アルゼンチンの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は4.4%、インフレ抑制に成功しマイナス成長脱す。
  • 貿易は農産物と鉱物資源の輸出が増加し、輸入では乗用車・貨物自動車が著増。
  • 対内直接投資は事業売却と親会社への送金・返済で流出が増加し、ネットで大幅減。
  • 内需回復で日本からの乗用車輸入が増加。日本からの直接投資は純流出に。

公開日:2026年7月6日

マクロ経済

プラス成長転換も、インフレ抑制の持続がカギ

2025年のアルゼンチンの実質GDP成長率は4.4%となった。2年連続のマイナス成長からプラスに転換した。成長の主たる要因はインフレの抑制にある。2025年末の消費者物価指数(以下、CPI)上昇率(12月値の前年同月比)は、過去2年続いた3桁台から31.5%まで低下した。ハビエル・ミレイ政権は2023年12月の政権発足以来、大規模な歳出削減を推し進め、総合財政収支は2024年から黒字に転換した。同時に、前政権下で常態化していた財政ファイナンス(中央銀行による国債の引き受け)を停止することでマネタリーベースの伸びを抑制し、市場のインフレ期待を低下させて実際にインフレを抑制した。また、市場のインフレ期待の低下で利下げ余地も生まれ、インフレが実際に低下するのに先駆けて政策金利は政権発足当初の133%から漸次引き下げられた(2024年11月12日付ビジネス短信の添付資料を参照)。2025年5月前後に政策金利は事実上廃止されたが、その後も、アルゼンチン中央銀行(以下、中銀)が公表する市場の指標金利(TAMAR名目年利)は順調に低下し、2025年末に28.8750%まで低下した。

インフレと金利の低下が消費と投資を刺激して2025年に景気は回復した。実質GDPの需要項目別内訳を寄与度で見ると、民間最終消費支出が5.7ポイントとGDPを最も押し上げ、投資(国内総固定資本形成)が2.9ポイントで続いた。他方、GDPの控除項目である財・サービス輸入の寄与度はマイナス6.7ポイントだが、これが消費と投資に回ったという構図だ。財の輸入では、輸入代金送金規制の緩和と一般関税率(MFM)の引き下げも輸入増加に貢献した。一方、財・サービス輸出の寄与度は1.8ポイントにとどまり、政府最終消費支出も0.0ポイントだった。

実質GDPの伸びを、区分数の多い産業別では寄与率で見ると、金融業が経済成長に最も貢献した。金融業は産業別GDP全体の4.8%を占めるに過ぎないが、前年比で24.7%成長し、増加寄与率は28.3%だった。ただし高成長率は、前年のマイナス成長からの反動増と、金利低下による金融サービス正常化の結果である点には注意を要する。次いで商業が民間消費の回復を反映して寄与率15.7%で続いた。農林牧畜業(寄与率14.7%)、不動産業(14.4%)、鉱業(10.8%)も好調だった。鉱業はリチウムや金・銀の採掘増に加え、バカ・ムエルタ油田での原油と天然ガスの増産が成長に寄与した。一方、緊縮財政の結果、行政・防衛・社会保障(マイナス1.7%)、社会福祉・保健(マイナス0.2%)は減退した。製造業は、産業別GDP全体の18.0%を占め最大だが、成長率0.9%、寄与率4.5%と低迷した。機械・機器、電子機器は好調だったが、皮革、金属加工、繊維が大幅なマイナスとなった。自動車も前年比0.9%のマイナス成長に終わった。

2026年に入って景気は一進一退の様相を呈している。国家統計センサス局(INDEC)が発表する月次経済活動指数PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.5MB)の伸び率(季節調整済み前月比)を見ると、1月はマイナス0.2%だったが2月はマイナス2.7%と減退、3月に3.5%と再びプラスに転換した。民間予測(中銀がエコノミストなどを対象に実施するアンケート調査(REM外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の2026年4月末の回答の中央値)によると、2026年の実質GDP成長率は2.8%を見込む。CPI上昇率(前年同月比)も、1月32.4%、2月33.1%、3月32.6%、4月32.4%と、2025年末の31.5%からやや上昇傾向にある。REMでは、CPIは2026年末に30.5%と見込まれているが、ガソリンをはじめ燃料価格の上昇が危惧される。ハビエル・ミレイ政権は燃料費補助を削減し市場価格に近付ける政策を進めており、新たに対策を打たなければ、国際原油価格の上昇が国内燃料価格に直接反映されるためだ。インフレを適正に管理できるかが政府のマクロ経済運営のカギとなる。

表1 アルゼンチンの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 △ 1.9 △ 1.3 4.4 5.8 6.4 3.3 2.1
民間最終消費支出 1.0 △ 2.9 7.9 11.0 10.8 5.3 4.1
政府最終消費支出 2.1 △ 3.8 0.2 △ 1.7 1.1 1.6 △ 0.1
国内総固定資本形成 △ 2.0 △ 17.2 16.4 31.5 32.1 10.4 △ 2.1
財・サービスの輸出 △ 9.5 19.8 7.6 6.7 3.2 9.2 10.9
財・サービスの輸入 1.9 △ 10.2 27.0 40.0 38.0 23.7 10.1

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。

〔出所〕国家統計センサス局(INDEC)

貿易

輸出は自動車が減少も、油糧・油脂や石油、リチウムが増加

2025年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比9.3%増の870億7,700万ドル、輸入は24.7%増の757億9,100万ドルとなった。輸入は2024年に落ち込んだ反動などから大幅に増加した。一方、輸出も農産物と鉱物資源が好調だったため、貿易収支は2年連続で黒字(112億8,600万ドル)を記録した。

輸出を品目別に見ると、最大シェアの穀物が前年比3.6%増(構成比12.9%)にとどまったが、油糧種子が94.5%の大幅増(7.1%)を記録した。食物油脂も19.5%増加(11.1%)した。種子、油脂ともに主役は大豆とひまわりだった。原油はバカ・ムエルタ油田の増産が寄与して22.6%増加(7.7%)、貴石・貴金属・貨幣も金と銀が牽引して25.3%増加(4.8%)した。化学製品も12.2%増加(5.7%)したが、中でも炭酸リチウムおよびその他リチウム化合物(統計秘匿品目含む)が規模は小さいものの40.7%増加(1.1%)した点は注目に値する。一方、陸上輸送機器は2.8%減少(9.5%)した。特に乗用車が24.1%減少したことが響いた。

主要輸出先を見ると、最大のブラジル向けが前年比6.3%減少(構成比14.7%)した。同国向け輸出の約4割を占める自動車が6.0%減少したことが影響した。一方、中国向けは61.4%増加(11.3%)し、米国を抜いて2位の輸出先となった。油糧種子・食物油脂が2.2倍になったほか、牛肉が17.0%増、原油および石油・石化製品が4.3倍となった。また、炭酸リチウムおよびその他リチウム化合物(統計秘匿品目含む)も57.7%増加し、アルゼンチンの同品目の輸出の71.0%が中国向けとなった。米国は中国の後塵を拝したものの、28.7%増加(9.6%)し3位となった。原油および石油・石化製品、金・銀に加え、牛肉も54.1%増加した。米国トランプ政権によるアルゼンチン産牛肉への低関税輸入枠の拡大が2025年11月に決定され、2026年2月から適用が開始されている。今後は対米牛肉輸出がさらに増加すると予想される。なお、原油および石油・石化製品の3割は米国向け、2割弱がブラジル向けで、中国向けのシェアは1桁台だ。他方、牛肉の5割は米国向け、4割は中国向けとなっている。

輸入ではブラジル、中国、タイ、韓国からの乗用車が著増

輸入を品目別に見ると、資本財が前年比51.3%増加した。中でも産業用輸送機器は倍増した。ブラジルからの貨物自動車の輸入が78.1%増加したほか、中国からの輸入も規模は小さいが3.3倍となったことが寄与した。中間財の産業用資材も10.4%増加し、消費財も景気回復と輸入代金送金規制の緩和もあって54.0%増加した。特に、乗用車(HS8703項)は97.6%の大幅増となった。乗用車の輸入元を見ると、ブラジルが66.8%増加(構成比68.0%)した。中国も4.8倍と著増(12.5%)し、メキシコ(2.6倍、6.7%)とドイツ(2.1倍、2.4%)がこれに続いた。このほか、シェアは小さいものの、タイ(10.0倍、1.8%)、韓国(9.0倍、1.8%)、日本(3.2倍、1.7%)からの輸入も大幅に増加した。

主要輸入相手国としては、ブラジルが引き続き最大(前年比28.5%増、構成比24.3%)だった。内訳をみると、乗用車(66.8%増、構成比21.0%)、貨物自動車(78.1%増、6.5%)、トラクター(2.2倍、5.6%)が増加した一方、自動車の部分品・付属品は0.3%減(7.5%)だった。次いで多かったのは中国で、53.9%増加し構成比は23.7%とブラジルに肉薄した。中国からの輸入を構成比順に見ると、スマートフォン(12.1%増、5.2%)、乗用車(4.8倍、4.0%)、コンピュータ(58.0%増、3.6%)、オートバイ(2.1倍、3.0%)、肥料(2.1倍、2.1%)などとなっている。3位はEUで16.8%増加(13.8%)した。品目別動向を見ると、医薬品(39.6%増、8.5%)、免疫産品・ワクチン(11.9%増、6.6%)、自動車の部分品・付属品(0.3%増、5.5%)、石油・歴青油・軽油(29.2%増、4.6%)、乗用車(2.4倍、2.8%)などとなっている。

表2-1 アルゼンチンの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
一次産品 18,277 22,144 25.4 21.2
穀物 10,834 11,218 12.9 3.6
油糧種子 3,188 6,199 7.1 94.5
農畜産物加工品 29,656 30,467 35.0 2.7
食物油脂 8,063 9,635 11.1 19.5
食品産業残留物 11,439 9,498 10.9 △ 17.0
食肉及び加工品 3,547 4,451 5.1 25.5
工業製品 22,054 23,380 26.8 6.0
陸上輸送機器 8,467 8,233 9.5 △ 2.8
化学製品 4,386 4,922 5.7 12.2
貴石、貴金属、貨幣 3,341 4,187 4.8 25.3
金属製品 2,323 2,306 2.6 △ 0.7
燃料・エネルギー 9,717 11,086 12.7 14.1
原油 5,480 6,716 7.7 22.6
燃料・ガソリン 2,514 2,433 2.8 △ 3.2
合計 79,703 87,077 100.0 9.3

〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。

〔出所〕国家統計センサス局(INDEC)

表2-2 アルゼンチンの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
資本財 9,961 15,073 19.9 51.3
輸送機器を除く資本財 7,574 10,603 14.0 40.0
産業用輸送機器 1,613 3,303 4.4 104.8
中間財 23,033 24,300 32.1 5.5
産業用資材 16,770 18,517 24.4 10.4
産業用食糧・飲料 3,425 2,518 3.3 △ 26.5
燃料・潤滑油関連品 3,987 3,271 4.3 △ 18.0
資本財部品 13,225 15,113 19.9 14.3
消費財 7,404 11,401 15.0 54.0
半耐久消費財 2,035 3,128 4.1 53.7
非耐久消費財 1,582 2,034 2.7 28.6
耐久消費財 722 1,592 2.1 120.5
家庭用加工飲食料品 845 1,426 1.9 68.9
医薬品 1,110 1,377 1.8 24.1
乗用車 2,873 5,678 7.5 97.6
合計(その他含む) 60,776 75,791 100.0 24.7

〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。

〔出所〕国家統計センサス局(INDEC)

表3 アルゼンチンの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
南米南部共同市場(メルコスール) 17,185 16,467 18.9 △ 4.2 18,475 22,013 29.0 19.2
ブラジル 13,623 12,771 14.7 △ 6.3 14,335 18,424 24.3 28.5
その他のラテンアメリカ統合連合(ALADI) 11,095 11,175 12.8 0.7 2,341 2,142 2.8 △ 8.5
チリ 6,344 6,282 7.2 △ 1.0 727 870 1.1 19.6
米国、メキシコ、カナダ 8,390 10,293 11.8 22.7 8,033 8,845 11.7 10.1
米国 6,478 8,338 9.6 28.7 6,225 6,704 8.8 7.7
EU 8,274 8,486 9.7 2.6 8,972 10,478 13.8 16.8
スイス 1,696 2,063 2.4 21.6 570 699 0.9 22.6
英国 665 578 0.7 △13.2 496 510 0.7 2.9
ASEAN 6,773 5,757 6.6 △ 15.0 3,325 4,543 6.0 36.6
中国(香港・マカオ含む) 6,072 9,799 11.3 61.4 11,668 17,954 23.7 53.9
韓国 1,234 577 0.7 △ 53.2 511 642 0.8 25.7
日本 308 296 0.3 △4.0 1,245 1,425 1.9 14.4
インド 3,934 5,472 6.3 39.1 1,295 1,436 1.9 10.9
中東 4,163 4,657 5.3 11.9 639 684 0.9 6.9
マグレブ諸国およびエジプト 2,120 2,617 3.0 23.4 808 628 0.8 △ 22.3
南部アフリカ関税同盟(SACU) 369 379 0.4 2.7 152 157 0.2 3.3
大洋州 645 713 0.8 10.6 418 395 0.5 △5.3
合計(その他含む) 79,703 87,077 100.0 9.3 60,776 75,791 100.0 24.7

〔注〕2024年は暫定値、2025年は推計値。

〔出所〕国家統計センサス局(INDEC)

対内・対外直接投資

外資による事業売却、利益送金、借入金返済で流出額増加

中銀によると、2025年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は31億6,200万ドル(前年比72.8%減)と大幅に減少した。要素項目のうち「合併・買収」と「負債性資本(親子会社間勘定)」が純流出となったことに加え、親会社への配当増加で「利益の再投資」が減少したためだ。

合併・買収の純流出は、2024年まで続いた景気後退や外貨送金規制などの影響から、外資が事業を国内企業に売却した案件が多かったためとみられる。実際、米国エクソンモービル(Exxon Mobil)がバカ・ムエルタ油田の権益を国内エネルギー大手のプルスペトロ-ル(Pulspetrol)および国営YPFに売却する案件や、英国HSBCが銀行事業をアルゼンチンのグルーポ・フィナンシエロ・ガリシア(Grupo Financiero Galicia)に売却する案件、米国P&Gが国内家電大手ニューサン(Newsan)に日用品事業を売却する案件などが2024年~2025年にかけて明らかになっている。いずれも、純粋な撤退ではなく国内で売買が成立した案件であったため、合併・買収の項目に流出(マイナス)として計上された。

利益の配当と負債性資本の純流出は、利益および親子ローンの元利返済の外国送金規制が、2025年から段階的に緩和されたことが影響した結果とみられる。それ以前の利益送金および親子ローン返済については、通常の外貨送金ができず、中銀が発行するドル建て特別債券(BOPREAL)をペソで購入して国際市場で売却、または本社に譲渡するなどに方法が限定されていた。しかし、2025年以降の発生利益および親子ローンの返済は通常の外貨送金が段階的に可能となった。実際、利益の配当は前年比57.2%増加している。負債性資本の流出、すなわち親会社への返済は第4四半期に集中した。

表4-1 アルゼンチンの対内直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2026年5月7日時点
概要 2023年 2024年 2025年
金額 金額 金額 増減率
対内直接投資 24,716 11,645 3,162 △ 72.8

〔注〕2026年5月7日時点

〔出所〕アルゼンチン中央銀行(BCRA)

表4-2 アルゼンチンの対内直接投資・要素別内訳〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2026年5月7日時点。子会社の利益から親会社への配当を減じた値が利益の再投資(利益の子会社への留保)。配当の支払いは経常収支の第一次所得収支の直接投資収益にマイナス計上されるが、配当送金規制のあるアルゼンチンでは配当金の数値を直接投資統計に表示している。
概要 2024年 2025年
年計 第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 年計 増減率
対内直接投資 11,645 1,006 2,670 4,172 △ 4,687 3,162 △ 72.8
株式資本 3,340 829 1,075 241 1,111 3,256 △ 2.5
合併・買収 △ 455 △ 1,219 △ 1,255 △ 347 △ 676 △ 3,497
利益の再投資 5,433 1,189 940 1,498 242 3,869 △ 28.8
うち配当(支払い) △ 2,346 △ 491 △ 1,301 △ 703 △ 1,194 △ 3,689 57.2
負債性資本(親子会社間勘定) 3,326 207 1,910 2,781 △ 5,363 △ 466

〔注〕2026年5月7日時点。子会社の利益から親会社への配当を減じた値が利益の再投資(利益の子会社への留保)。配当の支払いは経常収支の第一次所得収支の直接投資収益にマイナス計上されるが、配当送金規制のあるアルゼンチンでは配当金の数値を直接投資統計に表示している。

〔出所〕アルゼンチン中央銀行(BCRA)

中銀のデータから対内直接投資残高を見ると、2025年末で1,810億ドルと前年比1.3%増加している。投資残高を国別・業種別内訳で見ると、国別では米国(構成比17.7%)、スペイン(14.2%)、オランダ(11.9%)、ブラジル(6.4%)、ウルグアイ(4.8%)の順となっている。アジア地域では中国が12位(3.1%)、日本が16位(1.3%)、韓国が20位(0.8%)だ。業種別では、製造業が全体の33.8%、鉱業が28.1%、商業が9.4%、情報・通信が6.0%を占めている。

表4-3 アルゼンチンの対内直接投資・国別内訳〔残高ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕2026年5月7日時点
順位 国名 2024年末 2025年末
金額 金額 増減率 構成比
1 米国 30,951 32,060 3.6 17.7
2 スペイン 27,508 25,715 △ 6.5 14.2
3 オランダ 21,348 21,580 1.1 11.9
4 ブラジル 13,712 11,627 △ 15.2 6.4
5 ウルグアイ 9,161 8,694 △ 5.1 4.8
6 スイス 7,440 8,545 14.9 4.7
7 英国 7,271 8,070 11.0 4.5
8 フランス 7,286 7,157 △ 1.8 4.0
9 チリ 6,404 6,426 0.3 3.5
10 メキシコ 5,336 6,174 15.7 3.4
11 カナダ 5,194 5,707 9.9 3.2
12 中国 5,973 5,642 △ 5.5 3.1
13 ドイツ 4,676 5,097 9.0 2.8
16 日本 2,725 2,405 △ 11.7 1.3
20 韓国 1,912 1,463 △ 23.5 0.8
合計(その他含む) 178,663 181,037 1.3 100.0

〔注〕2026年5月7日時点

〔出所〕アルゼンチン中央銀行(BCRA)

なお、2025年のアルゼンチンの対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比2.8%増の28億3,400万ドルだった。

銅鉱山開発で大型投資案件2件が優遇措置申請

2025年の主な対内投資案件で注目される点は、国際資源メジャーによる銅鉱山への大型開発投資案件が2件発表されたことだ。1つがオーストラリアのBHPとカナダのルンディン・マイニング(Lundin Mining)の合弁会社ビクーニャ(Vicuña)による、アルゼンチン北西部サン・フアン州の銅・金・銀鉱山の開発案件。もう1つがスイスのグレンコア(Glencore)によるサン・フアン州とカタマルカ州の銅鉱山開発案件だ。両案件とも投資額100億ドルを超える大型案件で、2024年7月に発効した投資優遇措置「大型投資奨励制度(RIGI)」に申請した。銅鉱山については、開発を阻んでいた氷河法の改正法が2026年4月に成立しており、今回の2社以外の案件も含め開発が今後進展する可能性がある。資源メジャーが新たな出資者を募ることも想定され、投資機会が拡大しそうだ。

このほか、米国のフォード・モーター(Ford Motor)、ドイツのフォルクスワーゲン(Volkswagen)、中国の配車サービス滴適出行(DiDi)による追加投資や米国のオープンAIとスール・エネルジーとの合弁による大規模データセンタープロジェクトに共同で取り組むための投資案件などが2025年に発表された。

表5 アルゼンチンの主な対内直接投資案件(2025年)(単位:100万ドル)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT セールスフォース(Salesforce) 米国 2025年1月 500 クラウド型顧客関係管理(CRM)プラットフォームのセールスフォースは、5億ドル相当の5年間にわたる投資計画を発表。人工知能(AI)におけるイノベーション、デジタルトランスフォーメーション、および人材育成の支援が目的だとしている。
食品 コカ・コーラ(Coca Cola) 米国 2025年3月 1,400 米国のコカ・コーラ社は今後4年間、アルゼンチンに14億ドル以上を投じ、生産の増強、物流の改善、インフラの最適化を図る。
自動車 フォルクスワーゲン(Volkswagen) ドイツ 2025年4月 580 ドイツのフォルクスワーゲンは、5億8,000万ドルを投じて、ピックアップトラック「アマロック」の後継車となる新車種のミッドサイズのピックアップトラックを開発すると発表した。
IT 滴適出行(ディディ、DiDi) 中国 2025年5月 160 タクシー配車アプリのディディは、アルゼンチンでの事業拡大を目指し1億6,000万ドルを投じると発表した。同社は、既にブエノスアイレス市および11州に進出し、合計87都市で事業を展開している。
鉱業 BHP/ルンディン・マイニング(Lundin Mining) オーストラリア/カナダ 2025年8月 15,000 オーストラリアのBHPとカナダのルンディン・マイニングが設立した鉱業会社ビクーニャ(Vicuña)は、アルゼンチンのサン・フアン州において銅・金・銀の2つの大規模鉱床を開発するため、150億米ドル超(最大で170億米ドルに達する可能性あり)を投資する計画を発表した。
鉱業 グレンコア(Glencore) スイス 2025年8月 13,500 スイスの鉱業開発会社グレンコアは、アルゼンチンのサン・フアン州およびカタマルカ州において、2つの銅鉱山プロジェクトの開発を目的に135億ドルを投じると発表した。
自働車 フォード・モーター(Ford Motor) 米国 2025年10月 170 フォードは、アルゼンチンのパチェコ工場においてハイブリッド版「レンジャー」を生産するため、1億7,000万米ドルの追加投資を行うと発表した。
IT オープンAI(Open AI) 米国 2025年10月 25,000 AIの研究・開発を行うオープンAIは、エネルギーインフラ分野のスール・エネルジーとの合弁で、次世代のAIコンピューティングに対応可能で、最大500MWの容量を備える大規模データセンタープロジェクトに共同で取り組む。本プロジェクトは最大250億米ドル規模の投資が見込まれる。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

対日関係

貿易は乗用車輸入が大幅増、直接投資は親会社への返済増で純流出

国家統計センサス局(INDEC)によると、アルゼンチンの2025年の対日輸出は前年比3.9%減の2億9,600万ドル、日本からの輸入は14.5%増の14億2,500万ドルだった。輸出は農水産物中心、輸入は工業製品中心という構造に変化はない。輸入が景気回復を受けて自動車関連を中心に伸長したため、対日貿易収支は11億2,900万ドルのマイナスとなり、赤字幅は前年から20.5%拡大した。アルゼンチンにとって日本は輸出で48位、輸入では10位の相手国である。

日本向け輸出を品目別に見ると、主要輸出品である冷凍のエビ類(前年比7.2%減、構成比21.8%)が減少した。2位の無機化学品は、炭酸リチウムがメインとみられるその他リチウム化合物(統計秘匿品目、表6の注2参照)と推定され、前年から微増だった(1.1%増、9.7%)。一方、冷凍イカ・スルメイカ(49.7%増、7.8%)、その他の魚並びに甲殻類・軟体動物など(3.9倍、5.9%)が伸長した。このほか、ぶどうジュース(2.3%増、6.0%)や柑橘類果汁(2.5%増、4.2%)は微増した。

日本からの輸入では、首位のギヤボックスおよびその部分品が前年比3.8%増加し輸入総額の23.8%を占めた。また、好調な民間消費を反映して、乗用車の増加が目立った。ハイブリッド(HEV)車が7.9倍(構成比2.2%)になったほか、ガソリン車ではミニバンや大型SUVなど人員7人以上の乗用車(排気量1501cc~3000cc)が4.2倍(1.7%)、人員6人以下の乗用車(同)が68.1%増加(1.7%)した。貨物自動車は2.3倍(2.1%)、オートバイも6.9倍(1.5%)と著増した。なお、プラグインハイブリッド(PHEV)車も少量輸入されているが、2025年は32.7%減少(0.02%)した。

表6-1 アルゼンチンの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕2024年は暫定値、2025年は推計値。輸出品目の※は、統計の秘密を理由にHSコード2桁のみ公表。 〔注2〕HS28類(無機化学品等)にある「統計上の秘匿コード」に分類され詳細は不明確だが、日本側輸入統計と突合すると炭酸リチウムをメインとしたその他リチウム化合物と推察される。 〔注3〕本文ではハイブリッド(HEV)車と記載。 〔注4〕本文ではミニバンや大型SUVなど人員7人以上の乗用車と記載。 〔注5〕本文では人員6人以下の乗用車と記載。 〔注6〕本文ではオートバイと記載。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
冷凍のエビ類 69.6 64.6 21.8 △ 7.2
無機化学品(注3) 28.4 28.7 9.7 1.1
冷凍イカ、スルメイカ 15.5 23.2 7.8 49.7
ぶどうジュース(ぶどう搾汁を含む) 17.3 17.7 6.0 2.3
その他の魚並びに甲殻類、軟体動物など(※) 4.5 17.6 5.9 291.1
柑橘類果汁(オレンジ、グレープフルーツ、ザボンを除く) 12.1 12.4 4.2 2.5
動物性、植物性又は微生物性の油脂(※) 4.8 9.9 3.3 106.3
天然はちみつ 6.7 8.5 2.9 26.9
その他の食用の動物性生産品(※) 2.5 8.1 2.7 224.0
ホエイ及び調製ホエイ 3.8 4.7 1.6 23.7
合計(その他含む) 308 296 100.0 △ 3.9

〔注1〕2024年は暫定値、2025年は推計値。
〔注2〕輸出品目の※は、統計の秘密を理由にHSコード2桁のみ公表。
〔注3〕HS28類(無機化学品等)にある「統計上の秘匿コード」に分類され詳細は不明確だが、日本側輸入統計と突合すると炭酸リチウムをメインとしたその他リチウム化合物と推察される。

〔出所〕国家統計センサス局(INDEC)

表6-2 アルゼンチンの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注1〕2024年は暫定値、2025年は推計値。輸出品目の※は、統計の秘密を理由にHSコード2桁のみ公表。 〔注2〕HS28類(無機化学品等)にある「統計上の秘匿コード」に分類され詳細は不明確だが、日本側輸入統計と突合すると炭酸リチウムをメインとしたその他リチウム化合物と推察される。 〔注3〕本文ではハイブリッド(HEV)車と記載。 〔注4〕本文ではミニバンや大型SUVなど人員7人以上の乗用車と記載。 〔注5〕本文では人員6人以下の乗用車と記載。 〔注6〕本文ではオートバイと記載。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
ギヤボックス及びその部分品 326.7 339.0 23.8 3.8
医療用免疫血清及び免疫産品 62.2 87.1 6.1 40.0
気体ポンプ、気体圧縮機 33.0 33.6 2.4 1.8
その他の車両(駆動原動機としてピストン式火花点火内燃機関及び電動機を搭載したものに限るものとし、外部電源に接続することにより充電することができるものを除く。)(注2) 4.0 31.7 2.2 692.5
貨物自動車 12.6 29.3 2.1 132.5
シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え3,000立方センチメートル以下のピストン式火花点火内燃機関のみを搭載した乗用車(注3) 6.0 24.9 1.7 315.0
10人以上の人員(運転手を含む。)の輸送用の自動車 17.0 24.5 1.7 44.1
シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え3,000立方センチメートル以下のピストン式火花点火内燃機関のみを搭載した6人以下の人員の乗用車(注4) 14.1 23.7 1.7 68.1
シリンダー容積が500立方センチメートルを超え800立方センチメートル以下のピストン式内燃機関付きのモーターサイクル(注5) 3.0 20.8 1.5 593.3
自働調整機器の部分品及び附属品 6.3 19.6 1.4 211.1
合計(その他含む) 1,245 1,425 100.0 14.5

〔注1〕2024年は暫定値、2025年は推計値。
〔注2〕本文ではハイブリッド(HEV)車と記載。
〔注3〕本文ではミニバンや大型SUVなど人員7人以上の乗用車と記載。
〔注4〕本文では人員6人以下の乗用車と記載。
〔注5〕本文ではオートバイと記載。

〔出所〕 国家統計センサス局(INDEC)

中銀によると、2025年の日本からの対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は3億1,900万ドルの純流出だった。要素別内訳を見ると、株式資本、合併・買収ともに記録されておらず、利益の再投資の項目でプラス(流入)、負債性資本の項目で流入(借入)と流出(返済)が記録されている。いずれも製造業分野だ。負債性資本で流出が多かったため、ネットでは純流出となった。一方、個別企業の動きを見ると、新規進出や拡張投資などはないが、トヨタ自動車が2025年に過去最高の生産台数(18万352台)を記録した。

日亜ビジネス環境整備委員会が2026年4月に開催

2026年4月にはブエノスアイレス市で第8回日亜ビジネス環境整備委員会が開催された。日本側は星野駐アルゼンチン日本国大使を筆頭に、経済産業省や進出日系企業の関係者20人あまりが出席した。アルゼンチン側は外務・通商・宗務省のブルン副大臣のほか、経済省高官などが出席した。日本側からは、2024年以前に発生した利益、および2023年12月12日以前に通関・提供された財・サービスの輸入代金支払い(輸入債権)については通常の外貨送金が認められず、中銀発行の特別債券(BOPREAL)を国際市場で売却する、または国内発行の通常国債や株式をペソで購入して国際市場で売却する(CCLといわれる特別な換算レートでドルに換算)ことでしかドル換金(送金)できない点を指摘。2025年以降の利益、並びに2023年12月13日以降の輸入債権の扱いと同様、通常送金できるようにするべきだと改善を要望した。これに対しアルゼンチン側は、BOPREALとCCL方式ですでに対応している企業が存在するため、現在の方針が変更されることはないと説明した。

このほか、同委員会でアルゼンチン側からは、工業製品の関税率(MFN)が2023年の平均13.4%から2026年3月には同9%に低減したこと、特にスマートフォンについては2026年1月に関税が撤廃されたこと、非関税障壁となっていた182件の貿易手続きを撤廃したことなど、自由化を大胆に進めていることが説明された。また、バカ・ムエルタ油田に関する輸出インフラの整備状況と国際原油市場動向についても両者で意見交換が行われた。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) △ 1.9 △ 1.3 4.4
1人当たりGDP (米ドル) 13,908 13,539 14,355
消費者物価上昇率 (%) 211.4 117.8 31.5
失業率 (%) 5.7 6.4 7.5
貿易収支 (100万米ドル) △ 2,823 22,404 15,359
経常収支 (100万米ドル) △ 20,751 5,701 △ 7,582
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 23,073 29,640 41,094
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 283,964 277,257 320,305
為替レート (1米ドルにつき、アルゼンチン・ペソ、期中平均) 296.26 914.69 1,240.85

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):国家統計センサス局(INDEC)
1人当たりGDP、為替レート:IMF
外貨準備高(グロス):アルゼンチン中央銀行(BCRA)