スイスの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 消費者物価指数(CPI)の低下に対処し、政策金利の引き下げが続く。
  • 輸出は1988年以降で最高額となり、貿易黒字も過去最高額を記録。
  • 対内投資は2024年も流出超過。外資系金融・持ち株会社のバランスシート縮小が続く。
  • 進行するスイス・フラン高・円安を背景に、対日輸入は過去最高額を更新。

更新日:2026年3月26日
(【対内・対外直接投資】と【対日関係】の一部を追記)

マクロ経済 
2024年は投資と輸出がマイナス成長、個人消費が経済を牽引

2024年のスイス経済は、実質GDP成長率が1.0%だった。2010年の欧州債務危機以降では、新型コロナウイルス感染拡大の影響でマイナス2.2%まで落ち込んだ2020年を除くと、2012年の0.8%に次いで2番目に低い経済成長率となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比1.8%増と成長に寄与したが、投資(国内総固定資本形成)や輸出がマイナス成長となり、振るわなかった。産業別にみると、健康・社会福祉活動が成長に最も寄与し、化学品・医薬品部門が好調な製造業、行政、電気・ガス・蒸気・空調の供給が続いた。

2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率は前期比0.8%で、2024年第4四半期の0.6%に続き、高い成長率を示した。特に、サービス部門が広範な成長をもたらしたほか、化学品・医薬品産業が医薬品輸出の急増に牽引され、7.5%増と加速した。需要項目別にみると、財の輸出が前期比5.0%増となり、GDP成長率を押し上げた。特に、米国向け輸出が急増し、米国の通商政策に伴い、輸出が前倒しされた可能性が指摘されている。産業別にみると、製造業は医薬品の輸出急増などにより、前期比2.1%増の力強い伸びを示した。卸売・小売業、自動車・オートバイ修理は、卸売・小売業の伸び(0.5%増)に支えられ2.1%増と、全産業の平均を上回る伸びを示した。

スイス国立銀行(SNB)は、2025年のGDP成長率を1.0~1.5%、2026年についても同様に1.0~1.5%と予測している。スイス経済の見通しは依然として不透明で、国際情勢が引き続き主要なリスクと分析している。また、SNBは2024年3月に9年ぶりに政策金利を引き下げて1.5%とし、続く6月、9月、12月の会合でも連続して利下げを行い0.5%とした。2025年に入っても、3月の会合で0.25%まで引き下げた。SNBは金融政策の大幅な緩和により、消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)の低下を早期に打ち消してきたが、2025年3月の利下げ以降も、インフレ率が2月の0.3%から、5月にはマイナス0.1%となり、下振れリスクが顕在化したため、同年6月の会合では政策金利を0%まで引き下げた。インフレ率がマイナスに転じたのは2021年3月以来初めてで、マイナス金利の可能性が視野に入ってきた。

表1 スイスの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.9 1.2 1.0 0.1 0.4 0.3 0.6
階層レベル2の項目民間最終消費支出 4.3 1.5 1.8 0.5 0.5 0.5 0.5
階層レベル2の項目政府最終消費支出 △ 1.2 1.7 0.5 △ 0.6 △ 0.1 0.3 0.6
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 0.1 0.1 △ 0.8 0.5 △ 0.4 △ 0.5 1.3
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 6.4 1.5 △ 1.2 0.4 △ 4.4 △ 2.0 5.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 5.9 2.9 0.0 5.6 △ 7.8 △ 0.3 3.3

〔注〕四半期の伸び率は前期比(季節・スポーツイベント調整値)。財の輸出は、非貨幣金、貴重品、トランジット貿易品を含む。財の輸入は、非貨幣金、貴重品を含む。
〔出所〕スイス連邦経済省経済事務局

貿易 
輸出は過去最高を記録、輸入は2年連続で減少

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比3.2%増の2,830億600万スイス・フラン(CHF)、輸入が1.5%減の2,225億6,600万CHF(注1)となった。輸出はデータが入手可能な1988年以降で最高額となり、輸入は1988年以降で3番目の水準に留まった。その結果、貿易収支は604億4,000万CHFの黒字で過去最高額を記録した。

(注1)
輸出入額は貴金属・宝石、芸術品、骨董品を除いた合計値。スイス連邦財務省税関・国境警備局は、金額の変動が大きく、貿易推移の把握を困難にするとして、それらの取引量・金額を一般的な貿易統計から除外している。

輸出を品目別にみると、構成比の5割超(構成比52.7%)を占める最大品目の化学品・医薬品が前年比10.0%増となり、輸出の増加を牽引した。中でも医薬品(40.5%)が、最大の輸出先である米国向け(全体の27.7%)で13.3%増、2番目に輸出額が多いスロベニア向け(15.1%)が倍増したことにより、8.6%増となった。また、有機原料・基礎材料(8.0%)も26.3%増と大きく伸びた。最大の輸出先であるスロベニア向け(37.6%)が29.3%増、続くイタリア(28.4%)が36.7%増、ドイツ(7.8%)が2.1倍と、上位国向けの輸出の増加が寄与した。構成比の約2割(19.6%)を占める精密機械・時計・宝飾品は2.9%減と振るわず、時計(9.2%)、精密機械(6.1%)、宝飾品・貴金属製品(4.3%)が、それぞれ2.8%減、2.0%減、4.1%減と軒並み減少した。中でも時計は2番目に輸出額が大きい中国向け(7.9%)が25.8%減、4番目の香港(7.4%)が18.7%減となり、時計輸出の減速要因となった。香港は前年の3位から、日本に抜かれて順位を1つ落とした。時計の最大の輸出先である米国向けは5.0%増、3位の日本向け(7.6%)は7.8%増だったが、中国、香港の減少分を補いきれなかった。また、輸出全体に占める割合は小さいものの、燃料・エネルギー(1.7%)のうち、特に電力(1.4%)が15.3%減だった。電力輸出の5割弱(47.3%)を占めるイタリア向けが24.8%減となったことが影響した。もっとも、同国向けの電力輸出は前年の43.5%減より減少幅が縮まった。

国・地域別にみると、EU(構成比51.0%)は前年比4.7%増と大きく増加した。EUの中で最大の輸出相手国であるドイツ(14.7%)は2.3%減となり、2021年以降減少傾向にある。続くスロベニア(9.3%)は68.3%増と大きく伸長した。スロベニアはスイス大手物流の製薬向けグローバル物流センターが設置された2018年以降、急速に輸出が増え、2017年比で50倍の輸出規模まで拡大しており、医薬品と有機原料・基礎材料が同国向け輸出の99.2%を占める。2024年には新型コロナ禍以降増加傾向にあったイタリアを抜いて、EU域内2位の輸出先となった。また、最大の輸出相手国である米国(18.6%)は7.9%増となり、輸出増加に貢献した。同国向け輸出の60.2%を占める医薬品の13.3%増や、時計(8.3%)の5.0%増、医療機器(5.4%)の5.5%増などによる。

輸入を品目別にみると、最大品目の化学品・医薬品(構成比33.8%)は前年比8.4%増と好調だった。特に医薬品(27.5%)は11.2%増で輸入増加への寄与度が最も大きく、9年連続で増加を続けており、直近3年間は2桁台の伸びを示している 。また、食品・飲料・たばこ(6.0%)は、最大の輸入元であるイタリア(16.4%)、ドイツ(15.5%)からの輸入がそれぞれ2.5%増、5.4%増と安定しており、5位のオランダ(6.5%)、7位のブラジル(3.3%)、8位のポーランド(2.3%)からがそれぞれ25.3%増、17.9%増、52.2%増と好調で、全体で5.8%増を記録した。その他の品目は前年比で軒並み減少となり、22.0%減となった燃料・エネルギー(4.6%)のうち、特に電力(1.0%)とガス(0.6%)がそれぞれ38.5%減、31.4%減だった。記録的な高水準となった2022年から徐々に減少してきている。

国・地域別にみると、最大の輸入元であるEU(構成比70.8%)は前年比0.4%減となった。最大の輸入相手国であるドイツ(24.2%)が4.2%減と振るわなかったことによる。ドイツからの主要輸入品目のうち、医薬品(18.6%)は5.3%増と好調だったが、機械および電気・電子機器(17.2%)と輸送用機器(13.0%)がそれぞれ6.1%減、4.3%減となったことが影響した。一方、スロベニア(8.1%)は同国からの輸入の97.1%を占める医薬品が53.3%増と高い伸びとなったことにより、全体で48.0%増を記録した。また、ルーマニア(0.7%)は、輸入全体の4割弱を占める医薬品(36.1%)が8.3倍と急増したことで、47.8%増と拡大した。ロシア(0.01%)は対ロ制裁の影響もあり、2023年に大幅に減少していたが、2024年は非鉄金属(23.9%)が59.2%減になるなど、輸入全体で45.2%減となり、過去最低額を更新した。ロシアがクリミア侵攻した2014年比では96.3%減となった。

表2 スイスの主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
項目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学品・医薬品 135,503 149,058 52.7 10.0 69,379 75,205 33.8 8.4
階層レベル2の項目医薬品 105,481 114,535 40.5 8.6 55,098 61,283 27.5 11.2
階層レベル2の項目有機原料・基礎材料 18,016 22,755 8.0 26.3 5,443 5,658 2.5 3.9
精密機械・時計・宝飾品 57,117 55,478 19.6 △ 2.9 21,479 20,498 9.2 △ 4.6
階層レベル2の項目時計 26,748 25,993 9.2 △ 2.8 3,534 3,279 1.5 △ 7.2
階層レベル2の項目精密機械 17,755 17,395 6.1 △ 2.0 8,883 8,733 3.9 △ 1.7
階層レベル2の項目宝飾品・貴金属製品 12,613 12,090 4.3 △ 4.1 9,063 8,485 3.8 △ 6.4
機械および電気・電子機器 32,929 32,074 11.3 △ 2.6 35,144 32,934 14.8 △ 6.3
階層レベル2の項目産業用機械 18,311 17,388 6.1 △ 5.0 13,443 12,855 5.8 △ 4.4
階層レベル2の項目電気・電子機器 12,128 12,283 4.3 1.3 14,196 12,511 5.6 △ 11.9
金属製品 14,451 13,560 4.8 △ 6.2 16,045 14,861 6.7 △ 7.4
農林水産物 10,337 10,513 3.7 1.7 16,947 17,564 7.9 3.6
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 9,319 9,514 3.4 2.1 12,709 13,441 6.0 5.8
輸送用機器 5,347 5,264 1.9 △ 1.6 21,402 19,987 9.0 △ 6.6
燃料・エネルギー 5,472 4,713 1.7 △ 13.9 13,104 10,221 4.6 △ 22.0
階層レベル2の項目電力 4,678 3,962 1.4 △ 15.3 3,702 2,279 1.0 △ 38.5
階層レベル2の項目原油・石油製品 783 741 0.3 △ 5.4 7,346 6,530 2.9 △ 11.1
階層レベル2の項目ガス 9 9 0.0 △ 8.5 2,008 1,378 0.6 △ 31.4
繊維・衣料製品 4,852 4,671 1.7 △ 3.7 12,092 11,780 5.3 △ 2.6
皮、ゴム、プラスチック 4,762 4,400 1.6 △ 7.6 7,501 7,264 3.3 △ 3.2
紙・紙製品・印刷産業製品 1,329 1,305 0.5 △ 1.8 3,605 3,458 1.6 △ 4.1
楽器・家庭用家具・玩具、スポーツ用具 1,244 1,237 0.4 △ 0.5 6,206 6,041 2.7 △ 2.7
合計(その他含む) 274,107 283,006 100.0 3.2 225,854 222,566 100.0 △ 1.5

〔注〕‌貴金属・宝石、芸術品、骨とう品(貨幣またはその代替品として流通可能なもの)は含まない。
〔出所〕スイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)

表3 スイスの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 137,941 144,396 51.0 4.7 158,107 157,551 70.8 △ 0.4
階層レベル2の項目ユーロ圏 126,751 132,534 46.8 4.6 146,059 144,726 65.0 △ 0.9
階層レベル3の項目ドイツ 42,598 41,635 14.7 △ 2.3 56,302 53,921 24.2 △ 4.2
階層レベル3の項目スロベニア 15,684 26,393 9.3 68.3 12,127 17,947 8.1 48.0
階層レベル3の項目イタリア 21,100 20,414 7.2 △ 3.2 23,134 23,729 10.7 2.6
階層レベル3の項目フランス 14,304 13,536 4.8 △ 5.4 17,978 16,262 7.3 △ 9.5
階層レベル3の項目スペイン 7,680 6,756 2.4 △ 12.0 8,589 6,778 3.0 △ 21.1
階層レベル3の項目オーストリア 7,921 6,667 2.4 △ 15.8 9,548 9,089 4.1 △ 4.8
階層レベル3の項目オランダ 6,207 6,079 2.1 △ 2.1 5,823 6,133 2.8 5.3
階層レベル3の項目ベルギー 4,946 4,717 1.7 △ 4.6 3,314 3,042 1.4 △ 8.2
階層レベル2の項目非ユーロ圏 11,190 11,862 4.2 6.0 12,048 12,825 5.8 6.4
階層レベル3の項目ポーランド 2,940 2,977 1.1 1.3 3,086 3,221 1.4 4.4
階層レベル3の項目ルーマニア 1,617 2,257 0.8 39.6 1,030 1,523 0.7 47.8
米国 48,802 52,659 18.6 7.9 14,556 14,126 6.3 △ 3.0
アジア大洋州 46,569 45,060 15.9 △ 3.2 37,801 35,546 16.0 △ 6.0
階層レベル2の項目中国 15,356 16,222 5.7 5.6 17,923 17,219 7.7 △ 3.9
階層レベル2の項目日本 7,608 8,084 2.9 6.2 4,369 4,629 2.1 6.0
階層レベル2の項目ASEAN 8,572 6,490 2.3 △ 24.3 7,686 7,243 3.3 △ 5.8
階層レベル3の項目シンガポール 5,585 3,480 1.2 △ 37.7 2,956 2,461 1.1 △ 16.8
階層レベル2の項目香港 5,594 4,382 1.5 △ 21.7 1,449 1,068 0.5 △ 26.3
階層レベル2の項目韓国 3,187 3,425 1.2 7.5 2,352 1,706 0.8 △ 27.4
階層レベル2の項目オーストラリア 2,428 2,309 0.8 △ 4.9 227 284 0.1 25.4
階層レベル2の項目インド 1,868 2,029 0.7 8.6 2,345 2,092 0.9 △ 10.8
英国 8,524 8,349 3.0 △ 2.0 3,803 3,719 1.7 △ 2.2
カナダ 3,840 3,531 1.2 △ 8.1 642 779 0.3 21.4
アラブ首長国連邦 3,351 3,359 1.2 0.3 591 592 0.3 0.1
ブラジル 2,810 3,133 1.1 11.5 530 634 0.3 19.5
ロシア 2,586 2,230 0.8 △ 13.8 40 22 0.0 △ 45.2
メキシコ 2,007 2,226 0.8 10.9 792 756 0.3 △ 4.5
サウジアラビア 2,036 2,166 0.8 6.4 324 214 0.1 △ 33.9
トルコ 2,163 2,156 0.8 △ 0.3 1,855 1,816 0.8 △ 2.1
合計(その他含む) 274,107 283,006 100.0 3.2 225,854 222,566 100.0 △ 1.5

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕スイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)

通商政策 
2023年の輸入時の全FTAの特恵関税利用率は62.2%

スイスはEUに加盟していないが、世界各国と個別に、または同国が加盟する欧州自由貿易連合(EFTA)を通じて自由貿易協定(FTA)を締結している。2025年4月1日にEFTAとモルドバとのFTAが発効し、2025年9月1日時点で発効しているFTAは36件で、輸出の75.0%、輸入の88.4%がこれらのFTAでカバーされている。2025年1月22日にEFTAとコソボとのFTA、同月23日にEFTAとタイとのFTA、同年6月23日にEFTAとマレーシアとのFTAが署名された。また、EFTAとインドとのFTAが同年10月1日に発効予定。

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)が2025年3月に公表したスイスのFTA活用状況に関する分析レポート「FTAモニター2023」によると、2023年のスイスへの輸入に際し、既存のFTAの活用により合計で約22億2,586万CHF相当の関税が減免され、スイス輸入時の全FTAの特恵関税の利用率(注2)は62.2%だった。最大の貿易相手地域であるEUとの間では、特恵関税利用率はスイスへの輸入で71.2%、EUへの輸出で81.0%だった。日本との貿易における特恵関税利用率は、スイスへの輸入で35.8%、日本への輸出で68.3%だった。日本からスイスへの輸入において、日本・スイス経済連携協定(日スイスEPA)を活用できなかった、もしくはしなかった潜在的な関税節約額が大きい上位10品目のうち7品目は、2022年に引き続き、自動車やバイク、ブレーキなどの自動車部品が占めた。また、8番目には、食品関係として、みそ、インスタントカレー、ウスターソース、マヨネーズ、ドレッシングなどが含まれる関税分類2103.90号が入るが、その特恵関税利用率は22.9%にとどまった。

(注2)
特恵関税の適用対象となり得る品目の輸入額のうち、実際に特恵関税が利用された輸入額の割合。
表4 スイスのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)
FTA 発効日 スイスの貿易に占める構成比(2023年)
往復 輸出 輸入
発効済み EU 1973年1月1日 59.7 51.0 70.8
中国 2014年7月1日 6.6 5.7 7.7
日本 2009年9月1日 2.5 2.9 2.1
英国 2021年1月1日 2.4 3.0 1.7
湾岸協力会議(GCC)諸国 2014年7月1日 1.7 2.7 0.5
シンガポール 2003年1月1日 1.2 1.2 1.1
香港 2012年10月1日 1.1 1.5 0.5
韓国 2006年9月1日 1.0 1.2 0.8
カナダ 2009年7月1日 0.9 1.2 0.3
トルコ 1992年4月1日
(改定協定が2021年10月1日に発効)
0.8 0.8 0.8
メキシコ 2001年7月1日 0.6 0.8 0.3
イスラエル 1993年7月1日 0.3 0.4 0.2
エジプト 2008年9月1日
(2007年8月1日適用開始)
0.2 0.4 0.0
EFTA〔注1〕 1960年5月3日 0.2 0.3 0.2
セルビア 2010年10月1日 0.2 0.2 0.1
南部アフリカ関税同盟(SACU)〔注2〕 2008年5月1日 0.2 0.2 0.1
合計〔注3〕 80.9 75.0 88.4
署名済み インド 署名日 2024年3月10日
発効予定日 2025年10月1日
0.8 0.7 0.9
タイ 署名日 2025年1月23日 0.4 0.3 0.5
マレーシア 署名日 2025年6月23日 0.3 0.3 0.3
コソボ 署名日 2025年1月22日 0.03 0.03 0.04
グアテマラ 署名日 2015年6月22日 0.02 0.02 0.03
合意済み 南米南部共同市場(メルコスール)〔注4〕 合意日 2025年7月2日 1.0 1.4 0.3
交渉中 ベトナム 0.5 0.2 0.9
FTAカバー率(発効、署名済み、合意済み、交渉中の総和) 83.9 78.0 91.4

〔注1〕EFTA:ノルウェー、アイスランドのみ計上(リヒテンシュタインを含まない)。
〔注2〕南部アフリカ関税同盟(SACU)は、ボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカ共和国、エスワティニ(旧スワジランド)。
〔注3〕発効済みの合計値は、表に記載以外のFTA発効済みの以下の国・地域も含めた合計。
インドネシア、コロンビア、モロッコ、中米諸国(コスタリカ、パナマ)、フィリピン、ウクライナ、チュニジア、チリ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ヨルダン、ペルー、エクアドル、レバノン、北マケドニア、ジョージア、アルバニア、モルドバ、パレスチナ自治政府、モンテネグロ、フェロー諸島(往復貿易割合の高い順)。
〔注4〕南米南部共同市場(メルコスール)は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ。
〔注5〕小数点第2位を四捨五入。
〔出所〕スイス連邦経済省経済事務局「FTA一覧」およびスイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)貿易統計

対内・対外直接投資 
国内外での投資縮小、直接投資は内外ともに引き揚げ超過

スイス国立銀行(SNB)によると、2024年の直接投資は、スイス国内外における投資が縮小、特に外国企業の金融・持株会社のバランスシート縮小に伴う投資撤退が顕著となった。

2024年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、834億100万CHFの引き揚げ超過となり、前年の698億6,200万CHFの引き揚げ超過から、引き揚げ額が増加した。業種別にみると、引き揚げ超過のほとんどが金融・持株会社によるものとなった。これはスイスから投資引き揚げを行う外国の親会社が、EU域内に所在する持株会社を仲介して行うことが多いことが要因となっている。2024年は特にルクセンブルグの705億6,200万CHFの引き揚げ超過が大きかった。

表5 スイスの業種別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万CHF)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 金額 金額
製造業 △ 5,819 4,675 24,122 10,205
階層レベル2の項目化学・プラスチック 1,774 3,400 8,626 △ 2,952
階層レベル2の項目その他製造業・建設 △ 5,258 755 3,201 9,272
階層レベル2の項目電子・光学・時計など △ 1,154 396 8,916 2,385
階層レベル2の項目金属・機械 △ 1,180 124 3,378 1,499
サービス △ 64,043 △ 88,076 17,974 △ 21,286
階層レベル2の項目保険 2,899 815 6,273 2,009
階層レベル2の項目銀行 562 68 △ 3,413 22,572
階層レベル2の項目商業 △ 10,911 △ 1,277 18,428 1,269
階層レベル2の項目その他サービス △ 1,788 △ 1,454 △ 3,683 1,574
階層レベル2の項目運輸・通信 2,411 △ 4,809 39,145 5,152
階層レベル2の項目金融・持株会社 △ 57,217 △ 81,418 △ 38,775 △ 53,862
階層レベル2の項目 特別目的会社(SPE) △ 31,365 △ 22,289 △ 29,575 △ 14,844
合計(その他含む) △ 69,862 △ 83,401 42,096 △ 11,081

〔注〕特別目的会社(SPE)とは、債権や不動産の流動化や証券化など限定された目的だけのために設立される会社のこと。
〔出所〕スイス国立銀行(2025年12月12日発表)

表6 スイスの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万CHF)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 金額 金額
EU △ 66,800 △ 95,420 38,936 △ 35,368
階層レベル2の項目ドイツ 1,574 4,975 11,196 3,941
階層レベル2の項目フランス △ 2,540 3,417 4,940 1,726
階層レベル2の項目スペイン △ 1,748 2,782 △ 460 2,337
階層レベル2の項目ベルギー 5,524 2,027 △ 2,226 2,381
階層レベル2の項目スウェーデン 11 1,101 △ 3,682 1,681
階層レベル2の項目キプロス △ 295 524 37,352 629
階層レベル2の項目ハンガリー △ 3,869 516 △ 14,490 △ 36,710
階層レベル2の項目イタリア 989 △ 1,529 3,405 7,385
階層レベル2の項目アイルランド △ 7,299 △ 12,053 △ 4,076 △ 6,010
階層レベル2の項目オランダ △ 50,294 △ 29,990 △ 15,774 △ 6,705
階層レベル2の項目ルクセンブルク △ 6,572 △ 70,562 18,313 △ 7,360
英国 335 2,441 11,500 5,671
ロシア n.a. n.a. 1,691 △ 233
米国 7,104 12,821 13,591 5,926
中南米 126 △ 1,307 △ 25,006 6,431
階層レベル2の項目メキシコ n.a. n.a. △ 4,389 489
階層レベル2の項目ブラジル n.a. n.a. 3,291 427
アジア・大洋州・中東・アフリカ △ 3,422 △ 13,532 6,587 9,654
階層レベル2の項目日本 △ 2,358 4,559 1,276 △ 225
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 n.a. n.a. 1,679 4,297
階層レベル2の項目中国(香港を除く) n.a. n.a. 1,480 3,742
階層レベル2の項目インド n.a. n.a. 1,281 1,436
階層レベル2の項目シンガポール n.a. n.a. 199 △ 3,804
合計(その他含む) △ 69,862 △ 83,401 42,096 △ 11,081

〔出所〕 スイス国立銀行(2025年12月12日発表)

2018年以降、スイスの対内直接投資は引き揚げ超過が続き、2018年から2024年の累計額では6,760億CHFとなった。

2024年の対内直接投資を業種別にみると、製造業では、化学・プラスチックで34億CHF、その他製造業・建設で7億5,500万CHFを記録し、全体で合計46億7,500万CHFとなった。国別では、米国が2023年の71億400万CHFから128億2,100万CHFへと投資額を伸ばし最大の投資国となった。これにドイツの49億7,500万CHF、日本の45億5,900万CHFが続いた。

2024年1月から2025年7月までの主な対内直接投資案件のうちM&Aによるものは、米国包装メーカーのソノコ(Sonoco Products)が2024年12月に、欧州を代表する食品缶およびエアゾール缶の製造業者エビオシス・パッケージング(Eviosys Packaging Switzerland)を約39億ドルで買収した案件が挙げられる。また、デンマークのバイオテクノロジー企業ノボネシス(Novonesis)は、動物バイオソリューションのバリューチェーン全体における同社の存在感を拡大すべく、2025年6月に香料・香水メーカー、フィルメニッヒ(DSM-Firmenich)の所有する動物飼料用酵素メーカー、フィード・エンザイム・アライアンス(Feed Enzyme Alliance)の株式を総額15億ユーロで取得し、その販売・流通事業を引き継いだ。M&A以外での対内直接投資案件としては、データセンター関連で、マイクロソフトによる2025年6月のチューリッヒおよびジュネーブ近郊のデータセンター4拠点の拡充のための総額4億ドルの投資計画の発表が挙げられる。コロケーション型データセンター事業を行う米国バンテージ(Vantage)は、2024年7月にチューリヒで2番目のデータセンターの稼働を開始。2024年4月の発表では、投資額は3億7,000万CHF (約651億円、発表時点で1CHF=約176円)とされている。

表7-1 スイスの主な対内直接投資案件[M&A](2024年1月~2025年7月)
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
金属包装製品 エビオシス・パッケージング (Eviosys Packaging Switzerland) ソノコ (Sonoco Products) 米国 2024年12月 約39億ドル ソノコは、金属包装ポートフォリオ強化 として欧州有数の金属包装企業エビオシスの買収を2024年6月に発表。同年12月に約39億ドルで買収完了。食品・エアゾール缶事業においてグローバルリーダーを目指す戦略。
バイオテクノロジー/動物栄養 フィード・エンザイム・アライアンス (Feed Enzyme Alliance) ノボネシス(Novonesis) デンマーク 2025年6月 15億ユーロ ノボネシスは、スイスの香料・香水メーカー、フィルメニッヒ(DSM-Firmenich)の所有するフィード・エンザイム・アライアンスの株式を総額15億ユーロで取得し、その販売・流通事業を引き継ぐことを2025年2月に発表。同年6月に買収完了。
バイオテクノロジー アラリス (Araris Biotech) 大鵬薬品工業 日本 2025年3月 最大11億4,000万ドル 大鵬薬品工業は、スイスのバイオテクノロジー企業アラリス( Araris Biotech) を 完全子会社化する契約を締結したと発表。アラリスの買収によりADC(抗体薬物複合体)創薬における知識、経験と技術基盤、また開発パイプラインが加わることで、大鵬薬品の創薬力とポートフォリオのさらなる拡充・強化を行う。
物流 ギアバルク (Gearbulk Holding) 商船三井 日本 2025年1月 非公開 商船三井は、2025年1月20日に持分法適用関連会社ギアバルクの株式保有割合を72%とし、同社の連結子会社化を発表。今般の連結子会社化により、商船三井グループのドライバルク船隊は合計338隻と世界最大規模となる。世界経済のサプライチェーン、トレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワークを整備する。
空調設備 アーボニア空調事業 (Arbonia -Climate Division) 美的集団 (Midea Group) 中国 2025年2月 7億6,000万ユーロ 美的集団は、2025年2月、アルボニア の空調部門を7億6,000万ユーロで買収したと発表。同社の欧州全域における戦略的展開を強化。新グループの名称は MBT Climateとなり、より包括的かつ効率的な製品ソリューションを提供する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表7-2 スイスの主な対内直接投資案件[M&A以外](2024年1月~2025年7月)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
データセンター マイクロソフト 米国 2025年6月 4億ドル チューリッヒおよびジュネーブ近郊のデータセンター4拠点の拡充のための最先端GPUを含めた総額4億ドルの投資を発表。
データセンター バンテージ(Vantage) 米国 2024年4月 3億7,000万スイスフラン(CHF) コロケーション型データセンター事業を行う米国バンテージは2024年夏にチューリヒにて2番目のデータセンターの稼働を開始と発表。投資額は3億7,000万CHF。
ライフサイエンス ニコン・ヨーロッパ
ニコン・バイオイメージングラボ
日本 2024年9月 非公開 ニコン・ヨーロッパは、欧州に3か所のニコンバイオイメージングラボを開設。ドイツのハイデルベルク、スイスのバーゼル、英国のケンブリッジに設置し、オランダ・ライデンにあるニコン・バイオイメージングラボのメインハブを拡充。
IT・情報通信 NEC 日本 2025年8月 非公開 デジタル・ガバメント(DG)とデジタル・ファイナンス(DF)事業の本社機能を東京からスイスのチューリヒに移転。スイスに設立したNEC DGDF HeadquarterがDGDFビジネスユニットの本社機能として、デジタルID/DXを含めたグローバルなDGDF事業全体の運営を担う。
食品 モンデリーズ・インターナショナル(Mondelēz International) 米国 2025年4月 6,500万CHF チョコレートブランドのトブラローネを生産するスイス・ベルン工場に、約6,500万CHFの投資を発表。新ラインの導入と並行して、チョコレートとヌガー製造施設の規模拡大、現地のインフラと物流体制の強化を図る。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

スイス連邦議会は2025年12月19日に対内直接投資の審査を強化する法案を可決した。安全保障上の観点から重要分野における外国政府系投資家によるスイス国内企業の買収を対象とした外国直接投資(FDI)規制を導入する。これには、外国政府機関のみならず、外国政府機関によって直接的または間接的に支配されている企業および法人も含まれる。民間の外国投資家による投資は対象外となる。新たな投資審査法は、早くても2027年以降に施行される見通しだ。

対外投資は引き揚げ超過も、バイオ分野で新規・拡張投資が続く

2024年の対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、2023年の420億9,600万CHFから110億8,100万CHFの引き揚げ超過に転じた。資本引き揚げが前年以上に続いている。業種別にみると、対内直接投資同様に金融・持ち株会社による引き揚げ超過が影響し、超過額は2023年の387億7,500万CHFから538億6,200万CHFに増加した。一方、同じサービス業でも、銀行は225億7,200万CHFと2023年の34億1,300万CHFの引き揚げ超過からプラスに転じた。また製造業も、92億7,200万CHFを記録したその他製造業・建設が牽引し、全体では102億500万CHFとなった。

国・地域別にみると、EU域内ではイタリア向けが73億8,500万CHFと最大で、ドイツ(39億4,100万CHF)、ベルギー(23億8,100万CHF)、スペイン(23億3,700万CHF)が続いた。しかし、ハンガリー向けが367億1,000万CHFの引き揚げ超過となり、EU向け全体でも353億6,800万CHFの引き揚げ超過となった。EU域外では米国が59億2,600万CHF、英国が56億7,100万CHFとなり、ともに2023年からほぼ半減した。

2024年1月から2025年7月までの大型の対外直接投資案件のうちM&Aによるものは、チューリッヒに本社を置く世界最大級の包装材メーカーであるアムコール(Amcor)がプラスチック包装製品の設計・製造・販売を手がける米国大手企業ベリーグローバル(Berry Global)の全株式交換による統合完了を2025年4月に発表した。 ノバルティスは2025年4月、米国の臨床段階バイオ医薬品企業アンソス・セラピューティクス(Anthos Therapeutics)の最大31億ドルでの買収完了を発表。同じく完全子会社化するとしていた米国の臨床段階バイオ医薬品企業レギュラス・セラピューティクス(Regulus Therapeutics)の買収完了を2025年6月に発表した。M&A以外では、ノバルティスが2025年4月に、米国における製造・研究開発拠点拡張のため、今後5年間で230億ドルを投資する計画を発表した。

バイオ医薬品企業による対外M&A案件は、ノバルティスの米国案件以外にも多く、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータベースであるワークスペースによると2024年1月から2025年7月に27件あった。米国以外ではEU諸国や英国での案件がある。そのほか、IT・ソフトウエア分野の案件も多い。また大型案件がイタリアの半導体や通信分野などでみられた。

表8-1 スイスの主な対外直接投資案件[M&A](2024年1月~2025年7月)
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
アムコール (Amcor) 包装・容器 ベリーグローバル(Berry Global)グループ 米国 2025年4月 非公開 アムコール と ベリーグローバル(以下、ベリー) は、ベリーのほぼすべての株式を アムコール の株式と交換する全株式交換の合併契約を2024年11月に締結し2025年4月に完了。報道によると取引価値は約84億ドルに相当。これによりアムコールはベリーを完全に統合し、世界的包装大手となる。
スイスコム (Swisscom) 通信 ボーダフォン・イタリア (Vodafone Italy) イタリア 2025年1月 80億ユーロ スイスコムは子会社のファーストウェブ(Firstweb)を通じてボーダフォン・イタリアを2025年1月に買収完了。両社を統合して「ファーストウェブ + ボーダフォン」を発足。固定通信(ファーストウェブ)とモバイル通信(ボーダフォン・イタリア)を一体化し通信サービスを提供。
グレンコア(Glencore) 鉱業 エルクバレーリソーシズ(Elk Valley Resources) カナダ 2024年7月 69億3,000万ドル 高品質製鉄用原料炭供給大手テックリソーシズ(Teck Resources)が分離、新規独立させた製鉄用原料炭事業のパートナー企業、エルクバレーリソーシズの株式77%の取得について当局の承認が下りたことを発表。原料炭の安定調達を目指す。残りの株式は日本製鉄(20%)と韓国のポスコ(POSCO)(3%)が取得。
ノバルティス(Novartis) バイオ医薬品 アンソス・セラピューティクス (Anthos Therapeutics ) 米国 2025年4月 最大31億ドル ノバルティスは2025年2月、米国の臨床段階のバイオ医薬品企業アンソス・セラピューティクスの買収計画を発表。同年4月に買収完了。臨床後期の有望な抗凝固薬を自社パイプラインに組み込み、ノバルティス の循環器領域での競争力を一層高める意図。
ノバルティス(Novartis) バイオ医薬品 レギュラス・セラピューティクス(Regulus Therapeutics) 米国 2025年6月 非公開 ノバルティスは2025年6月にレギュラス・セラピューティクスを買収。これによって 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)治療薬パイプライン を補強し、腎疾患領域でのプレゼンスを強化。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表8-2 スイスの主な対外直接投資案件[M&A以外](2024年1月~2025年7月)
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
バイオ医薬品 ノバルティス(Novartis) 米国 2025年4月 230億ドル 製造・研究体制を強化し、次世代医薬品の供給能力拡大を目指し、米国における製造・研究開発拠点の拡張を計画。今後5年間で230億ドルの投資計画を発表。
半導体 STマイクロエレクトロニクス
(STMicroelectronics)
イタリア 2024年5月 50億ユーロ 同社初の完全統合型SiC製造施設をカターニャに建設することを発表。投資額にはイタリア政府が支援する20億ユーロを含む。50億ユーロの複数年契約。2026年に生産を開始し、2033年までにフル稼働することを目指す。
バイオ医薬品 ジェネンテック(Genentech) 米国 2025年5月 7億ドル超 ジェネンテックは7億ドル超の投資によりノースカロライナ州に新製造施設の設立を発表。医薬品部門の代謝疾患治療薬ポートフォリオを支える。
エネルギー アクスポ(Axpo) ドイツ 2025年4月 非公開 ドイツで2つの大型太陽光発電所の建設を開始。アクスポのドイツにおける再生可能エネルギー拡大戦略の一環。発電所は2026年中に稼働予定。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
進行するスイス・フラン高と円安、対日輸入は過去最高を更新

2024年は前年に引き続きスイス・フラン(CHF)高と円安がさらに進み、スイス国立銀行(SNB)のデータによると、年間の平均為替相場は、1CHF当たり前年比で10.2%高い171.97円となり、前年の記録的なスイス・フラン高・円安水準をさらに更新した。2024年12月の平均為替相場では1CHFが172.42円まで達している。そのような状況下で、2024年の対日貿易は、輸出が前年比6.2%増の80億8,400万CHF、輸入が6.0%増の46億2,900万CHFだった。輸出は統計が入手できる1988年以降で、2022年に次いで2番目に大きく、輸入は過去最大となった。

主な対日輸出品目をみると、最大品目の医薬品(構成比44.1%)が前年比8.0%増だった。続く腕時計(23.5%)が8.4%増、さらに宝飾品(10.8%)が45.0%増で、いずれも過去最大額となり、輸出額全体を押し上げた。輸入をみると、最大品目である医薬品(50.0%)が30.9%増と大きく伸び、過去最高となった前年をさらに更新した。次に構成比が大きい乗用車(11.3%)が21.5%減と大きく後退、続く一般機械(5.3%)が15.6%減となったことから、輸入全体の伸びの抑制要因となった。

表9‐1 スイスの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
医薬品 3,303 3,567 44.1 8.0
腕時計 1,750 1,897 23.5 8.4
宝飾品 605 877 10.8 45.0
医療機器 456 325 4.0 △ 28.7
一般機械 275 256 3.2 △ 7.0
検査・測定機器 137 127 1.6 △ 7.8
化学原材料 123 105 1.3 △ 14.6
飲料 115 90 1.1 △ 21.9
電気・電子製品 101 86 1.1 △ 14.6
時計・腕時計部品 64 64 0.8 0.1
金属部品 68 62 0.8 △ 7.6
インスタント食品 52 62 0.8 19.6
非電動エンジン 40 58 0.7 42.8
合計(その他含む) 7,608 8,084 100.0 6.2

〔出所〕スイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)

表9‐2 スイスの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
医薬品 1,767 2,313 50.0 30.9
乗用車 664 521 11.3 △ 21.5
一般機械 289 244 5.3 △ 15.6
化学原材料 165 185 4.0 12.4
電気・電子製品 207 171 3.7 △ 17.5
光学機器 122 133 2.9 8.7
宝飾品 141 123 2.7 △ 12.5
未加工プラスチック 96 98 2.1 1.3
腕時計 97 92 2.0 △ 5.8
検査・測定機器 57 58 1.3 2.4
建設機械 70 58 1.3 △ 17.9
医療機器 59 56 1.2 △ 4.8
自動車部品 48 33 0.7 △ 31.1
合計(その他含む) 4,369 4,629 100.0 6.0

〔出所〕スイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)

対外に比べ対内で活発だった日本との直接投資関係

SNBによると、2024年のスイスへの日本からの対内直接投資額は45億5,900万CHFだった。一方、日本への対外直接投資額は2億2,500万CHFの引き揚げ超過となった。

日本企業によるスイスへの主な直接投資事例としては、ニコンが2024年9月に、バイオテクノロジーや創薬などに関わる研究機関・企業を対象に顕微鏡イメージングおよび画像解析サービスを提案・提供する受託研究機関ニコン・バイオイメージングラボを、欧州3カ国に拡張。うち1つをiCITY Baselとしてスイス・バーゼルに設立した。商船三井は2025年1月に持分法適用関連会社ギアバルク(Gearbulk Holding)の株式保有割合を72%とし、同社を連結子会社化した。これにより、商船三井グループのドライバルク船隊は合計338隻と世界最大規模となる。ギアバルクのオペレーションとネットワークの活用を通じ、世界経済のサプライチェーンやトレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワークを整備する。また大鵬薬品工業は2025年3月にスイスの創薬バイオテクノロジー企業アラリス(Araris Biotech)を最大11億4,000万ドルで完全子会社化。抗体薬物複合体(ADC)創薬における知識、経験と技術基盤、開発パイプラインを加えることで、大鵬薬品工業の創薬力、またポートフォリオのさらなる強化と拡充を行う。NECは2025年8月にデジタルガバメント・デジタルファイナンス(DGDF)事業の本社機能を東京からスイスのチューリヒに移転。スイスに設立したNEC DGDF HeadquartersがDGDFビジネスユニットの本社機能として、デジタルID/DXを含めたグローバルなDGDF事業全体の運営を担う。

スイスの投資立地上の強みは、高いイノベーション力、政治や経済の安定性、安全性、透明性、高い語学能力を持つ高度人材が得やすく比較的柔軟な労働市場、競争力の高い税制、欧州各地への地理的利便性と密接な関係性などが挙げられる。このため欧州統括拠点や研究開発拠点を設けるグローバル企業が多く、日本企業も同様に、これらの強みを考慮した事業戦略を展開している。

基礎的経済指標

項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.9 1.2 1.0
1人当たりGDP (米ドル) 94,807 101,516 104,523
消費者物価上昇率 (%) 2.8 2.1 1.1
失業率 (%) 2.2 2.0 2.4
貿易収支 (100万スイス・フラン) 42,847 48,253 60,440
経常収支 (100万スイス・フラン) 69,000 42,199 41,784
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 863,028 794,931 822,130
対外債務残高(グロス) (100万スイス・フラン) 2,153,245 1,918,566 1,988,487
為替レート (1米ドルにつき、スイス・フラン、期中平均) 0.95 0.90 0.88


実質GDP成長率:季節、スポーツイベント調整値
貿易収支:通関ベース
出所
実質GDP成長率、失業率:スイス連邦経済省経済事務局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
消費者物価上昇率:スイス連邦統計局
貿易収支:スイス連邦財務省税関・国境警備局(FOCBS)
経常収支、対外債務残高(グロス):スイス国立銀行