水産物の輸入規制、輸入手続き
メキシコでの輸入手続き
1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)
調査時点:2020年11月
日本から水産物を輸入するにあたって、輸入者は一般輸入業者登録が必要です。国税庁(SAT)にオンラインで申請しますが、連邦納税者登録(RFC)と電子署名(FIEL)を持ち、租税債務がなく、税務上の住所が登録されていなければなりません。法定審査期間は、申請から10営業日以内であり、行政手数料は無料です。
関連リンク
2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)
調査時点:2020年11月
日本から水産物を輸入するにあたっては、次の書類が必要になります。
- メキシコ向け輸出水産食品のための衛生証明書、あるいは、自由販売証明書
- 輸入衛生事前許可(Permiso Sanitario Previo de Importación)
- 水産物衛生証明書(CSA)(該当する場合)
- 原産地証明書(TPP11、あるいは日本・メキシコ経済連携協定を活用する場合)
1は、2を取得するために必要な書類です。1として、自由販売証明書を用いる場合は、商品のロットごとの成分(物理化学的構成)分析表、微生物学的分析結果、特定検査結果(必要に応じて、重金属、コレラ菌、過酸化物価、放射線)を提出する必要があります。(3)のCSAは、輸入業者登録を持つ輸入業者がSENASICAに必要書類などをそろえて申請することで取得が可能ですが、その必要書類として連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)による(2)の書類のコピーが必要になります。2および3の実際の手続きは、メキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)を通じて電子申請を行います。
2の輸入衛生事前許可を取得するためには、輸入業者登録(Padrón de Importadores)を持つ輸入業者がCOFEPRISの統合サービスセンター(CIS)あるいは各州の衛生担当窓口において書面で申請を行うか、あるいはメキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)を通じてインターネットで申請を行います。VUCEMを活用するためには、輸入業者およびその法的代表者が電子署名(FIEL)を取得し、VUCEMの利用者登録をしておく必要があります。
書面あるいはインターネットで申請を開始する前に連邦行政手数料を支払い、その受領書を保存しておく必要があります(受領書のコピーを申請時に書面で提出、あるいはVUCEMにアップロードする必要があるため)。 連邦行政手数料の金額は、2020年時点で5,201.47ペソ(約2万7,000円)です。
申請(必要書類に不備がないと仮定)から承認までの法定所要期間は原則5営業日、生鮮品については24時間です。所要期間が経過してもCOFEPRISから回答がない場合、申請は却下されたものとみなされます。
なお、水産物のなかには一部の加工品などCOFEPRISの輸入衛生事前許可が不要な品目もあります。メキシコに輸出する水産物がCOFEPRISの輸入衛生事前許可の対象となるかどうかを調べるためには、2012年10月16日付官報で公布され、その後2015年9月1日、2016年2月5日、2018年1月10日、2020年1月31日に一部改正された「輸出入に際して保健省の衛生規制の対象となる商品・製品の分類とコードを定める経済省・保険省令」を確認する必要があります。同省令の第1条Aは、輸入衛生事前許可の対象となる品目について、関税分類(HS)コードを基準にリスト化しています。
3のCSAが必要な産品は、主に活魚、生鮮・チルド、冷凍、乾燥のものであり、肝臓の加工品や魚のエキスを除けば、水産加工品はCSAの対象となっていません。また、魚の種類によってはCSAの対象とならず、COFEPRISの輸入衛生事前許可のみで通関できる品目もあるため、HSコードを基にCSAの対象かどうかを確認することが必要です。メキシコに輸出する水産品がSENASICAの水産品衛生証明書(CSA)取得義務の対象かどうかを調べるためには、2012年9月3日付官報で公布され、その後2013年3月11日、同年5月16日、同年8月2日、2015年5月7日、2016年7月18日、2018年7月12日に一部改正された「輸入に際して農業食品衛生無害品質庁を通じた農牧省の規制対象となる商品の分類とコードを定める経済省・農牧省令」を確認する必要があります。同省令の第3条は、CSAの取得が義務付けられる水産品や水産品用飼料・薬品などの対象品目について、HSコードを基準にリスト化しています。
CSAの発給申請は、2段階のプロセスを踏みます。第1段階は書類審査であり、第2段階は港湾などにおける実物(外観)検査です。
書類審査は、必要な情報と書類を集めたうえで輸入者もしくは代理人(通関士など)がVUCEMにアクセスし、所定フォーマットにデータを入力したうえで必要書類をPDF形式でアップロードします。必要なデータと書類については、対象品目と原産国・経由国ごとに定められる水産品衛生条件(HRSA)に記載されています。必要書類がそろっていれば、船積み前(出荷前)でも書類審査を開始することができます。水産物の場合、HRSAに基づき必要とされる書類は、COFEPRISの輸入衛生事前許可のコピーです。
必要なデータをすべて入力し、必要書類をアップロードしたうえで書類審査の申請を輸入者の電子署名を使って送信すると、受領確認書が届き、確認書に記載された申請ファイル番号をサイトに入力することで審査状況を確認できるようになります。
SENASICAの担当課による書類審査が終わると、書類審査の完了通知が届き、港湾や空港などの保税区域において現物検査を行うために検査の予約をするよう要請があります。VUCEMを通じて必要情報を入力し、現物検査の予約を行い、電子署名で申請を出します。現物検査で問題がなければ、検査完了および結果の通知があり、合格の場合はCSAが発行されます。現物検査では色や匂いなどの外観検査が行われますが、ランダムでサンプルを摘出して微生物検査などが行われることもあります。
CSAの法定審査期間は、2012年8月9日付農牧省令に基づき、対象品目のリスクに応じて1~30営業日となっています。特別な措置(消毒、加熱処理など)が必要なく、ラボにおけるサンプル検査も必要ない品目については1営業日、特別な措置が必要な品目については3営業日、ラボにおけるサンプル検査が必要な場合は30営業日です。
CSAの有効期間は発行日から8日間。その間に港湾などの保税区画から輸入者の倉庫などの目的地へ移動する必要があります。
CSAの書類審査および現物検査申請に関するVUCEのマニュアル(スペイン語)は、VUCEMの関連ウェブサイト(書類審査、現物検査申請)からダウンロードできます。CSA取得のための行政手数料は、2020年時点で2,429ペソ(約1万2,600円)です。
関連リンク
- 関係省庁
-
連邦衛生リスク対策委員会(スペイン語)
-
農業食品衛生無害品質庁(SENASICA)(スペイン語)
- 根拠法等
-
保健一般法(スペイン語)
(2,4MB)
-
連邦動物衛生法(スペイン語)
(680KB)
-
持続可能な漁業・養殖業一般法(スペイン語)
(754KB)
-
2012年8月9日付官報公布農牧省令(スペイン語)
(218KB)
-
同省令2015年5月11日付改定(スペイン語)
(141KB)
-
水産物衛生条件(HRSA):日本産水産物(スペイン語
- その他参考情報
-
・水産物輸入衛生条件(HRSA)検索モジュール(スペイン語)
-
メキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)輸入衛生事前許可手続きマニュアル(スペイン語)
(2,195KB)
-
メキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)CSA取得手続きマニュアル(書類審査)(スペイン語)
(3,415KB)
-
メキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)CSA取得手続きマニュアル(現物検査申請)(スペイン語)
(2,662KB)
3. 輸入時の検査・検疫
調査時点:2020年11月
日本から輸入する水産物については、輸入時に農業食品衛生無害品質庁(SENASICA)が水産物衛生証明書(CSA)を発行するための検査が行われます。同検査では、水産物の衛生規格(NOM-242-SSA1-2011)に基づき、色、匂いなどの外観検査が行われますが、ランダムでサンプルを摘出して微生物検査などが行われることもあります。
4. 販売許可手続き
調査時点:2020年11月
水産物の販売に許認可は不要ですが、水産物や同加工品を貯蔵・流通・販売する事業所は、連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)に対して、所定のフォーマットで事業所の営業通知を行う必要があり、また衛生責任者を届け出る必要があります。
関連リンク
- 関係省庁
-
保健省(スペイン語)
-
連邦衛生リスク対策委員会(スペイン語)
- 根拠法等
-
保健一般法(スペイン語)
(2,4MB)
- その他参考情報
-
COFEPRIS営業通知関連サイト(スペイン語)
-
営業通知・責任者届出手続きマニュアル(スペイン語)
(506KB)
-
営業通知・責任者届出フォーマット(スペイン語)
(310KB)
※うまくリンクしない場合は、URLをコピーしてブラウザ貼り付ける方法で、直接アクセスしてください。
http://documentos.cofepris.gob.mx/archivos/cis/FORMATOS/Formato_Aviso_Funcionamiento.docx
5. その他
調査時点:2020年11月
なし
メキシコ内の輸入関税等
1. 関税
調査時点:2020年11月
水産物に対する一般(MFN)関税率は、品目によって異なります。メキシコ経済省の関税率検索サイト(SIAVI)でHSコードを基に調べることができます。
2005年4月に発効した日本・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)を活用した場合は、関税が0%になりますが、関税撤廃の例外品目も多いため、確認が必要です。SIAVIでは、MFN税率のみならず、EPAや自由貿易協定(FTA)に基づく関税率も調べることができます。
2018年12月に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、TPP11)を活用することもでき、魚(生鮮・チルド、冷凍、フィレなど)についてはいわし、ティラピア、鯉などの一部を除けば大半が現時点で関税0%になります。一部の魚、甲殻類、軟体動物、水性無脊椎動物については現時点では関税が残っているものが多いですが、段階的に削減されていき、多くが2027年1月までに関税0%となります。
日墨EPA、あるいはTPP11の適用を受けるには、原産地規則を満たす必要があり、原産地証明書が必要になります。日墨EPAの特定原産地証明書は、輸出者が日本商工会議所に対して発給申請をする必要がありますが、TPP11を活用する場合は、輸出者、あるいは生産者が自ら作成することができます。
2. その他の税
調査時点:2020年11月
メキシコでは輸入時に関税に加えて16%の付加価値税(IVA)が課税されますが、食品(牛乳以外の飲料や嗜好品、調理済み食品などを除く)に対する税率はIVA法第2-A条に基づき0%となっており、課税されません。
関連リンク
3. その他
調査時点:2020年11月
輸入者は水産物やその加工品の輸入にあたって、関税だけでなく税関手数料(DTA)を納付する必要があります。一般(MFN)関税率を適用した輸入、あるいは日墨EPAを活用した場合のDTAは輸入申告価格(CIF価格)の0.8%であり、最低341ペソ(約1,800円、2020年12月時点)ですが、TPP11を活用した輸入の場合は定額制となり、1申告あたり341ペソが課税されます。