232 19,520 3.4 △ 3.5
光学機器・写真用機器・映画用機器 16,866 16,861 2.9 0.0
各種化学工業製品 13,596 13,252 2.3 △ 2.5
鉄鋼 14,495 13,233 2.3 △ 8.7
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 12,854 13,157 2.3 2.4
真珠・貴石・貴金属 11,084 12,744 2.2 15.0
有機化学品 14,162 11,780 2.0 △ 16.8
鉄鋼製品 8,472 8,469 1.5 0.0
酪農品・鳥卵・天然はちみつ 7,911 8,245 1.4 4.2
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 8,038 7,941 1.4 △ 1.2
穀物 7,631 6,625 1.1 △ 13.2
穀物、穀粉、でん粉 6,285 6,405 1.1 1.9
合計(その他を含む) 587,423 577,840 100.0 △ 1.6

〔注1〕各項目の原データの計算値と表示データの計算値が不一致なのは四捨五入処理のため。
〔注2〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表2‐2 フランスの主要品目別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 81,698 80,929 12.0 △ 0.9
鉱物性燃料 98,749 80,729 12.0 △ 18.3
自動車(鉄道用または軌道用除く) 80,726 73,881 11.0 △ 8.5
電気機器 63,641 60,590 9.0 △ 4.8
医療用品 32,666 29,832 4.4 △ 8.7
プラスチック 24,882 24,465 3.6 △ 1.7
光学機器・写真用機器・映画用機器 21,109 21,105 3.1 0.0
有機化学品 13,347 12,545 1.9 △ 6.0
鉄鋼製品 12,869 12,214 1.8 △ 5.1
航空機・宇宙飛行体 11,029 11,762 1.7 6.7
鉄鋼 13,221 11,687 1.7 △ 11.6
家具・寝具 11,677 11,567 1.7 △ 1.0
衣類・衣類付属品(メリヤス編み含む) 11,497 11,426 1.7 △ 0.6
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 11,403 11,379 1.7 △ 0.2
各種化学工業製品 11,553 11,163 1.7 △ 3.4
紙および板紙・製紙用パルプ 9,224 8,795 1.3 △ 4.7
真珠・貴石・貴金属 7,726 8,373 1.2 8.4
履物 8,261 8,209 1.2 △ 0.6
ゴム 7,797 7,928 1.2 1.7
精油・調整香料・化粧品類 7,362 7,886 1.2 7.1
合計(その他を含む) 707,300 673,419 100.0 △ 4.8

〔注1〕各項目の原データの計算値と表示データの計算値が不一致なのは四捨五入処理のため。
〔注2〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表3‐1 フランスの主要国・地域別輸出(FOB)[再輸出を含む総額ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 329,443 314,964 54.5 △ 4.4
階層レベル2の項目ユーロ圏 286,276 271,885 47.1 △ 5.0
階層レベル3の項目ドイツ 82,091 77,279 13.4 △ 5.9
階層レベル3の項目イタリア 52,539 47,973 8.3 △ 8.7
階層レベル3の項目ベルギー 47,886 45,044 7.8 △ 5.9
階層レベル3の項目スペイン 44,608 43,654 7.6 △ 2.1
階層レベル3の項目オランダ 22,796 23,048 4.0 1.1
階層レベル2の項目非ユーロ圏 43,167 43,079 7.5 △ 0.2
階層レベル3の項目ポーランド 14,490 15,049 2.6 3.9
階層レベル3の項目チェコ 6,228 6,421 1.1 3.1
階層レベル3の項目ルーマニア 5,196 5,265 0.9 1.3
階層レベル3の項目ハンガリー 4,360 4,341 0.8 △ 0.5
英国 35,773 36,563 6.3 2.2
スイス 20,551 19,386 3.4 △ 5.7
トルコ 11,817 12,300 2.1 4.1
ロシア 2,040 2,036 0.4 △ 0.2
アジア大洋州 73,461 73,698 12.8 0.3
階層レベル2の項目中国(香港含む) 30,361 28,683 5.0 △ 5.5
階層レベル2の項目ASEAN 16,437 13,948 2.4 △ 15.1
階層レベル3の項目シンガポール 9,818 7,410 1.3 △ 24.5
階層レベル3の項目ベトナム 1,188 1,498 0.3 26.1
階層レベル3の項目タイ 1,680 1,475 0.3 △ 12.2
階層レベル3の項目マレーシア 1,166 1,351 0.2 15.9
階層レベル2の項目日本 6,655 9,149 1.6 37.5
階層レベル2の項目インド 7,059 7,549 1.3 7.0
階層レベル2の項目韓国 5,984 6,754 1.2 12.9
階層レベル2の項目オーストラリア 3,630 3,973 0.7 9.5
北米(USMCA) 51,476 54,952 9.5 6.8
階層レベル2の項目米国 43,914 47,171 8.2 7.4
アフリカ 27,011 28,290 4.9 4.7
階層レベル2の項目モロッコ 6,284 7,077 1.2 12.6
階層レベル2の項目アルジェリア 4,474 4,788 0.8 7.0
階層レベル2の項目チュニジア 3,376 3,382 0.6 0.2
階層レベル2の項目ナイジェリア 633 528 0.1 △ 16.6
中東 15,042 14,793 2.6 △ 1.7
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC) 11,799 11,671 2.0 △ 1.1
中南米 9,552 9,750 1.7 2.1
階層レベル2の項目ブラジル 4,338 4,110 0.7 △ 5.3
合計(その他含む) 587,423 577,840 100.0 △ 1.6

〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に台湾を加えた合計値。
湾岸協力会議(GCC)は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。
USMCAは、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。このため、中南米にメキシコは含まず。
〔注2〕軍需品は除く。
〔注3〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

表3‐2 フランスの主要国・地域別輸入(CIF)[再輸出を含む総額ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 383,156 358,355 53.2 △ 6.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 331,563 308,313 45.8 △ 7.0
階層レベル3の項目ドイツ 90,704 86,164 12.8 △ 5.0
階層レベル3の項目ベルギー 60,421 52,391 7.8 △ 13.3
階層レベル3の項目イタリア 52,560 50,503 7.5 △ 3.9
階層レベル3の項目スペイン 50,289 47,067 7.0 △ 6.4
階層レベル3の項目オランダ 31,223 29,494 4.4 △ 5.5
階層レベル2の項目非ユーロ圏 51,594 50,042 7.4 △ 3.0
階層レベル3の項目ポーランド 16,416 16,132 2.4 △ 1.7
階層レベル3の項目チェコ 9,447 9,326 1.4 △ 1.3
階層レベル3の項目ルーマニア 6,373 6,254 0.9 △ 1.9
階層レベル3の項目ハンガリー 5,985 5,853 0.9 △ 2.2
英国 26,091 26,818 4.0 2.8
スイス 16,934 17,453 2.6 3.1
トルコ 11,251 10,799 1.6 △ 4.0
ロシア 3,661 4,111 0.6 12.3
アジア大洋州 128,696 122,735 18.2 △ 4.6
階層レベル2の項目中国(香港含む) 72,509 70,944 10.5 △ 2.2
階層レベル2の項目ASEAN 20,509 20,734 3.1 1.1
階層レベル3の項目ベトナム 6,430 6,951 1.0 8.1
階層レベル3の項目バングラデシュ 3,877 3,960 0.6 2.2
階層レベル3の項目タイ 3,456 3,495 0.5 1.1
階層レベル3の項目マレーシア 3,125 2,826 0.4 △ 9.6
階層レベル2の項目インド 8,994 9,286 1.4 3.2
階層レベル2の項目日本 9,787 8,884 1.3 △ 9.2
階層レベル2の項目韓国 9,793 6,780 1.0 △ 30.8
階層レベル2の項目台湾 4,757 4,177 0.6 △ 12.2
北米(USMCA) 58,993 59,313 8.8 0.5
階層レベル2の項目米国 51,929 52,547 7.8 1.2
アフリカ 36,641 35,048 5.2 △ 4.4
階層レベル2の項目モロッコ 7,401 7,356 1.1 △ 0.6
階層レベル2の項目アルジェリア 7,070 6,235 0.9 △ 11.8
階層レベル2の項目チュニジア 5,182 5,034 0.7 △ 2.9
階層レベル2の項目ナイジェリア 4,429 4,409 0.7 △ 0.5
中東 14,730 12,235 1.8 △ 16.9
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC) 11,359 8,710 1.3 △ 23.3
中南米 9,803 9,183 1.4 △ 6.3
階層レベル2の項目ブラジル 3,988 3,879 0.6 △ 2.7
合計(その他含む) 707,300 673,419 100.0 △ 4.8

〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に台湾を加えた合計値。
湾岸協力会議(GCC)は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。
USMCAは、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。このため、中南米にメキシコは含まず。
〔注2〕軍需品は除く。
〔注3〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕フランス税関

フランス政府、欧州委にEUメルコスールFTAの再交渉を要求

フランス政府は、欧州委員会が2024年12月に合意を発表したEUと南米諸国連合(メルコスール)間の自由貿易協定(FTA)に対し、強く反対する姿勢を示している。エマニュエル・マクロン大統領は2025年1月、「この協定は署名も批准もされておらず、発効していない」と述べ、環境保護の観点から再交渉が必要だと主張した。大統領は、現在の協定内容がEUの気候変動と生物多様性の目標に反するとして、特にブラジルの森林破壊や環境保護の不備を挙げ、より厳格な環境対策を盛り込むよう欧州委員会に再交渉を求めた。農業団体からも反発が強く、南米からの大量の食品輸入がフランス農業を圧迫するとの懸念が広がっている。

一方、2017年から暫定的に適用されているEUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)の批准は、フランス議会で停滞が続いている。マクロン大統領は批准を支持しているものの、2024年3月には、保守政党「共和党」が最大勢力を占める上院がこれを否決した。下院は2019年に一度批准を承認しているが、上院の決定を受けて再審議が予定されている。2024年7月の総選挙でマクロン大統領の支持政党が少数与党に転落したことから、下院での批准承認は難航する見通しだ。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は前年比27.7%減、EUや英国の投資が減少

フランス銀行によると、2024年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、251億5,300万ユーロと前年の348億600万ユーロから27.7%減少した。企業買収や工場建設など株式資本に関わる直接投資額は前年比42.1%増の271億3,700万ユーロとなる一方、再投資収益は120億ユーロと前年をおよそ34億ユーロ下回った。また、海外の親会社からフランス子会社への貸付といった「その他の直接投資額」は前年の2億7,600万ユーロから139億8,500万ユーロの引き揚げ超過となった。

業種別にみると、製造業は30億1,900万ユーロとなり、6億4,900万ユーロの引き揚げ超過を計上した前年から流入超に転じた。製造業の内訳をみると、衣類・繊維が14億2,900万ユーロと前年から78.2%増加したほか、設備機械が11億100万ユーロと前年の3.7倍に膨らんだ。自動車は16.1%増の8億2,900万ユーロと堅調な伸びを見せた。

非製造業では金融・保険が106億1,100万ユーロと前年から13.5%増加した。法務・監査など専門的な知識・技術を必要とする法人向けサービスは前年比7.7%増の80億2,500万ユーロとなったが、前年は流入超だった運送・倉庫、情報・通信、商業・修理がそれぞれ25億2,700万ユーロ、21億100万ユーロ、11億7,400万ユーロの引き揚げ超過に転じた。

国・地域別にみると、EUが前年比23.0%減の117億3,000万ユーロで、このうちユーロ圏が15.6%減の112億3,000万ユーロだった。主要国のドイツが前年比20.9%増の55億4,400万ユーロとなり、前年は引き揚げ超過だったルクセンブルグが49億7,400万ユーロの流入超に転じたが、前年はEU域内で最大の投資元国だったオランダが36.2%減の56億6,100万ユーロと減少した。EU域外では、スイスが70.6%増の78億8,800万ユーロと大きく伸びる一方、英国からの投資は30億200万ユーロと前年から半減した。

表4 フランスの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
製造業 △ 649 3,019 36,786 △ 3,932
階層レベル2の項目衣類、繊維 802 1,429 78.2 11,049 △ 450
階層レベル2の項目設備機械 297 1,101 270.7 △ 267 62
階層レベル2の項目自動車 714 829 16.1 942 1,014 7.6
階層レベル2の項目医薬 1,213 460 △ 62.1 2,389 1,408 △ 41.1
階層レベル2の項目化学 262 375 43.1 1,403 225 △ 84.0
階層レベル2の項目木材、製紙 △ 287 262 △ 309 91
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック △ 932 △ 10 362 △ 787
階層レベル2の項目食品 2,563 △ 643 6,833 △ 4,208
階層レベル2の項目金属製品 △ 1,716 △ 854 360 325 △ 9.7
階層レベル2の項目情報・電子・光学機器 △ 1,142 △ 989 4,741 △ 3,158
階層レベル2の項目精油 △ 1,108 △ 621 △ 493
階層レベル2の項目航空機・宇宙 2,110 1,106 △ 47.6
金融・保険 9,352 10,611 13.5 9,137 7,661 △ 16.2
専門的な知識・技術を必要とする法人向けサービス(法務・監査、コンサルタントなど) 7,454 8,025 7.7 6,735 2,843 △ 57.8
電力・ガス・蒸気・空調 △ 2,185 785 △ 373 2,694
不動産 891 576 △ 35.4 △ 1,354 △ 1,438
水・廃水処理、廃棄物処理、汚染浄化 △ 14 79 △ 263 △ 855
鉱業 381 △ 211 16,553 △ 507
建設 2,177 △ 807 5 1,352 26,940.0
ホテル・レストラン 293 △ 940 273 1,438 426.7
商業・修理業 7,909 △ 1,174 2,847 1,700 △ 40.3
情報・通信 3,773 △ 2,101 6,037 △ 2,901
階層レベル2の項目テレコム 1,664 299 △ 82.0 2,042 △ 1,002
階層レベル2の項目情報関連サービス 1,762 △ 1,817 3,661 △ 96
運送・倉庫業 4,526 △ 2,527 △ 2,729
合計(その他含む) 34,806 25,153 △ 27.7 82,762 15,403 △ 81.4

(出所)フランス銀行

表5 フランスの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
欧州 27,804 23,361 △ 16.0 49,369 19,948 △ 59.6
階層レベル2の項目EU 15,232 11,730 △ 23.0 35,669 12,165 △ 65.9
階層レベル3の項目ユーロ圏 13,301 11,230 △ 15.6 32,248 15,171 △ 53.0
階層レベル4の項目オランダ 8,868 5,661 △ 36.2 11,301 4,473 △ 60.4
階層レベル4の項目ドイツ 4,587 5,544 20.9 2,924 2,052 △ 29.8
階層レベル4の項目ルクセンブルグ △ 1,154 4,974 12,297 1,772 △ 85.6
階層レベル4の項目スペイン 129 738 472.1 4,358 207 △ 95.3
階層レベル4の項目イタリア △ 1,103 317 4,024 2,337 △ 41.9
階層レベル4の項目アイルランド △ 2,068 △ 769 △ 1,583 920
階層レベル4の項目ベルギー 3,958 △ 4,601 △ 2,114 1,358
階層レベル3の項目非ユーロ圏 1,931 500 △ 74.1 3,421 △ 3,006
階層レベル4の項目ルーマニア 17 230 1,252.9 315 69 △ 78.1
階層レベル4の項目ポーランド △ 115 159 2,193 △ 2,917
階層レベル4の項目チェコ 249 49 △ 80.3 1,207 △ 39
階層レベル2の項目スイス 4,623 7,888 70.6 △ 548 2,508
階層レベル2の項目英国 6,132 3,002 △ 51.0 14,250 2,358 △ 83.5
階層レベル2の項目ロシア 104 5 △ 95.2 △ 116 62
階層レベル2の項目トルコ 108 △ 7.0 1,047 254 △ 75.7
アジア 6,777 1,405 △ 79.3 11,566 △ 1,098
階層レベル2の項目日本 1,671 531 △ 68.2 1,365 657 △ 51.9
階層レベル2の項目シンガポール 3,988 527 △ 86.8 592 △ 2,402
階層レベル2の項目韓国 188 71 △ 62.2 471 101 △ 78.6
階層レベル2の項目インド △ 62 △ 5 488 304 △ 37.7
階層レベル2の項目中国(香港含む) 40 △ 410 591 368 △ 37.7
米州 △ 110 590 16,364 △ 2,654
階層レベル2の項目米国 △ 360 692 8,220 △ 5,143
階層レベル2の項目カナダ 237 394 66.2 4,740 1,093 △ 76.9
階層レベル2の項目ブラジル △ 159 165 △ 1,834 △ 766
中近東 595 283 △ 52.4 7,012 △ 1,253
アフリカ 501 △ 39 2,246 671 △ 70.1
合計(その他含む) 34,806 25,153 △ 27.7 82,762 15,403 △ 81.4

〔出所〕 フランス銀行

フランスは、エマニュエル・マクロン大統領が海外の大手企業のトップを招いて投資先としての魅力をアピールする外資誘致会合「チューズ・フランス」を毎年開催するなど、対フランス投資誘致に力を入れている。2024年5月の第7回会合には、180人以上の外国企業の経営者らが参加し、米マイクロソフトのAIインフラ関連投資プロジェクトや米アマゾンの物流ネットワーク強化プロジェクトなど、合計56件の大型投資プロジェクトが発表された。

外国からの投資を積極的に受け入れる一方で、安全保障や重要産業などの戦略的な分野では自国企業を守るために外資規制を強めている。経済・財務・産業・デジタル主権省財務総局の2025年7月の発表によれば、2024年の外資規制の対象投資件数は前年比26.8%増の392件となった。申請の内訳は認可申請が327件、外国企業またはフランス企業による事前認可の要否確認を含めた事前申請が61件、フランス企業の議決権10%超取得が4件だった。財務総局が2024年に下した決定は337件で、このうち182件が実際に外資規制の対象事業と判断された上で認可された。ただし、認可された案件の54%に相当する99件は国益の保護を理由とした条件付きの認可となった。2024年に認可を受けた投資案件をカテゴリー別に見ると、26%が防衛・安全保障分野で前年(22%)から拡大する一方、インフラ、エネルギー・水、公衆衛生、食糧安全は37%で前年(43%)から縮小した。

対外直接投資は前年比81.4%減、製造業は引き揚げ超過に

2024年の対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は154億300万ユーロと前年の827億6,200万ユーロから81.4%減少した。株式資本に関わる直接投資額は208億900万ユーロと前年の391億6,100万ユーロからほぼ半減した。再投資収益も129億ユーロと、前年に比べほぼ半減した。その他の直接投資は183億600万ユーロの引き揚げ超過を計上した。

業種別にみると、製造業は前年の367億8,600万ユーロから39億3,200万ユーロの引き揚げ超過に転じた。製造業の内訳をみると、自動車は10億1,400万ユーロと前年から7.6%増加したが、航空機・宇宙は11億600万ユーロと前年から半減した。また、前年は大幅な流出超を計上した衣類・繊維、食品は、それぞれ4億5,000万ユーロ、42億800万ユーロの引き揚げ超過となった。非製造業では金融・保険が16.2%減の76億6,100万ユーロ、法人向けサービスは57.8%減の28億4,300万ユーロと減少した。

国・地域別にみると、EUが121億6,500万ユーロと前年から65.9%減少した。ユーロ圏は53.0%減の151億7,100万ユーロだった。このうち、前年はEU域内で最大の投資相手国だったルクセンブルグが85.6%減の17億7,200万ユーロ、オランダが60.4%減の44億7,300万ユーロと大幅減になった。ドイツ、イタリア、スペインの主要国向けも大きく縮小した。EU域外では、英国が23億5,800万ユーロと前年に比べ83.5%減少したほか、米国は51億4,300万ユーロの引き揚げ超過を計上した。

表6-1 フランスの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT マイクロソフト(Microsoft) 米国 2024年5月 40億ユーロ マイクロソフトのブラッド・スミス副会長兼プレジデントはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が毎年開催する外資誘致に向けた「チューズ・フランス」サミットに参加し、クラウドおよびAIインフラストラクチャー、AIスキリング、フレンチテックの加速に40億ユーロを投資すると発表した。2027年までに100万人を訓練し、2,500社のAIスタートアップを支援する。
物流 アマゾン(Amazon) 米国 2024年5月 12億ユーロ 米アマゾンは「チューズ・フランス」サミットにおいて、フランス国内の物流ネットワークを強化するとともにアマゾン・ウェブ・サービスのクラウドインフラ開発に12億ユーロ超を投資すると発表した。
自動車 イヴェコグループ(Iveco Group) イタリア 2024年10月
非公開
バス事業部門のイヴェコバスは、ゼロエミッション車への移行を加速するため、アノネー工場の電動化を決定。ロルテ工場のみで生産されていた電気バスの生産を自社の組み立てラインに統合するとともに、燃料電池モデルの車両生産を可能とする。また同グループは、既存工場やフランスの研究開発拠点を活用してゼロエミッション車のプラットフォームを開発するため6億ユーロの投資計画を進めている。
医薬 ファイザー(Pfizer) 米国 2024年5月 5億ユーロ ファイザーは、フランスにおける5年間の投資計画の一環として、5億ユーロを投資する意向を発表した。フランスの研究開発(R&D)エコシステムを強化する。
IT NTTデータグループ 日本 2024年2月 非公開 海外事業を手掛けるNTTリミテッド(NTT Ltd.)はパリに初のデータセンターキャンパスを開設・運営すると発表した。同計画は、同社の2023~2027年度にかけてのデータセンター増強に向けた総額100億ドルの投資の一環。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 フランスの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
アルコール飲料 ビーム・ホールディングス(Beam Holdings) カンパリ・グループ(Campari Group) イタリア 2024年4月 11億7,000万ドル イタリアのカンパリ・グループは、高級コニャック「クルボアジェ」を傘下に持つビーム・ホールディングスの全株式を取得し、買収を完了したと発表した。
ITインフラ TDFフィーブル(TDF Fibre) CVC DIF オランダ 2024年12月 非公開 フランスのITインフラ大手TDFとフランスの公的金融機関「地域銀行(Banque des Territoires)」は、オランダの投資ファンドCVC DIFへのTDF傘下の光ファイバーネットワーク事業TDFフィーブルの全株式売却の完了を発表した。
鉄鋼製品 バロレック(Vallourec) アルセロールミタル(AlcelorMittal) ルクセンブルグ 2024年8月 9億5,500万ユーロ アルセロールミタルは、エネルギー市場や産業用途向けの高付加価値な鋼管を製造するバロレックの株式のおよそ28.4%分を取得したことを発表した。アルセロールミタルにとり、下流市場への参入機会となる。
医薬 アモリット・ファーマ(Amolyt Pharma) アストラゼネカ(AstraZeneca) 英国 2024年7月 10億5,000万ドル アストラゼネカは、希少な内分泌疾患の新規治療法を開発するバイオテクノロジー企業「アモリット・ファーマ」の買収を完了したと発表した。
食品 マドモアゼル・デセールグループ(Mademoiselle Desserts Group) エミ・グループ(Emmi Group) スイス 2024年7月 非公開 スイスのエミ・グループは、フランスの高級パティスリー「マドモアゼル・デセール」の買収に向けた売却オプション契約を締結したと発表した。(10月買収完了)。同買収により、エミはプレミアムデザート市場での国際的なプレゼンスを強化し、フランス風デザートを含む製品ポートフォリオを拡充する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-1 フランスの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
エネルギー トタルエナジーズ
(TotalEnergies)
アンゴラ 2024年5月 非公開 トタルエナジーズは、アンゴラのカミーニョ深海油田開発プロジェクトの最終投資決定を発表した。トタルエナジーズ(40%)、マレーシア国営石油企業ペトロナス(Petronas)(40%)、アンゴラ国営石油企業ソナンゴル(Sonangol)(20%)の3社が共同でアンゴラ沖100km、水深1,700mの地点にあるカメイアおよびゴルフィーニョ油田を開発する。
エネルギー(水素開発) HDFエナジー(HDF energy) チュニジア 2024年8月 30億ユーロ HDFエナジーは、チュニジアのファトマ・タベット・シブーブ産業・鉱山業・エネルギー相と覚書を締結したと発表した。チュニジアで約30億ユーロを投資し、大規模なグリーン水素生産プロジェクトを開始する。欧州市場とチュニジア国内市場、双方の需要に対応する。
製薬 サノフィ(Sanofi) ドイツ 2024年8月 13億ユーロ フランスの製薬大手サノフィは、フランクフルト・ヘーヒストにある自社のバイオキャンパスにおいて、最先端のインスリン製造施設を新たに建設する計画を発表した。2029年までに13億ユーロを投資する計画。
製薬 サノフィ(Sanofi) 中国 2024年12月 10億ユーロ サノフィは、中国の北京市経済情報化局、北京経済技術開発区管理委員会と協力覚書を締結したと発表した。同社は約10億ユーロを投資し、北京経済技術開発区でインスリンの原薬の生産拠点を新設する。これは中国における同社4カ所目の生産拠点で、同社の中国における単一の投資案件としては最大規模となる。
製薬 サノフィ(Sanofi) インド 2024年7月 4億ユーロ サノフィは、インド・ハイデラバードのグローバルキャパシティセンターの拡張計画を発表。2年間で最大約2,600人の従業員を収容できる規模となり、同社の4つのグローバルハブの中で最大の拠点となる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-2 フランスの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
サンゴバン
(Saint-Gobain)
建築素材 CSR オーストラリア 2024年2月 27億ユーロ フランスの建材大手サンゴバンは、オーストラリアの建材企業CSRの全株式を取得することで最終合意に達したと発表した。本買収により、同社はアジア太平洋地域、とりわけオーストラリア市場での存在感を大きく高め、軽量かつ持続可能な建材分野における世界的リーダーとしての地位を強化する。
ラ・フランセーズ・デ・ジュー(La Française des Jeux)
娯楽
キンドレッドグループ
(Kindred Group)
スウェーデン 2024年10月 25億ユーロ フランスの公営くじ運営会社ラ・フランセーズ・デ・ジュー(FDJ)は、スウェーデンのオンラインカジノ大手キンドレッドグループの買収を発表した。株式取得比率は90.66%で、買収条件である90%超の取得を達成した。本買収により、FDJはフランスやアイルランドでの独占的な宝くじ事業に加え、欧州全体でのスポーツベッティングやオンラインゲーム事業の競争力も強化する。
サノフィ(Sanofi) バイオ医薬 インヒブリックス(Inhibrx) 米国 2024年5月 17億ドル サノフィは、米国のバイオ医薬品企業インヒブリックスの買収を正式に完了したと発表した。
バンシコンセッションズ(Vinci Concessions) 空港運営 エディンバラ空港(Edinburgh Airport) 英国 2024年6月 12億7,000万ポンド バンシコンセッションズの子会社であるバンシエアポートは、エディンバラ空港の過半数株式(50.01%)を取得し、買収を完了した。これにより、バンシエアポートは英国で3つの空港(ロンドン・ガトウィック、エディンバラ、ベルファスト国際空港)を所有・運営することになった。
アルディアン
(Ardian)
空港運営 FGP トプコ(FGPTopco) 英国 2024年12月
非公開
フランスの大手投資会社アルディアンは、ヒースロー空港の持株会社FGP トプコの22.6%の株式を取得し、筆頭株主となったと発表した。この株式は、スペインのフェロビアルおよび他の株主から取得したもので、サウジアラビアの公共投資基金(PIF)も15%を取得した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日輸出が急伸

2024年の対日貿易は、輸出が前年比37.5%増の91億4,900万ユーロ、輸入は9.2%減の88億8,400万ユーロとなった。輸出の大幅な伸びを受けて、対日貿易収支は前年の31億3,200万ユーロの赤字から2億6,500万ユーロの黒字に転じた。フランスの貿易全体に占める日本の構成比を見ると、輸出は前年を0.5ポイント上回る1.6%、輸入は前年から0.1ポイント低い1.3%だった。

対日輸出は最大の革製品・旅行用具・ハンドバッグ(構成比16.1%)が前年比3.7倍、航空機・宇宙飛行体(15.7%)が98.8%増となり、全体を押し上げた。飲料・アルコール・食酢(8.1%)は前年に続き減少したが、医療用品(6.8%)は53.6%増、無機化学品(5.7%)は2.4倍、真珠・貴石・貴金属(4.8%)は97.9%増と高い伸びを示した。

日本からの輸入は原子炉・ボイラー・機械類(構成比24.6%)、自動車(19.1%)、電気機器(15.1%)、光学機器・写真用機器・映画用機器(7.6%)、各種化学工業品(3.8%)の上位5品目が全体の70.2%を占めた。原子炉・ボイラー・機械類が前年比13.5%減、電気機器が10.5%減と減少傾向が続いたほか、自動車も8.4%減と、これまでの増加傾向から減少に転じた。医療用品は34.2%減の大幅減となった。

表8-1 フランスの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
革製品・旅行用具・ハンドバッグ 398 1,476 16.1 270.6
航空機および宇宙飛行体 723 1,438 15.7 98.8
飲料・アルコール・食酢 765 737 8.1 △ 3.6
医療用品 403 620 6.8 53.6
無機化学品 217 520 5.7 139.2
真珠・貴石・貴金属 221 437 4.8 97.9
衣類・衣類付属品(メリヤス編み除く) 424 384 4.2 △ 9.3
原子炉・ボイラー・機械類 405 362 4.0 △ 10.6
精油・調整香料・化粧品類 337 360 3.9 6.8
有機化学品 203 244 2.7 20.2
光学機器・写真用機器・映画用機器 223 214 2.3 △ 3.8
電気機器 220 214 2.3 △ 2.8
自動車(鉄道用または軌道用除く) 250 191 2.1 △ 23.7
履物 80 163 1.8 103.8
衣類・衣類付属品(メリヤス編み含む) 101 163 1.8 62.0
合計(その他含む) 6,655 9,149 100.0 37.5

〔出所〕フランス税関

表8-2 フランスの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
原子炉・ボイラー・機械類 2,530 2,189 24.6 △ 13.5
自動車(鉄道用または軌道用除く) 1,851 1,695 19.1 △ 8.4
電気機器 1,500 1,342 15.1 △ 10.5
光学機器・写真用機器・映画用機器 673 677 7.6 0.6
各種化学工業品 350 335 3.8 △ 4.3
医療用品 502 331 3.7 △ 34.2
プラスチック 245 242 2.7 △ 1.0
有機化学品 226 210 2.4 △ 7.2
染料、顔料その他の着色料 179 207 2.3 15.9
写真用又は映画用の材料 165 168 1.9 2.1
鉄鋼製品 79 129 1.4 62.7
雑品 115 122 1.4 6.5
がん具、遊戯用具及び運動用具 186 117 1.3 △ 36.9
ゴム 89 105 1.2 17.7
航空機および宇宙飛行体 100 100 1.1 △ 0.0
合計(その他含む) 9,787 8,884 100.0 △ 9.2

〔出所〕フランス税関

日本からの直接投資は大幅減も、多様な分野で新規案件

フランス銀行の国際収支統計によれば、2024年のフランスにおける日本からの直接投資受入額は5億3,100万ユーロとなり、前年の16億7,100万ユーロから大幅減となった。株式資本に関わる直接投資額は3億1,000万ユーロとなり、前年の8,700万ユーロを大きく上回った。再投資収益は1億6,600万ユーロと前年から倍増したが、その他の直接投資は前年の15億1,100万ユーロから5,500万ユーロに減少した。

KADOKAWAは2024年1月、欧州の出版系エンターテイメントグループであるメディア・パルティシパシオン(Media-Participations)との間で、世界のフランス語圏市場向けに日本や韓国発のコンテンツを翻訳出版する合弁会社を設立するべく、同グループ傘下のコミック出版社エディシオン・デュピュイ(Editions Dupuis)の既存出版レーベルであるヴェガ(Vega)関連の事業を分社化し、KADOKAWAがヴェガ株式の51%を取得することで合意したと発表した。新会社ヴェガを通じ、メディア・パルティシパシオンが有する強力なコミックの出版流通インフラや販売・プロモーションネットワークを活用しつつ、KADOKAWA作品に限らず、幅広く日本や韓国の作品に焦点を当てると同時に、欧州においては未だ初期的な成長段階にある日本のライトノベル作品の展開に加え、欧州発のIP(知的財産)のコミカライズなどを含む新規領域への参入に取り組む。

NTTデータグループは2月、パリに初となるデータセンターキャンパスを開設・運営すると発表した。総額100億ドルを投資する世界的なデータセンター拡大計画の一環として、パリ市の南約50キロメートルに位置する14.4ヘクタールの敷地に3つのデータセンターを設置する。

メニコンは3月、特殊コンタクトレンズ(眼に疾患を抱える患者向けコンタクトレンズ)のフィッティング、販売を手掛けるヒューマックスグループ(Humax Group)の株式を100%取得し、完全子会社化したと発表した。これにより、フランスにおける特殊レンズ領域のリーディングカンパニーとして、フィッティングサービスの提供を通じて眼科医へのサポートをさらに強化し、特殊レンズの普及に繋げる。

ニデックのモーション&エナジー事業本部傘下のニデック・コンバージョンは5月、エネルギー転換の進展を背景にした蓄電池エネルギーシステム、電気自動車(EV)充電器、コンバーターなどの需要拡大に対応するため、フランス中南東部サンテティエンヌ地域に新工場を建設すると発表した。最大で1,700万ユーロを投資し、115名の雇用創出を見込む。

住友商事は6月、炭素繊維強化プラスチック成型メーカーであるエプシロンコンポジット(Epsilon Composite)への出資を完了したと発表した。炭素繊維関連ビジネスのさらなる成長のため、特に大きな成長が期待されるバリューチェーンの川下へ収益基盤を戦略的に拡充する。エプシロンコンポジットが製造する架空送電線用芯材の販売先を拡大し、再生可能エネルギーの普及促進に貢献する。

オタフクソースも同じく6月、パリに支店を開設したと発表した。同社の欧州における国別の売上は、上位からスペイン、ドイツ、オランダ、英国、そしてフランスの順だとしつつ、パリは欧州のビジネスの中心でハブ機能が高く、どの上位売上国にもアクセスしやすいことや、外食産業の規模が大きいこと、また、ファッション・アート・グルメなどの文化が根づいており、その発信による影響力があると説明した。お好み焼きをはじめとする鉄板粉もの文化の拡大、ならびに日本食総合調味料メーカーとしての認知の向上により、同社は欧州における2027年9月期の売上目標を10億円に定めた。

フランスからの直接投資も半減、投資各社は日本市場の開拓狙う

2024年のフランスから日本への直接投資額は、6億5,700万ユーロと前年の13億6,500万ユーロからほぼ半減した。株式資本に関わる直接投資額は6,600万ユーロとなり、前年の3億7,800万ユーロの引き揚げ超過から流出超に転じた。再投資収益は1億6,000万ユーロと前年の11億500万ユーロから大幅に減少した。その他の直接投資額は前年比32.4%減の4億3,100万ユーロだった。

動物用医薬品・ヘルスケア製品メーカーのビルバック(Virbac)は2024年3月、オリックスとの間で、同社傘下の動物用医薬品子会社ささえあホールディングスを約2億 8,000 万ユーロで買収する最終契約を締結したと発表した。本買収により、日本における産業動物向けワクチン市場、特に牛部門において主導的地位を獲得し、主要動物種すべてに対応した動物用医薬品市場で広範なポートフォリオを手に入れる。

投資会社ユーラゼオ(Eurazeo)は6月、アジア地域でのプレゼンスを高めるため、東京に拠点を設立したと発表した。2013年に中国、2019年に韓国、2020年にシンガポールの拠点を設立しており、東京はアジアで4番目の拠点。

ブロックチェーン技術を活用したソフトウェアを開発するスタートアップ企業クロスザエイジズ(Cross The Ages)は8月、日本市場における営業活動を目的として、東京に日本法人を設立した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.7 1.6 1.1
1人当たりGDP (米ドル) 41,097 44,792 46,204
消費者物価上昇率 (%) 5.2 4.9 2.0
失業率 (%) 7.1 7.5 7.3
貿易収支 (億ユーロ) △ 1,846 △ 1,199 △ 956
経常収支 (億ユーロ) △ 377 △ 294 27
外貨準備高(グロス) (100万米ドル、期末値) 100,429 79,201 78,429
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 6,453,781 6,931,898 7,304,497
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.9496 0.9248 0.9239


失業率:フランス本土のみ、各年第4四半期の数値、経常収支:国際収支ベース
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:フランス国立統計経済研究所(INSEE)
貿易収支:フランス税関
経常収支、対外債務残高(グロス):フランス中央銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF