ブラジルの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は2.3%、農畜産業が成長を牽引。
  • 米国の追加関税で対米輸出が減少。他国向けを中心に総輸出額は増加。
  • EU・メルコスールFTAが暫定適用を開始。
  • 対内直接投資は昨年に引き続き上昇。対外直接投資も増加し、米国が最大の投資先。
  • 政府のデータセンター建設支援策で同分野の投資が増加。

公開日:2026年7月6日

マクロ経済

農畜産業がGDP成長率を牽引、インフレと金利は高とどまりが継続

2025年のブラジル経済は、インフレおよび金利の高とどまりが続く中、実質GDP成長率は2.3%だった。2023年(3.2%)と2024年(3.4%)の成長率を下回った。産業別にみると、工業は前年比1.4%増、サービス業は1.8%増加したものの、いずれも前年(工業:3.1%増、サービス業:3.8%増)から伸び率が低下した。農畜産業は、好天に恵まれ、トウモロコシ、大豆、オレンジ、コーヒーなど主要作物の生産が前年比で大幅に増加し、経済成長を牽引した。

需要項目別に見ると、全ての項目で増加した。GDPの約6割を占める個人消費支出(民間最終消費支出)は前年比1.3%増加したが、伸び率は3.8ポイント減速した。増加の要因は、雇用情勢の改善や個人向け融資の増加、低所得者向け現金給付の継続による。一方、高金利や家計債務の増加が個人消費の伸びを抑制した。

失業率は5.6%で、前年(6.6%)から1.0ポイント改善した。現行の統計手法を開始した2012年以降で最低の水準となった。

拡大消費者物価指数(IPCA)上昇率は4.26%となり、2年ぶりにブラジル中央銀行(以下、中銀)が定めるインフレ目標(中央値3.00%、許容幅±1.50%)の範囲内に収まった。インフレ抑制の背景として、現地通貨レアル高や中銀による金融引き締めが挙げられる。

中銀は、インフレ再燃への警戒から、2024年9月に政策金利を10.50%から10.75%に引き上げた。以降、段階的に利上げを実施し、2025年6月の金融政策委員会(Copom)の会合では政策金利を15.0%まで引き上げた。その後、2026年1月28日の会合まで、政策金利は5会合連続で据え置かれていた。ブラジル全国商業観光連盟(CNC)によると、利上げの影響を受け、負債を抱える世帯の割合は上昇し、2025年12月時点で78.9%(前年同月比2.2ポイント増)となった。

なお、ブラジル地理統計院(IBGE)は2026年5月、同年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率を発表した。GDPの6割弱を占めるサービス業が情報サービスを中心に成長を牽引し、前年同期比で1.8%、前期比(季節調整済み)で1.1%となった。

表1 ブラジルの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 3.2 3.4 2.3 3.1 2.4 1.8 1.8
民間最終消費支出 3.2 5.1 1.3 2.2 1.8 0.4 1.0
政府最終消費支出 3.8 2.0 2.1 2.0 0.9 1.8 3.6
国内総固定資本形成 △ 3.0 6.9 2.9 9.0 4.1 2.3 △ 3.1
財・サービスの輸出 8.9 2.8 6.2 1.2 2.1 7.2 14.2
財・サービスの輸入 △ 1.2 15.6 4.5 13.3 3.9 2.2 △ 0.3

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕ブラジル地理統計院(IBGE)から作成。

貿易

輸出入額は過去最高を更新、貿易黒字は縮小

2025年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比3.3%増の3,482億7,800万ドル、輸入が6.6%増の2,802億800万ドルとなり、ともに過去最高を更新した。貿易収支は680億7,000万ドルの黒字となった。ただ、輸入の伸びが輸出を上回り、黒字幅は前年の741億7,600万ドルから8.2%縮小した。背景には、米国が2025年2月以降に発表した、広範な品目に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税措置がある。

主要輸出先を見ると、米国向け(構成比10.8%)は前年比6.7%減少した。一方、最大の輸出先である中国向け(28.7%)は5.9%増、3位のアルゼンチン向け(5.2%)は31.4%増と大きく伸びた。中国向け牛肉輸出や、アルゼンチン向け自動車関連品目の輸出増加が輸出額全体を押し上げ、米国向けの減少を相殺した。

輸出を品目別に見ると、主要輸出品の牛肉(構成比4.8%、前年比42.5%増)、大豆(12.5%、1.4%増)、コーヒー(4.3%、31.1%増)やトウモロコシ(2.5%、4.9%増)が増加した。一方、石油・瀝青油(鉱業区分、12.8%、1.0%減)、鉄鉱石・同精鉱(8.3%、3.0%減)、砂糖・糖蜜(4.1%、24.1%減)、石油製品など石油・瀝青油(製造業区分、3.0%、11.3%減)、パルプ・くず紙(2.9%、3.9%減)、鶏肉・同内臓(2.5%、2.9%減)、大豆粕・その他飼料(2.5%、16.9%減)は減少した。原油・瀝青油については、主要輸出相手国の経済成長の鈍化に加え、米国による追加関税の影響で、世界最大のエネルギー輸入国である中国の需要が弱含んだ。そのため、ブラジルの輸出量は増加したが、国際価格が下落し、輸出額の押し下げ要因となった。

輸入を国・地域別に見ると、最大の相手国である中国からの輸入額(構成比25.3%)は前年比11.4%増、2位の米国(16.1%)は11.0%増加した。中国からの輸入品目では、浮体式生産貯蔵積み出し設備(FPSO)が最大で、次いでプラグインハイブリッド車(PHEV)だった。ノルウェーの石油会社エクイノール(Equinor)は2025年2月、ブラジル沖プレソルト層のバカリャウ鉱区で原油生産を開始するに当たり、中国製FPSOを輸入している。これが同年の中国からの輸入額を大きく押し上げたとみられる。また、PHEVは2025年に国内販売台数が大幅に増加し、中国からの輸入増加の一因となった。

表2-1 ブラジルの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
農畜産業 72,480 77,609 22.3 7.1
大豆 42,950 43,536 12.5 1.4
焙煎していないコーヒー 11,338 14,866 4.3 31.1
挽いていないトウモロコシ(スイートコーン除く) 8,177 8,574 2.5 4.9
鉱業 81,036 80,324 23.1 △ 0.9
石油および瀝青油 44,964 44,537 12.8 △ 1.0
鉄鉱石およびその精鉱 29,860 28,979 8.3 △ 3.0
製造業 181,768 188,411 54.1 3.7
牛肉(生鮮、冷蔵、冷凍) 11,658 16,608 4.8 42.5
砂糖・糖蜜 18,624 14,130 4.1 △ 24.1
石油および瀝青油 11,647 10,333 3.0 △ 11.3
パルプ・くず紙 10,574 10,165 2.9 △ 3.9
鶏肉および食用となる鶏肉の内臓(生鮮、冷蔵、冷凍) 9,080 8,816 2.5 △ 2.9
大豆粕やその他飼料 10,406 8,645 2.5 △ 16.9
合計(その他含む) 337,046 348,278 100.0 3.3

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

表2-2 ブラジルの主要品目別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
資本財 35,754 44,238 15.8 23.7
資本財(輸送機器除く) 28,277 36,327 13.0 28.5
工業用輸送機器 7,476 7,911 2.8 5.8
中間財 156,544 165,780 59.2 5.9
工業用資材(加工品) 89,385 93,846 33.5 5.0
輸送機器用部品 28,792 33,133 11.8 15.1
資本財部品および付属品 29,454 28,906 10.3 △ 1.9
工業用資材(原料) 3,051 3,425 1.2 12.3
飲食料品(加工品) 2,940 3,240 1.2 10.2
飲食料品(原料) 2,922 3,229 1.2 10.5
消費財 40,458 42,773 15.3 5.7
非耐久および半耐久消費財 28,748 31,721 11.3 10.3
耐久消費財 11,710 11,053 3.9 △ 5.6
燃料及び潤滑油 30,011 27,318 9.7 △ 9.0
合計(その他含む) 262,870 280,208 100.0 6.6

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

表3-1 ブラジルの主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 94,372 99,940 28.7 5.9
米国 40,369 37,682 10.8 △ 6.7
アルゼンチン 13,778 18,105 5.2 31.4
オランダ 11,720 11,727 3.4 0.1
スペイン 9,970 8,783 2.5 △ 11.9
メキシコ 7,802 7,729 2.2 △ 0.9
シンガポール 7,875 7,353 2.1 △ 6.6
カナダ 6,317 7,252 2.1 14.8
チリ 6,658 7,176 2.1 7.8
インド 5,273 6,866 2.0 30.2
ドイツ 5,847 6,524 1.9 11.6
日本 5,578 5,489 1.6 △ 1.6
合計(その他含む) 337,046 348,278 100.0 3.3

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

表3-2 ブラジルの主要国・地域別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 63,636 70,916 25.3 11.4
米国 40,652 45,142 16.1 11.0
ドイツ 13,783 14,403 5.1 4.5
アルゼンチン 13,577 12,935 4.6 △ 4.7
ロシア 10,965 9,409 3.4 △ 14.2
インド 6,850 8,340 3.0 21.8
フランス 6,190 7,201 2.6 16.3
イタリア 6,388 7,054 2.5 10.4
メキシコ 5,767 6,215 2.2 7.8
日本 5,431 6,051 2.2 11.4
韓国 5,157 5,299 1.9 2.8
チリ 4,953 4,628 1.7 △ 6.6
合計(その他含む) 262,870 280,208 100.0 6.6

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

通商政策

対EFTA・FTAに署名、対EU・FTAは暫定適用開始、進展する通商政策

ブラジルを含むメルコスール加盟国とアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスからなる欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国は2025年9月、自由貿易協定(FTA)に署名した。本協定の発効により、両地域を合わせて人口約3億人、GDP総額4兆3,000億ドル超の自由貿易圏が創出される見通しだ。両地域間の輸出の97%以上が市場アクセス改善の恩恵を受ける。開発商工サービス省(MDIC)によると、2025年のブラジルの対EFTA輸出額は37億9,600万ドル、輸入額は40億1,000万ドルで、スイスが輸出額の53.3%、輸入額の79.2%を占め最大だった。

米国による追加関税措置も相まって、ブラジル政府は、貿易相手国・地域の多角化の必要性を一貫して強調している。その一環として、2019年8月以降中断していたカナダとのFTA交渉を重要課題に位置付けた。2025年10月には、カナダとの交渉再開に向けて、双方の交渉担当者による協議が行われた。EU・メルコスール間のFTAについては、2024年12月に最終合意に達した後、早期署名に向けた手続きが進展した。欧州委員会は2025年9月、FTAを含むEU・メルコスール・パートナーシップ協定案(EMPA)に加え、EMPA本体から通商分野のみを切り出した暫定貿易協定案(iTA)を欧州連合理事会に提出。EMPA本体はEUレベルに加え、全加盟国での批准が必要なため時間を要する一方、iTAはEUレベルでの批准のみで発効が可能となる。これを踏まえ、2026年1月、EUとメルコスールはEMPAおよびiTAに署名し、同年5月にiTAの暫定適用が開始した。

MDICの貿易統計によると、2025年のブラジルの対EU輸出は輸出額全体の14.3%、輸入は輸入額全体の17.9%を占めた。EUは輸出入ともに、中国(輸出28.7%、輸入25.3%)に次ぐ2位の貿易相手となった。この順位は2023年以降変化していない。

EU・メルコスールFTAでは、EUからメルコスールに輸入される完成車の関税を最長15年かけて撤廃すると規定されている。電動車や新技術搭載車については、さらに長い移行期間が設けられ、18~30年をかけて段階的に関税が撤廃される見通しだ。一方、EU側は、ブラジルからの豚肉、エタノール、砂糖、コメ、はちみつ、トウモロコシ、ソルガム、チーズなどに対して関税割当を設定する。ブラジル産業界は対EU輸出拡大への期待を示す一方、フランスやポーランドの農業団体は、協定批准に反対の姿勢を示している。

表4 ブラジルのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)〔注1〕メキシコとの協定はブラジルとの間で特定品目のみ関税を低減する特恵貿易協定(ACE53号、2001年2月発効)、メルコスールとして自由貿易協定の締結に向けた枠組み協定(ACE54号、2003年5月発効)、メルコスールとして自動車分野の貿易を定めた自動車協定(ACE55号、2003年1月発効)の3つがある。 〔注2〕ベネズエラはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE69号をブラジルと締結(2014年10月発効)。 〔注3〕コロンビアはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE72号をブラジルと締結(2017年12月発効)。 〔注4〕品目を限定した特恵貿易協定。 〔注5〕EUメルコスール自由貿易協定(FTA)の暫定貿易協定(iTA)の適用を5月1日から開始。
FTA 発効日 ブラジルの貿易に占める構成比(2025年)
往復 輸出 輸入
発効済み アルゼンチン(メルコスール) 1991年11月 4.9 5.2 4.6
ウルグアイ(メルコスール) 1991年11月 0.9 1.0 0.7
パラグアイ(メルコスール) 1991年11月 1.2 1.2 1.2
メルコスール原加盟国小計 7.0 7.4 6.5
チリ(メルコスール・チリ経済補完協定第35号) 1996年10月 1.9 2.1 1.7
ボリビア(同36号) 1997/2/1 0.4 0.4 0.5
メキシコ(同53号、同54号、同55号)〔注1〕 2.2 2.2 2.2
エクアドル(同59号) 2005年4月 0.2 0.3 0.0
ベネズエラ(同59号、同69号)〔注2〕 0.2 0.2 0.1
コロンビア(同59号、同72号)〔注3〕 0.9 1.0 0.7
ペルー(同58号) 2006年1月 0.7 0.9 0.5
キューバ(同62号)〔注4〕 2007年7月 0.0 0.1 0.0
インド〔注4〕 2009年6月 2.4 2.0 3.0
イスラエル 2010年4月 0.3 0.2 0.5
南部アフリカ関税同盟(SACU)〔注4〕 2016年4月 0.4 0.4 0.3
エジプト 2017年9月 0.8 1.1 0.5
パレスチナ 2024年8月 0.0 0.0 0.0
EU 〔注5〕 2025/5/1 15.9 14.3 17.9
メルコスール原加盟国外小計 26.3 25.2 27.9
合計 33.3 32.6 34.4
署名済み シンガポール 1.7 2.1 1.2
EFTA(European Free Trade Association) 1.2 1.1 1.4
交渉中 韓国 1.7 1.6 1.9
カナダ 1.7 2.1 1.1
インドネシア 1.0 1.2 0.9
アラブ首長国連邦 0.7 1.1 0.2

〔注1〕メキシコとの協定はブラジルとの間で特定品目のみ関税を低減する特恵貿易協定(ACE53号、2001年2月発効)、メルコスールとして自由貿易協定の締結に向けた枠組み協定(ACE54号、2003年5月発効)、メルコスールとして自動車分野の貿易を定めた自動車協定(ACE55号、2003年1月発効)の3つがある。
〔注2〕ベネズエラはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE69号をブラジルと締結(2014年10月発効)。
〔注3〕コロンビアはアンデス共同体とメルコスールで締結したACE59号(2005年2月発効)に加えて、ACE72号をブラジルと締結(2017年12月発効)。
〔注4〕品目を限定した特恵貿易協定。
〔注5〕EUメルコスール自由貿易協定(FTA)の暫定貿易協定(iTA)の適用を2026年5月1日から開始。

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

対内・対外直接投資

対内直接投資は昨年に引き続き上昇

ブラジル中央銀行によると、2025年の対内直接投資額(国際収支ベース、グロス、フロー)は443億6,600万ドル(前年比7.4%増)となり、昨年に引き続いて上昇した。また2020年以降で最高水準となった。投資国・地域別にみると、最大の投資相手国は引き続き米国だ。投資額は84億6,600万ドルで、前年比29.0%減少した。ただし、ブラジル貿易投資促進庁(ApexBrasil)によると、データセンター投資やレアアースなど重要鉱物といったブラジルにとっての戦略的分野では、米国企業による投資が引き続き高水準を維持している。データセンター分野では、2025年に米国から100億ドルの投資があったとみられる。実際、米国企業による2025年の投資計画発表では、大規模なデータセンター関連案件が目立った。RT-Oneは2025年1月と9月に、南部パラナ州マリンガ市、南東部ミナスジェライス州ウベルランジア市でのデータセンター設立を発表した。投資額はそれぞれ60億レアル。アラインド・データセンター(Aligned DataCenters)も、2025年3月にサンパウロ州オザスコ市でのデータセンター設立に向けて26億レアルの投資を発表した。

欧州からの投資は増加傾向だ。スペインからの投資額は44億8,400万ドルと前年比3.0倍、フランスは28億1,500万ドル(74.6%増)、ドイツは11億5,200万ドル(3.0倍)といずれも増加した。中でもフランスからの投資は存在感を高めており、2021年以降、投資額は毎年増加している。在ブラジル・フランス商工会議所によると、中東情勢の不安定化やロシアによるウクライナ侵攻に加え、米国での政権交代を背景に、ブラジルを含む新興国は欧州企業にとり投資先としての魅力が相対的に高まっている。ルーラ大統領は2025年6月にフランスを公式訪問し、フランス企業が2030年までに累計1,000億レアルをブラジルに投資することで合意したと発表した。

2025年の投資計画発表をみると、フランス企業による比較的大規模な投資案件が確認された。乳製品大手ラクタリス(Lactalis)は2025年3月に南部パラナ州での既存工場拡張および南東部ミナスジェライス州での新工場設立、9月には南部リオグランデ・ド・スル州の工場の生産能力増強を発表した。総投資額は10億レアルに上る。エンジー(Engie)は2025年5月、2025~2027年にかけてブラジルの電力事業に116億レアルを投資すると発表した。ルノー(Renault)は2025年8月、南部パラナ州サン・ジョゼ・ドス・ピニャイス市の既存のエンジン工場拡張に向け、5億4,600万レアルの投資を表明した。

中国企業による対ブラジル投資については、パナマ、ケイマン諸島、英領バージン諸島といったタックスヘイブン(租税回避地)を経由するケースが多く、中央銀行の統計に十分に反映されない場合がある。このため、中銀統計での中国の対内直接投資額は2024年が3億600万ドル、2025年は6億2,200万ドルにとどまった。しかし、非営利団体であるブラジル・中国ビジネス委員会(CEBC)が中国系企業を対象に実施する調査によると、2024年の中国による対ブラジル投資額は約41億8,000万ドルに達した。さらに、2025年には約61億ドルと、2017年以降で最高水準となった。

ルーラ大統領は2025年5月の中国公式訪問時に、新たに中国企業による総額270億ドルの対ブラジル投資計画が示されたと発表した。具体的には、遠景能源(Envision)がサトウキビ由来の航空燃料(SAF)生産に10億ドル、中国広核集団(CGN)が北東部ピアウイ州での風力・太陽光発電事業に30億レアル、蜜雪氷城(Mixue)がブラジルでのアイスクリーム・アイスティー販売事業に32億レアル、広州汽車集団(GAC)が電動車の生産拠点や研究開発拠点よび倉庫の設立に13億ドルを投資する。また、美団(Meituan)がフードデリバリー事業開始に56億レアルを投資すると発表した。中国の対ブラジル投資はこれまで電力などインフラ分野に集中しており、2025年も大規模な投資案件がみられた。国営電力配送会社の国家電網(State Grid)傘下のCPFLは、2025~2029年の間で、サンパウロ州ピラチニンガ市の電力事業に29億レアルを投資すると発表した。

対外直接投資も2年ぶりに増加

2025年の対外直接投資額(国際収支ベース、フロー)は、前年比63.4%増の159億8,600万ドルとなり、2年ぶりに増加した。ただし、2023年の水準(182億6,300万ドル)には及ばなかった。投資先別に見ると、引き続き米国が最大で、投資額は52億5,000万ドル(64.1%増)だった。2020年以降、米国が首位にある状況に変化はない。ブラジル全国工業連盟(CNI)によると、過去5年間、ブラジルの対米直接投資は特に顕著だ。中でも食肉分野への投資が目立ち、食肉加工大手JBSが最大規模の投資を行っている。2025年もJBSは、米国内での新たな生産拠点設立や既存加工施設への追加投資を含め、総額4億3,500万ドルの投資計画を発表した。

このほか、自動車部品メーカーのランドンコルプ(Randoncorp)、IT企業のステファニーニ(Stefanini)やウニコ(Unico)、大手機械メーカーのウェグ(WEG)、パルプ・紙大手のスザノ(Suzano)などが、米国企業の買収計画を相次いで発表している。対米直接投資は多様な分野に広がっている。

米国に続く投資先としては、英領バージン諸島(40億2,600万ドル、前年比2.7倍)、バハマ(19億3,700万ドル、2.4倍)、ケイマン諸島(10億2,800万ドル、49.2%増)、ルクセンブルク(5億2,900万ドル、5.2%増)が上位に並んだ。これらはいずれもタックスヘイブンとして知られる地域である。

業種別に見ると、「金融サービス(非金融持ち株会社)」が対外直接投資額全体の71.7%を占め、最大だった。このことが、対外直接投資においてタックスヘイブン向けの比率が高い要因の1つとみられる。

表5-1 ブラジルの国・地域別対内直接投資〔国際収支ベース、グロス、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 11,930 8,466 19.1 △ 29.0
オランダ 5,400 6,088 13.7 12.7
ルクセンブルク 751 4,534 10.2 503.7
スペイン 1,498 4,484 10.1 199.3
フランス 1,612 2,815 6.3 74.6
カナダ 2,042 2,347 5.3 14.9
英国 1,738 1,778 4.0 2.3
ドイツ 378 1,152 2.6 204.4
パナマ 447 1,022 2.3 128.6
ノルウェー 757 985 2.2 30.1
イタリア 911 858 1.9 △ 5.8
ベルギー 188 851 1.9 354.0
シンガポール 1,298 754 1.7 △ 41.9
スイス 2,546 686 1.5 △ 73.1
中国 306 622 1.4 103.4
日本 1,348 613 1.4 △ 54.5
合計(その他含む) 41,290 44,366 100.0 7.4

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。

〔出所〕ブラジル中央銀行

表5-2 ブラジルの国・地域別対外直接投資〔国際収支ベース、グロス、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 3,198 5,250 32.8 64.1
英領バージン諸島 1,473 4,026 25.2 173.3
バハマ〈諸島〉 807 1,937 12.1 140.0
ケイマン諸島 689 1,028 6.4 49.2
ルクセンブルク 503 529 3.3 5.2
ウルグアイ 105 460 2.9 338.4
オーストリア 387 447 2.8 15.3
スイス 258 411 2.6 59.5
英国 123 291 1.8 137.4
メキシコ 76 199 1.2 163.0
ポルトガル 173 182 1.1 5.1
オランダ 167 164 1.0 △ 2.0
アルゼンチン 131 107 0.7 △ 18.9
パナマ 108 90 0.6 △ 16.9
チリ 37 76 0.5 108.3
スペイン 44 59 0.4 33.5
合計(その他含む) 9,783 15,986 100.0 63.4

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。

〔出所〕ブラジル中央銀行

表6-1 ブラジルの業種別対内直接投資〔国際収支ベース、グロス、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
業種 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・畜産・鉱業(その他含む) 4,364 6,604 14.9 51.3
鉱物採掘関連事業 1,297 3,747 8.5 189.0
石油・天然ガス採掘 1,096 1,591 3.6 45.1
工業(その他含む) 10,766 11,967 27.0 11.2
化学品 2,791 2,527 5.7 △ 9.5
木材パルプ 506 2,489 5.6 391.7
自動車・トレーラー・車体 723 1,431 3.2 97.9
冶金 1,109 1,363 3.1 22.9
医薬品 537 1,066 2.4 98.5
食料品 2,356 908 2.1 △ 61.5
サービス業(その他含む) 25,816 25,398 57.3 △ 1.6
金融サービス・同補助業 8,027 5,459 12.3 △ 32.0
電気・ガスなど 4,052 4,794 10.8 18.3
商業(自動車除く) 4,986 3,983 9.0 △ 20.1
運輸 348 2,124 4.8 510.4
倉庫業および運輸支援活動 273 1,449 3.3 431.1
ITサービス 1,136 1,137 2.6 0.1
不動産の販売 344 396 0.9 15.3
合計(その他含む) 41,290 44,366 100.0 7.4

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。

〔出所〕ブラジル中央銀行

表6-2 ブラジルの業種別対外直接投資〔国際収支ベース、グロス、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
業種 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
農業・畜産・鉱業(その他含む) 220 481 3.0 118.7
鉱物採掘関連事業 155 460 2.9 197.7
工業(その他含む) 1,497 528 3.3 △ 64.8
自動車・トレーラー・車体 229 191 1.2 △ 16.6
食料品 652 95 0.6 △ 85.5
ゴムおよびプラスチック製品 4 71 0.4 1,803.5
その他 425 70 0.4 △ 83.6
サービス業(その他含む) 7,521 14,621 91.5 94.4
金融サービス(非金融持ち株会社) 4,872 11,455 71.7 135.1
金融サービス・同補助業 1,012 1,286 8.0 27.1
運輸 98 287 1.8 192.9
経営サービス 466 207 1.3 △ 55.6
商業(自動車除く) 417 203 1.3 △ 51.3
建設 12 138 0.9 1,088.2
不動産サービス 75 136 0.9 80.8
ITサービス 61 82 0.5 34.5
事務管理、事務支援およびその他の事業支援サービス業 11 35 0.2 210.2
不動産の販売 546 356 2.2 △ 34.8
合計(その他含む) 9,783 15,986 100.0 63.4

〔注〕親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。

〔出所〕ブラジル中央銀行

表7 ブラジルの主な対内直接投資案件(2025年)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
農業・食品・飲料 ラクタリス(Lactalis) フランス 2025年3月 3億1,300万レアル パラナ州カランベイ市およびロンドリーナ市の乳製品工場拡張に向けた投資を発表。
農業・食品・飲料 ラクタリス(Lactalis) フランス 2025年3月 2億9,100万レアル ミナスジェライス州ウベルランジア市に乳製品工場の設立を発表。
農業・食品・飲料 コカ・コーラ(The Coca-Cola Company) 米国 2025年3月 70億レアル 工場の生産能力を向上するべく投資を発表。
農業・食品・飲料 蜜雪氷城(Mixue) 中国 2025年5月 32億レアル ブラジルにおいてアイスクリームおよびアイスティーの販売事業を開始するべく投資を発表。
農業・食品・飲料 ネスレ(Nestlé) スイス 2025年6月 70億レアル ブラジルにおける事業拡大に向けた投資を発表。
農業・食品・飲料 バユ・クンパンス(Vall Companys) スペイン 2025年6月 8億レアル サンタカタリーナ州ヴィデイラ市に鶏肉・豚肉加工工場の設立を発表。
農業・食品・飲料 ラクタリス(Lactalis) フランス 2025年9月 4億レアル リオグランデ・ド・スル州の乳製品工場の生産能力増強のための投資を発表。
農業・食品・飲料 マッケイン・フーズ(McCain Foods) 2025年12月 18億レアル ミナスジェライス州アラシャ市の冷凍フライドポテト工場拡大に向けた投資を発表。
自動車・自動車部品 DAF オランダ 2025年4月 9億5,000万レアル パラナ州ポンタ・グロッサ市のトラック生産拠点拡大に向けた投資を発表。
自動車・自動車部品 広州汽車集団(GAC) 中国 2025年5月 13億ドル 工場、研究開発拠点および倉庫設立のための総投資額を、10億ドルから13億ドルに引き上げると発表。
自動車・自動車部品 サンセットタイヤ(Sunset tires) 中国 2025年6月 67億レアル パラナ州ポンタ・グロッサ市で建設予定のタイヤ工場に関する総投資額を、15億レアルから67億レアルに引き上げると発表。
自動車・自動車部品 ルノー(Renault) フランス 2025年8月 5億4,600万レアル パラナ州サン・ジョゼ・ドス・ピニャイス市のエンジン工場拡張に向けた投資を発表。
自動車・自動車部品 本田技研工業 日本 2025年10月 16億レアル アマゾナス州マナウス市の二輪車工場の生産能力を向上するべく投資を発表。
自動車・自動車部品 ルノー/吉利汽車(ジーリー) フランス/中国 2025年11月 38億レアル ルノーおよびジーリーの新車種製造のため、パラナ州サン・ジョゼ・ドス・ピニャイス市にあるルノー工場の拡大を発表。
エネルギー 国家電網公司(State Grid) 中国 2025年1月 29億レアル 国営電力配送会社の国家電網傘下のCPFLは、2025年から2029年にかけて、サンパウロ州ピラチニンガ市における電力事業への投資を発表。
エネルギー ムバダラ(Mubadala) UAE 2025年1月 100億レアル トウモロコシ由来エタノール、サトウキビ由来バイオメタン、エタノール由来の持続可能な航空燃料(SAF)の生産に向けて投資を発表。
エネルギー カルーン(Karoon) オーストラリア 2025年4月 12億ドル サンパウロ州沖サントス盆地における石油生産に向けた投資を発表。
エネルギー BWエナジー シンガポール/ノルウェー 2025年5月 15億ドル サンパウロ州沖サントス盆地における石油生産に向けた投資を発表。
エネルギー エンジー(Engie) フランス 2025年5月 116億レアル 2025年から2027年にかけて、ブラジルにおける電力事業への投資を発表。
エネルギー 遠景能源(Envision) 中国 2025年5月 10億ドル サトウキビ由来の持続可能な航空燃料(SAF)生産に向けた投資を発表。
エネルギー 中国広核集団 (CGN) 中国 2025年5月 30億レアル ピアウイ州における風力・太陽光発電関連プロジェクトへの投資を発表。
エネルギー サタレム・アメリカ(Satarem America) 米国/スイス 2025年6月 23億レアル 持続可能な航空燃料(SAF)の生産拠点の設立を発表。
エネルギー ホームラン・リソーシズ(Homerun Resouces) カナダ 2025年6月 18億レアル バイーア州ベルモンテ市にソーラーパネル用ガラスの生産拠点を設立すると発表。
エネルギー イベルドローラ(Iberdrola) スペイン 2025年9月 60億レアル ペルナンブコ州における電力事業への投資を発表。
エネルギー シェル(Shell) 英国 2025年12月 88億レアル 国営石油会社ペトロブラス(Petrobras)と連携し、ブラジル政府が実施したプレソルト(岩塩層下)石油鉱区入札での落札を発表。
エネルギー インパサ(Inpasa) パラグアイ 2025年12月 35億レアル マットグロッソ州ロンドノポリス市にトウモロコシ由来エタノールの生産拠点の設立を発表。
IT RT-One 米国 2025年1月 60億レアル パラナ州マリンガ市にデータセンターの設立を発表。
IT アラインド・データセンター(Aligned DataCenters) 米国 2025年3月 26億レアル サンパウロ州オザスコ市にデータセンターの設立を発表。
IT RT-One 米国 2025年9月 60億レアル ミナスジェライス州ウベルランジア市にデータセンターの設立を発表。
IT バイトダンス(ByteDance) 中国 2025年12月 377億ドル セアラ州に大型データセンターの設立を発表。
家電・電子機器 ロンシス(Longsys) 中国 2025年5月 6億5,000万レアル サンパウロ州アチバイア市およびアマゾナス州マナウス市の電子部品工場の生産能力向上に向けた投資を発表。
家電・電子機器 LG 韓国 2025年5月 15億レアル パラナ州ファゼンダ・リオ・グランデ市に白物家電工場の設立を発表。
鉱業 ホックシールド(Hochschild) 英国 2025年1月 28億レアル ゴイアス州ノバ・ローマ市においてレアアースの開発を実施すると発表。
鉱業 キンロス(Kinross) カナダ 2025年2月 1億9,500ドル ブラジルにおける金の採掘に向けた投資を発表。
鉱業 アングロゴールド・アシャンティ(AngloGold Ashanti) 南アフリカ 2025年6月 8億2,000万レアル マットグロッソ州およびミナスジェライス州の生産拠点への投資を発表。
鉱業 カルミューズ(Carmeuse) ベルギー 2025年7月 19億レアル ミナスジェライス州に石灰の生産拠点の設立を発表。
冶金 アルセロール・ミタル(ArcelorMittal) ルクセンブルク 2025年2月 40億レアル サンタカタリーナ州トゥバラン市の製鉄所への投資を発表。
冶金 ボストン・メタル(Boston Metal) 米国 2025年4月 10億レアル ミナスジェライス州に量産金属の製造拠点の設立を発表。
製薬 ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk) デンマーク 2025年4月 64億レアル ミナスジェライス州モンテス・クラロス市の製薬工場拡大に向けた投資を発表。
サービス インビサ(Invisa)/イベロスター(Iberostar)/パラディウム(Palladium) スペイン 2025年1月 25億レアル バイーア州におけるホテル設立計画を発表。
サービス メルカドリブレ(Mercado Livre) アルゼンチン/ウルグアイ 2025年4月 340億レアル ブラジルにおける事業拡大に向けた投資を発表。
サービス TIM イタリア 2025年4月 10億レアル サンパウロ州における携帯電話ネットワーク改善に向けた投資を発表。
サービス 美団(Meituan) 中国 2025年5月 56億レアル ブラジルにおいてフードデリバリー事業の開始を発表。
サービス GSイニマ(GS Inima) スペイン 2025年6月 11億レアル エスピリトサント州政府が実施した上下水道サービスのコンセッション入札で落札したと発表。
サービス 滴滴出行(DiDi) 中国 2025年9月 20億レアル ブラジルにおいてフードデリバリー事業の開始を発表。
サービス ケンピンスキー(Kempinski) ドイツ 2025年10月 16億レアル リオグランデ・ド・スル州カネラ市に高級ホテルの設立を発表。
サービス ウーバー(Uber) 米国 2025年11月 5億レアル リオデジャネイロ市に技術センターの設立を発表。
物流・運輸・交通 DPワールド(DP World) UAE 2025年11月 16億レアル サンパウロ州サントス港におけるターミナル運用事業拡大に向けた投資を発表。
物流・運輸・交通 ICTSI フィリピン 2025年12月 9億4,800レアル リオデジャネイロ港におけるターミナル運用事業拡大に向けた投資を発表。

〔出所〕各社発表および報道などから作成。

表8 ブラジルの主な対外直接投資案件(2025年)
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
食品・飲料 JBS 米国 2025年2月 2億ドル 米国における牛肉加工施設への投資を発表。
食品・飲料 JBS ベトナム 2025年3月 1億ドル 食肉加工工場の設立を発表。
食品・飲料 JBS 米国 2025年5月 1億3,500万ドル アイオワ州ペリー市にソーセージの生産拠点の設立を発表。
食品・飲料 JBS 米国 2025年8月 1億ドル アイオワ州アンケニー市にベーコンおよびソーセージの生産拠点の設立を発表。
食品・飲料 カミル(Camil) パラグアイ 2025年9月 3,300万ドル ビラ・オリバ・ライス(Villa Oliva Rice)の買収を発表。
食品・飲料 JBS パラグアイ 2025年10月 7,000万ドル 鶏肉を取り扱うカンポ (Campo)から、工場および同社が保有する「ポジョス・アマネセール(Pollos Amanecer)」ブランドの買収を発表。
機械 ウェグ(WEG) イタリア 2025年4月 400万ユーロ イタリアの工場における生産能力の向上を発表。
機械 ウェグ(WEG) 米国 2025年5月 950万ドル HVAC熱交換器の表面処理コーティングを手がけるヘレステ・プロテクティブ・コーティング(Heresite Protective Coatings)の買収を発表。
機械 ウェグ(WEG) 米国 2025年9月 7,700万ドル ミズーリ州ワシントン市にある変圧器工場の生産能力の向上に向けた投資を発表。
機械 ウェグ(WEG) インド 2025年12月 520万ドル 機械製造メーカーであるサネレック・エクシサイテイション・システムズ(Sanelec Excitation Systems)の買収を発表。
金融サービス BTGパクチュアル(BTG Pactual) ウルグアイ 2025年7月 1億7,500万ドル ウルグアイのHSBC銀行の買収を発表。
金融サービス イタウ銀行 米国 2025年12月 N.A. 投資運用会社アベニュー(Avenue)の株式50.1%の取得を発表。
IT ステファニーニ(Stefanini) 米国 2025年4月 N.A. クラウドサービス企業のEscala 24×7の買収を発表。
IT ウニコ(Unico) 米国 2025年9月 N.A. 米国に本拠を置くデジタルセキュリティ企業OwnIDの買収を発表。
自動車部品 ランドンコルプ(Randoncorp) 米国 2025年2月 N.A. モビリティソリューション企業ランドンコープは、米国ルイビルに本拠を置くアクセルおよびサスペンション製造メーカー、エー・エックス・エヌ・ヘビー・デューティ(AXN Heavy Duty)の買収を発表。
パルプ、紙および板紙 スザノ(Suzano) 米国 2025年6月 17億3,400万億ドル スザノ(Suzano)は、キンバリー・クラーク(Kimberly-Clark)の特定の国際ティッシュ事業の株式51%を、約17億3,400万米ドルで取得し、合弁会社を設立したことを発表。
エネルギー アルパール(Alupar) ペルー 2025年9月 2億2,000万ドル 総延長223キロメートルの送電線建設に関する入札の落札を発表。

〔出所〕各社発表および報道などから作成。

投資環境・外資誘致政策

データセンター建設支援策の発表で同分野の投資を牽引

政府は2025年、国内におけるデータセンター建設を促進するための支援策を相次いで打ち出した。財務省は、ブラジル企業が保有するデータのうち、国内で処理されている割合は約4割にとどまっており、データ処理サービスの海外依存を背景にサービス収支の赤字が拡大していると指摘する。こうした状況を踏まえ、同省は国内でのデータ処理事業の拡大が不可欠との認識を示している。業界団体であるブラジル情報通信技術事業者協会(Brasscom)やブラジルデータセンター協会(ABDC)によると、人工知能(AI)の普及に伴いデータセンターの重要性は高まっている。再生可能エネルギーが豊富なブラジルは立地面での優位性を有し、投資誘致の可能性が高いとみられる。

こうした環境の下、2025年には国内外企業による新たなデータセンター建設計画が相次いで発表された。報道によると、動画共有アプリ「TikTok」を運営する中国のバイトダンス(ByteDance)は、ブラジルの再生可能エネルギー企業カーサ・ドス・ベントス(Casa dos Ventos)と提携した。さらに、セアラ州ペセン港の輸出奨励地区(ZPE)にデータセンターを建設する計画を発表した。投資額は約377億ドルにのぼる。

一方、業界団体によると、ブラジルでのデータセンター建設に係る資本的支出(CAPEX)は米国を約34%上回るとされ、高い成長ポテンシャルを有する一方、民間投資を喚起するには政府支援が不可欠との見方が強い。こうした背景から、政府は2025年7月、ZPEにおけるデータセンター建設促進を目的とした大統領暫定措置令(MP)第1,307号を公布した。ZPEは、輸出志向型事業者の誘致を通じて先端技術の導入・普及や地域間格差の是正、雇用創出と地域経済の発展を目的に国内各地に設置されている。従来、税制優遇の対象は主に製造業に限定されていたが、同措置令により、国外向けにサービスを提供する事業者も対象に含まれ、特にデータセンターが重点分野として位置付けられた。

さらに、2025年9月には、ZPE以外の地域でもデータセンター建設を後押しするため、税制優遇制度「データセンター事業奨励特別プログラム(Redata)」を定めたMP第1,318号が公布された。同プログラムでは、データセンター建設に必要な電子部品やIT・通信機器の購入に際し、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金(PIS/PASEP)、社会保険融資負担金(COFINS)など、連邦税の支払いが免除される。

ただし、暫定措置令(MP)は、公布後、国会の事後承認が必要で、最長120日間の審議期限が設けられる。MP第1,307号およびMP第1,318号はいずれも期限内に承認されなかったため、前者は2025年11月、後者は2026年2月にそれぞれ失効した。これを受け、データセンター関連の業界団体は、新たな法令や制度の早期整備を政府に求めている。

対日関係

2021年以降で初の貿易赤字へ

開発商工サービス省貿易統計(Comex Stat)によると、2025年のブラジルの対日輸出額は前年比1.6%減の54億8,900万ドル、対日輸入額は同11.4%増の60億5,100万ドルだった。対日貿易収支は2021年以降で初めて赤字となった。日本はブラジルにとって、輸出相手国として12位、輸入相手国として10位である。

日本向け輸出を品目別にみると、構成比18.8%を占めるコーヒー豆が、金額ベースで前年比83.7%増と大きく伸びた。ただし、輸出数量は229万袋(1袋=60キログラム)から249万袋へと9.1%増にとどまった。ブラジルやベトナムなど主要生産国の天候不順を背景に、2025年はコーヒーの国際価格が上昇基調で推移しており、これが輸出額の増加に寄与したとみられる。なお、2025年5月にブラジルで鳥インフルエンザの感染が確認され、複数国がブラジル産鶏肉の輸入を全面停止したが、日本は一部地域からの輸入停止にとどめたため、対日輸出への影響は限定的だった。

日本からの輸入では、自動車部品が構成比19.1%(前年比16.0%増)と首位を占め、前年に続き好調だった。ブラジル自動車部品工業会(Sindipeças)によると、日本は中国、米国に次いで、ブラジルにとり3位の自動車部品輸入相手国だ。

表9-1 ブラジルの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
コーヒー豆 563 1,034 18.8 83.7
鉄鉱石 1,010 956 17.4 △ 5.4
鶏肉(部分肉) 847 840 15.3 △ 0.8
アルミニウム 385 433 7.9 12.7
豚肉 310 389 7.1 25.3
フェロアロイ 323 287 5.2 △ 11.0
大豆 323 257 4.7 △ 20.2
大豆油かす 155 158 2.9 2.1
化学木材パルプ 139 121 2.2 △ 12.5
果実・ナット・野菜ジュース 142 99 1.8 △ 30.4
合計(その他含む) 5,578 5,489 100.0 △ 1.6

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

表9-2 ブラジルの対日主要品目別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車部品 994 1,153 19.1 16.0
治療用人血・動物の血 179 216 3.6 21.1
集積回路 99 196 3.2 97.5
乗用自動車 125 165 2.7 32.4
自動調整機器 116 159 2.6 36.9
ピストン式火花点火内燃機関 111 152 2.5 37.3
自動車用エンジン部品 126 136 2.2 7.3
医療用又は獣医用の機器 98 122 2.0 24.7
複素環式化合物(ヘテロ原子として窒素のみを有するものに限る) 131 116 1.9 △ 11.5
玉軸受及びころ軸受 86 97 1.6 13.3
合計(その他含む) 5,431 6,051 100.0 11.4

〔出所〕開発商工サービス省(MDIC)

日本の対ブラジル投資は大幅に減少

2025年の日本からブラジル向け対内直接投資額(国際収支ベース、グロス、フロー)は6億1,300万ドルで、前年比54.5%減と大幅に減少した。順位は2024年の8位から16位に低下し、2021年以降で最低となった。業種別では、「商業(自動車除く)」が構成比24.3%を占め、前年比47.8%増と投資を牽引した。

日本企業による主な投資案件としては、本田技研工業が2025年10月、北部アマゾナス州マナウス市の既存の二輪車工場の生産能力拡大に16億レアルを投資すると発表した。また、三井物産とブラジルの砂糖・エタノール企業CMAAは4月、南東部ミナスジェライス州におけるバイオメタン生産拠点の設立(投資額2億レアル)に向け、了解覚書(MoU)を締結した。住友商事傘下のアグロ・アマゾニア(Agro Amazonia Produtos Agropecuarios)は6月、南東部ミナスジェライス州パトス・デ・ミナス市に大豆種子の貯蔵・加工施設を設立し、1億4,000万レアルを投資すると発表した。コマツは7月、サンパウロ州スザノ市の工場拡張計画への投資(1億レアル)を発表。ヤンマーは8月、サンパウロ州インダイアツーバ市にトラクターの生産拠点を新設するため、2億8,000万レアルを投資すると発表した。日立製作所の子会社で送配電事業を手掛ける日立エナジーは、サンパウロ州ピンダモニャンカバ市に変圧器の新たな生産拠点を建設すると発表。同社は2024年9月に総額2億ドルの対ブラジル投資計画を公表しており、約8割を同市の新拠点に充てる見込みだ。

「日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組み」の立ち上げ

ルーラ大統領は2025年3月、国賓として訪日した。訪問に当たり発表されたアクション・プランでは、「日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組み」の下で貿易関係深化のための議論を進展させることが確認された。12月には、両国政府間において日・メルコスール間の戦略的関係をより一層強化すべく、本枠組みの立ち上げが発表された。2026年は、本枠組みでの議論が進んでいくとみられる。

なお、2026年6月に開催されたG7エビアン・サミットでは日ブラジル首脳会談が行われ、両国は日・メルコスール経済連携協定(EPA)の交渉開始で合意した(2026年6月17日付ビジネス短信参照)。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:通関ベース
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 3.2 3.4 2.3
1人当たりGDP (米ドル) 10,350 10,282 10,686
消費者物価上昇率 (%) 4.62 4.83 4.26
失業率 (%) 7.7 6.6 5.6
貿易収支 (100万米ドル) 98,903 74,177 68,070
経常収支 (100万米ドル) △ 27,073 △ 66,168 △ 68,998
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 346,424 318,857 334,297
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 342,191 346,619 386,148
為替レート (1米ドルにつき、レアル、期中平均) 4.99 5.39 5.59

〔注〕
貿易収支:通関ベース

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ブラジル地理統計院(IBGE)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高(グロス):ブラジル中央銀行