オーストリアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は0.6%、2年にわたるマイナス成長から緩やかに回復。
  • 外需低迷による輸出減少で、貿易収支は赤字へ。
  • 脱グローバル化の流れの中で対内外直接投資はいずれも引き揚げ超過。
  • 対日輸出は拡大する一方で、輸入は減少。

公開日:2026年9月8日

マクロ経済

サービス、消費、投資に支えられ、2年連続のマイナス成長から回復

2025年のオーストリア経済は、民間最終消費支出(0.5%増)、国内総固定資本形成(1.4%増)の伸びに支えられ、実質GDP成長率は0.6%となり、2年続いたマイナス成長から脱した。しかし、産業部門の景況は低迷している。国際的な需要低迷や米国の関税政策による不透明感に加え、高いエネルギー価格と労働コストによる競争力低下が、輸出主導型企業を中心に、引き続き経済活動を抑制する主要因となっている。そのため、輸出額は前年から0.5%減少した。一方で、輸入額は設備投資の拡大にともない4.1%増となった。

緩やかな経済回復にもかかわらず、労働市場は改善の兆しがみられない。製造業と商業で雇用者数が減少(それぞれ前年比2.0%減、1.7%減)し、失業率も0.5ポイント上昇して5.7%となった。消費者物価上昇率は3.6%となり前年より0.7ポイント上昇、ユーロ圏のほぼ全ての国を上回った。主な原因は政府の電気料金抑制策の終了による家庭用電力価格の上昇(11.1%)だった。ホテル・レストラン(5.8%増)や食品、飲料品(3.7%増)の価格も上昇した。

実質GDP成長率は2026年第1四半期、前期比0.2%増となり、プラス成長が続いた。成長の原動力は工業生産(1.0%増)で、企業向けサービス(0.4%増)と政府支出(0.4%増)もこれを支えた。一方、建設(0.6%減)は引き続きマイナスとなり、商業・運輸・飲食・宿泊(0.8%減)も減少している。オーストリア経済研究所(WIFO)は、2026年通年の成長率を0.9%増、2027年は1.3%増とし、成長が続くと見込んでいる。

表1 オーストリアの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前期比。
項目 2023年 2024年 2025年 2026年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 △ 0.8 △ 0.7 0.6 0.3 0.0 0.3 0.0 0.2
民間最終消費支出 △ 0.2 1.0 0.5 △ 0.4 0.4 △ 0.6 0.2 0.8
政府最終消費支出 0.6 3.8 2.4 0.5 0.4 0.6 △ 0.4 0.4
国内総固定資本形成 △ 1.3 △ 4.3 1.4 0.3 1.3 1.0 △ 2.1 1.0
財・サービスの輸出 △ 0.6 △ 2.3 0.3 1.3 0.4 1.5 △ 0.1 0.1
財・サービスの輸入 △ 4.3 △ 2.6 1.7 0.8 1.7 0.7 △ 0.7 0.9

〔注〕四半期の伸び率は前期比。

〔出所〕オーストリア経済研究所(WIFO)

貿易

輸出はマイナス成長、貿易収支は赤字に

2025年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比0.5%減の1,901億3,600万ユーロ、輸入は4.1%増の1,967億1,900万ユーロだった。2024年、例外的に21億9,400万ユーロの黒字となった貿易収支だが、2025年は65億8,300万ユーロの赤字に転じ、2023年までの過去15年間の平均的な赤字水準に戻った。

輸出を品目別に見ると、合計で輸出のほぼ4分の3を占める機械・輸送機器(構成比37.2%)、原料別製品(19.9%)、化学品(15.9%)がすべて減少した。特に、化学品の減少率が前年比9.0%減と目立った。主な要因は医薬品の対米国輸出(51.8%減)と対ドイツ輸出(34.2%減)の大幅な減少だった。米国向け輸出の減少幅は23億7,200万ユーロで、輸出全体の減少幅(10億4,800万ユーロ)を上回った。構成比が最大の機械・輸送機器は0.2 %減とほぼ横ばいだった。シェアの大きい道路輸送機器(8.8%)は4.4%減で、乗用車(4.0%)は1.6%増と増加したものの、自動車部品(2.4%)が2.0%減となったほか、オートバイ(0.5%)の47.5%減が響いた。オートバイメーカーのKTMが2024年11月に破産申請し、12月に生産を停止したことが原因とみられる。なお、同社は2025年7月から生産を再開した。一方、前年から増加したのは、食品・動物・飲料・たばこ(8.7%、3.2%増)、原材料(3.2%、5.9%増)、雑製品(10.1%、0.8%増)だった。その他製品(2.4%、73.1%増)も増加しており、うち金・金貨(2.3%)が75.8%増と伸長した。

輸出を国・地域別で見ると、EU(構成比67.8%)は前年比0.6%増となった。最大の輸出相手国であるドイツ(29.5%)は1.2%減の560億8,400万ユーロで2年連続マイナスだった。対ドイツ輸出で最大品目の機械・輸送機器(38.9%)は1.8%増、食料品(9.6%)は5.7%増、原料(2.8%)は6.2%増、その他製品(3.0%)は65.1%増と伸びたが、原料別製品(21.6%)は0.3%減、化学品(10.6%)は18.1%減、雑製品(10.0%)は4.1%減と振るわなかった。一方、続くイタリア(6.6%)は、7.3%増の126億100万ユーロだった。主力品目の原料別製品(28.0%)は8.8%増、機械・輸送機器(19.3%)は5.9%増、化学品(16.3%)は19.0%増など、それぞれ大きく伸びた。

非ユーロ圏(構成比15.4%)は前年比2.6%増となった。最大の輸出相手国であるポーランド(3.8%)は2.0%減だったが、これに次ぐチェコ(3.8%)は6.4%増、ハンガリー(3.7%)は2.4%増、ルーマニア(2.0%)は6.2%増と、それぞれ堅調に増加した。

EU域外向け輸出は前年比2.9%減(構成比32.2%)だった。中でも米国向け輸出はここ数年堅調に拡大し、2024年には162億2,800万ユーロと過去最高を記録した。しかし2025年は、米国の関税政策の影響で20.4%減少し、シェアも1.7ポイント低下して6.8%となった。最大の輸出品目である機械・輸送機器(52.2%)は11.3%減(一般機械31.5%減、産業用機械24.0%減)となった。もっとも、2025年の対米貿易収支は51億9,000万ユーロの黒字を維持している。

アジア大洋州向け輸出(構成比7.5%)は前年比2.3%増となった。最大の輸出先である中国(2.7%)は4.4%減となった一方、2位の日本(1.1%)と3位のインド(0.8%)はそれぞれ26.5%増、13.6%増と伸びた。ASEAN(1.3%)向けも7.7%増だった。

次に、輸入を品目別に見ると、原材料(構成比3.6%)と燃料・エネルギー(6.4%)はそれぞれ前年比2.5%減、10.7%減と減少した。一方、最大の品目である機械・輸送機器(34.5%)は3.4%増となり、企業の設備投資の拡大(9.2%)を反映している。化学品(14.7%)も8.2%増加した。

輸入を国・地域別にみると、EU(構成比65.4%)は前年比2.6%増で、ユーロ圏(52.7%)、非ユーロ圏(12.7%)ともに3.1%増、0.6%増と増加した。最大の輸入元であるドイツ(32.2%)は3年ぶりに拡大し、4.1%増となった。中でもドイツからの天然ガス(2.5%)輸入が 3.8倍となり、ロシア産ガスへの依存低減が反映された形だ。ロシアとの貿易は、対ロシア経済制裁により輸入実績がなくなりつつある(97.3%減)。輸入上位10カ国のうち、7位のポーランドと9位のフランスがそれぞれ0.7%減、5.7%減となった以外は、全てプラスになった。2位の中国は13.8%増と堅調に拡大し、4位のスイスは化学品(56.7%増)を中心に大幅に伸びた(55.2%増)。

表2 オーストリアの主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕EU 域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
品目 輸出 輸入
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 70,930 70,789 37.2 △ 0.2 65,659 67,892 34.5 3.4
道路輸送機器 17,484 16,708 8.8 △ 4.4 20,338 21,176 10.8 4.1
乗用車 7,559 7,682 4.0 1.6 10,802 12,002 6.1 11.1
自動車部品 4,671 4,575 2.4 △ 2.0 5,128 5,021 2.6 △ 2.1
電気・電子機器 13,516 14,116 7.4 4.4 13,482 13,983 7.1 3.7
一般機械 11,996 11,668 6.1 △ 2.7 9,896 9,936 5.1 0.4
産業用機械 11,692 11,367 6.0 △ 2.8 6,114 6,026 3.1 △ 1.4
原動機 7,688 7,987 4.2 3.9 4,871 4,882 2.5 0.2
通信機器 2,260 2,171 1.1 △ 4.0 4,690 4,673 2.4 △ 0.4
原料別製品 37,910 37,826 19.9 △ 0.2 27,919 28,437 14.5 1.9
鉄製品 9,929 9,505 5.0 △ 4.3 4,629 4,600 2.3 △ 0.6
金属製品 9,759 9,661 5.1 △ 1.0 7,857 7,956 4.0 1.3
化学品 33,241 30,241 15.9 △ 9.0 26,725 28,910 14.7 8.2
医薬品 19,967 17,267 9.1 △ 13.5 11,753 13,548 6.9 15.3
雑製品 18,987 19,142 10.1 0.8 28,000 28,544 14.5 1.9
燃料・エネルギー 5,674 4,937 2.6 △ 13.0 14,073 12,563 6.4 △ 10.7
原油・石油製品 2,421 2,495 1.3 3.0 9,240 8,213 4.2 △ 11.1
電力 2,850 2,073 1.1 △ 27.3 1,349 1,847 0.9 37.0
天然ガス 399 367 0.2 △ 8.2 2,878 1,930 1.0 △ 32.9
食品・動物・飲料・たばこ 16,038 16,543 8.7 3.2 17,457 18,631 9.5 6.7
原材料 5,791 6,135 3.2 5.9 7,171 6,990 3.6 △ 2.5
コルク・木材 1,977 2,329 1.2 17.8 1,551 1,597 0.8 3.0
その他製品 2,613 4,522 2.4 73.1 1,987 4,752 2.4 139.2
金・金貨 2,540 4,465 2.3 75.8 1,756 4,481 2.3 155.1
総額(その他含む) 191,184 190,136 100.0 △ 0.5 188,990 196,719 100.0 4.1

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕オーストリア統計局

表3 オーストリアの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注1〕EU 域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。 〔注2〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出 輸入
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 128,172 128,951 67.8 0.6 125,489 128,732 65.4 2.6
ユーロ圏 99,542 99,610 52.4 0.1 100,594 103,683 52.7 3.1
ドイツ 56,743 56,084 29.5 △ 1.2 60,835 63,342 32.2 4.1
イタリア 11,745 12,601 6.6 7.3 12,335 12,434 6.3 0.8
フランス 6,956 6,644 3.5 △ 4.5 5,126 4,832 2.5 △ 5.7
スロバキア 3,761 3,876 2.0 3.1 3,641 3,784 1.9 3.9
非ユーロ圏 28,482 29,214 15.4 2.6 24,889 25,038 12.7 0.6
チェコ 6,763 7,195 3.8 6.4 8,124 8,133 4.1 0.1
ハンガリー 6,843 7,004 3.7 2.4 4,782 4,803 2.4 0.4
ポーランド 7,380 7,235 3.8 △ 2.0 6,087 6,047 3.1 △ 0.7
ルーマニア 3,496 3,712 2.0 6.2 2,299 2,328 1.2 1.3
アジア大洋州 13,911 14,227 7.5 2.3 26,558 29,283 14.9 10.3
中国 5,310 5,075 2.7 △ 4.4 15,473 17,613 9.0 13.8
日本 1,582 2,000 1.1 26.5 2,508 2,389 1.2 △ 4.7
ASEAN 2,232 2,405 1.3 7.7 4,578 4,940 2.5 7.9
インド 1,307 1,485 0.8 13.6 1,495 1,478 0.8 △ 1.1
米国 16,228 12,923 6.8 △ 20.4 7,722 7,733 3.9 0.1
英国 4,933 5,275 2.8 6.9 2,330 2,339 1.2 0.4
スイス 9,473 9,908 5.2 4.6 7,120 11,046 5.6 55.2
ロシア 992 912 0.5 △ 8.1 2,428 65 0.0 △ 97.3
アフリカ 2,159 2,341 1.2 8.4 2,387 2,403 1.2 0.7
ブラジル 1,059 1,100 0.6 3.9 354 326 0.2 △ 7.9
合計(その他含む) 191,184 190,136 100.0 △ 0.5 188,990 196,719 100.0 4.1

〔注1〕EU 域外貿易は通関ベース(輸出はFOB、輸入はCIF)、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。

〔出所〕オーストリア統計局

対内・対外直接投資

対内・対外直接投資ともに引き揚げ超過

オーストリア国立銀行(OeNB、中央銀行)によると、2025年の対内直接投資(国際収支ベース、フロー、ネット)は前年の135億8,000万ユーロから66億9,200万ユーロの引き揚げ超過へ転じた。対外直接投資も前年の134億7,100万ユーロから、10億9,200万ユーロの引き揚げ超過となった。同行によると、対内・対外投資の不振は国際的な脱グローバル化の傾向を反映している。

2025年の対内直接投資を国・地域別に見ると、EUからの投資は前年の22億7,300万ユーロの流入から、9億3,200万ユーロの引き揚げ超過へと転じた。ユーロ圏(マイナス4億8,800万ユーロ)および非ユーロ圏(マイナス4億4,400万ユーロ)はいずれも引き揚げ超過となった。EU以外では、ロシア(94億ユーロ)とスイス(21億5,400万ユーロ)の引き揚げ幅が顕著だった。一方、アラブ首長国連邦(UAE、19億7,400万ユーロ)、米国(10億3,200万ユーロ)、インド(5億2,500万ユーロ)などからは大きな流入がみられた。2025年の投資事例として、UAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)はオーストリアのエネルギー大手OMVの株式24.9%を保有しており、2025年3月に両社はポリオレフィン生産を中心とする新たな化学企業の設立を発表した。また、インドの二輪大手バジャージ・オート(Bajaj Auto Limited)は5月、経営再建中の二輪車メーカーKTMの経営権取得を発表。オランダ子会社を通じて総額8億ユーロの資金支援を行い、債務再編と事業再建に乗り出した。

オーストリア経済振興会社(ABA)が2025年に誘致した外国企業は、前年比26社減の283社となり、投資額も9億ユーロで前年の11億ユーロを下回った。一方で、2,700人以上の新規雇用が創出された。中・東欧諸国からの投資および事業拡張が増加しており、ハンガリーは24件でドイツ(67件)に次ぐ2位の投資国になった。地域別では、西欧(112件)が引き続き最大で、東欧(72件)、アジア(31件)、南欧(30件)が続く。

次に、2025年の対外直接投資を見ると、対EUではユーロ圏が55億6,200万ユーロの引き揚げ超過となった一方、非ユーロ圏は前年から大幅に増加し、15億4,300万ユーロとなった。特にポーランド向けは12億6,400万ユーロと前年の11億1,500万ユーロを上回った。例えば、食品大手グッドミルズ・グループ(GoodMills Group)は、ポーランドの製粉所の生産量倍増に向け、2,500万ユーロを投資した。

米国向けの投資は、トランプ政権の関税政策への対応が注目された。2025年6月、米国で通商拡大法232条に基づきアルミ製品に50%の関税が課された後、9月に飲料品大手のラウフ(Rauch Fruchtsäfte)がレッドブル(Red Bull)とノースカロライナ州で工場建設を開始するなど、一部で関税措置への対応とみられる投資の動きがあった。しかし全体として、対米直接投資は前年比38.5%減の11億1,300万ユーロに減少した。

表4 オーストリアの国・地域別対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)〔注〕2024年は改訂値、2025年は暫定値
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 金額 金額
EU 2,273 △ 932 14,216 △ 4,019
ユーロ圏 843 △ 488 13,898 △ 5,562
ドイツ 2,530 195 7,679 2,493
ルクセンブルク 567 △ 229 756 574
オランダ 58 839 3,048 △ 9,318
フランス △ 1,404 △ 648 903 △ 596
キプロス 78 △ 41 144 219
非ユーロ圏 1,430 △ 444 318 1,543
チェコ 54 △ 180 △ 582 △ 956
ハンガリー 41 △ 14 233 396
ポーランド 167 5 1,115 1,264
デンマーク 428 29 26 71
スウェーデン 781 △ 166 133 85
ブラジル △ 596 △ 759 50 188
トルコ 53 △ 27 △ 13 147
中国 58 78 △ 221 59
アフリカ 288 283 △ 90 △ 647
インド 108 525 △ 13 112
日本 223 △ 527 25 △ 41
スイス 1,289 △ 2,154 △ 2,264 1,003
英国 364 614 △ 337 △ 91
米国 3,726 1,032 1,810 1,113
ロシア 2,159 △ 9,400 △ 219 397
アラブ首長国連邦(UAE) 1,989 1,974 35 21
合計(その他含む) 13,580 △ 6,692 13,471 △ 1,092

〔注〕2024年は改訂値、2025年は暫定値

〔出所〕 オーストリア国立銀行(OeNB)

表5-1 オーストリアの主な対内直接投資案件(2025年)〔M&A以外〕
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT マイクロソフト(Microsoft) 米国 2025年6月 「クーリエ」紙(2025年6月30日)によると10億ユーロ マイクロソフトは、ウィーン近郊に3つのデータセンターから成るクラウドリージョンの開設を発表、2025年8月に稼働を開始した。(投資額は新聞報道による)
小売り レーベ(REWE) ドイツ 2025年7月 6億ユーロ ドイツ系小売大手レーベグループは、ウィーン南部、ニーダーエスターライヒ州ウィーナー・ノイドルフの物流センター近代化のため6億ユーロを投資すると発表した。
再生可能エネルギー マスダール(Masdar) アラブ首長国連邦(UAE) 2025年11月 非公表 UAEの投資会社マスダールとオーストリアのエネルギー大手OMVは合弁会社を設立し、オーストリア東部のブルック・アン・デア・ライタで欧州最大級となる140メガワット(MW)級のグリーン水素製造用電解装置プラントを建設すると発表した。建設は2025年9月に開始され、2027年の稼働開始を予定している。
医薬品 ワクセンティス(Vaccentis) スイス 2025年10月 非公表 がん治療ワクチンを開発するスイスのワクセンティスは、ウィーンのゼーシュタット・バイオクラスターに拠点を設立したと発表した。同拠点は研究開発および関連する規制対応業務を統括するEU地域中核拠点として機能する。
鉄鋼 プライメタルズ・テクノロジーズ(Primetals Technologies) 日本 2025年9月 1億7,000万ユーロ 日本のプライメタルズ・テクノロジーズは、鉱業・金属企業のリオ・ティント(Rio Tinto)および鉄鋼大手のフェストアルピーネ(Voestalpine)と共同でオーストリ ア、リンツのフェストアルピーネ敷地内でCO2ネットゼロを目指す溶銑生産の産業規模の実証プラント建設に着工した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 オーストリアの主な対内直接投資案件(2025年~2026年1月)〔M&A〕
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
道路・輸送機器 KTM バジャージ・オート(BAJAJ AUTO) インド 2025年5月 8億ユーロ インドの二輪車大手バジャージ・オートは、経営再建中の二輪車メーカーKTMの経営権取得を目指すと発表した。オランダ子会社を通じて総額8億ユーロの資金支援を行い、債務再編と事業再建を支援する。
鉄鋼 ベーラ・プロフィール(BÖHLER Profil) カダント(Kadant) 米国 2026年1月 非公表 鉄鋼大手フェストアルピーネは子会社で特殊形鋼を生産するベーラ・プロフィールを米国のテクノロジー企業カダントに売却すると発表した。売却はハイパフォーマンスメタル事業部門における事業ポートフォリオ再編の一環として実施される。
電気電子 フラウシャー・センサー・テクノロジー・グループ(Frauscher Sensor Technology Group) ワブテック(Wabtec) 米国 2025月7月 6億7,500万ユーロ 運輸テクノロジー大手の米・ワブテックは列車検知システムや車軸計数システムを手掛けるフラウシャー・センサー・テクノロジー・グループを買収する最終契約を締結と発表した。ワブテックは買収により鉄道向けデジタル・信号事業の強化を図る。
自動車、IT TTTech Auto NXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors) オランダ 2025年6月 6億2,500万ドル オランダの半導体大手NXPセミコンダクターズは、自動車向けソフトウェア開発のTTTech Autoを買収したと発表した。今回の買収により、自動車向けソフトウェア事業の強化を図る。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 オーストリアの主な対外直接投資案件(2025年4月~2026年2月)〔M&A以外〕
業種 企業名 対象国 時期 投資額 概要
再生可能エネルギー エネリ(Enery ) ルーマニア 2026年1月 非公表 エネリはルーマニア南部のジュルジュで太陽光発電と蓄電池を組み合わせたハイブリッド再生可能エネルギー発電所の建設開始を発表した。4億6,000万ユーロのプロジェクトファイナンスを調達。
再生可能エネルギー レナルファ(Renalfa) ブルガリア 2025年8月 非公表 レナルファはブルガリア南部のテネボで太陽光発電と蓄電池からなるハイブリッド再生可能エネルギープロジェクトを実施。1億300万ユーロのプロジェクトファイナンスを調達。
化学 ボレアリス(Borealis) ドイツ 2025年5月 1億ユーロ以上 ボレアリスはドイツのブルクハウゼンで高溶融強度ポリプロピレン(HMSPP)の新生産ラインを建設するため、1億ユーロ以上を投資すると発表した。2026年下半期の稼働開始を予定している。
機械 ヴィットマン(WITTMANN) 中国 2025年12月 非公表 ヴィットマンは中国の昆山市で、射出成形機やロボット、周辺機器を製造する工場の拡張工事完了にともなう開所式を実施した。生産エリアは1万3,000平方メートルで、生産能力は倍増と発表した。
機械 ヘン・コネクター・グループ(HENN Connector Group) メキシコ 2026年2月 非公表 ヘン・コネクター・グループはメキシコのシラオに組立・アセンブリの新拠点を開設した。北米・南米への供給体制を強化する。2026年末に向けて、プラスチック射出成形分野における生産能力の増強を進める。
食品 グッドミルズ・グループ(GoodMills) ポーランド 2025年6月 2,500万ユーロ グッドミルズ・グループはポーランドのクトノの製粉所を拡張した。年間生産能力を14万トンから28万トンへ倍増させ、さらなる市場シェア拡大を目指す。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 オーストリアの主な対外直接投資案件(2025年~2026年5月)〔M&A〕
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
金融 エルステ・グループ(Erste Group) サンタンデール銀行ポーランド(Santander Bank Polska) ポーランド 2026年1月 約70億ユーロ 金融大手エルステ・グループはスペインの金融大手サンタンデール・グループ(Santander Group)から、サンタンデール銀行ポーランドの49%の支配株式および資産運用会社サンタンデールTFIの50%の株式取得を完了した。欧州銀行業界における過去20年間で最大規模の取引となった。
保険 ウィーン・インシュアランス・グループ(Vienna Insurance Group、VIG) ニュルンベルガー(NÜRNBERGER) ドイツ 2026年5月 公共放送ORF(2025年10月17日)によると約14億ユーロ 保険大手のVIGはドイツの保険グループニュルンベルガーの公開買付けを完了した。VIGにとって創業以来最大規模の買収であり、ドイツ市場での事業基盤強化と中東欧事業の成長を図る。
建設 ストラバッグ SE(STRABAG SE) WTEヴァッサーテヒニーク(WTE Wassertechnik) ドイツ 2026年3月 1億ユーロ 建設大手ストラバッグはオーストリアのエネルギー企業EVNからドイツの水インフラ企業WTEヴァッサーテヒニークを買収した。ストラバッグは水資源管理事業をポートフォリオに加え、水インフラ分野の事業基盤を強化する。
機械 アンドリッツ(ANDRITZ) ダイヤモンドパワー・インターナショナル(Diamond Power International) 米国 2025年7月 インベスティングドットコム(2025年7月31日)によると1億7,700万ドル テクノロジー大手アンドリッツは米国の重工業大手バブコック&ウィルコックス・エンタープライジズ(Babcock & Wilcox Enterprises、B&W)からボイラー洗浄システム設計・製造のダイヤモンドパワー・インターナショナルを買収した。本買収により、アンドリッツの回収ボイラーおよび蒸気ボイラー分野におけるサービス事業が大幅に強化される。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係

対日輸出は大幅に拡大、輸入は2024年に続き減少

2025年の対日輸出は前年比26.5%増の20億ユーロ、対日輸入は4.7%減の23億8,900万ユーロとなった。対日貿易赤字は前年の9億2,600万ユーロから58.1%減の3億8,900万ユーロに縮小した。オーストリアにとって日本は、金額ベースで見ると、輸出では18位、輸入では16位の相手国であり、それぞれ前年の21位、17位から上昇した。貿易額では18位で、欧州以外では中国、米国に次ぐ3番目の貿易相手国だ。

対日輸出を品目別に見ると、機械・輸送機器、化学品、雑製品の伸びが大きい。最大の品目である機械・輸送機器(構成比48.4%)は前年比26.8%増の9億6,800万ユーロとなった。このうち5割以上を占める道路輸送機器(27.2%)は34.0%増となり、3年ぶりに日本からの同品目の輸入額を上回った。また、原動機(40.9%増)、産業用機械(18.2%増)、金属加工機械(33.9%増)も大幅に伸びた。化学品(14.3%)の58.1%増は、有機化学品が5.5倍となったことによる。雑製品(8.5%)の伸び(2.3倍)は金・金貨が2.3倍に増えたことによるものだ。一方、伝統的な輸出品であるコルク・木材(3.4%)とコルク製品・木材製品(3.8%)はそれぞれ0.6%減、0.4%減となった。

日本からの輸入を品目別に見ると、最大の機械・輸送機器(構成比52.4%)が前年比16.1%減となった。主因は道路輸送機器(18.4%)の減少(17.2%減)だ。これは、オーストリアの自動車市場で最も成長している電気自動車分野において、日本の自動車メーカーの投入モデル数の少なさが影響したとみられる。産業用機械(11.0%)も27.6%減となった。一方、化学品(24.4%)は20.8%増で、特に医薬品(11.2%)は53.7%増だった。また、原料別製品(8.6%)は10.5%増で、そのうち鉄製品(3.7%)は45.5%増となった。食料品(0.5%)は22.6%増で、中でも牛肉が53.6%増と著増した。さらに飲料品・たばこ(0.2%)は31.2%増で、このうち酒類は32.1%増だった。

表7 オーストリアの対日主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、 %)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器 763 968 48.4 26.8 1,494 1,253 52.4 △ 16.1
道路輸送機器 407 545 27.2 34.0 530 439 18.4 △ 17.2
産業用機械 106 126 6.3 18.2 363 262 11.0 △ 27.6
電気・電子機器 73 71 3.6 △ 2.9 211 202 8.4 △ 4.3
事務用機械 10 6 0.3 △ 35.5 137 118 4.9 △ 14.1
通信機器 15 13 0.7 △ 11.7 38 35 1.5 △ 7.8
原料別製品 247 264 13.2 6.7 185 205 8.6 10.5
金属製品 118 124 6.2 5.5 35 34 1.4 △ 3.2
コルク・木材製品 77 76 3.8 △ 0.4 0 0 0.0 △ 16.5
その他工業製品 158 174 8.7 9.5 286 291 12.2 1.7
計測機器 81 90 4.5 11.9 147 140 5.9 △ 4.6
カメラ、光学機器 5 11 0.5 125.8 45 47 2.0 4.3
雑工業製品 54 50 2.5 △ 8.4 86 96 4.0 12.2
化学品 181 285 14.3 58.1 483 583 24.4 20.8
医薬品 76 61 3.1 △ 19.3 175 268 11.2 53.7
有機化学製品 24 133 6.6 446.2 95 93 3.9 △ 1.5
雑製品 74 170 8.5 128.7 39 34 1.4 △ 12.6
原材料 82 79 4.0 △ 3.2 6 5 0.2 △ 27.1
コルク・木材 68 68 3.4 △ 0.6 0 0 0.0 789.5
食料品 69 52 2.6 △ 25.5 9 11 0.5 22.6
飲料品・たばこ 7 9 0.4 33.7 4 5 0.2 31.2
合計(その他含む) 1,582 2,000 100.0 26.5 2,508 2,389 100.0 △ 4.7

〔出所〕 オーストリア統計局

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 注 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)、2025年は暫定値
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) △ 0.8 △ 0.7 0.6
1人当たりGDP (米ドル) 56,764 58,373 63,161
消費者物価上昇率 (%) 7.8 2.9 3.6
失業率 (%) 5.1 5.2 5.7
貿易収支 (100万ユーロ) △ 2,022 2,194 △ 6,583
経常収支 (100万ユーロ) 7,673 7,545 9,549
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 12,647 11,918 14,114
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 371,621 395,051 418,078
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.92 0.92 0.88


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)、2025年は暫定値

出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:オーストリア経済研究所(WIFO)
貿易収支:オーストリア統計局局
経常収支、対外債務残高(グロス):オーストリア国立銀行(OeNB)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF