ベトナムの貿易投資年報
要旨・ポイント
- 実質GDP成長率は8.0%、当初は米国関税政策の影響懸念も着実な成長。
- 製造業が堅調、輸出入はともに前年から増加し、2年ぶりに最高額を更新。
- 対内直接投資は件数が4年連続増加も認可額は3年ぶりの前年割れ。
- 日系企業は政策動向や改革を注視して事業戦略を検討する必要あり。
公開日:2026年8月12日
マクロ経済
実質GDP成長率は8.0%に加速、投資主導色も強まる
ベトナム統計局によると、2025年の実質GDP成長率は8.0%だった。7.0%だった2024年から加速し、2011~2025年の15年間で、2022年に次いで高い成長率を記録した。1人当たりGDPは4,745ドル(前年より209ドル増、IMF推計)となった。産業別の成長率は、農林水産業が3.8%、鉱工業・建設業が8.9%、サービス業が8.6%だった。
四半期別にみると、第1四半期(1~3月)の7.0%から、第2四半期(4~6月)8.2%、第3四半期(7~9月)8.3%、第4四半期(10~12月)8.5%へと上昇し、成長率の伸びは3四半期連続で加速した。米国の調査会社S&Pグローバルによる製造業購買担当者景気指数(PMI)は、1~6月にかけて2月を除き景況感の分岐点となる50を下回るなど、米国の関税政策の影響などによる生産や輸出の減速が懸念された。しかし、米国との貿易協定の合意が発表された7月以降は、PMIは50を上回る水準を維持した。内需も堅調で、小売り・サービス売上高は前年比9.2%増となり、四輪車の新車販売台数は初めて60万台を突破した。
消費者物価指数(CPI)上昇率は3.3%にとどまり、国会が定めた4.5%以内の目標に収まった。年間を通して、おおむね3%台前半で推移し、過度なインフレは抑制された。財別にみると、政府による医療サービス価格の改定などを受けて、薬・医療は13.1%上昇し、最も高い上昇率だった。一方、交通(ガソリンを含む)は燃油価格の下落を受け、上昇率はマイナス2.1%となった。住居(費)、建築材は6.1%上昇と寄与度が大きく、全体の指数を1.4ポイント押し上げた。賃貸住居価格の上昇、資材価格の高騰、電力価格の引き上げなどが影響した。食品、飲食業も3.3%上昇し、全体を1.2ポイント押し上げた。
ベトナムは、2026~2030年の実質GDP成長率について年平均10%以上を目指す方針を掲げており、2025年はその実現に向けた助走期間と位置付けていた。政府は経済成長を下支えするため、公共投資の執行やインフラ開発を加速させた。また、中央銀行と金融監督機関の役割を担うベトナム国家銀行も金融機関に預金金利の引き下げを求めることで資金需要を喚起した。こうした政策運営のもと、ベトナム経済はマクロ指標の安定を維持しながら成長基調を強めた。一時は米国の関税政策が逆風となることが懸念されたものの、貿易額や対内直接投資額も前年より増加した。
一方で、外需やエネルギー輸入への依存度が高いという構造的脆弱性は依然として残る中、地場の資金や企業活動が金融・不動産分野に集中するなど成長の偏りも指摘される。持続的な経済成長を続けるためには、生産性の向上や産業の高度化など、成長の質を追求した産業政策を具体化することが求められる。
| 項目 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年間 | Q1 | Q2 | Q3 | Q4 | |||
| 実質GDP成長率 | 5.0 | 7.0 | 8.0 | 7.0 | 8.2 | 8.3 | 8.5 |
| 農林水産業 | 3.9 | 3.6 | 3.8 | 3.8 | 4.0 | 3.7 | 3.7 |
| 鉱工業・建設業 | 3.6 | 8.0 | 8.9 | 7.6 | 8.8 | 9.4 | 9.7 |
| サービス業 | 6.8 | 7.4 | 8.6 | 7.9 | 9.0 | 8.7 | 8.8 |
〔注1〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔注2〕2025年の通年およびQ4は推計値。
〔出所〕ベトナム統計局
貿易
輸出入ともに最高額を更新、米国相互関税の影響は限定的
ベトナム税関局によると、2025年の輸出は4,749億9,781万ドル(前年比17.0%増)、輸入は4,549億2,641万ドル(19.4%増)となり、いずれも過去最高額を更新した。貿易収支は200億7,140万ドルの黒字だった。
輸出を主要品目別にみると、1位はコンピュータ・電子製品・同部品で1,077億4,467万ドル(前年比48.4%増)、2位は機械設備・同部品で590億3,831万ドル(13.2%増)、3位は電話機・同部品で567億980万ドル(5.2%増)となった。上位10品目のいずれも前年を上回った。中でもコンピュータ・電子製品・同部品は米国向けが39.1%を占め、輸出額は単独品目として初めて1,000億ドルを超えた。
輸入を主要品目別にみると、1位がコンピュータ・電子製品・同部品で1,506億9,499万ドル(前年比40.7%増)、2位が機械設備・同部品で610億1,091万ドル(24.8%増)、3位が織布・生地で151億9,829万ドル(1.9%増)となった。輸入品目の多くは生産材が占めており、輸出の拡大に伴って生産活動が活発化したことがうかがえる。
| 品目 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| コンピュータ・電子製品・同部品 | 72,595 | 107,745 | 22.7 | 48.4 |
| 機械設備・同部品 | 52,172 | 59,038 | 12.4 | 13.2 |
| 電話機・同部品 | 53,891 | 56,710 | 11.9 | 5.2 |
| 縫製品 | 37,040 | 39,635 | 8.3 | 7.0 |
| 履物 | 22,875 | 24,202 | 5.1 | 5.8 |
| 輸送機器・同部品 | 15,243 | 17,530 | 3.7 | 15.0 |
| 木材・木製品 | 16,280 | 17,203 | 3.6 | 5.7 |
| 水産物 | 10,040 | 11,285 | 2.4 | 12.4 |
| 玩具・スポーツ用品 | 3,757 | 9,324 | 2.0 | 148.2 |
| コーヒー | 5,620 | 8,925 | 1.9 | 58.8 |
| 合計(その他含む) | 405,935 | 474,998 | 100.0 | 17.0 |
| 国内企業 | 116,638 | 106,117 | 22.3 | △9.0 |
| 外資企業 | 289,297 | 368,880 | 77.7 | 27.5 |
〔出所〕ベトナム税関局
| 品目 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| コンピュータ・電子製品・同部品 | 107,119 | 150,695 | 33.1 | 40.7 |
| 機械設備・同部品 | 48,897 | 61,011 | 13.4 | 24.8 |
| 織布・生地 | 14,913 | 15,198 | 3.3 | 1.9 |
| プラスチック原料 | 11,786 | 12,529 | 2.8 | 6.3 |
| 金属類 | 9,564 | 11,373 | 2.5 | 18.9 |
| 電話機・同部品 | 10,404 | 11,258 | 2.5 | 8.2 |
| 鉄鋼 | 12,584 | 11,215 | 2.5 | △10.9 |
| プラスチック製品 | 8,856 | 10,868 | 2.4 | 22.7 |
| 鉄鋼製品 | 6,497 | 8,306 | 1.8 | 27.8 |
| 化学製品 | 7,740 | 8,113 | 1.8 | 4.8 |
| 合計(その他含む) | 380,991 | 454,926 | 100.0 | 19.4 |
| 国内企業 | 140,236 | 132,504 | 29.1 | △5.5 |
| 外資企業 | 240,754 | 322,422 | 70.9 | 33.9 |
〔出所〕ベトナム税関局
輸出を主要国・地域別にみると、1位が米国で1,531億3,455万ドル(前年比28.1%増)、2位が中国で704億2,678万ドル(14.8%増)、3位が韓国で289億4,230万ドル(12.7%増)だった。上位10カ国・地域はいずれも前年を上回った。米国向けは、米国による相互関税の発動を前にした駆け込み輸出により、テト休暇(旧正月)で工場などの稼働が低下した2月を除き、7月まで増加基調が続いた。8月以降は前月比で減少に転じ、11月まで減少が続いたことから、相互関税の影響が懸念された。しかし、通年では米国向けの輸出総額は前年比28.1%の増加を記録した。
輸入は、1位が中国で1,859億9,515万ドル(前年比29.0%増)、2位が韓国で605億4,589万ドル(8.1%増)、3位が台湾で330億2,559万ドル(45.2%増)だった。中国からの輸入品は順にコンピュータ・電子製品・同部品、機械設備・同部品、織布・生地が上位を占めた。機械設備・同部品は工場の設備投資関連需要、コンピュータ・電子製品・同部品や織布・生地は生産材として利用される。また、金属類やプラスチック製品なども増加しており、中国からベトナムへの生産移管の進展を背景に、通年で部材調達が活発であったことがうかがえる。
| 国・地域 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 米国 | 119,523 | 153,135 | 32.2 | 28.1 |
| 中国 | 61,371 | 70,427 | 14.8 | 14.8 |
| 韓国 | 25,677 | 28,942 | 6.1 | 12.7 |
| 日本 | 24,608 | 26,766 | 5.6 | 8.8 |
| 香港 | 12,424 | 17,552 | 3.7 | 41.3 |
| オランダ | 12,991 | 13,477 | 2.8 | 3.7 |
| インド | 9,062 | 10,350 | 2.2 | 14.2 |
| ドイツ | 7,951 | 9,533 | 2.0 | 19.9 |
| タイ | 7,808 | 8,797 | 1.9 | 12.7 |
| 英国 | 7,544 | 8,391 | 1.8 | 11.2 |
| 合計(その他含む) | 405,935 | 474,998 | 100.0 | 17.0 |
〔出所〕ベトナム税関局
| 国・地域 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 中国 | 144,203 | 185,995 | 40.9 | 29.0 |
| 韓国 | 55,988 | 60,546 | 13.3 | 8.1 |
| 台湾 | 22,746 | 33,026 | 7.3 | 45.2 |
| 日本 | 21,622 | 24,677 | 5.4 | 14.1 |
| 米国 | 15,102 | 19,283 | 4.2 | 27.7 |
| タイ | 12,452 | 13,281 | 2.9 | 6.7 |
| インドネシア | 10,517 | 11,519 | 2.5 | 9.5 |
| マレーシア | 9,070 | 11,004 | 2.4 | 21.3 |
| オーストラリア | 7,595 | 7,190 | 1.6 | △5.3 |
| クウェート | 7,252 | 6,340 | 1.4 | △12.6 |
| 合計(その他含む) | 380,991 | 454,926 | 100.0 | 19.4 |
〔出所〕ベトナム税関局
通商政策
輸出成長へFTA深化、新市場開拓を加速
ベトナム政府は2025年の輸出が堅調に拡大したことを踏まえ、2026年の輸出の伸び率を15~16%、輸出額を5,460~5,500億ドルとする目標を掲げた。全世界で貿易の不確実性が続く中、この目標は野心的であり、輸出が経済成長の原動力であることへの強い期待を反映している。ベトナム商工省は2026年以降の輸出を促進するため、(1)国内生産強化と高付加価値化、加工から製造・直接輸出への転換、(2)環境・技術基準や貿易障壁への対応力強化、(3)国内企業と外資・グローバル企業の連携強化、(4)貿易政策の動向把握とデジタルツール活用による市場・予測能力の向上、(5)FTAの活用と輸出市場の多角化によるリスク分散、(6)行政手続き簡素化による企業負担の軽減、の6点を優先施策として示している。
また、2025年5月以降、米国が懸念する中国製品の迂回輸出や原産地偽装への対策を目的として、原産地証明書の発給窓口を商工省に一本化するとともに、発給手続きを含む全プロセスの電子化を進めている。
ベトナムは特定の国・地域に依存せず、各国・地域と柔軟に付き合う全方位外交を掲げている。通商政策では多くの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結し、輸出入の増加や投資機会の創出を通じて経済成長を促進してきた。2025年の貿易額に占めるEPA/FTA締結国・地域の割合は69.1%だった。特に、ASEAN加盟国のうちEUとFTAを締結するのは、ベトナムとシンガポールのみである。この点について在ベトナム日系繊維関連企業は、主要輸出先である日本や米国向けが低迷する中、輸出代替先としてEUを挙げており、EUとのFTAを活用できることはベトナムのメリットだと指摘している。
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、2025年でベトナムでの発効から7年目を迎えた。2025年のCPTPP締約国向け輸出額は約705億5,000万ドルとなり、ベトナムの輸出総額の14.9%を占めた。
アラブ首長国連邦(UAE)との包括的経済連携協定が発効
2026年2月、アラブ首長国連邦(UAE)との包括的経済連携協定(CEPA)が発効し、ベトナムにとってアラブ諸国との初めての自由貿易協定となった。同協定では、ベトナムの輸出品の99%、UAEの輸出品の98.5%を対象に関税が段階的に撤廃される。UAEからの主要輸入品目である原油、石油、瀝青質鉱物から得られる油については発効時点で関税が撤廃されたほか、ガソリン・石油製品についても2031年1月1日から無税となる。一方、ベトナムの主要輸出品である農産物(カシューナッツ、胡椒、はちみつ)や魚介類(エビ、魚製品)、消費財(繊維、履物、電子機器)、木製品(家具、建築資材)などの関税は即時撤廃された。 UAEは中東やアフリカ市場へのゲートウェイとしての役割も果たすことから、ベトナム製品の新規市場開拓が期待される。
2021年に交渉が開始されたASEANカナダ自由貿易協定(ACAFTA)は2026年までの締結を目指す。また、2012年に始まった欧州自由貿易連合(EFTA:アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)とのFTA交渉は、2026年4月に第20回交渉が実施され、合意まで最終段階とされている。
| FTA | 発効日 | ベトナムの貿易に占める構成比(2025年) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 往復 | 輸出 | 輸入 | |||
| 発効済み | (1)ASEAN物品貿易協定(ATIGA) | 1996年1月1日 | 9.3 | 7.1 | 11.6 |
| (2)ASEAN・中国自由貿易地域(ACFTA) | 2005年7月1日 | 36.8 | 21.9 | 52.5 | |
| (3)ASEAN・韓国自由貿易地域(AKFTA) | 2007年6月1日 | 9.6 | 6.1 | 13.3 | |
| (4)日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP) | 2008年12月1日 | 5.5 | 5.6 | 5.4 | |
| (5)日本・ベトナム経済連携協定(JVEPA) | 2009年10月1日 | 5.5 | 5.6 | 5.4 | |
| (6)ASEANオーストラリア・ニュージーランド自由貿易地域(AANZFTA) | 2010年1月1日 | 10.9 | 8.7 | 13.3 | |
| (7)ASEAN・インド包括的経済協力枠組み協定 | 2010年6月1日 | 11.0 | 9.2 | 12.9 | |
| (8)チリ・ベトナム自由貿易協定(VCFTA) | 2014年1月2日 | 0.2 | 0.3 | 0.1 | |
| (9)韓国・ベトナム自由貿易協定(VKFTA) | 2015年12月20日 | 9.6 | 6.1 | 13.3 | |
| (10)ベトナム・EAEU自由貿易協定(VN‐EAEUFTA) | 2016年10月5日 | 0.6 | 0.7 | 0.6 | |
| (11)環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) | 2019年1月14日 | 13.4 | 14.9 | 11.8 | |
| (12)ASEAN・香港自由貿易協定(AHKFTA) | 2019年6月11日 | 15.4 | 14.4 | 16.4 | |
| (13)EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA) | 2020年8月1日 | 7.9 | 11.8 | 3.9 | |
| (14)英国・ベトナム自由貿易協定(UKVFTA) | 2021年5月1日 | 1.0 | 1.8 | 0.2 | |
| (15)地域的な包括的経済連携協定(RCEP) | 2022年1月1日 | 53.6 | 35.1 | 72.9 | |
| (16)ベトナム・イスラエル自由貿易協定(VIFTA) | 2024年11月17日 | 0.4 | 0.2 | 0.6 | |
| (17)ベトナム・アラブ首長国連邦包括的経済連携協定(CEPA) | 2026年2月3日 | ― | ― | ― | |
| 合計 | — | 69.1 | 58.8 | 79.7 | |
〔注1〕FTAを適用した貿易額は公表されていないため、「ベトナムの貿易に占める構成比」はFTA締結国との貿易額がベトナム全体の貿易額に占める割合を表示。
〔注2〕(4)(5)および(3)(9)は、それぞれ同じ締結国であるため、構成比は同じものとなる。
〔注3〕(11)は2025年までに発効済みの11カ国との貿易額合算を元に算出。
〔注4〕(15)は2025年までに発効済みの13カ国との貿易額合算を元に算出。
〔注5〕合計は全てのFTA締結国との貿易額がベトナム全体の貿易額に占める割合を示す。そのため、FTAごとの割合の合計とは一致しない。
〔注6〕(17)は発効が2026年2月であるため、算出していない。
〔出所〕ベトナム税関局
対内直接投資
2025年の対内直接投資金額は3年ぶりの前年割れ
2025年の対内直接投資(認可ベース、出資・株式取得を除く)は、新規・拡張の合計で5,458件(前年比11.1%増)、認可額は313億9,079万ドル(6.8%減)だった。件数は4年連続で前年を上回ったものの、認可額は3年ぶりに前年を下回った。対内直接投資の実行額は9.0%増の276億2,000万ドルで、過去最高額を更新した。
業種別(認可ベース)でみると、製造業が2,224件(前年比3.4%増)、185億8,519万ドル(24.7%減)で件数・金額ともに1位だった。認可額の2位は不動産で62億6,062万ドル(23.0%増)、3位は小売り・卸売りなどで20億3,011万ドル(92.8%増)だった。
認可額が大きかった個別の案件は、マレーシアの建設・不動産大手ガムダ(Gamuda)による、首都ハノイ市イエンソー・パークの都市開発プロジェクト(拡張投資、約11億2,000万ドル)や、H&Mグループなどが出資するスウェーデン発のリサイクルスタートアップのサイア(Syre)による中部ザーライ省(旧ビンディン省)での再生ポリエステル工場(新規投資、10億ドル)などがあった。
国・地域別では、シンガポールが69億8,108万ドル(前年比22.0%減)で、6年連続の1位となった。2位は中国で51億9,174万ドル(30.7%増)、3位は韓国で41億9,581万ドル(38.2%減)となった。日本は4位で30億7,850万ドル(19.5%増)だった。また、件数は中国が1,545件(30.4%増)で1位だった。2位のシンガポールが732件(13.7%増)、3位の韓国が714件(6.2%減)と続いた。日本は429件(3.4%減)で5位だった。
省・市別に認可額をみると、ハノイ市および隣接するバクニン省、フンイエン省、ニンビン省、フート省、タイグエン省の計6省・市への投資が認可額全体の45.2%(うちハノイ市の比率は12.3%)を占めた。南部では、ホーチミン市と隣接するドンナイ省、タイニン省の計3省・市への投資が28.6%(うちホーチミン市の比率は11.4%)を占めた。これらを合わせると、ベトナム全34省・市のうち9省・市で73.8%に達しており、ハノイ市およびホーチミン市の近郊に大型投資が広がるとともに、投資先が都市圏に偏る状況も顕在化した。
出資・株式取得は、件数が3,587件(前年比2.4%増)、認可額が70億2,726万ドル(54.8%増)だった。
| 業種 | 2024年 | 2025年 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 認可額 | 構成比 | 件数 | 認可額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 製造業 | 2,151 | 24,682 | 73.3 | 2,224 | 18,585 | 59.2 | △ 24.7 |
| 不動産 | 135 | 5,091 | 15.1 | 157 | 6,261 | 19.9 | 23.0 |
| 小売り・卸売りなど | 1,362 | 1,053 | 3.1 | 1,655 | 2,030 | 6.5 | 92.8 |
| 給水・廃棄物処理 | 5 | △ 9 | — | 11 | 1,212 | 3.9 | — |
| インフラ | 9 | 1,282 | 3.8 | 12 | 779 | 2.5 | △ 39.3 |
| コンサルなど | 458 | 501 | 1.5 | 553 | 684 | 2.2 | 36.7 |
| ホテル・飲食サービス | 58 | 49 | 0.1 | 119 | 637 | 2.0 | 1,193.1 |
| 倉庫・運輸 | 148 | 434 | 1.3 | 161 | 292 | 0.9 | △ 32.8 |
| 建設 | 91 | 100 | 0.3 | 88 | 291 | 0.9 | 190.2 |
| 教育 | 45 | 34 | 0.1 | 57 | 170 | 0.5 | 401.2 |
| 合計(その他含む) | 4,914 | 33,688 | 100.0 | 5,458 | 31,391 | 100.0 | △ 6.8 |
〔注1〕コンサルなど:税務、法務、ビジネスコンサル、建築・設計業務、R&D、広告・市場調査など。
〔注2〕構成比、伸び率はそれぞれ認可額についてのもの。
〔注3〕給水・廃棄物処理の2024年の認可額は、認可済み案件の調整によりマイナスだった。
〔出所〕外国投資庁
| 国・地域 | 2024年 | 2025年 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 認可額 | 構成比 | 件数 | 認可額 | 構成比 | 伸び率 | |
| シンガポール | 644 | 8,951 | 26.6 | 732 | 6,981 | 22.2 | △ 22.0 |
| 中国 | 1,185 | 3,974 | 11.8 | 1,545 | 5,192 | 16.5 | 30.7 |
| 韓国 | 761 | 6,789 | 20.2 | 714 | 4,196 | 13.4 | △ 38.2 |
| 日本 | 444 | 2,577 | 7.6 | 429 | 3,078 | 9.8 | 19.5 |
| 香港 | 554 | 4,235 | 12.6 | 648 | 2,952 | 9.4 | △ 30.3 |
| マレーシア | 60 | 166 | 0.5 | 55 | 1,835 | 5.8 | 1,005.4 |
| 台湾 | 303 | 1,836 | 5.4 | 267 | 1,391 | 4.4 | △ 24.2 |
| スウェーデン | 3 | 1 | 0.0 | 8 | 1,021 | 3.3 | 約1,036倍 |
| タイ | 45 | 195 | 0.6 | 67 | 800 | 2.5 | 310.2 |
| ケイマン諸島 | 8 | 1,037 | 3.1 | 13 | 620 | 2.0 | △ 40.2 |
| 合計(その他含む) | 4,914 | 33,688 | 100.0 | 5,458 | 31,391 | 100.0 | △ 6.8 |
〔注〕構成比、伸び率はそれぞれ認可額についてのもの。
〔出所〕外国投資庁
対日関係
製造業の拡大を背景に対日輸出入額が前年より増加
2025年の対日輸出(通関ベース)は267億6,597万ドル(前年比8.8%増)、輸入は246億7,686万ドル(14.1%増)となり、貿易収支は20億8,911万ドルの黒字だった。輸出は、前年に引き続きコンピュータ・電子製品・同部品(17.7%増)や電話機・同部品(19.2%増)を中心に堅調に拡大した。木材・木製品(23.3%増)や水産物(10.3%増)も高い伸びを示した。輸入は、コンピュータ・電子製品・同部品(24.1%増)および機械設備・同部品(21.7%増)を中心に増加しており、輸出向け製造の拡大に伴う中間財・資本財の輸入拡大が背景にあるとみられる。
| 品目 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| 縫製品 | 4,329 | 4,595 | 17.2 | 6.1 |
| 輸送機器・同部品 | 3,027 | 3,287 | 12.3 | 8.6 |
| 機械設備・同部品 | 2,766 | 2,679 | 10.0 | △3.1 |
| 木材・木製品 | 1,746 | 2,153 | 8.0 | 23.3 |
| コンピュータ・電子製品・同部品 | 1,460 | 1,718 | 6.4 | 17.7 |
| 水産物 | 1,532 | 1,689 | 6.3 | 10.3 |
| 電話機・同部品 | 1,378 | 1,643 | 6.1 | 19.2 |
| 履物 | 1,088 | 1,196 | 4.5 | 9.9 |
| プラスチック製品 | 731 | 750 | 2.8 | 2.6 |
| 鉄鋼製品 | 613 | 612 | 2.3 | △0.1 |
| 合計(その他含む) | 24,608 | 26,766 | 100.0 | 8.8 |
〔出所〕 ベトナム関税局
| 品目 | 2024年 | 2025年 | ||
|---|---|---|---|---|
| 金額 | 金額 | 構成比 | 伸び率 | |
| コンピュータ・電子製品・同部品 | 6,728 | 8,347 | 33.8 | 24.1 |
| 機械設備・同部品 | 4,016 | 4,886 | 19.8 | 21.7 |
| 鉄鋼 | 1,506 | 1,430 | 5.8 | △5.0 |
| 鉄スクラップ | 991 | 1,114 | 4.5 | 12.4 |
| プラスチック製品 | 812 | 939 | 3.8 | 15.6 |
| 織布・生地 | 668 | 732 | 3.0 | 9.5 |
| 自動車部品 | 578 | 701 | 2.8 | 21.3 |
| 化学製品 | 633 | 659 | 2.7 | 4.0 |
| プラスチック原料 | 549 | 552 | 2.2 | 0.6 |
| 化学品 | 517 | 532 | 2.2 | 2.9 |
| 合計(その他含む) | 21,622 | 24,677 | 100.0 | 14.1 |
〔出所〕 ベトナム関税局
日本企業の業績は堅調も、採用は困難に
2025年の日本からの直接投資(認可ベース、出資・株式購入を除く)は、新規・拡張の合計で429件(前年比3.4%減)、30億7,850万ドル(19.5%増)だった。2025年に認可を受けた主な大型案件は、イオンモールによる南部のカントー市およびドンナイ省での、2件のショッピングモール開発(いずれも新規投資、約2億1,600万ドル/約2億6,100万ドル)があった。また、住友商事による中部タインホア省での第4タンロン工業団地の開発(新規投資、約1億1,580万ドル)、自動制御機器製造大手SMCによるドンナイ省での製造拠点拡張投資もあった。
ジェトロが2025年8~9月に実施した「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、同年の営業利益見込みが「黒字」と回答した在ベトナム日系企業は67.5%だった。「黒字」回答企業の割合は2009年以降で最も高く、2020年以来5年ぶりにASEAN全体平均を上回った。今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した在ベトナム日系企業は56.9%だった。2年連続でASEANの中で最も高い割合だった。
事業拡大の理由としては、製造業・非製造業ともに「現地市場ニーズの拡大」と「輸出の増加」が上位に挙がっており、内需・外需ともに増加が見込まれることが企業の積極姿勢を後押ししている。日系企業のベトナム事業の堅調さと成長基調への期待がうかがえる。
一方で、近年は中国や韓国などの外資系製造業による大型投資が北部を中心に相次いでいることを背景に、人材獲得競争が激化している。同調査では、直近2年間で「採用が困難になっている」と回答した企業が48.2%に達し、特に北部の製造業では76.0%と極めて高い水準となった。
このように、ベトナムでは市場の成長性や事業拡大機会が引き続き高い一方、外資系企業の進出増加に伴い、人材の逼迫や賃金上昇、競争環境の激化といったリスクも顕在化している。今後、ベトナムで事業展開を目指す際には、こうした事業環境変化や後述するベトナムの政策動向を踏まえた上で、事業戦略や人材確保策を検討する必要がある。
その他
成長加速に向けた改革進展、事業活動の予見性が課題
2024年8月に就任したトー・ラム書記長のもと、2025年に入ってベトナムは2045年の高所得国入り実現を見据え、経済成長をより前面に押し出した政策運営に舵を切った。共産党の意思決定機関である政治局は「民間経済開発に関する政治局決議68号(68-NQ/TW、決議68号)」や「科学技術、イノベーション、国家デジタルトランスフォーメーション(DX)の発展に関する決議第57号(57-NQ/TW)」をはじめとする4つの重要決議を公布し、これら決議をベトナムの成長に向けた「4つの柱」とする改革の方向性を示した。法制度改革によって円滑な経済活動を促す法的基盤を整備し、民間経済を活性化させ、イノベーションと国際統合を推進することで、高所得国入りに向けた経済成長と持続可能な開発につなげる狙いだ。
また、経済活動を下支えする政治・行政の効率化を目的に、中央省庁および地方省・中央直轄市の再編という、南北ベトナム統一以来最大規模となる行政改革も矢継ぎ早に実行した。こうした方針や改革により、公共投資の執行やインフラ開発の加速、金融市場における信用拡大が進んだことが、2025年の実質GDP成長率8%達成の実現に寄与したとみられる。
しかし、改革のスピードが速いがゆえに、急な制度変更も散見される。その結果、十分な準備期間がないまま施行に至り、行政や企業など関係者の体制整備が追い付かず、現場レベルで混乱が生じるケースも相次いでいる。
新たな政策の導入などにあたり、ステークホルダーとの対話による具体的な内容のすり合わせや、客観的かつ実現可能なロードマップの策定、新しい法令の公布から施行まで十分な猶予期間を確保するなど、事業活動の予見性を高める政策運営や制度運用が一層求められる。
その一例として、政府が電動化の促進や大気汚染軽減などを目的として検討を進めるハノイ市中心部における二輪車の乗り入れ規制がある。2026年7月に開始した低排出地域の試験運用を皮切りに、ガソリンバイクに対する規制が段階的に導入されることになった。2025年7月に示された当初の急進的な規制案に対しては、日本の官民関係者や二輪車の業界団体の要望、市民生活への影響などを踏まえ、内容の修正や緩和が図られた。しかし、今後の具体的な規制内容や運用の詳細は不透明な点が多く、十分な周知・準備期間が確保されているとは言い難い状況にある。加えて、地場の電気自動車(EV)メーカー・ビンファスト(VinFast)など国内企業の市場形成を後押しする側面も指摘されている。
ベトナムの政策の方針を方向づける政治指導体制は、2026年1月の共産党大会、その後の国会などの政治日程を経て、2026~2031年の5年を任期とする新体制が明確になる見通しだ。新体制の下で、どのような政策の具体化が進み、事業環境の予見性を高めるような施政面の改善が図られるか注視する必要がある。特に、企業活動との関係が深いとされる決議68号は、ベトナム民間企業の活性化や育成を念頭に置いた内容である一方、外資系企業の位置付けは明確ではない。外資系企業の関与のあり方については、議論の整理や具体化が進められる余地がありそうだ。
もっとも、改革を伴いながら経済成長の加速を目指す基本的な方向性そのものは、新体制の下でも大きく変わらない可能性が高い。労働力の逼迫も続く中、日系企業は、低廉で豊富な労働力や税制優遇などを前提とした、従来型の経営・生産体制の見直しが求められる局面に入っている。今後は、政府の経済振興策や産業育成策と一定の方向性を共有しつつ、ベトナム企業とのパートナーシップや協業の強化など、新たな事業体制の構築を模索することが競争力の強化や事業の最適化に向けて重要となりそうだ。
また、ベトナム経済は対米輸出をはじめとする外需への依存度が高い。エネルギー分野でも大半を輸入に頼っていることから、経済構造上の脆弱性を抱えている。米国の通商政策の動向や各地で続く地政学リスクにより世界経済の不透明感が高まると、現在想定している政策運営の前提条件が揺らぐ恐れもある。外交面では、これまでベトナムは米国や中国、ロシア、韓国、日本などとの友好関係のバランスを維持する全方位外交を展開することで経済成長の基盤を築いてきたが、国際情勢次第では難しい判断を求められる可能性は否定できない。
国内の経済成長と対外関係の均衡をいかに維持していくのかという難しい舵取りが、次の政治指導体制における大きな課題の1つとなりそうだ。
基礎的経済指標
| 項目 | 単位 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|
| 実質GDP成長率 | (%) | 5.0 | 7.0 | 8.0 |
| 1人当たりGDP | (米ドル) | 4,317 | 4,536 | 4,745 |
| 消費者物価上昇率 | (%) | 3.3 | 3.6 | 3.3 |
| 失業率 | (%) | 2.8 | 2.5 | 2.5 |
| 貿易収支 | (100万米ドル) | 28,363 | 24,945 | 20,071 |
| 経常収支 | (100万米ドル) | 27,590 | 30,385 | 33,135 |
| 外貨準備高(グロス) | (100万米ドル) | 92,238 | 83,082 | 85,580 |
| 対外債務残高(グロス) | (100万米ドル) | 141,845 | 132,907 | n.a. |
| 為替レート | (1米ドルにつき、ベトナム・ドン、期中平均) | 23,787 | 24,165 | 25,121 |
〔注〕
実質GDP成長率(2025年)、1人当たりGDP、消費者物価上昇率(2024年)、失業率(2025年)、経常収支:推計値
失業率:都市部
貿易収支:通関ベース
〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ベトナム統計局
貿易収支:ベトナム税関局
1人当たりGDP、経常収支、外貨準備高(グロス)為替レート:IMF
対外債務残高(グロス):世界銀行





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