ベルギーの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は前年の1.2%から1.0%に縮小。
  • 貿易は輸出入ともに減少も、貿易黒字に転換。
  • 対内・対外投資ともに引き揚げ超過だが、半導体や脱炭素分野で活発な動き。
  • 対日貿易は主要品目の輸出が大幅に減少し、貿易赤字が拡大。

公開日:2025年8月1日

マクロ経済 
低成長が継続するもプラス成長を維持

ベルギーの2024年の実質GDP成長率は、低成長が続いた2023年の1.2%から1.0%にさらに縮小したものの、プラス成長を維持した。需要項目別では、民間最終消費支出は前年比2.0%増、政府最終消費支出は2.6%増と経済成長を牽引した。国内総固定資本形成は、企業投資(1.8%増)と公共投資(9.8%増)が好調だった一方、住宅投資(4.8%減)がマイナス成長となったことで、1.4%増だった。輸出の3.4%減に対し、輸入は3.5%減となり、純輸出はGDPを0.1ポイント押し上げた。

表1 ベルギーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.3 1.2 1.0 0.8 1.0 1.2 1.1
階層レベル2の項目民間最終消費支出 3.6 0.6 2.0 1.1 1.4 2.4 3.1
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.4 2.9 2.6 1.5 3.4 2.7 2.9
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 1.7 3.5 1.4 0.2 1.7 △ 1.9 5.9
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 5.8 △ 7.1 △ 3.4 △ 5.5 △ 3.3 △ 2.1 △ 2.6
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 5.8 △ 6.8 △ 3.5 △ 6.7 △ 3.6 △ 2.3 △ 1.3

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。季節調整値。2023-2024年は暫定値
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

貿易 
貿易収支は黒字に転じる

2024年の貿易全体では、輸出が前年比4.9%減の3,487億200万ユーロ、輸入は8.8%減の3,391億8,000万ユーロで、ともに前年から縮小した。貿易収支は前年の51億7,800万ユーロの赤字から、95億2,200万ユーロの黒字となった。

輸出を主要品目別にみると、上位4品目の全てが前年から縮小した。最大輸出品目の化学工業品(構成比26.0%)は、前年比2.4%減の906億4,700万ユーロに減少した。化学工業品の6割超を占める医薬品が3.1%減であった。2位の鉱物性生産品(12.0%)は15.9%減の419億1,000万ユーロ、3位の輸送用機器(11.9%)と4位の機械および電気・電子機器(10.2%)はそれぞれ4.5%減、4.2%減となった。

輸出を国・地域別にみると、全体の6割以上を占めるEU(構成比63.2%)は、前年比5.1%減の2,202億2,400万ユーロとなった。最大の輸出相手国であるドイツ(15.2%)や、続くオランダ(12.9%)、フランス(12.7%)がそれぞれ9.4%減、7.8%減、6.1%減と軒並み縮小したことによる。EU域外の最大輸出相手国である米国(7.9%)は2.2%減、英国(6.3%)は1.2%増となった。アジア大洋州の中では、前年に1位に浮上した中国(1.8%)が1.5%減となったが引き続き1位を維持、3年連続で2位となったインド(1.1%)は18.2%減となった。前年に大きく後退しアジア大洋州で3位となった日本(0.8%)は2024年も33.4%減と大きく減少したが、3位を維持した。

輸入も主要4品目全て縮小

輸入を主要品目別にみると、輸出同様、主要4品目が全て前年から縮小した。最大品目の化学工業品(構成比20.6%)は前年比10.3%減、続く鉱物性生産品(17.2%)は12.6%減、3位の機械および電気・電子機器(13.7%)、4位の輸送用機器(12.7%)はそれぞれ、12.4%減、10.8%減と縮小した。

輸入を国・地域別にみると、全体の7割弱を占めるEU(構成比68.5%)は前年比5.5%減と縮小した。最大輸入相手国であるオランダ(23.8%)は0.1%増とほぼ前年水準を維持したものの、続くドイツ(13.5%)、フランス(11.5%)はそれぞれ5.8%減、10.7%減となった。EU域外では、前年に続き米国(6.0%)が最大の輸入相手国で、以下、中国(3.5%)、英国(2.9%)となり、それぞれ21.6%減、6.4%減、24.7%減であった。日本(2.3%)は前年に続きアジア大洋州で2位で、5.6%減だった。

表2 ベルギーの主要品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 92,891 90,647 26.0 △ 2.4 77,964 69,966 20.6 △ 10.3
階層レベル2の項目医薬品 57,653 55,877 16.0 △ 3.1 44,323 40,890 12.1 △ 7.7
階層レベル2の項目有機化学品 13,334 12,952 3.7 △ 2.9 17,280 13,154 3.9 △ 23.9
鉱物性生産品 49,863 41,910 12.0 △ 15.9 66,739 58,304 17.2 △ 12.6
階層レベル2の項目鉱物燃料、鉱物油及びその蒸留製品 48,384 40,592 11.6 △ 16.1 63,373 55,239 16.3 △ 12.8
輸送用機器 43,504 41,555 11.9 △ 4.5 48,300 43,085 12.7 △ 10.8
階層レベル2の項目自動車(鉄道用または軌道用除く) 41,349 39,274 11.3 △ 5.0 46,646 41,650 12.3 △ 10.7
機械および電気・電子機器 37,058 35,500 10.2 △ 4.2 53,108 46,537 13.7 △ 12.4
階層レベル2の項目原子炉・ボイラー、機械類、同部品 23,783 23,041 6.6 △ 3.1 26,546 26,473 7.8 △ 0.3
階層レベル2の項目電気機器 13,276 12,460 3.6 △ 6.1 26,562 20,064 5.9 △ 24.5
調整食料品、飲料・アルコール、たばこ 25,804 26,950 7.7 4.4 16,052 17,895 5.3 11.5
金属及び金属加工品 28,171 26,563 7.6 △ 5.7 24,068 22,790 6.7 △ 5.3
階層レベル2の項目鉄鋼 14,446 12,982 3.7 △ 10.1 8,831 8,198 2.4 △ 7.2
プラスチック・ゴム、同製品 22,258 22,584 6.5 1.5 15,989 15,156 4.5 △ 5.2
真珠・貴石・貴金属 14,293 11,009 3.2 △ 23.0 12,059 9,272 2.7 △ 23.1
光学・精密機器 9,412 10,179 2.9 8.2 9,923 10,139 3.0 2.2
動物・動物性生産品 9,826 10,011 2.9 1.9 8,599 8,283 2.4 △ 3.7
植物性生産品 7,887 7,914 2.3 0.3 11,147 11,051 3.3 △ 0.9
繊維、同製品 6,818 6,282 1.8 △ 7.9 7,172 6,944 2.0 △ 3.2
合計(その他含む) 366,547 348,702 100.0 △ 4.9 371,725 339,180 100.0 △ 8.8

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表3 ベルギーの主要国・地域別輸出入 (単位100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 232,113 220,224 63.2 △ 5.1 245,706 232,274 68.5 △ 5.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 203,873 191,584 54.9 △ 6.0 218,968 208,770 61.6 △ 4.7
階層レベル3の項目ドイツ 58,622 53,108 15.2 △ 9.4 48,506 45,714 13.5 △ 5.8
階層レベル3の項目オランダ 48,970 45,150 12.9 △ 7.8 80,747 80,830 23.8 0.1
階層レベル3の項目フランス 47,278 44,386 12.7 △ 6.1 43,627 38,948 11.5 △ 10.7
階層レベル3の項目イタリア 16,521 15,900 4.6 △ 3.8 15,202 15,579 4.6 2.5
階層レベル3の項目スペイン 10,160 11,214 3.2 10.4 8,703 8,539 2.5 △ 1.9
階層レベル3の項目ルクセンブルク 7,031 6,300 1.8 △ 10.4 1,564 1,442 0.4 △ 7.8
階層レベル2の項目非ユーロ圏 28,240 28,641 8.2 1.4 26,738 23,503 6.9 △ 12.1
階層レベル3の項目ポーランド 9,426 9,983 2.9 5.9 6,980 5,570 1.6 △ 20.2
階層レベル3の項目スウェーデン 6,512 6,156 1.8 △ 5.5 7,169 7,483 2.2 4.4
階層レベル3の項目チェコ 3,506 3,680 1.1 5.0 4,426 4,386 1.3 △ 0.9
英国 21,798 22,049 6.3 1.2 13,060 9,833 2.9 △ 24.7
トルコ 4,872 4,764 1.4 △ 2.2 3,089 3,007 0.9 △ 2.7
スイス 4,672 4,738 1.4 1.4 9,648 9,074 2.7 △ 6.0
ノルウェー 3,223 2,943 0.8 △ 8.7 8,606 6,614 1.9 △ 23.1
アジア大洋州 26,655 24,042 6.9 △ 9.8 36,724 33,999 10.0 △ 7.4
階層レベル2の項目中国 6,309 6,214 1.8 △ 1.5 12,692 11,876 3.5 △ 6.4
階層レベル2の項目インド 4,484 3,669 1.1 △ 18.2 4,012 3,463 1.0 △ 13.7
階層レベル2の項目日本 3,996 2,663 0.8 △ 33.4 8,369 7,903 2.3 △ 5.6
階層レベル2の項目オーストラリア 1,796 1,952 0.6 8.7 1,065 979 0.3 △ 8.1
階層レベル2の項目韓国 1,944 1,875 0.5 △ 3.5 2,760 2,364 0.7 △ 14.4
北米 32,841 31,526 9.0 △ 4.0 31,461 24,551 7.2 △ 22.0
階層レベル2の項目米国 28,028 27,421 7.9 △ 2.2 25,778 20,207 6.0 △ 21.6
階層レベル2の項目カナダ 2,806 2,560 0.7 △ 8.8 2,820 2,328 0.7 △ 17.5
湾岸協力会議(GCC)諸国 6,349 5,527 1.6 △ 12.9 5,643 2,925 0.9 △ 48.2
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦(UAE) 3,622 2,962 0.8 △ 18.2 1,381 512 0.2 △ 62.9
アフリカ 15,668 14,991 4.3 △ 4.3 7,158 7,423 2.2 3.7
合計(その他含む) 366,547 348,702 100.0 △ 4.9 371,725 339,180 100.0 △ 8.8

〔注〕(1)アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、マカオおよび台湾を加えた合計値。
北米は、米国、カナダ、メキシコの3 カ国の合計値。
湾岸協力会議(GCC)は、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6 カ国の合計値。
(2)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

対内・対外直接投資 
対内直接投資は半導体関連とCO2排出削減案件が活発

2024年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の271億9,300万ユーロの流入から、242億6,000万ユーロの大幅な引き揚げ超過に転じた。ドイツの147億6,100万ユーロの引き揚げ超過、米国の56億5,000万ユーロの引き揚げ超過が大きく影響した。最大の投資国はスペインで、21億8,700万ユーロだった。対内直接投資案件では、半導体分野や、二酸化炭素(CO2)排出削減に取り組む投資案件が目立った。デンマークの海運大手A.P.モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk)は、アントワープ・ブルージュ港に建設する工場での化石燃料を使用しないプラスチックの生産を通じ、CO2排出削減に貢献する投資を発表。富士フィルムは2025年2月に、半導体のさらなる需要拡大と高性能化に対応すべく、2023年に続き、既存設備を増強する大型投資を発表した。

対外直接投資は半導体や化学、エネルギー分野で市場変化に対応

2024年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の172億8,800万ユーロから大幅に縮小し、29億2,500万ユーロとなった。国・地域別でみると、英国が最も多く46億3,700万ユーロ、米国が43億9,700万ユーロと続いた。EU域内は40億500万ユーロの引き揚げ超過となった。主な対外直接投資案件では、半導体や化学、エネルギー分野の市場の変化に対応するための投資が活発だった。半導体関連製品の開発を手掛けるメレキシス(Melexis)は2024年7月にマレーシアのサラワク州クチンにウエハーテストサイトを開設。2025年1月にはフランスにあるオフィス機能を同国南部に移転し、新事業所および研究所を開設した。電動化の需要が高まる自動車やモビリティ、ロボット工学などの分野に対応するため、次世代センサーの開発に取り組む。海洋土木・建設デメ(DEME)は2025年5月、ノルウェーの洋上風力発電大手ハブフラム(Havfram)を買収した。タービンおよび基礎の据付の競争力を強化したい意向だ。

表4 ベルギーの国・地域別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
国・地域名 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 金額 金額
欧州 17,442 △ 17,781 11,716 326
階層レベル2の項目EU 21,169 △ 9,468 7,841 △ 4,005
階層レベル3の項目ユーロ圏 24,769 △ 11,373 6,126 △ 6,204
階層レベル4の項目オランダ 6,860 △ 804 △ 20,477 3,924
階層レベル4の項目イタリア 3,143 702 △ 386 1,855
階層レベル4の項目ドイツ △ 960 △ 14,761 2,121 1,559
階層レベル4の項目スペイン 947 2,187 500 1,121
階層レベル3の項目チェコ 71 691 △ 578 415
階層レベル3の項目スウェーデン 1,071 321 51 166
階層レベル3の項目デンマーク 101 270 166 70
階層レベル2の項目EU以外 △ 3,727 △ 8,313 3,875 4,331
階層レベル3の項目英国 △ 2,601 210 3,128 4,637
階層レベル3の項目ノルウェー △ 87 215 54 216
アジア 646 △ 587 △ 4,485 △ 2,771
階層レベル2の項目中国(香港除く) 128 331 388 137
階層レベル2の項目日本 1,261 △ 642 △ 757 △ 240
階層レベル2の項目香港 △ 414 499 △ 377 △ 883
米州 5,274 △ 5,826 9,403 4,984
階層レベル2の項目米国 4,771 △ 5,650 8,830 4,397
アフリカ 3,964 △ 136 420 296
大洋州 △ 220 30 234 91
合計(その他含む) 27,193 △ 24,260 17,288 2,925

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

表5-1 ベルギーの主な対内直接投資案件(2024年~2025年3月)〔M&A以外〕
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
半導体 富士フィルム 日本 2025年2月 40億円 富士フイルムは、ベルギーの生産拠点で、先端半導体材料の新規生産設備と周辺材料の既存設備増強を発表した。車載用半導体や、製造工程のデジタル化を支える産業用半導体の欧州の需要拡大に対応する。5Gや6Gによる通信の高速・大容量化、自動運転の拡大、AIやメタバースの普及などにより、半導体のさらなる需要拡大と高性能化が見込まれるとして、半導体材料事業に積極的な成長投資を行っている。
半導体 imec、ASML他 複合 2024年5月 25億ユーロ ベルギーのナノエレクトロニクスとデジタル技術分野の世界的な研究機関imec(本部:ルーバン)は、回路線幅が2ナノメートル以下のシステムオンチップ(SoC)の試作ラインを整備すると発表した。EUで2023年9月に成立した欧州半導体法に基づく取り組みで、イノベーションと経済成長を促し、欧州の半導体産業全体の強化への貢献を目指す。投資は、半導体共同事業体(Chips JU)やフランダース政府から合計 14 億ユーロが拠出され、残る11 億ユーロは、オランダ半導体製造大手 ASML を含むパートナー企業からの民間資金を見込む。
海運 A.P.モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk) デンマーク 2024年9月 15億ユーロ デンマークの海運大手A.P.モラー・マースクは、グリーンメタノールを利用し、化石燃料を使用しない大規模な化学品およびプラスチック生産の開発を行うVioneoを設立した。最初の工場を、欧州最大の総合化学クラスターがあるアントワープ・ブルージュ港に建設。化石燃料を使用しないプラスチックを約30万トン生産し、年間少なくとも150万トンのCO2排出を削減する。2025年に最終投資決定(FID)がなされる見込み。
エネルギー エア・リキード(Air Liquide) フランス 2024年12月 非公開
(欧州イノベーション基金からの補助金は1億1,000万ユーロ)
フランス産業ガス大手エア・リキードは、アントワープ・ブルージュ港で天然ガスの代わりにアンモニアを利用し低炭素で水素を製造するENHANCEプロジェクトに、欧州イノベーション基金から1億1,000万ユーロを獲得したと発表した。同社は、大規模な再生可能アンモニア分解プラントと水素液化プラントを建設、所有、運営する予定 。さらに、同港にある水素製造設備1基を改修し、天然ガスの代わりにアンモニアを原料とする水素液化設備も建設する予定。新施設は、欧州における低炭素で再生可能な水素サプライチェーンの開発を支援し、製油所や、化学製品、大型道路、海上輸送、航空輸送など、脱炭素化が困難な顧客の脱炭素化に貢献する。天然ガスをアンモニアに置き換え気体・液体水素を製造することで、年間30万トン以上のCO2排出量を削減することができるという。
IT グーグル(Google) 米国 2024年4月 非公開
(報道では約10億ユーロ)
報道によれば、グーグルは、ベルギー南部のエノー州ファルシエンヌに国内で2番目となるデータセンター・キャンパスを建設する。また、約60km離れたサンジスランにある既存のデータセンターも拡張する見込み。新しいデータセンターは、AIとクラウド・サービスに対する需要の高まりに対応するためのもの。既存のデータセンターには、太陽光発電設備を建設し、2030年までにグーグルの全事業とそのバリューチェーンからのCO2排出量を、実質ゼロにするという目標の達成を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ベルギーの主な対内直接投資案件(2024年~2025年5月)〔M&A〕
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
ロジスティックス ITCルービス(ITC Rubis) 三井物産 日本 2025年4月 約219億円 三井物産は、アントワープ・ブルージュ港で液体化学品の貯蔵や荷役、物流事業を担うITCルービスを完全子会社化すると発表した。2008年、三井物産と仏ルービス・ターミナル(現テプサ)が50%ずつ出資する合弁会社として設立され、残り50%分の株式を買い取る。2030年代をめどに貯蔵タンクを拡張する。当局の許認可取得などを経て、26年3月期中に取得を完了する予定。
医療技術開発 エゾビオテック(EsoBiotec) アストラゼネカ(AstraZeneca) 英国 2025年5月 最大10億ドル 生体内(in vivo)細胞治療技術の開発を手掛けるベルギーのバイオスタートアップ、エゾビオテック(EsoBiotec)は、英国の製薬大手アストラゼネカの子会社になると発表した。買収額は最大10億ドルで、2025年5月に買収完了。引き続きベルギーを拠点とする。
金融コンサルティング イザベル・グループ(Isabel Group) ウォルターズ・クルワー(Wolters Kluwer) オランダ 2024年9月 3億2,500万ユーロ 財務や法務、税務、ヘルスケア分野でコンサルタントサービスを提供するウォルターズ・クルワーは、ベルギーのフィンテック企業イザベル・グループから、クラウドベースの財務ワークやデータソリューションを提供する会計サービスのポートフォリオであるCodaBox、ClearFacts、Clearnox、Zoomit、Flowinを買収した。
化学 サイエンスコ(Syensqo) 住友化学 日本 2025年2月 非公開 住友化学は、ベルギーに拠点を置くサイエンスコ(Syensqo)の液晶ポリマー樹脂事業を買収したと発表。買収によって製品・技術を取り込むことで、新たな市場ニーズに細やかに対応できる体制を強化し、ICT用途やモビリティ用途を中心にLCP事業のさらなる拡大を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 ベルギーの主な対外直接投資案件(2024年~2025年4月)〔M&A以外〕
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
食品 アグリスト(AGRISTO) インド 2025年3月 8,000万ユーロ 冷凍ポテト製品を生産するアグリスト(AGRISTO)は、インド北部のビジノールの生産施設拡大に8,000万ユーロの投資予定を発表した。インドだけでなく、北米や中東、東南アジア、日本にも製品を供給したい意向だ。
半導体 メレキシス(Melexis) フランス、マレーシア 2025年1月、
2024年7月
合計7,500万ユーロ 車載や産業、ヘルスケア、オートメーション分野に使用される、磁気センサー等の半導体関連製品の開発を手掛けるメレキシスは、フランス南部のソフィア・アンティポリスに既存のオフィス機能を移転し、新しい事業所および研究所を開設したと発表した。2023年から500万ユーロを投じて建設された同施設は、今後電動化の需要が高まる自動車や、モビリティ、ロボット工学などの分野に対応するため、次世代センサーの開発に取り組む。同発表に先立ち同社は、7,000万ユーロを投資し、2024年7月にマレーシアのサラワク州クチンにウエハーテストサイトを開設したと発表した。
化学 サイエンスコ(Syensqo) 米国 2024年4月 非公開 大手化学メーカーのソルベイから分社した特殊化学品メーカーのサイエンスコは、米国のジョージア州オーガスタで電気自動車(EV)のバッテリー用材料の新工場の起工式を実施したと発表した。新工場は、完成すれば北米最大のポリフッ化ビニリデン(PVDF)工場となり、約100人の新規雇用を創出する予定。
化学 ソルベイ(Solvay) フランス 2025年4月 非公開 化学大手ソルベイは、フランス西部に位置するラ・ロシェル工場で、永久磁石向けのレアアースの新規生産ラインが稼働を開始したと発表した。永久磁石は、電気自動車用モーターや、再エネ、先進エレクトロニクス、防衛システムに不可欠だ。同施設では、EUの重要原材料法で義務付けられている通り、多様なサプライヤーや採掘パートナーからレアアースやリサイクル材料を調達する。同社は今回の取り組みを通じてレアアース市場の同社の地位を強化すると共に、重要原材料法にも貢献するとしている。
半導体 imec オランダ 2024年6月 非公開 imecとASMLは、オランダ南部のフェルドホーフェンに共同で最先端の高NA極端EUV露光装置(High NA EUV Lithography)研究所を開所し、2025~2026年の量産開始に向けて提携すると発表した。また、同機関は、2024年8月に日本法人を東京に設立している。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 ベルギーの主な対外直接投資案件(2024年~2025年5月)〔M&A〕
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
アジアス(Ageas) 保険 esure 英国 2025年4月 12億9,500万ポンド
(15億1,000万ユーロ)
保険大手アジアスは、ベインキャピタル(Bain Capital)から、英国の保険大手esureを買収することで合意したと発表した。esureは、価格比較サイト(PCW)を通じた完全デジタル販売モデルと、3つの人気ブランドを有する英国の大手個人向け損害保険会社だ。これにより、英国第3位の個人向け損害保険プラットフォームとなる。アジアスは今回の買収を通じて、英国市場で重要なPCWへの販売戦略の多様化を加速し、ターゲットとする顧客層の拡大を目指している。
Bpost(ベルギー郵便) 物流 Staci フランス 2024年8月 非公開
(報道では13億ユーロ)
Bpost(ベルギー郵便)は、欧州内の小包配送と国際ロジスティクス・サービスを強化するために、フランスの投資会社アルディアン(Ardian)などから、同業のStaciの株式100%を取得し買収を完了。同買収を通じてベルギー郵便は、欧州におけるeコマースと、複数の販売チャネルを活用するオムニチャネルのロジスティクス、商品が注文されてからエンドユーザーに届くまで必要な業務全般(フルフィルメント)のそれぞれの分野で、リーダーとしての地位を確立したい意向 。報道によると買収金額は合計13億ユーロとなる見込み 。
デメ(DEME) 投資 Sandbrook Capital・PSP Investments 米国・カナダ 2025年5月 非公開
(推定9億ユーロ)
海洋土木・建設デメは、気候インフラに特化した投資会社Sandbrook Capital(米国)と、カナダの年金基金投資機関Public Sector Pension Investment Board(PSP Investments)から、ノルウェーの洋上風力発電大手ハブフラム(Havfram)の買収が完了したと発表した。今回の取引推定額は9億ユーロ。この統合により、タービンおよび基礎の据付の競争力を強化したい意向。デメは4月9日に、同社の買収合意文書にサインしていた。
ジョン・コッケリル(John Cockerill) 大型機械 アルクス(Arquus) フランス 2024年7月 非公開 機械大手ジョン・コッケリルは、ボルボ・グループからフランスの軍用車両製造のアルクスの買収が完了したと発表した。ジョン・コッケリル・ディフェンスとアルクスの統合は、2026年までに年間売上高10億ユーロ、2,000人の専門家を擁し、ベルギー、フランス、イタリア、インド、サウジアラビアに主要な事業拠点を持つことを目標としている。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
半導体と再エネ分野で日本からの大型直接投資

2024年の日本からの直接投資受入額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年の12億6,100万ユーロの流入から6億4,200万ユーロの引き揚げ超過となった。新たな投資案件として、三井物産は2025年4月、アントワープ・ブルージュ港で化学品の貯蔵や荷役を担う同国のITCルービス(ITC Rubis)を完全子会社化すると発表した。住友化学は2025年2月、ベルギーに拠点を置くサイエンスコ(Syensqo)の液晶ポリマー樹脂事業を買収したと発表した。同社の製品・技術を取り込むことで、新たな市場ニーズに細やかに対応できる体制を強化し、ICT用途やモビリティ用途を中心に液晶ポリマー事業のさらなる拡大を目指す。

対日貿易は医薬品の輸出縮小を背景に、前年から貿易赤字が拡大

2024年の対日輸出は26億6,300万ユーロと、前年の39億9,600万ユーロから33.4%縮小した。輸入は前年比5.6%減の79億300万ユーロとなった。貿易収支は、52億4,000万ユーロの対日貿易赤字で、赤字幅は前年の43億7,200万ユーロから拡大した。最大の輸出品目である医薬品(構成比29.2%)が新型コロナワクチン需要の減少により61.5%減と大幅に縮小した結果、化学工業品(43.0%)全体で、52.1%減となった。前年に2位に浮上した機械・電気機器(15.7%)は15.1%増と堅調に推移した。前年5位の調製食料品、飲料・アルコール、たばこ(10.3%)は21.8%増で3位となり、前年同様4位の光学・精密機器(9.3%)と、前年の3位から5位に順位を下げた輸送用機器(7.0%)は、それぞれ13.1%減、43.5%減と落ち込んだ。輸入を品目別にみると、主要品目の減少が目立った。1位の輸送用機器(69.1%)は前年比5.0%減、2位の機械・電気機器(11.0%)は8.4%減といずれも低調で、3位のプラスチック・ゴム製品(5.4%)、4位の光学・精密機器(5.2%)もそれぞれ4.8%減、0.7%減と縮小した。

表7 ベルギーの対日主要品目別輸出入 [通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学工業品 2,389 1,145 43.0 △ 52.1 426 396 5.0 △ 6.9
階層レベル2の項目医薬品 2,025 779 29.2 △ 61.5 100 77 1.0 △ 22.9
階層レベル2の項目有機化学品 140 152 5.7 8.6 144 73 0.9 △ 49.3
機械・電気機器 363 418 15.7 15.1 950 869 11.0 △ 8.4
階層レベル2の項目原子炉、ボイラー等 211 263 9.9 24.4 537 518 6.6 △ 3.4
階層レベル2の項目電気機械・同部品 152 155 5.8 2.2 413 351 4.4 △ 14.9
調製食料品、飲料・アルコール、たばこ 224 273 10.3 21.8 10 11 0.1 10.8
階層レベル2の項目ココア・同調整品 73 79 3.0 8.3 0 0 0.0 △ 83.8
光学・精密機器 285 248 9.3 △ 13.1 411 408 5.2 △ 0.7
輸送用機器 332 187 7.0 △ 43.5 5,750 5,462 69.1 △ 5.0
階層レベル2の項目自動車(鉄道用または軌道用除く) 331 186 7.0 △ 43.6 5,749 5,461 69.1 △ 5.0
プラスチック・ゴム製品 94 114 4.3 21.2 445 423 5.4 △ 4.8
金属及び金属加工品 112 111 4.1 △ 1.2 160 122 1.6 △ 23.5
繊維製品 47 42 1.6 △ 10.2 79 100 1.3 25.9
真珠・貴石・貴金属材料 39 26 1.0 △ 31.5 27 25 0.3 △ 7.7
合計(その他含む) 3,996 2,663 100.0 △ 33.4 8,369 7,903 100.0 △ 5.6

〔出所〕ベルギー国立銀行(NBB)

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 4.3 1.2 1.0
1人当たりGDP (米ドル) 51,121 54,925 56,271
消費者物価上昇率 (%) 10.3 2.3 4.3
失業率 (%) 5.6 5.5 5.7
貿易収支 (100万ユーロ) △ 1,331 2,829 4,831
経常収支 (100万ユーロ) △ 7,403 △ 4,101 △ 5,242
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 28,023 25,735 22,374
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 292,835 321,354 369,467
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.95 0.92 0.92


実質GDP成長率:2023~2024年暫定値
貿易収支:財のみ
貿易収支、経常収支:国際収支ベース
出所
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ベルギー国立銀行(NBB)