チリの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は2.6%、輸出と内需の伸びが寄与。
  • 銅と果物の輸出が好調、中国との貿易は輸出入ともに増加。
  • 2024年の通商協定による往復貿易カバー率は96.3%に達する。
  • 鉱業や再生可能エネルギー分野の投資案件が目立つ。

公開日:2025年6月24日

マクロ経済 
輸出と内需が牽引し、GDP成長率は予想を上回る2.6%を記録

2024年のチリの実質GDP成長率は2.6%を記録し、前年の0.5%から加速した。2024年12月のチリ中央銀行(以下、中銀)の予測(2.3%)をも上回る結果となった。

GDPの成長に大きく寄与したのは主に輸出(前年比6.6%増)と内需(1.3%増)だった。内需のうち、民間最終消費支出は1.0%増となった。特に、耐久財の消費が3.9%増と目立った。民間消費増加の一因として、2023年から続く賃金の上昇が挙げられる。2024年12月の名目賃金は前年同月比7.3%増で、2023年3月以降の実質賃金の上昇は2024年も年間を通して継続した。

政府最終消費支出は、公共衛生関連の支出増加により、前年比3.0%増加した。一方で、総固定資本形成は、第3四半期(7~9月)までのマイナスの影響が大きく、通年でも1.4%減を記録した。うち、設備投資では特に輸送機器への投資が減少し、建設・その他の投資では建設活動が落ち込んだ。

中銀は2025年3月に発表した金融政策レポート(IPoM)の中で、同年のGDP成長率を1.75~2.75%と予測している。輸出部門を中心に引き続き成長が見込まれることから、2024年12月時点の予測から上限、下限ともに0.25ポイントずつ引き上げた。

2024年の消費者物価上昇率は4.5%だった。政府目標である2~4%を上回っているものの、経済成長率のさらなる押し上げが課題となっているため、年初に8.25%だった政策金利は年内に7度利下げされ、12月には5.00%となった。

表1 チリの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 2.2 0.5 2.6 3.3 1.2 2.0 4.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.6 △ 4.9 1.0 0.7 0.4 1.0 2.0
階層レベル2の項目政府最終消費支出 6.3 2.2 3.0 5.5 2.6 6.7 △ 1.8
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 4.6 △ 0.1 △ 1.4 △ 4.5 △ 4.0 △ 0.8 3.3
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 0.8 0.1 6.6 4.0 6.0 7.3 9.2
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 1.3 △ 10.9 2.5 1.0 △ 2.7 1.2 10.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕チリ中央銀行

貿易 
銅と果物の輸出増で、輸出総額は初の1,000億ドル突破

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出(FOB)が前年比5.9%増の1,001億6,300万ドル、輸入(CIF)が1.4%減の841億5,500万ドルで、貿易収支は160億800万ドルの黒字だった。輸出増は銅と果物の伸びによるもので、輸出総額が1,000億ドルを超えたのは、中銀のデータが確認できる1960年以降で初めてである。

輸出を品目別にみると、鉱産物は前年比9.5%増の574億2,000万ドルで、うち銅は17.3%増と好調だった。主要消費国である中国や米国での需要増の影響で国際価格が上昇し、チリ銅委員会(COCHILCO)によると2024年の銅価格は前年比7.9%増を記録した。一方で、鉄の輸出は8.8%減、炭酸リチウムは国際価格の下落に伴い48.1%減の大幅減となった。

農林水産物は前年比24.9%増の90億2,900万ドルで、主要な輸出果物であるサクランボとブドウがそれぞれ51.4%増、39.2%増だった。一方で、工業品は3.3%減の337億1,300万ドルとなり、構成比率の高い食品のサーモン(加工品)や化学品の輸出減が工業品全体に影響を与えた。

輸入を品目別にみると、消費財は前年比3.4%増の227億3,200万ドルで、携帯電話、衣類、肉類などの輸入が増加した。一方で、自動車は4.7%減となった。中間財は2.7%減の448億1,600万ドルで、石油やディーゼルなどのエネルギー製品の輸入が減少した。資本財も3.9%減で、建設業の停滞などの影響を受け、建設などに使用されるトラック、牽引車やモーター、発電機、変圧器などの輸入が減少した。

輸出入を主要国別にみると、チリの最大の貿易相手国は中国で、輸出(構成比:38.2%)、輸入(25.0%)ともに前年比で増加した。中国向けの輸出品としては銅やサクランボが、中国からの輸入品としては携帯電話が特に増えた。中国に次ぐ輸出先は米国(15.5%)で、3位は日本(8.5%)の順だった。この他の国ではスペインとインド向け輸出の増加が顕著で、どちらも銅関連製品の輸出の伸びによる。輸入は中国に次いで、米国(19.0%)、ブラジル(8.9%)、アルゼンチン(8.4%)の順で、米国とブラジルからはエネルギー製品の輸入が減少した一方で、アルゼンチンからは増加した。

国際経済関係次官官房(SUBREI)によると、サービス輸出は前年比18%増の28億6,900万ドルとなり、史上最高額を記録した。2024年は198種のサービスが輸出されており、主にウェブサイトおよび電子メールのホスティングサービス、航空機の保守・修理、インターネットを介した情報技術サポートなどが上位を占めた。

表2-1 チリの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱産物 52,460 57,420 57.3 9.5
階層レベル2の項目 43,344 50,858 50.8 17.3
階層レベル2の項目炭酸リチウム 4,978 2,582 2.6 △ 48.1
階層レベル2の項目 1,649 1,504 1.5 △ 8.8
階層レベル2の項目 1,077 1,284 1.3 19.1
農林水産物 7,230 9,029 9.0 24.9
階層レベル2の項目果物 6,413 8,245 8.2 28.6
工業品 34,867 33,713 33.7 △ 3.3
階層レベル2の項目食品 12,787 12,824 12.8 0.3
階層レベル2の項目飲料、たばこ 1,738 1,863 1.9 7.2
階層レベル2の項目林産品、木製家具 2,247 2,356 2.4 4.8
階層レベル2の項目セルロース、紙、ほか 3,295 4,009 4.0 21.7
階層レベル2の項目化学品 10,150 7,937 7.9 △ 21.8
階層レベル2の項目金属製品、機械、設備 2,140 2,275 2.3 6.3
合計(その他含む) 94,557 100,163 100.0 5.9

〔注〕チリ中央銀行の統計では「農林水産物」に含まれる水産物は採捕漁業によるもののみで、畜産物は工業製品に分類分けされている。
〔出所〕チリ中央銀行の資料を基にジェトロ作成

表2-2 チリの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中間財 46,045 44,816 53.3 △ 2.7
階層レベル2の項目エネルギー製品 15,998 14,293 17.0 △ 10.7
階層レベル3の項目石油 5,235 5,129 6.1 △ 2.0
階層レベル3の項目ディーゼル 5,068 4,530 5.4 △ 10.6
階層レベル3の項目石炭 1,212 758 0.9 △ 37.5
階層レベル2の項目化学製品 4,623 4,672 5.6 1.1
階層レベル2の項目金属製品 3,458 3,480 4.1 0.6
消費財 21,987 22,732 27.0 3.4
階層レベル2の項目自動車 2,509 2,391 2.8 △ 4.7
階層レベル2の項目携帯電話 1,686 1,792 2.1 6.3
階層レベル2の項目衣類 2,856 2,927 3.5 2.5
階層レベル2の項目肉類 1,577 1,681 2.0 6.6
階層レベル2の項目医薬品 1,364 1,431 1.7 4.9
資本財 17,277 16,607 19.7 △ 3.9
階層レベル2の項目トラック、牽引車 2,365 2,329 2.8 △ 1.5
合計(その他含む) 85,309 84,155 100.0 △ 1.4

〔注〕チリ中央銀行の統計では「農林水産物」に含まれる水産物は採捕漁業によるもののみで、畜産物は工業製品に分類分けされている。
〔出所〕チリ中央銀行の資料を基にジェトロ作成

表3 チリの主要国・地域別輸出入 [通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア 54,890 57,576 57.5 4.9 28,795 29,791 35.4 3.5
階層レベル2の項目中国 37,017 38,235 38.2 3.3 19,823 21,051 25.0 6.2
階層レベル2の項目日本 6,795 8,556 8.5 25.9 2,482 2,086 2.5 △ 16.0
階層レベル2の項目韓国 5,902 4,717 4.7 △ 20.1 1,487 1,614 1.9 8.5
階層レベル2の項目インド 1,509 2,612 2.6 73.1 1,339 1,267 1.5 △ 5.4
欧州 9,556 10,913 10.9 14.2 12,407 12,328 14.6 △ 0.6
階層レベル2の項目スペイン 1,197 1,851 1.8 54.7 1,840 1,905 2.3 3.5
階層レベル2の項目オランダ 1,630 1,845 1.8 13.2 541 511 0.6 △ 5.4
階層レベル2の項目ドイツ 1,041 1,153 1.2 10.7 2,811 2,663 3.2 △ 5.3
階層レベル2の項目フランス 1,000 1,139 1.1 13.8 1,174 1,101 1.3 △ 6.3
米州 28,916 30,437 30.4 5.3 40,965 39,647 47.1 △ 3.2
階層レベル2の項目米国 14,404 15,528 15.5 7.8 17,028 15,989 19.0 △ 6.1
階層レベル2の項目ブラジル 4,281 5,100 5.1 19.1 8,786 7,490 8.9 △ 14.7
階層レベル2の項目アルゼンチン 883 846 0.8 △ 4.2 5,703 7,106 8.4 24.6
階層レベル2の項目メキシコ 1,754 1,736 1.7 △ 1.0 1,682 1,945 2.3 15.6
階層レベル2の項目ペルー 1,560 1,493 1.5 △ 4.3 1,811 2,076 2.5 14.7
合計(その他含む) 94,557 100,163 100.0 5.9 85,309 84,155 100.0 △ 1.4

〔出所〕チリ中央銀行の資料を基にジェトロ作成

通商政策 
2024年も通商協定交渉に進展、チリは今後も自由貿易を維持

チリの2024年の通商協定による往復貿易カバー率は96.3%に達し、前年から0.3ポイント増加した。すでに多くの国・地域と通商協定を締結しているチリだが、2024年も新たな協定の発効や交渉の進捗があった。2024年に新規に発効したのはパラグアイとの貿易協定である。同国とは従来メルコスールとの経済補完協定があったが、経済関係の深化を目的として、2国間の協定交渉が進められていた。同協定は現代的な内容になっており、電子商取引や中小企業、ジェンダー、環境などの章も含まれている。

その他交渉の進捗としては、欧州自由貿易連合(EFTA)との近代化協定およびアラブ首長国連邦との包括的経済連携協定が署名に至った。

チリ政府は保護主義の高まりを懸念しており、自由貿易の維持を表明している。今後も新規通商協定の締結や既存の協定の深化、現代化が見込まれる。

表4 チリのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)
FTA 発効日 チリの貿易に占める構成比(2024年)
往復 輸出 輸入
発効済み 中国、サービス貿易協定(2010年8月発効)、投資補充協定(2014年2月発効)、深化協定(2019年3月発効) 2006年10月 1日 31.6 37.3 24.3
米国 2004年 1月 1日 17.4 16.1 19.1
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) 2023年2月21日 13.0 14.5 11.2
メルコスール〔経済補完協定(ACE35号)〕 1996年10月1日 12.3 6.4 19.9
EU〔注1〕 2003年 2月 1日 11.0 9.0 13.5
ブラジル 2022年1月25日 7.0 5.0 9.5
太平洋同盟〔注2〕 2016年 5月 1日 5.6 4.9 6.5
日本(経済連携協定) 2007年 9月 3日 5.5 8.1 2.3
アルゼンチン〔経済補完協定(ACE35号)〕 2019年5月1日 4.3 0.9 8.7
韓国 2004年 4月 1日 3.5 4.8 1.9
ペルー 2009年3月1日 2.2 1.9 2.5
メキシコ 1999年8月1日 2.1 1.8 2.5
インド(特恵貿易協定)、拡大協定(2017年5月発効) 2007年8月17日 2.1 2.6 1.6
コロンビア 2009年5月8日 1.3 1.2 1.4
カナダ、改定協定(2013年9月発効)、深化協定(2019年2月発効) 1997年 7月 5日 1.0 1.3 0.7
EFTA〔注3〕 2004年12月1日 0.9 1.1 0.7
エクアドル〔経済補完協定(ACE75号)〕 2022年5月16日 0.8 0.5 1.1
ベトナム 2014年 1月 1日 0.8 0.3 1.5
パラグアイ 2024年2月14日 0.7 0.2 1.4
タイ 2015年11月5日 0.7 0.7 0.8
英国 2021年1月1日 0.7 0.6 0.7
中米諸国〔注4〕 〔注4〕 0.5 0.7 0.2
ボリビア〔経済補完協定(ACE22号)〕 1993年 4月 6日 0.3 0.4 0.2
オーストラリア 2009年 3月 6日 0.3 0.2 0.3
トルコ 2011年 3月 1日 0.3 0.1 0.5
ウルグアイ 2018年12月13日 0.3 0.3 0.3
インドネシア(包括的経済連携協定) 2019年8月10日 0.3 0.1 0.5
P4(経済連携協定)〔注5〕 2006年11月8日 0.3 0.2 0.3
マレーシア 2012年4月18日 0.2 0.2 0.3
パナマ 2008年 3月 7日 0.1 0.2 0.0
香港、サービス貿易分野改定版(2023年4月発効) 2014年10月9日 0.1 0.1 0.1
ベネズエラ〔経済補完協定(ACE23号)〕 1993年 7月 1日 0.1 0.1 0.0
キューバ〔経済補完協定(ACE42号)〕、追加議定書 2008年6月27日 0.0 0.0 0.0
シンガポール・ニュージーランド・韓国、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA) 2021年11月23日
合計 96.3 95.9 96.9
署名済み シンガポール・太平洋同盟
EU(協定の現代化協定)
EFTA(自由貿易協定の現代化協定)
アラブ首長国連邦(包括的経済連携協定)
交渉中 トリニダード・トバゴ(特恵貿易協定)
インド(特恵貿易協定の拡大協定)
インドネシア(包括的経済連携協定内のサービス貿易協定)
韓国(自由貿易協定の現代化協定)

〔注〕構成比については、輸出はFOB価格、輸入CIF価格を使用。
1:EUはデータの無いキプロスとスロバキアを除く25カ国のデータで算出
2:太平洋同盟-メキシコ、コロンビア、ペルー
3:EFTA-アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス
4:中米諸国-コスタリカ(2002年2月14日発効)、エルサルバドル(2002年6月1日発効)、ホンジュラス(2008年7月19日発効)、グアテマラ(2010年3月23日発効)、ニカラグア(2012年10月19日発効)
5:P4-ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ
〔出所〕チリ国際経済関係次官官房(SUBREI)、チリ税関データなどを基にジェトロ作成

対内直接投資 
M&Aは低調ながら、投資振興機関の支援案件は増加

M&Aの調査を行っているランドマーク(Landmark)によると、2024年のチリ国内でのM&A件数は60件と、前年比では6件増加したものの、記録の確認できる2014年以降では3番目に少ない件数だった。技術分野のM&Aが最も多く14件、次いで鉱業が8件だった。

主な技術分野のM&A案件としては、スペインのウフィネット(Ufinet)がチリで情報通信技術を持つインテルネクサ・チリ(Internexa Chile)の株式100%を取得した案件があった。鉱業分野としては、JX金属がカナダのルンディン・マイニング・コーポレーション(Lundin Mining Corporation)にカセロネス銅鉱山運営会社の株式19%を譲渡した案件がある。同社は2023年にもルンディンに51%の株式を譲渡しており、これでJX金属の持ち株比率は30%となった。

M&A以外のグリーンフィールド投資の動向を把握するため、チリの投資振興機関であるInvestChileが公表した統計についても触れる。同統計はInvestChileが支援した投資案件に限ったものだが、それによると2024年は474件の投資プロジェクトがあり、投資総額(注)は562億3,400万ドルを記録した。プロジェクト数は前年から24件増え、投資総額は67.8%増加した。分野別に見ると、同統計ではエネルギー分野の投資額が最も多く、368億1,700万ドルを記録した。鉱業(86億4,900万ドル)、グローバルサービス・技術(54億ドル)がそれに続いた。投資元国としては米国(205億1,000万ドル)、オーストリア(110億5,200万ドル)、カナダ(62億7,500万ドル)、中国(39億6,500万ドル)の順だった。

再生可能エネルギー分野の主な投資案件として、スター・エナジー・パートナーズ(Star Energy Partners)とオミウム・インターナショナル(Ohmium International)によるチリ北部カラマでのグリーン水素開発のパイロットプロジェクトがある。本プロジェクトで生産したグリーン水素は銅の精錬プロセスや鉱山内の熱処理、鉱物輸送トラックの燃料などに使用される見込みだ。

日本企業が関わる投資案件としては、丸紅によるセンチネラ銅鉱山の拡張プロジェクトや、日鉄鉱業とカナダのカミノ・ミネラル(Camino Mineral)とのプキオス銅鉱山開発プロジェクト、住友商事によるバイオ農薬製造・販売会社のビオ・インスモス・ナティーバ(Bio Insumos Nativa)への出資などがあった。

(注)プロジェクト総額であり、必ずしも2024年に実行された投資額ではない。

表5 チリの主な対内直接投資案件(2024年) (単位:100万ドル)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
情報通信技術 ウフィネット(Ufinet) スペイン 12月 非公開 チリで情報通信事業を手掛けるインテルネクサ・チリ(Internexa Chile)の株式100%を取得。
鉱業 ルンディン・マイニング・コーポレーション(Lundin Mining Corporation) カナダ 7月 350 JX金属の完全子会社であるカセロネス銅鉱山運営会社のSCM ・ミネラ・ルミナ・カッパー・チリ(SCM Minera Lumina Copper Chile)が株式の19%を譲渡。
鉱業 リオ2(Rio 2) カナダ 10月 150 チリでの金採掘を行う自社のフェニックス・ゴールド・プロジェクトにおける建設費用および運転資金として1億5,000万ドルの融資パッケージを締結。
鉱業 クリーンテック・リチウム(CleanTech Lithium) 英国 3月 450 ボリビアとの国境付近に位置するラグナ・ベルデ地区でのリチウム開発プロジェクトにおいて新しいパイロットプラントを建設。
鉱業 丸紅 日本 3月 2,500 センチネラ銅鉱山の拡張プロジェクトにおいて、プロジェクトファイナンスによる融資契約に調印。うち、初期開発費用は44億ドル。
鉱業 日鉄鉱業
カミノ・ミネラル(Camino Mineral)
日本
カナダ
10月 4,500万カナダドル チリのプキオス銅鉱山開発プロジェクトの権益100%をカミノ・ミネラルと共同で取得。両社の比率は50:50。
鉱業 BHP オーストラリア 11月 10,700~ 向こう10年程度でエスコンディーダ鉱山およびスペンス鉱山の銅鉱石採掘量の増加とセロ・コロラド鉱山の再稼働のため、107億ドル~147億ドルの投資を見込む。
再生可能エネルギー オミウム・インターナショナル(Ohmium International) 米国 4月 非公開 チリ北部カラマでのグリーン水素開発のパイロットプロジェクト。
再生可能エネルギー コンツールグローバル(ContourGlobal) 英国 12月 962 世界最大級のエネルギー貯蔵プロジェクトであるオアシス・デ・アタカマの株式23%をグレナジー(Grenergy)より取得。
農業 住友商事 日本 4月 非公開 農薬のトレードおよび卸売り事業を手掛けるサミットアグロサウスアメリカ(Summit Agro South America)を通じて、バイオ農薬製造・販売会社のビオ・インスモス・ナティーバ(Bio Insumos Nativa)に出資。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日輸出は銅鉱が大幅増

2024年の対日貿易は輸出が85億5,632万ドルで前年比25.9%増と大幅な増加を記録した。対日輸出の伸びは、銅鉱の大幅増加による。輸出全体に占めるシェアも例年60%前後のところ、2024年は66.6%に上った。銅価格の上昇に加え、2023年に生産が開始された住友金属鉱山と住友商事が出資するケブラダ・ブランカ銅鉱山での生産が2024年は拡大したことも一因と考えられる。その他、冷凍の太平洋サケも2桁増を記録している。モリブデン精鉱やリチウム炭酸塩は国際価格の下落が響き、減少した。一方で輸入は16.0%減の20億8,583万ドルだった。軽油、ディーゼル油や乗用車などの主要品目の減少が影響した。

貿易収支は64億7,049万ドルと例年通りチリ側の圧倒的な黒字だ。2024年も前年同様、チリにとって日本は第3位の輸出先であり、第6位の輸入元国だった。

表6-1 チリの対日主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
銅鉱(精鋼を含む) 3,636,715 5,697,996 66.6 56.7
太平洋サケ(冷凍、頭・はらわた抜き) 473,213 542,989 6.3 14.7
モリブデン精鉱(焼いたもの) 659,680 487,876 5.7 △ 26.0
太平洋サケ(冷凍、フィレ) 161,098 222,625 2.6 38.2
トラウト(冷凍、フィレ) 160,356 166,257 1.9 3.7
リチウムの炭酸塩(粒子が37ミクロン以下のもの) 281,730 96,497 1.1 △ 65.7
豚肉(冷凍、骨なし) 88,826 93,254 1.1 5.0
木材チップ(ユーカリ・ニテンス) 67,519 81,429 1.0 20.6
ウニ(冷凍) 82,264 51,275 0.6 △ 37.7
鉄鋼(凝結させてないもの) 34,055 48,684 0.6 43.0
合計(その他含む) 6,794,556 8,556,324 100.0 25.9

〔出所〕チリ中央銀行の資料を基にジェトロ作成

表6-2 チリの対日主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
軽油、ディーゼル油 587,854 462,305 22.2 △ 21.4
乗用車(1500cc超3000cc以下) 387,109 339,278 16.3 △ 12.4
タイヤ(建設、産業車両用) 150,719 139,897 6.7 △ 7.2
鉄・非合金鋼のフラットロール製品(厚さ3mm未満) 88,042 109,034 5.2 23.8
乗用車(1000cc超1500cc以下) 90,998 72,028 3.5 △ 20.8
硫酸及び発煙硫酸 48,767 60,510 2.9 24.1
シャシー(トラック用、有効積載量2トン超) 36,713 40,407 1.9 10.1
その他車両(1000cc以下) 39,087 40,149 1.9 2.7
ダンプカー 32,488 34,563 1.7 6.4
その他車両(1500cc超3,000cc以下) 16,852 33,344 1.6 97.9
合計(その他含む) 2,481,851 2,085,833 100.0 △ 16.0

〔出所〕チリ中央銀行の資料を基にジェトロ作成

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.2 0.5 2.6
1人当たりGDP (米ドル) 15,194 16,814 16,439
消費者物価上昇率 (%) 12.8 3.9 4.5
失業率 (%) 7.9 8.5 8.1
貿易収支 (100万米ドル) 3,570 13,809 21,033
経常収支 (100万米ドル) △26,656 △10,497 △4,853
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 39,088 46,361 44,382
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 231,526 243,695 244,965
為替レート (1米ドルにつき、チリ・ペソ、期中平均) 873.31 840.07 943.57


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、貿易収支、経常収支、対外債務残高:チリ中央銀行
消費者物価上昇率、失業率:チリ国家統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF