スペインの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のスペイン経済は地政学リスクが増す中、個人消費の伸びにより際立った成長を示す。
  • 輸出入は前年並みを維持し、ハイブリッド車やオリーブ油、航空機の輸出が好調。
  • 復興基金の後押しにより、再エネや水素、EV関連のビジネスに外国投資が流入。
  • 欧州のエネルギー転換を牽引する拠点として存在感を強める。

公開日:2025年11月13日

マクロ経済 
通商・地政学リスクが高まる中、力強い成長

2024年の実質GDP成長率は3.2%と、前年の2.7%から上昇、2023年末の予測(1.6%)を大幅に上回った。通商や地政学上のリスクなどが高まる中で、スペイン経済はEU主要国の中で例外的な堅調さを示した。雇用の力強い拡大と名目賃金の上昇に加え、エネルギー価格高騰が沈静化し、あわせて食品の付加価値税率の軽減や公共交通料金補助といった物価抑制策も継続された。これらの要因によって、インフレ率が鈍化するとともに、実質購買力が改善し、個人消費が押し上げられた。さらに、移民流入に伴う人口増加によって労働力供給が拡大し、雇用環境が活性化した。EU復興基金の執行が進展し、インフラやデジタル化、グリーン関連プロジェクトへの投資が加速したことで、建設・設備投資が下支えされた。加えて、インバウンド観光も好調を維持し、外需面からも成長を後押しした。

表1 スペインの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 2.7 3.2 2.7 3.3 3.3 3.3 2.8
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.8 2.9 2.2 2.5 2.9 3.7 3.7
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.2 4.1 5.0 3.5 4.3 3.8 2.2
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 1.6 3.0 2.4 3.0 2.1 4.4 4.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 2.8 3.1 1.8 2.8 4.7 3.2 2.8
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 0.3 2.4 1.1 1.1 3.7 3.8 4.3

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。2024年トータルは暫定値
〔出所〕スペイン国家統計局(INE)

貿易 
輸出入ともに前年並みのなかハイブリッド車の輸出が大幅増加

2024年の輸出は前年比0.1%増の3,844億6,500万ユーロ、輸入が0.2%増の4,247億4,100万ユーロと、いずれもほぼ前年並みの水準で、貿易赤字は402億7,600万ユーロだった。

輸出を品目別にみると、最大構成比(19.4%)の資本財(自動車を除く)は前年比0.2%減と横ばいだったが、そのうち航空機(1.7%)は需要増や整備・保守事業の拡大により49.6%増となった。一方、2023年に好調だった商用車(構成比2.1%、資本財に分類)は20.8%減、台数ベースで18.4%減と低調だった。自動車(部品含む)(13.8%)も主要輸出先である欧州市場における電気自動車(EV)の需要低下などにより、前年の20.5%増から一転して1.0%減と振るわなかった。ただ、ハイブリッド車(HEV)に関しては、ルノーが車種を増やして生産拡大したことなどが要因となって、前年比2.4倍と好調だった(2025年9月16日付地域・分析レポート参照)。鉱物・エネルギー(7.3%)は、資源安の進行を背景に前年同様に輸出減となった。食料品(18.7%)は6.1%増と前年に続いて好調で、特に主力のオリーブ油(1.7%)は前年の歴史的不作からの回復により、最大輸出先のイタリア、米国向けを中心に46.4%増となった。前年に大きく減少した化学品(16.3%)や中間財(9.7%)は、需要減などの影響を受け、2024年もそれぞれ1.3%減、2.8%減と低調が続いた。

輸出を国・地域別にみると、EU域内(構成比61.8%)は前年比1.1%の微減となった。ユーロ圏(53.6%)は1.4%減だったが、最大輸出相手国のフランス(15.0%)が自動車部品や電力融通の減少により3.9%減となったことが大きい。前年に6.6%増だったドイツ(10.3%)は1.1%減を記録した。非ユーロ圏(8.2%)では景気の堅調なポーランド(2.5%)への輸出が引き続き好調で、前年の9.9%増に続き、5.7%増を記録した。EU域外最大の輸出先である英国(6.2%)は乗用車や航空機用ジェットエンジンの輸出が好調で5.2%増となった。米国(4.7%)は主要輸出品のガソリンが急減し、3.9%減となった。アジア最大の輸出先である中国(1.9%)は医薬品や豚肉の減少を銅精鉱の伸びが相殺し、0.5%の微減となった。

再エネの伸びにより天然ガス輸入が大幅減

輸入を品目別にみると、鉱物・エネルギー(構成比13.8%)の減少(前年比7.1%減)が目立った。特に天然ガス(2.1%)は27.8%の大幅減となった。中でも天然ガス全体の輸入額の約60%を占める液化天然ガス(LNG)が38.0%減少したことが影響した。これは国際的なガス価格の低下に加え、再生可能エネルギー(再エネ)による発電が伸び、ガス火力発電向け需要が減少したことや暖冬で備蓄ニーズが低下したことが背景にある。最大品目の資本財(構成比22.6%)は0.9%増だったが、ソーラーパネルとリチウムイオン電池が約4割減となった。いずれも輸入の半分以上を占める中国が大きく影響しており、全体の数量ベースではそれぞれ0.9%増、13.0%減だったことを踏まえると、需要低迷よりも価格下落の影響によるものと考えられる。

輸入を国・地域別にみると、EU域内(構成比48.8%)ではフランス(8.7%)が6.8%減で、乗用車28.2%減、商用車20.5%減、自動車部品19.6%減が要因だった。非ユーロ圏(7.5%)は4.1%減となり、EU全体で0.8%の微減となった。EU域外では英国(2.4%)が5.7%減、フランスと同じく自動車関連の13.0%減が要因だった。また、中東(1.8%)は石油および同精製品が24.7%減となり、全体で17.0%の大幅減となった。米国(6.6%)は0.1%減だった。中東からの石油および同精製品の輸入減を米国からの輸入で大部分を補ったものの、輸入額自体はほぼ前年並みにとどまった。ドイツに次いで2位の輸入国である中国(10.6%)は2.1%増だった。最大品目は電気自動車(EV)だが、EUが中国製のバッテリー式電気自動車(BEV)に対して課した相殺関税の回避のために40.2%減となった。

表2 スペインの主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
資本財(自動車を除く) 74,599 74,431 19.4 △ 0.2 95,301 96,155 22.6 0.9
食料品 67,650 71,794 18.7 6.1 52,644 53,749 12.7 2.1
化学品 63,631 62,787 16.3 △ 1.3 67,466 68,070 16.0 0.9
自動車(部品含む) 53,748 53,211 13.8 △ 1.0 45,019 44,623 10.5 △ 0.9
中間財 38,425 37,358 9.7 △ 2.8 30,169 30,558 7.2 1.3
消費財 33,382 34,263 8.9 2.6 45,688 47,199 11.1 3.3
鉱物・エネルギー 30,945 28,085 7.3 △ 9.2 62,991 58,528 13.8 △ 7.1
原材料 8,386 8,644 2.2 3.1 11,738 12,440 2.9 6.0
耐久消費財 5,936 5,954 1.5 0.3 10,261 10,883 2.6 6.1
合計(その他を含む) 384,098 384,465 100.0 0.1 423,723 424,741 100.0 0.2

〔注1〕EU域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕自動車には商用車を含まず。商用車は資本財に含む。
〔出所〕スペイン税関

表3 スペインの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 240,376 237,695 61.8 △ 1.1 209,080 207,410 48.8 △ 0.8
階層レベル2の項目ユーロ圏 209,205 206,237 53.6 △ 1.4 175,727 175,420 41.3 △ 0.2
階層レベル3の項目フランス 59,944 57,592 15.0 △ 3.9 39,436 36,745 8.7 △ 6.8
階層レベル3の項目ドイツ 39,977 39,531 10.3 △ 1.1 46,834 47,760 11.2 2.0
階層レベル3の項目イタリア 33,076 33,354 8.7 0.8 28,454 29,545 7.0 3.8
階層レベル3の項目ポルトガル 31,971 32,523 8.5 1.7 16,364 16,673 3.9 1.9
階層レベル2の項目非ユーロ圏 31,171 31,458 8.2 0.9 33,352 31,990 7.5 △ 4.1
階層レベル3の項目ポーランド 9,268 9,796 2.5 5.7 8,297 8,589 2.0 3.5
英国 22,684 23,852 6.2 5.2 10,806 10,193 2.4 △ 5.7
トルコ 8,764 9,014 2.3 2.9 9,136 9,445 2.2 3.4
スイス 6,622 5,726 1.5 △ 13.5 4,734 4,627 1.1 △ 2.3
ロシア 850 783 0.2 △ 7.9 3,160 2,526 0.6 △ 20.1
北米 21,172 20,390 5.3 △ 3.7 31,067 30,511 7.2 △ 1.8
階層レベル2の項目米国 18,907 18,179 4.7 △ 3.9 28,226 28,193 6.6 △ 0.1
アジア大洋州 21,071 21,970 5.7 4.3 75,203 77,761 18.3 3.4
階層レベル2の項目中国 7,505 7,467 1.9 △ 0.5 44,225 45,174 10.6 2.1
階層レベル2の項目ASEAN 4,100 4,670 1.2 13.9 13,415 14,708 3.5 9.6
階層レベル2の項目日本 2,953 2,850 0.7 △ 3.5 4,666 4,983 1.2 6.8
階層レベル2の項目韓国 1,900 1,808 0.5 △ 4.9 3,738 3,754 0.9 0.4
階層レベル2の項目インド 1,784 2,081 0.5 16.6 5,872 6,022 1.4 2.5
アフリカ 20,089 21,140 5.5 5.2 33,907 34,805 8.2 2.6
階層レベル2の項目モロッコ 12,283 12,859 3.3 4.7 9,045 9,834 2.3 8.7
階層レベル2の項目アルジェリア 329 795 0.2 141.7 6,107 6,123 1.4 0.3
階層レベル2の項目ナイジェリア 363 347 0.1 △ 4.2 5,689 5,456 1.3 △ 4.1
中南米 19,779 20,330 5.3 2.8 22,170 24,687 5.8 11.4
階層レベル2の項目メキシコ 3,372 6,041 1.6 79.2 5,618 6,153 1.4 9.5
階層レベル2の項目ブラジル 3,372 3,234 0.8 △ 4.1 7,426 8,767 2.1 18.1
中東 8,471 8,401 2.2 △ 0.8 8,972 7,450 1.8 △ 17.0
階層レベル2の項目サウジアラビア 2,587 2,253 0.6 △ 12.9 3,422 3,272 0.8 △ 4.4
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 1,848 2,347 0.6 27.0 980 906 0.2 △ 7.5
合計(その他を含む) 384,098 384,465 100.0 0.1 423,723 424,741 100.0 0.2

〔注1〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港・台湾を加えた合計値。
〔出所〕スペイン税関

対内・対外直接投資 
再エネ、水素、EV分野への対内投資が本格化

2024年の対内直接投資(届出ベース、ネット、フロー)は、前年比23.4%減の260億2,600万ユーロとなった。持株会社(ETVE)への資本移動(注)を除いた生産的投資は約239億ユーロだった。そのうち8割は新規事業、拠点拡充、資本参加・出資が占めた。EU復興基金を追い風に、デジタル化やネットゼロ社会への移行プロジェクトが本格化している。

(注)
スペインにETVE(Entidad de Tenencia de Valores Extranjeros)を置くことで、第3国からの配当・キャピタルゲインを親会社の所在国に低税率で還流できるスペイン独自の税制優遇制度

業種別では、電力・ガスが最大で約60億ユーロと前年から倍増した。再エネ開発では、ノルウェー国営電力会社のスタットクラフト(Statkraft)が5月に風力開発大手エネルフィン(Enerfin)を18億ユーロで買収し、9月には中国の晶科能源(Jinko Solar)が太陽光発電プロジェクトの着工を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)国営の再エネ大手マスダール(Masdar)は12月に電力大手エンデサ(Endesa)の再エネ資産への出資を完了、同じく12月に再エネ開発サエタ・イールド(Saeta Yield)を14億ユーロで完全買収した。水素分野では、9月に中国の電解槽製造ハイグリーン・エナジー(Hygreen Energy)とエンビジョングループ(Envision Group)がそれぞれ電解槽の現地生産計画を発表した。同グループはスペイン政府との連携を強化するべく、産業・観光省と覚書を締結した。具体的には、カスティーリャ・ラ・マンチャ州に10億ドル規模を投じて水素ハブを構築し、電解槽生産拠点を核に空気分離、アンモニア合成などを含む、欧州初の統合型グリーン水素産業パークを目指すとしている。

EV・バッテリー分野でも、EU復興基金の後押しによって、EV向けギガファクトリー案件の発表が相次いだ。韓国の現代モービス(Hyundai Mobis)が4月にフォルクスワーゲン(VW)向けのバッテリーシステム組立工場建設を開始した。遠景科技集団傘下の車載電池大手AESCは7月、エストレマドゥーラ州で車載用リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の量産工場建設に着工した。また、自動車大手ステランティス(Stellantis)は12月に中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)と合弁で、サラゴサにLFP電池工場を建設すると発表した。年間最大50ギガワット時(GWh)の供給能力を目指し、2026年内に稼働予定だ。また、イスラエルの化学大手ICLが2025年1月に中国の電池材料メーカー、ダイナノニック(Dynanonic)とバルセロナにLFPの正極材に使われる活物質の工場を新設する合弁契約を結ぶなど、サプライチェーンの整備が進んだ。

国・地域別でみると、英国が前年比82.7%増だった。2024年5月に通信会社のゼゴナ・コミュニケーションズがボーダフォン(Vodafone)のスペイン事業を50億ユーロで買収するなど、大型M&A案件が牽引し、英国は最大の投資元国となった。

一方、M&A以外の事業投資は2位の米国のIT大手によるハイパースケール・データセンターの投資案件の公表が相次いだ。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が5月に総額157億ユーロ、マイクロソフトが6月に今後10年間で69億ユーロの投資計画をそれぞれ発表するとともに、10月には投資ファンドのブラックストーン(Blackstone)のデータセンター運営会社が75億ユーロの投資計画を発表した。いずれも再エネ電力や土地が豊富なアラゴン州への投資だ。政府の外国投資審査委員会(JINVEX)による審査件数は前年比4割増の136件で、却下されたのはハンガリー企業連合による鉄道車両製造タルゴ(Talgo)への買収提案の1件のみだった。

前年に続いて相次ぐ米国向け大型投資

対外直接投資(届出ベース、ネット、フロー)は、前年比17.5%増の271億1,800万ユーロとなった。業種別では電力・ガス・水道・環境分野が86億2,200万ユーロと前年から9割近く増加し、その大半を電力分野が占めた。特に、イベルドローラ(Iberdrola)による英国や米国への積極的な投資がこの分野全体を押し上げた。同社は2024年に世界全体で120億ユーロの設備投資や事業拡張を行い、そのうちの7割を米国と英国に配分している。具体的には、2024年10月に英国の配電会社SPエレクトリシティ・ノース・ウエスト(SP Electricity North West)の過半数株式を21億ポンドで取得するとともに、12月には送配電事業の強化を目的に傘下の米国電力大手アバングリッド(Avangrid)の未保有株式も約26億ユーロで取得した。その他、石油大手レプソル(Repsol)が第1四半期に米国の風力開発企業のコネクトジェン(ConnectGen)を、再エネ大手アクシオナ(ACCIONA)が11月にテキサス州にある風力発電所2カ所を運営企業グリーン・パスチャーズ・ウィンドⅡ(Green Pastures Wind II)からそれぞれ取得した。中南米ではグレナジー(Grenergy)が9月にレプソルからチリ北部のアタカマ地域における太陽光発電所および送電線資産を取得した。

国・地域別では米国が最大の投資先で前年比13.4%増の83億9600万ユーロだった。前述以外では自動車部品大手ゲスタンプ(Gestamp)は7月にミシガン州の生産拠点における最大約4億ドルの設備投資計画への助成承認を取得、ステンレス鋼大手アセリノックス(Acerinox)は11月、米国子会社を通じて特殊合金ヘインズ・インターナショナル(Haynes International)を約8億ドルで買収するなど、大型の投資が相次いだ。欧州ではEUが前年比67.5%増の66億500万ユーロ、EU以外では英国が4.6倍の20億1,100万ユーロとなった。旅客システム大手アマデウス(Amadeus)が4月、ポルトガルの国境管理向け生体認証システム大手ビジョン・ボックス(Vision-Box)を3億2,000万ユーロで買収した。一方、中国は15億6,100万ユーロの引き揚げ超過となった。6月に血液製剤大手グリフォルス(Grifols)が提携先の上海莱士血液製品(Shanghai RAAS)の持ち株の大部分を約16億ユーロで売却したことが影響した。

表4 スペインの業種別対内・対外直接投資[届け出ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
電力・ガス・水道・環境 4,512 6,145 36.2 4,582 8,622 88.2
製造業 6,252 4,169 △ 33.3 1,816 1,763 △ 2.9
階層レベル2の項目機械・自動車などその他の製造業 4,219 1,809 △ 57.1 351 882 151.3
階層レベル2の項目食品 576 1,671 190.2 518 660 27.4
階層レベル2の項目石油精製・化学・プラスチック 1,104 611 △ 44.7 713 △ 352 -
階層レベル2の項目繊維・衣類 264 70 △ 73.5 172 40 △ 76.9
階層レベル2の項目製紙・出版 90 9 △ 89.8 62 534 763.9
不動産・企業向けサービス 2,687 3,834 42.7 2,381 2,199 △ 7.6
金融・銀行・保険 1,589 3,016 89.8 4,618 2,314 △ 49.9
運輸・通信 1,884 2,740 45.5 3,939 8,091 105.4
建設 2,148 1,481 △ 31.1 3,930 254 -
流通・小売・卸売り 8,225 1,322 △ 83.9 498 3,488 600.4
ホテル・レストラン 1,051 1,203 14.5 477 375 △ 21.4
鉱業 3,572 670 △ 81.3 341 338 △ 0.9
農業・牧畜業・林業・漁業 125 107 △ 13.9 343 △ 779 -
合計(その他含む) 33,965 26,026 △ 23.4 23,086 27,118 17.5

〔出所〕スペイン経済・商業・企業省

表5 スペインの国・地域別対内・対外直接投資[届け出ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 13,110 8,179 △ 37.6 3,943 6,605 67.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 12,384 7,966 △ 35.7 3,701 6,210 67.8
階層レベル3の項目ドイツ 3,814 2,444 △ 35.9 1,227 2,212 80.4
階層レベル3の項目フランス 1,471 2,374 61.5 582 2,018 247.0
階層レベル3の項目オランダ 456 1,323 190.1 △ 326 546 -
階層レベル3の項目ポルトガル 1,070 820 △ 23.3 490 574 17.1
階層レベル3の項目イタリア 77 713 826.5 476 265 △ 44.4
階層レベル2の項目非ユーロ圏 726 213 △ 70.7 241 394 63.3
階層レベル3の項目デンマーク 102 611 498.8 1 0 △ 45.5
階層レベル3の項目スウェーデン 311 △ 483 - 33 243 643.6
英国 2,901 5,300 82.7 436 2,011 361.0
ノルウェー 320 1,688 427.4 △ 332 11 -
スイス 1,148 776 △ 32.4 58 12 △ 79.1
北米 8,210 4,704 △ 42.7 7,887 7,768 △ 1.5
階層レベル2の項目米国 7,335 4,192 △ 42.8 7,401 8,396 13.4
中南米 2,816 1,394 △ 50.5 7,787 4,228 △ 45.7
階層レベル2の項目コロンビア 59 1,054 1,686.0 615 1,705 177.4
階層レベル2の項目メキシコ 1,591 694 △ 56.4 2,381 3,038 27.6
アジア大洋州 2,492 1,877 △ 24.7 297 △ 926 -
階層レベル2の項目日本 463 679 46.6 0 44 -
階層レベル2の項目オーストラリア 1,352 548 △ 59.5 168 435 159.5
階層レベル2の項目韓国 384 233 △ 39.3 4 0 △ 100.0
階層レベル2の項目香港 6 159 2,410.1 △ 6 17 -
階層レベル2の項目インド 54 118 116.8 18 82 351.5
階層レベル2の項目中国 98 81 △ 17.8 33 △ 1,561 -
階層レベル2の項目ASEAN 131 49 △ 62.9 80 101 25.9
中東 501 282 △ 43.6 △ 10 16 -
階層レベル2の項目UAE 289 216 △ 25.0 △ 2 11 -
アフリカ 254 46 △ 81.9 △ 175 11 -
階層レベル2の項目モロッコ 7 28 291.2 24 △ 6 -
合計(その他含む) 33,965 26,026 △ 23.4 23,086 27,118 17.5

〔注〕 アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕 スペイン経済・商業・企業省

表6‐1 スペインの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT アマゾン・ウェブ・サービス(AWS) 米国 2024年5月 157億ユーロ スペインのAI・クラウド基盤強化を目的として、アラゴン州における今後10年間のハイパースケール・データセンター投資計画を発表した。
蓄電池 寧徳時代新能源科技(CATL) 中国 2024年12月 41億ユーロ フランスの自動車大手ステランティス(Stellantis)と合弁で、サラゴサに車載用リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池工場を建設すると発表した。2026年末より稼働予定。年間50GWhの供給能力を目指し、小・中型車向け電池供給で欧州のバッテリー供給自立化を図る。
電解槽 ハイグリーン・エナジー(Hygreen Energy) 中国 2024年9月 20億ユーロ アンダルシア州で総額20億ユーロの水素事業計画。マラガに電解槽製造工場(最大5GW)、ウエルバにグリーン水素製造プラントを建設し、R&D拠点も設置することで、欧州の水素市場への展開を図る。
製薬 アストラゼネカ(AstraZeneca) 英国 2024年3月 13億ユーロ 同社のグローバルハブの1つであるバルセロナのR&D拠点の拡大を発表した。欧州最大の臨床研究・イノベーション拠点を目指し、2025年末までに2,000人の新規雇用を創出する予定。
データセンター開発 データセクション(Datasection) 日本 2024年8月 非公表 再生可能エネルギー施設の設置及び運用を行うスペイ企業ソラリア(Solaria)とカスティーリャ・ラ・マンチャ州にAIセンター向けデータセンターを建設することで合意した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6‐2 スペインの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
エネルギー エネルフィン(Enerfin) スタットクラフト(Statkraft) ノルウェー 2024年5月 18億ユーロ ノルウェーの国営電力会社が再エネ大手を買収し、欧州有数の再エネ発電企業としての地位を強化し、スペインの風力発電事業者のトップ10入りを果たす。
エネルギー エネル・グリーン・パワー・エスパーニャ(Enel Green Power España)の太陽光事業資産 マスダール(Masdar) アラブ首長国連邦(UAE) 2024年12月 8億5,000万ユーロ UAE国営の再エネ大手企業が、イタリアの電力大手エネル(Enel)のスペインにおける再エネ開発事業会社への少数出資(49.99%)完了により、エネルのスペイン子会社エンデサ(Endesa)の再エネ開発パートナーとなった。マスダールは12月には元ACS系の再エネ開発サエタ・イールド(Saeta Yield)を12億ユーロで完全買収した。
鋼管 トゥバセックス(Tubacex)の油井管事業 ムバダラ・インベストメント・カンパニー(Mubadala Investment Company) アラブ首長国連邦(UAE) 2024年11月 2億ユーロ UAE政府系ファンドが、スペイン鋼管大手の油井管事業に少数出資(49%)することにより、アブダビでの現地生産を中心とする戦略的提携を締結した。
エネルギー アクシオナ・サルトス・デ・アグア(Acciona Saltos de Agua) オリックス 日本 2024年11月 2億8,700万ユーロ オリックスは子会社の再エネ開発エラワン・エナジー(Elawan Energy)を通じて、再エネ大手アクシオナ・エナジー(Acciona Energy)の水力発電事業会社の1つ(合計23施設、175MW)を取得した。再エネと制御可能な水力発電を組み合わせることで発電を安定させ、長期的な収益基盤を強化する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7 スペインの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
イベルドローラ(Iberdrola) エネルギー アバングリッド(Avangrid) 米国 2024年12月 25億5,100万ドル イベルドローラは傘下の米国電力大手の未保有株式18.4%を取得し、完全子会社化した。重要市場である米国での送配電網・再エネ事業の意思決定の一体化と成長加速を図る。
イベルドローラ(Iberdrola) エネルギー エレクトリシティ・ノース・ウエスト(ENW) 英国 2024年10月 21億ポンド イベルドローラは、子会社の電力大手スコティシュ・パワー(Scottish Power)を通じて、関西電力が主導する日系コンソーシアムなどの既存株主から英国配電事業会社の株式の88%を取得した。従来の展開地域を補完し、グループ全体の送配電事業を強化する。
グレナジー(Grenergy) エネルギー レプソル(Repsol)などが保有する太陽光発電所・送電線資産 チリ 2024年9月 1億2,800億ユーロ チリ北部のアタカマ地域で進める世界最大級の系統用蓄電池プロジェクトの規模拡大のため、グレナジーは計1GWの太陽光発電所(開発中)と送電線資産(容量1GW)をレプソルなどから買収した。なおペルーでも、チリの再エネ開発ベラーノ・エナジー(Verano Energy)が保有するグリーン水素製造とアンモニア貯蔵プロジェクトの事業会社(Horizonte de Verano)の持ち分50%を取得した。
アセリノックス(Acerinox) 金属 ヘインズ・インターナショナル(Haynes International) 米国 2024年11月 7億9,800万ドル アセリノックスは米国子会社NAS(North Amerian Stainless)を通じて、高性能合金メーカーを買収し、完全子会社へ。高付加価値の航空宇宙産業への参入、米国市場におけるプレゼンス拡大を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
豚肉の輸出が拡大、輸入では自動車が大きく伸ばす

2024年の対日貿易は輸出が前年比3.5%減の28億5,000万ユーロ、輸入が6.8%増の49億8,300万ユーロとなり、対日貿易赤字は24.5%増の21億3,300万ユーロに拡大した。石油精製品や灰および残留物(銅電解スライム)といった、従来の上位輸出品目であった資源が大幅減となったことが響いた。対日輸出を品目別にみると、最大品目の豚肉(構成比26.2%)が23.7%増と過去最高水準となった。スペインは高い価格競争力と安全性で日本にとって最大の冷凍豚肉供給国となっており、輸出の実質全量が業務用加工向けの冷凍品だ。またスペインにとっても、日本は金額で1位、数量で4位の豚肉輸出先である。乗用車(7.2%)は36.0%減だった。オリーブ油(5.3%)は生産者価格高騰を背景に、数量は20.6%減の17万トンだったものの、金額では16.1%増となった。ちなみに、オリーブ油の輸出量は過去5年間で約3分の1に減少している。対日輸入では乗用車が25.8%増で、構成比は44.5%に達している。車種別ではHEVが69.8%増と好調で、車種別の構成比で45%を占めた。

表8-1 スペインの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
豚肉 602 745 26.2 23.7
乗用車 321 206 7.2 △ 36.0
オリーブ油 131 152 5.3 16.1
自動車部品 158 150 5.3 △ 5.2
革製バッグ・小物類 101 122 4.3 21.5
ワイン 93 101 3.5 8.5
医薬品 74 71 2.5 △ 4.5
複素環式化合物 71 59 2.1 △ 17.2
アルミニウム地金 56 47 1.6 △ 15.9
石油精製品 66 31 1.1 △ 53.0
灰および残留物 204 22 0.8 △ 89.2
合計(その他含む) 2,953 2,850 100.0 △ 3.5

〔出所〕 スペイン税関

表8-2 スペインの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 1,764 2,220 44.5 25.8
鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(熱間圧延をしたもので幅が600ミリメートル以上のものに限る) 290 246 4.9 △ 15.2
自動二輪車 210 207 4.1 △ 1.6
航空機エンジン部品 100 157 3.2 57.2
印刷機器 101 103 2.1 1.7
自動車部品 57 84 1.7 47.3
オートバイ・自転車部品 83 79 1.6 △ 3.9
医療機器 76 79 1.6 3.0
電動機及び発電機 31 56 1.1 82.9
合計(その他含む) 4,666 4,983 100.0 6.8

〔出所〕 スペイン税関

脱炭素化やデジタル分野で日本企業による投資・再編が加速

2024年の日本からの直接投資受け入れ額は前年比46.6%増の6億7,900万ユーロとなった。主な大型案件は、M&Aでは7月の伊藤忠丸紅鉄鋼による独立系鉄鋼最大手ネットワーク・スティール・リソーシズ(Network Steel Resources)への出資による持ち分法適用や、11月に完了したオリックスの再エネ子会社による水力発電事業の取得がある。事業投資では3月にブリヂストンがブルゴス工場における製造能力増強を発表した。

2024年はネットゼロ時代を見据えた投資が顕在化した。自動車分野ではEVシフトによるワイヤーハーネスの需要拡大をにらみ、1月に矢崎ヨーロッパが日本通運傘下のNXスペインと、アフリカ~欧州間の供給網を結ぶ倉庫を共同で設置するとともに、10月には住友電工のドイツ子会社SEBNがEV向け高電圧ハーネス部品の生産拠点をクエンカに新設した。その他、日立エナジーが変圧器の生産能力拡大のため、7月と2025年1月に国内2カ所の変圧器工場の拡張計画を発表した。デジタル分野ではソニーAIが6月、バルセロナに南欧初のAIグローバル開発拠点を開設した。8月にはデータセクションが再エネ開発ソラリア(Solaria)とAIデータセンター構築に向けた提携合意を発表した。

スペインの対日直接投資は4,400万ユーロで、再エネ関連の投資が約8割を占めた。3月には洋上風力発電入札第2ラウンドで、イベルドローラ・リニューアブル・ジャパンが参画するコンソーシアムが秋田県八峰町・能代市沖における発電事業者に認定された。両国企業の第3国連携では、再エネや送配電事業の領域において、2025年2月にイベルドローラが関西電力と「グローバルな戦略的協業に関する覚書」を締結した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 6.2 2.7 3.2
1人当たりGDP (米ドル) 30,106 33,325 35,092
消費者物価上昇率 (%) 8.4 3.5 2.8
失業率 (%) 13.0 12.2 11.3
貿易収支 (100万ユーロ) △ 60,081 △ 34,632 △ 32,265
経常収支 (100万ユーロ) 4,814 39,772 48,739
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 76,498 84,418 84,154
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 2,355,000 2,452,000 2,591,000
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.95 0.92 0.92


1人当たりGDP、実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):暫定値
貿易収支:国際収支ベース(財・サービス)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:スペイン国家統計局(INE)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):スペイン銀行