ベネズエラの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は1.5%と減速。
  • 2025年1月、ニコラス・マドゥーロ氏が大統領選で3選。
  • ベネズエラ沿岸付近で、米国は海軍および空軍を展開。
  • 2026年1月3日、米国は「絶対的解決作戦」でマドゥーロ大統領を拘束。
  • 2026年1月5日、デルシー・ロドリゲス氏が大統領代行に就任。

公開日:2026年10月23日

マクロ経済

高インフレが深刻化も、米国による制裁緩和で経済回復に期待

ベネズエラでは年間を通じて外貨入手制限が維持された結果、2025年のインフレ率は年率475.3%に達し、経済の悪化が顕著となった。一方、米国による制裁の一部緩和を背景に、今後は経済の改善が見込まれている。2026年1月にニコラス・マドゥーロ大統領が米国に拘束された後、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は複数の一般許可(General License)を発給し、ベネズエラ石油公社(PDVSA)と米国およびその他諸国の石油関連企業との取引を認めた。また、外国投資を促進するために炭化水素基本法(Ley Orgánica de Hidrocarburos)が改正され、炭化水素(石油・ガス)部門への外国資本の再流入が期待されている。

IMFの推計値では、2025年のベネズエラの実質GDP成長率は1.5%で、2024年の5.3%から減速した。これは、生産活動の伸びが限定的であったことを示している。OPECの二次情報源によると、2025年のベネズエラの原油生産量は日量93万7,000バレルとなり、前年比8.1%増加した。一方、UNDP(国連開発計画)のデータによると、2025年の輸出収入は147億1,300万ドルで8.0%減となった。ベネズエラ中央銀行(BCV)が発表する為替レートは、2024年末の1ドル=51.93ボリバルから2025年末には298.14ボリバルへと急落し、対ドルで82.6%減価した。これにより年間インフレ率は500%近くに達し、新たなハイパーインフレーションの瀬戸際に達した。2025年末時点の外貨準備高は133億900万ドルとなり、2024年末の102億6,600万ドルに比べ29.6%増加した。ただし、これは主として国際市場における金価格の上昇による評価益であり、流動性のある外貨準備の積み増しによるものではなかった。

対日貿易

日本からの自動車輸出、ベネズエラ産カカオの輸入は引き続き好調

日本の貿易統計によると、2025年の日本のベネズエラ向け輸出は前年比37.8%増の9,567万4,000ドル、輸入は3.7倍の5,780万6,000ドルとなった。輸出入ともに前年を大きく上回ったが、輸出は自動車関連品目、輸入はカカオ豆がそれぞれ増加を牽引した。

輸出では、最大品目である乗用車が前年比42.7%増の4,829万5,000ドルとなり、総輸出額の50.5%を占めた。貨物自動車も40.6%増の1,048万6,000ドルとなったほか、原動機付きシャシは 2.1倍の411万1,000ドルと倍増した。また、自動車用部分品及び附属品(30.8%増)、エンジン部品(96.8%増)、ゴム製タイヤ(新品)(45.5%増)、ガスケット、ジョイント及びメカニカルシール等(93.1%増)など、自動車関連部品は軒並み増加した。

一方、輸入は特定品目への依存度が高い構造となっており、最大品目のカカオ豆が前年比 5.9倍の5,170万7,000ドルに急増し、総輸入額の約9割を占めた。アルミニウムインゴットは83.5%減の55万6,000ドルとなり、一次原料の輸入が減った一方、銅のくず(44.3%増)やアルミニウムのくず(39.0%増)は増加した。

表1-1 日本の対ベネズエラ主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:1,000ドル、%)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 33,838 48,295 50.5 42.7
貨物自動車 7,460 10,486 11.0 40.6
ガソリンエンジン 6,252 7,665 8.0 22.6
原動機付きシャシ 1,948 4,111 4.3 111.0
自動車用部分品及び附属品 2,968 3,881 4.1 30.8
二輪車 1,597 2,598 2.7 62.7
エンジン部品 980 1,928 2.0 96.8
ゴム製タイヤ(新品) 1,323 1,925 2.0 45.5
軸受箱、歯車及び歯車伝動機等 1,097 1,606 1.7 46.4
ガスケット、ジョイント及びメカニカルシール等 510 985 1.0 93.1
合計(その他含む) 69,415 95,674 100.0 37.8

〔出所〕財務省「貿易統計」(通関ベース)

表1-2 日本の対ベネズエラ主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
カカオ豆 8,800 51,707 89.4 487.6
銅のくず 2,142 3,090 5.3 44.3
魚のフィレ、魚肉 — 867 1.5 全増
アルミニウムインゴット 3,364 556 1.0 △ 83.5
ラム酒その他類似品 135 510 0.9 277.3
アルミニウムのくず 282 391 0.7 39.0
コーヒー 158 209 0.4 32.2
冷凍タコ等軟体動物 466 197 0.3 △ 57.7
灰及び残留物 66 143 0.2 116.4
香料用、医療用、殺虫用、殺菌用その他これらに類する用途に供する植物及びその部分 31 49 0.1 60.8
合計(その他含む) 15,479 57,806 100.0 273.4

〔出所〕財務省「貿易統計」(通関ベース)

その他(政治情勢)

マドゥーロ大統領の米国による拘束が政治変革への期待を高める

2025年5月25日、国民議会議員選挙、24州の知事選挙、および各州立法評議会選挙が同時に実施された。マドゥーロ大統領率いる与党・統一社会主義党(PSUV)は、2026~2031年任期の国民議会議員選挙において全285議席中256議席を獲得するとともに、2025~2029年任期の知事選挙で24州中23州を制し、政治的支配を一層強めた。

2025年後半には、米国のトランプ政権が麻薬取引対策を名目としてベネズエラ沿岸付近で海上および航空封鎖を実施し、ベネズエラ発着の国際商業便の大半が運航停止となった。緊張が高まる中、12月10日には野党指導者のマリア・コリナ・マチャド氏がノーベル平和賞を受賞した。

トランプ政権は2026年1月3日、「絶対的解決作戦(Operación Resolución Absoluta)」と称した大規模な軍事作戦を実施し、マドゥーロ大統領およびその妻シリア・フローレス氏を拘束した。本対応は、国家主権への介入であるとして国際社会に大きな波紋を広げた。反政府勢力にとっては政治変革への希望をもたらした一方、チャベス派の一部では政情不安への懸念が高まった。その後、2026年1月5日に、当時のデルシー・ロドリゲス副大統領が国民議会においてベネズエラ大統領代行に就任した。これを受け、米国はベネズエラにおける政治体制移行の定着を目的とした計画を開始した。この計画は、「安定化(Stabilization)」「復興(Recovery)」「移行(Transition)」の3段階で構成されている。

ベネズエラでは、2019年3月以来閉鎖されていた米国大使館が2026年3月に再開された。これに先立つ1月には、同国議会で炭化水素基本法の改正法が成立し、外国企業を含む民間企業によるベネズエラ石油産業への参入が可能となった(2026年2月2日付ビジネス短信参照)ほか、米・OFACは一般許可の発給を開始し、ベネズエラ石油部門における特定の事業活動を認可している。一連の措置は、外国投資の促進およびベネズエラ経済の回復に寄与すると期待されている。

基礎的経済指標

〔注〕 実質GDP成長率、1人当たりGDP、経常収支は推計値 外貨準備高(グロス):マクロ安定化基金(FME)を含む。
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 4.0 5.3 1.5
1人当たりGDP (米ドル) 3,829 4,539 3,736
消費者物価上昇率 (%) 190.0 47.9 475.3
失業率 (%) n.a. n.a. n.a.
貿易収支 (100万米ドル) n.a. n.a. n.a.
経常収支 (100万米ドル) 5,965 4,935 2,558
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 9,817 10,266 13,309
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) n.a. n.a. n.a.
為替レート (1米ドルにつき、ボリバル、期中平均) 28.71 38.41 130.70

〔注〕
実質GDP成長率、1人当たりGDP、経常収支は推計値
外貨準備高(グロス):マクロ安定化基金(FME)を含む。

〔出所〕
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率、経常収支:IMF
外貨準備高(グロス)、為替レート:ベネズエラ中央銀行