ベルギーの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は、前年の1.1%から1.0%に減速。
  • 貿易は輸出入ともに減少、貿易黒字も縮小。
  • 対内直接投資は引き揚げ超過も、大型案件が投資を下支え。
  • 医薬品輸出が増加し対日貿易赤字は縮小、日本からの直接投資も増加。

公開日:2026年8月10日

マクロ経済

経済成長は前年からさらに減速もプラス成長は維持

ベルギーの2025年の実質GDP成長率は、2024年の1.1%からさらに減速し1.0%だったが、プラス成長は維持した。需要項目別では、民間最終消費支出が前年比1.7%増、政府最終消費支出は1.6%増と成長を牽引した。国内総固定資本形成は、企業投資(2.3%増)と公共投資(1.0%増)が拡大したものの、住宅投資(8.2%減)がマイナス成長となり、0.1%にとどまった。財・サービスの輸出は0.3%減少し、輸入が0.1%増となったため、純輸出はGDP成長率を0.3ポイント押し下げた。

2026年は、堅調な民間消費支出が牽引役となり、連邦計画局では通年で1.1%の経済成長を予測している。

表1 ベルギーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。季節調整値。2024年、2025年は暫定値。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 1.6 1.1 1.0 0.9 1.0 1.0 1.0
民間最終消費支出 1.1 2.0 1.7 2.2 2.5 1.6 0.7
政府最終消費支出 2.6 1.5 1.6 0.1 1.2 2.6 2.6
国内総固定資本形成 3.0 2.1 0.1 1.3 △ 3.1 0.9 1.3
財・サービスの輸出 △ 7.2 △ 1.7 △ 0.3 △ 0.4 △ 0.2 0.7 △ 1.2
財・サービスの輸入 △ 7.6 △ 1.3 0.1 0.7 △ 0.1 1.2 △ 1.1

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。季節調整値。2024年、2025年は暫定値。

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

貿易

主要2品目の減少が響き、輸出全体も引き続き減少

2025年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比1.2%減の3,434億7,100万ユーロ、輸入は0.5%減の3,387億5,700万ユーロと、ともに前年から減少した。貿易黒字額は、前年の72億2,600万ユーロから47億1,400万ユーロに縮小した。

輸出を主要品目別に見ると、最大品目の化学工業品(構成比25.8%)は、前年比1.6%減の886億2,800万ユーロと振るわなかった。同品目の6割超を占める医薬品は1.3%減と前年に続き減少した。米国の対EU関税措置の不透明性が影響し、米国向け輸出が落ち込んだことが一因と考えられる。前年2位だった鉱物性生産品(10.4%)は14.4%減となり4位に後退し、輸送用機器(11.6%)と機械および電気・電子機器(10.8%)はそれぞれ2位、3位に浮上した。輸送用機器は0.3%減とほぼ横ばいだった一方、機械および電気・電子機器は3.4%増と堅調に推移した。

輸出を国・地域別に見ると、全体の6割以上を占めるEU(構成比65.4%)は、前年比2.4%増の2,247億9,300万ユーロとなった。最大の相手国であるドイツ(16.8%)が8.7%増と拡大した。EU域外の主要相手国である米国(7.6%)は4.9%減、英国(5.8%)は9.4%減だった。米国向け輸出は、医薬品のほか、鉱物性生産品が落ち込んだ。ユーロに対する米ドル安に加え、米国の対EU関税措置を巡る不確実性も影響した。アジア大洋州の中では、中国(1.8%)が引き続き最大で1.9%増とわずかに拡大、2位のインド(1.0%)は4.0%減、前年に続き3位の日本(0.9%)は11.4%増と前年のマイナスからプラスに転じた。

輸入は主要品目の化学工業品が回復も、前年比微減にとどまる

輸入を主要品目別に見ると、最大品目の化学工業品(構成比20.7%)は、医薬品(12.6%)が前年比6.8%増と回復し、品目全体では1.8%増だった。続く鉱物性生産品(16.0%)は5.9%減、4位の輸送用機器(11.9%)は8.4%減といずれも縮小したが、3位の機械および電気・電子機器(14.2%)は1.6%の増加となった。

輸入を国・地域別に見ると、全体の7割弱を占めるEU(構成比68.3%)は前年比0.8%減とわずかに縮小した。上位3カ国が軒並み減少し、オランダ(23.0%)が3.8%減、続くドイツ(13.5%)とフランス(11.2%)もそれぞれ1.7%減、4.2%減だった。他方、EU域外の最大相手国である米国(6.9%)、続く中国(3.7%)は、それぞれ14.0%増、8.4%増と拡大した。米国からは医薬品、中国からは機械および電気・電子機器が増加した。日本(2.2%)は前年に続きアジア大洋州で2位となるも、6.3%減だった。

表2 ベルギーの主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 90,032 88,628 25.8 △ 1.6 68,876 70,111 20.7 1.8
医薬品 55,525 54,780 15.9 △ 1.3 39,974 42,697 12.6 6.8
有機化学品 12,874 10,764 3.1 △ 16.4 13,027 11,376 3.4 △ 12.7
輸送用機器 39,966 39,838 11.6 △ 0.3 43,969 40,279 11.9 △ 8.4
自動車(鉄道用または軌道用除く) 37,399 38,658 11.3 3.4 41,356 38,092 11.2 △ 7.9
機械および電気・電子機器 35,889 37,111 10.8 3.4 47,227 47,968 14.2 1.6
原子炉・ボイラー、機械類、同部品 23,464 24,525 7.1 4.5 27,167 26,944 8.0 △ 0.8
電気機器 12,425 12,585 3.7 1.3 20,061 21,025 6.2 4.8
鉱物性生産品 41,744 35,724 10.4 △ 14.4 57,607 54,185 16.0 △ 5.9
鉱物燃料、鉱物油及びその蒸留製品 40,361 34,466 10.0 △ 14.6 54,484 50,478 14.9 △ 7.4
調整食料品、飲料・アルコール、たばこ 27,381 27,747 8.1 1.3 18,173 20,175 6.0 11.0
金属及び金属加工品 26,443 25,287 7.4 △ 4.4 22,774 22,726 6.7 △ 0.2
鉄鋼 12,659 11,842 3.4 △ 6.4 7,804 7,001 2.1 △ 10.3
プラスチック・ゴム、同製品 22,163 21,081 6.1 △ 4.9 15,294 14,736 4.4 △ 3.6
真珠・貴石・貴金属 11,174 12,231 3.6 9.5 9,264 9,112 2.7 △ 1.6
光学・精密機器 10,200 11,047 3.2 8.3 10,246 10,178 3.0 △ 0.7
動物・動物性生産品 10,239 10,595 3.1 3.5 8,644 9,283 2.7 7.4
植物性生産品 8,243 8,806 2.6 6.8 11,438 12,101 3.6 5.8
繊維、同製品 6,356 5,666 1.6 △ 10.9 6,859 6,805 2.0 △ 0.8
合計(その他含む) 347,645 343,471 100.0 △ 1.2 340,419 338,757 100.0 △ 0.5

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表3 ベルギーの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、マカオおよび台湾を加えた合計値。 〔注2〕北米は、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。 〔注3〕湾岸協力会議(GCC)諸国は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。 〔注4〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
国・地域名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
自国を除くEU26 219,482 224,793 65.4 2.4 233,496 231,521 68.3 △ 0.8
ユーロ圏 190,984 196,326 57.2 2.8 209,715 207,678 61.3 △ 1.0
ドイツ 53,174 57,815 16.8 8.7 46,354 45,578 13.5 △ 1.7
フランス 44,693 43,207 12.6 △ 3.3 39,472 37,825 11.2 △ 4.2
オランダ 44,781 43,191 12.6 △ 3.5 81,167 78,074 23.0 △ 3.8
イタリア 15,727 17,041 5.0 8.4 15,676 15,384 4.5 △ 1.9
スペイン 10,740 12,124 3.5 12.9 8,446 8,783 2.6 4.0
ルクセンブルク 6,537 6,241 1.8 △ 4.5 1,495 1,818 0.5 21.6
非ユーロ圏 38,324 36,476 10.6 △ 4.8 31,850 30,591 9.0 △ 4.0
ポーランド 9,900 10,371 3.0 4.8 5,860 5,770 1.7 △ 1.5
スウェーデン 6,088 6,107 1.8 0.3 7,410 7,886 2.3 6.4
チェコ 3,641 3,599 1.0 △ 1.2 4,405 4,471 1.3 1.5
英国 22,050 19,987 5.8 △ 9.4 9,731 8,668 2.6 △ 10.9
スイス 4,742 5,555 1.6 17.2 9,080 8,658 2.6 △ 4.7
トルコ 4,753 5,011 1.5 5.4 3,062 2,960 0.9 △ 3.3
アジア大洋州 23,903 23,124 6.7 △ 3.3 33,873 33,873 10.0 0.0
中国 6,157 6,272 1.8 1.9 11,703 12,690 3.7 8.4
インド 3,660 3,512 1.0 △ 4.0 3,454 3,282 1.0 △ 5.0
日本 2,684 2,989 0.9 11.4 8,133 7,619 2.2 △ 6.3
韓国 1,853 1,691 0.5 △ 8.7 2,353 2,081 0.6 △ 11.5
北米 31,504 30,166 8.8 △ 4.2 24,898 27,554 8.1 10.7
米国 27,406 26,069 7.6 △ 4.9 20,504 23,373 6.9 14.0
カナダ 2,555 2,431 0.7 △ 4.9 2,345 2,284 0.7 △ 2.6
湾岸協力会議(GCC)諸国 5,496 5,638 1.6 2.6 2,949 2,936 0.9 △ 0.4
アラブ首長国連邦(UAE) 2,958 2,849 0.8 △ 3.7 534 419 0.1 △ 21.5
アフリカ 14,899 10,718 3.1 △ 28.1 7,303 6,733 2.0 △ 7.8
合計(その他含む) 347,645 343,471 100.0 △ 1.2 340,419 338,757 100.0 △ 0.5

〔注1〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、マカオおよび台湾を加えた合計値。
〔注2〕北米は、米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。
〔注3〕湾岸協力会議(GCC)諸国は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国の合計値。
〔注4〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

対内・対外直接投資

対内投資は引き揚げ超過も、大型案件が投資を下支え

2025年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、引き揚げ超過が前年の92億8,600万ユーロから219億8,900万ユーロまで拡大した。特にフランスの230億7,100万ユーロ、ルクセンブルクの122億8,700万ユーロの引き揚げ超過が影響した。最大の投資国はオランダで、123億8,800万ユーロだった。対内直接投資案件では、国内の既存設備への大型投資が目立った。2025年10月、IT大手グーグル(Google)は、クラウドと人工知能(AI)インフラの拡大に向けた50億ユーロの投資を発表した。小売り大手アマゾン(Amazon)も同月に、2025~2027年までの3年間で10億ユーロを投資すると発表した。

対外投資では、米国での製造拠点の設立・拡張が活発

2025年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の332億9,400万ユーロから大幅に減少し、136億1,100万ユーロの引き揚げ超過に転じた。国・地域別で見ると、米国が最も多く79億5,100万ユーロ、スペインが30億4,100万ユーロと続いた。バイオ医薬メーカーUCBは2026年3月、米国に製造拠点となるバイオ医薬品製造施設を新たに建設すると発表した。これに先立つ1月に、ビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は、同社が米国に保有する金属容器工場の株式を約30億米ドルで買い戻すと発表した。同社は2025年5月にも、米国のトレーニングセンター拡張に向けた3億ユーロの投資を発表しており、「米国での製造へのコミットメント」を強調した。

表4 ベルギーの国・地域別対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)〔注〕n.a. データなし
国・地域名 対内直接投資 対外直接投資
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 金額 金額
欧州 △ 3,153 △ 26,741 28,043 △ 24,757
EU 1,959 △ 29,520 15,533 △ 11,711
ユーロ圏 △ 816 △ 23,339 11,472 △ 14,527
オランダ 1,738 12,388 10,231 △ 6,820
ドイツ △ 15,492 5,942 1,883 2,261
スペイン 2,057 19 2,348 3,041
ポルトガル 36 △ 25 45 249
フィンランド 151 △ 565 347 642
オーストリア 852 △ 1,372 86 204
イタリア 556 △ 2,502 2,514 1,820
ルクセンブルク 2,349 △ 12,287 △ 5,721 △ 19,190
フランス 5,468 △ 23,071 9,050 1,773
スウェーデン 1,276 1,017 267 △ 39
チェコ 525 270 828 1,110
デンマーク 163 △ 209 207 72
EU以外 n.a. n.a. n.a. n.a.
英国 149 2,062 11,122 △ 16,364
スイス △ 5,551 757 515 1,284
アジア 36 2,417 △ 498 1,908
日本 △ 1,109 895 80 130
中国(香港除く) 401 549 227 7
香港 636 △ 583 △ 562 △ 3
米州 △ 5,870 2,315 5,080 7,786
米国 △ 4,930 527 4,215 7,951
アフリカ △ 201 250 762 1,526
大洋州 14 △ 229 △ 93 △ 74
合計(その他含む) △ 9,286 △ 21,989 33,294 △ 13,611

〔注〕n.a. データなし

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表5-1 ベルギーの主な対内直接投資案件(2025年4月~2026年3月)〔M&A以外〕
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT グーグル(Google) 米国 2025年10月 50億ユーロ グーグルは、2026~2027年の2年間でベルギーに50億ユーロを投資し、クラウドおよび人工知能(AI)インフラを拡大すると発表した。同計画は、ベルギー南部サン・ジスランにある既存のデータセンターキャンパスの拡大も含み、300件の新規雇用を創出する。この投資により、同社のAI能力を拡張し、Google Cloudへの需要増に対応するとともに、検索エンジンやGoogle Maps、Google Workspaceなどの人気サービスを支える。
eコマース アマゾン(Amazon) 米国 2025年10月 10億ユーロ アマゾンは、ベルギーに10億ユーロの投資(2025~2027年)を行い、低価格、豊富な品ぞろえ、利便性の向上を通じて顧客体験を向上するとともに、継続的な中小企業支援を行い、イノベーション推進の取り組みを一層強化すると発表した。同社は2015年以降、ベルギーに8億ユーロ以上を投資してきた。同社のプラットフォームを通じて商品を販売するベルギー企業の90%は輸出を手掛けており、中小企業もeコマースを通じて国際的なビジネスを展開している。
製菓 バリーカレボー(Barry Callebaut) スイス 2026年2月 3億7,500万ユーロ チョコレート・ココア製品を扱うバリーカレボーは、ブリュッセル北西部ウィーゼ工場に今後数年で合計2億5,000万ユーロを投資すると発表した。さらに、ブリュッセル南西部のハレ工場に1億2,500万ユーロを投資する。ウィーゼ工場への投資では、安全性と業務効率の双方を向上させ、最高の価値とサービスを実現するための大規模なインフラ整備が行われる。これには食品の安全性と品質を高め、従業員の安全な職場環境を実現するための生産ラインの近代化や敷地内の環状道路の建設が含まれている。ハレ工場への投資は、デジタルを活用した業務効率化に充てられる。
機械機器 ダイキン 日本 2025年10月 1億4,000万ユーロ ダイキンヨーロッパは、ヘントの研究開発センター(EDC)を稼働開始した。EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域におけるダイレクトエキスパンション(DX)技術の開発拠点として機能する。3万600平方メートルの敷地に、23の高度な試験室を擁する製品試験施設とオフィスが設置され、ベルギーでの試験能力は倍増した。オーステンドの既存の試験室も引き続き使用される。
運輸 DHL 米国 2026年2月 プロジェクト全体で総額20億ユーロ DHLグループは、温度管理が必要な医薬品・ワクチン・医療製品・細胞・遺伝子治療向けに、専用の航空貨物コールドチェーン・ネットワークを拡大すると発表した。DHLヘルスロジスティクスに向けた総額20億ユーロの戦略投資の中核をなす。新ネットワークはまず、ブリュッセル国際空港(BRU)-米国シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港(CVG)を結ぶ主要ハブ間で運用を開始し、今後、欧州、中東、アジア、中南米へと路線を拡大する予定。BRU-CVG回廊は、大手製薬企業が集積する米国中西部と、欧州の最先端のライフサイエンス拠点を直接結ぶ。米国では、高付加価値のバイオ医薬品や細胞・遺伝子治療に対し、シームレスで温度管理された輸送を実現する。ブリュッセルのブルカーゴ(BRUcargo)は、4万5,000平方メートルの医薬品専用区域が運用を支え、臨床グレードの品質管理を一気通貫で実現させる。世界有数の二大医療市場を結ぶ物流回廊を構築する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ベルギーの主な対内直接投資案件(2025年4月~2026年3月)〔M&A〕
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
半導体 ベルガン(BelGaN) テマ・ファウンドリーズ(Thema Foundries) イスラエル 2025年9月 未発表
(報道ベース、2億ユーロ)
報道によればテマ・ファウンドリーズは、前年に倒産したベルギーの半導体メーカー、ベルガンの跡地に2億ユーロ以上を投じ、本格的な「集積フォトニクス生産・サービスセンター」を建設する。エネルギー消費量が拡大しているデータセンターやAIアプリケーション向けの省エネチップを対象に、製造・切断・パッケージング・試験を行う最先端の半導体工場兼サービスセンターを設立し、約500人の雇用創出が期待される。
食品 クラルボー(Clarebout) シンプロット(Simplot) 米国 2025年7月 未発表 米国の食品・農業大手のシンプロットは、ベルギーの冷凍ポテト製品企業クラルボーを買収する意向を発表した。今後変化し続ける世界経済や農業、環境のニーズに対応できる強力な食品基盤を形成することが目的。クラルボーは、フランスとの国境沿いのオランダ語圏のニーウケルケに本社を置き、従業員は約3,000人、国内に2カ所の工場を擁する。同社は2023年にフランスに新工場を開設した。
半導体 ルセダ・フォトニクス(Luceda Photonics) SMTXテクノロジーズ(SMTX Technologies) シンガポール 2025年8月 未発表 imec(ベルギーのナノエレクトロニクス・半導体研究機関)とヘント大学のスピンオフ企業で、フォトニクス設計フロー全体を自動化・統合するプラットフォームを提供するルセダ・フォトニクスは、半導体の歩留まり向上、データ分析、ウェハーレベルテスト向けのサービスを提供するシンガポールを拠点とするSMTX Technologiesに買収された。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 ベルギーの主な対外直接投資案件(2025年4月~2026年3月)〔M&A以外〕
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
バイオ医療 UCB 米国 2026年3月 50億ドルの経済効果 バイオ医薬メーカーUCBは、事業拠点を有する米ジョージア州で、製造拠点となるバイオ医薬品製造施設を新たに建設すると発表した。敷地面積79エーカー、延べ床面積約46万平方フィートに及ぶ拠点は、バイオ医薬品ネットワークの中核となる。人工知能(AI)やロボティクス、スマートな資源管理を融合した「デジタル・ファースト」のアプローチにより、効率性と持続可能性を強化しながら、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築する。今回の投資により、バイオ医薬品製造分野で約330人の恒常的な専門職雇用が創出されるほか、建設段階では1,000人以上の雇用が見込まれ、地域に約50億ドルの経済効果をもたらすと推計されている。
食品 アンハイザー・ブッシュ・インベブ
(ABインベブ)
米国 2026年1月 30億ドル ビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は、アポロ・グローバル・マネジメントが率いる投資家コンソーシアムから、同社が米国に保有する金属容器工場の49.9%の株式を約30億ドルで買い戻すと発表した。買い戻し対象の金属容器事業は、米国6州の7工場。同社ブランドに対する品質、コスト効率、イノベーション速度、供給の安定性を確保する。
また、同社は2025年5月に、米国子会社アンハイザー・ブッシュを通じて、3億ドルの投資計画を発表した。同社のトレーニングセンターを拡張し、特に米軍退役軍人に焦点を当てた採用と教育の強化に充てる。今回の投資は、業務の効率化、技術の向上、そして変化する消費者のニーズに応えるため、全米100カ所への20億ドル近くの投資に追加されるものとして、「米国での製造へのコミットメント」を強調した。
化学 ソルベイ(Solvay) チリ 2025年6月 1,200万ドル 化学大手ソルベイとブラジルのプロドゥトス・キミコス・マカイ(Produtos Químicos Makay(PQM))の合弁会社ペロキシドス(Peróxidos)は、アンデス市場の競争力強化に向け、チリにある同社の生産工場への投資を発表した。チリの中部に位置するコロネル工業団地の同社工場は、太平洋岸で唯一の過酸化水素製造工場。今後、同社は全アンデス市場向けのサービス提供を可能とするため、製品ポートフォリオの拡大を通じ競争力を強化する。さらに工場の生産工程におけるCO2排出量の削減にも貢献する。2025年後半に建設が開始され、2026年の完成を目指す。
物流 ベルギー郵政(bpost) カナダ 2025年11月 未公開 ベルギー郵政(bpost)は、中国系オンライン通販Temuとグローバルな協力関係の拡大を目的とした覚書を締結した。同覚書に基づき、両社はベルギーとカナダでの既存の提携を強化し、重量物配送サービスを含む多様な配送モデルを模索し、集荷・配達網を通じたアクセス拡充を図る。さらに、地域間と欧州全域で配送を支援する統合的な物流ソリューションを開発し、拡張性を高めつつ、高品質で手頃な価格のサービスを共同で開発する。同合意は、欧州・北米全域における倉庫管理、輸送、ラストマイル配送の業務能力強化および新しい協力可能性のある地域の特定・評価をする枠組みも定めた。bpostグループは物流・輸送分野での経験および物流サービスにおける環境配慮型・低炭素ソリューションに関する知見をTemuに提供する。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

表6-2 ベルギーの主な対外直接投資案件(2025年4月~2026年3月)〔M&A〕
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
CMBテック 海運 ゴールデン・オーシャン・グループ(GOGL) ノルウェー 2025年8月 市場価値約111億ドル 海運大手CMBテックは、ノルウェーの同業ゴールデン・オーシャン・グループ(GOGL)との合併手続きが完了し たと発表。CMBテックは2025年3月にGOGLの株式40.8%を約11億7,900万ドルで取得していた。最終的な買収価格は公表されていないものの、合併後の艦隊数は約250隻、市場価値は約111億ドルとなった。保有船舶のうち、80隻以上は水素・アンモニア対応船が含まれ、顧客に低炭素燃料の選択肢を提供する。
アジアス(Ageas) 保険 アクロマス・インシュアランス・カンパニー・リミテッド(AICL) 英国 2025年7月 約6,700万ポンド 保険大手アジアスは、アクロマス・インシュアランス・カンパニー・リミテッド(AICL)の買収が完了した旨を発表。アジアスは2025年、50歳以上向け市場に特化した英国ブランドのサガ(Saga)と、20年間の独占的パートナーシップ契約を締結し、50歳以上の顧客層向けの地位を強化している。欧州全域における損害保険事業の基盤を活用しつつ、高齢化社会に向けたサービスの提供を加速させることを目指す。AICLの買収は、2024年12月に発表されていた。
ケプラー(Kpler) 海運 スパイア・マリタイム(Spire Maritime) 米国 2025年4月 2億4100万ドル
(報道ベース)
貿易向けインテリジェンスツールを提供するケプラーは、衛星データを活用したリアルタイムのグローバル船舶追跡サービスを提供するスパイア・マリタイムの買収を完了したと発表した。これにより、ケプラーは海運データおよび分析機能を強化したい意向。
キネポリス(Kinepolis) エンターテインメント エマジン・エンターテインメント(Emagine Entertainment) 米国 2025年11月 未公開 映画館チェーン大手キネポリスは、米国の同業エマジン・エンターテインメントの事業を買収することで合意したと発表。本合意は、年内の買収完了を見込み、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州、ウィスコンシン州に所在する14の映画館(スクリーン数177、座席数1万8,000席)をポートフォリオに追加する。エマジン・エンターテインメントは、年間観客動員数約600万人、約1億2,900万ドルの収益を上げてきた。キネポリスは1997年設立以降、ベルギーをはじめとする欧州63の映画館を含む全世界に108の映画館(スクリーン数1,137、座席数20万席以上)を展開し、今回の買収によりさらなる米国事業の拡大を狙う。
プラトス(Puratos) 製菓 ヴォルフーズ(Vör Foods) 米国 2026年1月 未公開 パン・菓子製造を手掛けるプラトスは、米国ペンシルベニア州トレヴォースに拠点を置く、ナッツペースト関連製品を手掛けるヴォルフーズの買収を発表した。同買収により、米国の製造拠点能力を拡大し、製菓分野のイノベーションを促進する。ナッツ由来原料はベーカリー分野で最も成長が著しい分野の1つであり、今回の買収を通じて、現地生産された原料を通じ、ドバイ風チョコレートの需要拡大など新たな消費者トレンドに、メーカーがより迅速に対応できるよう支援体制を強化する。ヴォルフーズのナッツ専用加工工場は、プラトスのオペレーション能力を強化するほか、主に米国産原料の使用によりトレーサビリティとリードタイムが改善され、米国で拡大する顧客需要に的確に応えることが可能になる。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

対日関係

対日貿易は医薬品輸出の増加を背景に、前年から貿易赤字が縮小

2025年の対日輸出は29億8,900万ユーロと、前年の26億8,400万ユーロから11.4%増加した。輸入は前年比6.3%減の76億1,900万ユーロとなった。貿易収支は46億3,000万ユーロの赤字だが、赤字幅は前年の54億4,800万ユーロから縮小した。輸出では、最大品目である医薬品(構成比39.2%)が47.9%増と大幅に増加、ヒドラジンや過硫酸塩などの無機化学品(4.9%)も3.1倍となった結果、化学工業品(54.4%)全体で38.2%増だった。前年に続き2位の機械および電気・電子機器(11.7%)は16.3%減と縮小した。

輸入を品目別に見ると、主要品目の減少が目立った。1位の輸送用機器(構成比70.3%)は前年比5.7%減、2位の機械および電気・電子機器(10.7%)は7.5%減、3位のプラスチック・ゴム、同製品(5.9%)は5.3%増、4位の化学工業品(4.4%)は16.4%減であった。

表7 ベルギーの対日主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 1,176 1,625 54.4 38.2 396 331 4.4 △ 16.4
医薬品 792 1,172 39.2 47.9 78 86 1.1 11.0
無機化学品(貴金属、希土類金属) 48 147 4.9 208.5 18 15 0.2 △ 15.7
有機化学品 170 124 4.2 △ 26.8 71 75 1.0 5.5
機械および電気・電子機器 418 349 11.7 △ 16.3 883 817 10.7 △ 7.5
原子炉・ボイラー、機械類、同部品 263 209 7.0 △ 20.3 532 555 7.3 4.2
電気機器 155 140 4.7 △ 9.5 351 262 3.4 △ 25.2
光学・精密機器 248 240 8.0 △ 3.3 407 328 4.3 △ 19.4
調整食料品、飲料・アルコール、たばこ 267 205 6.9 △ 23.4 11 12 0.2 6.6
輸送用機器 187 197 6.6 5.4 5,682 5,358 70.3 △ 5.7
自動車(鉄道用または軌道用除く) 186 195 6.5 4.9 5,681 5,356 70.3 △ 5.7
金属及び金属加工品 110 119 4.0 8.5 122 93 1.2 △ 23.7
プラスチック・ゴム、同製品 112 77 2.6 △ 31.1 424 446 5.9 5.3
繊維、同製品 41 36 1.2 △ 13.0 100 92 1.2 △ 7.6
真珠・貴石・貴金属 26 30 1.0 14.0 23 28 0.4 23.6
合計(その他含む) 2,684 2,989 100.0 11.4 8,133 7,619 100.0 △ 6.3

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

日本からの直接投資は増加、R&Dや物流への投資も

2025年の日本からの対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の11億900万ユーロの引き揚げ超過から8億9,500万ユーロの流入となった。2025年10月にダイキンヨーロッパは、ヘントで研究開発センター(EDC)を稼働開始した。同じく10月にはブリュッセル空港が倉庫と企業オフィスから成る物流拠点ブルカーゴ・セントラルを開設。日本通運が同拠点の利用を発表しており、医薬品などヘルスケア分野の物流ソリューションの強化などが見込まれている。また、日本郵船は11月、欧州港の完成車ターミナルでは初めてとなる完全自動型立体駐車場を、ベルギー・ゼーブリュージュ港に建設すると発表。効率化により、温室効果ガス(GHG)削減にも貢献しながら欧州における自動車サプライチェーンの発展を目指す。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 実質GDP成長率:2024年、2025年は暫定値 失業率:2023年、2024年は季節調整値 貿易収支:財のみ 貿易収支、経常収支:国際収支ベース
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 1.6 1.1 1.0
1人当たりGDP (米ドル) 63,769 67,690 73,833
消費者物価上昇率 (%) 2.3 4.3 3.0
失業率 (%) 5.5 5.7 6.2
貿易収支 (100万ユーロ) 7,870 10,280 1,181
経常収支 (100万ユーロ) 1,167 △ 2,342 △ 12,275
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 29,219 27,754 32,050
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 322,170 369,867 410,714
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.9248 0.9239 0.8850

〔注〕
実質GDP成長率:2024年、2025年は暫定値
失業率:2023年、2024年は季節調整値
貿易収支:財のみ
貿易収支、経常収支:国際収支ベース

〔出所〕
ベルギー国立銀行(NBB)