パキスタンの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022/2023年の実質GDP成長率は0.3%へ低下。
  • 外貨準備が依然ひっ迫し、インフレとともに経済成長を制約。
  • 綿花生産減や欧米の景気低迷を背景に、繊維製品輸出が大幅減。
  • 対内直接投資は低迷。CPEC関連投資がピークを越え、中国が27.5%減。
  • 日本からの直接投資は、前年度の流出超過から入超へ。

公開日:2023年11月29日

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マクロ経済 
外貨がひっ迫し、経済は低成長・高インフレへ

パキスタン経済は、2022年から始まった外貨準備のひっ迫で低成長、高インフレとなり、厳しい状況が続いている。

新型コロナウイルス禍からの経済回復は速く、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)は実質GDP成長率が6.1%と前年度(5.8%)に続いて高い成長を記録した。2021/2022年度はサウジアラビアやカタールからのエネルギー輸入をはじめ、中国などからの輸入が全般的に増加し、貿易赤字が大幅に増大した。郷里送金が貿易赤字を埋めきれず、経常収支赤字は174億8,100万ドルに増大し、外貨準備高が急減した。パキスタン中央銀行(SBP)の外貨準備高は2022年4月時点で104億9,890万ドルと、輸入総額2カ月分に相当する水準まで落ち込んだ。これを受け、政府とSBPは輸入規制を導入し、エネルギーや食料など必需品以外の輸入を大幅に制限、景気は急速に悪化した。2022/2023年度の実質GDP成長率は0.3%に落ち込み、同時にインフレが高進するスタグフレーションが続いている。

経常赤字や米国の利上げなどを背景に通貨安は止まらず、2021年5月に最高値1ドル=152パキスタン・ルピー(以下、ルピー)を記録した後、ほぼ一貫して下がり続け、2023年9月には305ルピーにまで下落した。2023年11月1日時点では1ドル=280ルピー前後にやや回復している。

インフレも深刻だ。消費者物価指数(CPI)の上昇率は、2022年6月から前年同月比で20%を超え、2023年5月には38.0%を記録した。SBPは6月に政策金利を22%に引き上げ、それ以降CPIは20%台後半で推移している。

輸入規制は、国際通貨基金(IMF)の輸入正常化要求により、2023年6月23日のSBPによる輸入規制廃止をもって全廃された。政府が2023年7月にIMFの融資であるスタンドバイ取極(SBA)総額30億ドルのうち、12億ドルの支払いを受け、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの友好国からも計30億ドルの金融支援を受けた。その結果、SBPの外貨準備は7月末には81億3,800万ドルと6月末からほぼ倍増した。

不安定な政情も国内経済のリスク要因となっている。パキスタン正義運動(PTI)を率いるイムラン・カーン首相(当時)は、2022年4月に内閣不信任案可決により退陣に追い込まれた。続いて政権を執ったシャバズ・シャリフ首相(当時)は、外貨ひっ迫や高インフレで難しい経済運営を迫られた。さらに、2022年8月には国土の約3分の1が水没したといわれる未曽有の洪水被害が発生し、その対応に追われた。シャリフ首相は2023年8月9日、連邦議会下院を解散し、パキスタン・ムスリム連盟ナワズ派(PLM-N)とパキスタン人民党(PPP)を中心とした連立内閣は、経済問題と洪水被害への対応に追われながら政権を終えた。総選挙までの選挙管理内閣(暫定内閣)が8月17日、アンワールル・ハック・カーカル上院議員を暫定首相として発足した。パキスタン選挙管理委員会(ECP)は11月2日、総選挙日程を2024年2月8日と発表した。3度首相を務め、パナマ文書の公開に端を発した汚職事件で有罪判決を受けた後、健康上の理由で2019年からロンドンに滞在していたナワズ・シャリフ元首相が、総選挙に向けて10月21日にロンドンから帰国した。若者を中心とした大衆に人気のあるPTIのカーン元首相は8月、外国政府からの贈答品の不正売却事件で懲役3年の実刑判決を受けて刑務所に収監された。今後、総選挙が近づくに連れて政情や治安の不安定化が懸念されている。

貿易 
厳しい輸入規制で輸入が大幅に減少し、貿易収支が改善

2022/2023年度の貿易は、輸出が279億300万ドル(前年度比14.1%減)、輸入が519億7,900万ドル(27.3%減)で、貿易収支は240億7,600万ドルの赤字となった。SBPによる輸入規制の影響で輸入が大幅に減少し、貿易赤字は前年度の390億5,000万ドルから改善した。

輸出については、構成比約6割の「繊維製品」が前年度比9.8%減となった。財務省は、この要因として2022年の洪水により2022/2023年度の綿花生産量が前年度比41.0%減となったこと、主要市場である米国やEUの景気低迷で需要が低下したことを指摘している(2022/2023年度経済白書)。コメは、洪水被害により2022/2023年度の生産量が21.5%減となったことで、輸出額は23.9%減と落ち込んだ。主要品目の中で唯一増加した「水産物・同加工品」は、中国向けが増加したことにより10.5%増となった。

輸入については、最大品目「石油・同製品」が、原油価格低下により前年度比6.4%減となった。「機械・機器」は厳しい輸入規制の中で54.1%減となったが、その中の最大品目である「携帯電話・同機器」は67.4%減となった。携帯電話メーカーは完全現地組み立て部品(CKD)を輸入できず、しばしば生産休止に追い込まれている。「輸送機械・同部品」は65.1%減、その中の「自動車(四輪・二輪)」は64.3%減となった。自動車メーカーは2022年4月ごろから信用状(L/C)開設や通関が困難になり始め、前年度輸入実績の50%しか輸入を許可されない状態となった。SBPの輸入規制は2023年6月23日に撤廃されたものの、依然として外貨がひっ迫しているため、CKD輸入は困難な状況が続いている。

表1-1 パキスタンの主要品目別輸出(FOB)[国際収支ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
繊維製品 18,442 16,628 59.6 △ 9.8
階層レベル2の項目ニットウエア 4,520 4,242 15.2 △ 6.2
階層レベル2の項目既製服 3,699 3,494 12.5 △ 5.5
階層レベル2の項目寝具類 3,256 2,802 10.0 △ 13.9
階層レベル2の項目綿布 2,343 2,155 7.7 △ 8.0
階層レベル2の項目タオル 1,081 930 3.3 △ 14.0
階層レベル2の項目綿糸 1,201 870 3.1 △ 27.6
食品 5,424 4,740 17.0 △ 12.6
階層レベル2の項目コメ 2,771 2,109 7.6 △ 23.9
階層レベル2の項目水産物・同加工品 438 484 1.7 10.5
階層レベル2の項目果実 399 232 0.8 △ 41.9
化学品・医薬品 1,485 1,424 5.1 △ 4.1
革製品 650 628 2.3 △ 3.4
スポーツ用品 507 461 1.7 △ 9.1
手術用具・医療機器 475 455 1.6 △ 4.2
合計(その他含む) 32,493 27,903 100.0 △ 14.1

〔出所〕パキスタン中央銀行

表1-2 パキスタンの主要品目別輸入(FOB)[国際収支ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
石油・同製品 18,743 17,539 33.7 △ 6.4
階層レベル2の項目石油製品 10,296 8,975 17.3 △ 12.8
階層レベル2の項目原油 4,602 4,588 8.8 △ 0.3
階層レベル2の項目LPGおよびLNG 3,845 3,975 7.6 3.4
化学製品(農業用含む) 10,675 8,253 15.9 △ 22.7
機械・機器 9,644 4,431 8.5 △ 54.1
階層レベル2の項目携帯電話・同機器 2,252 734 1.4 △ 67.4
食品 7,932 7,966 15.3 0.4
階層レベル2の項目パーム油 3,151 3,363 6.5 6.7
金属・同製品 5,897 3,450 6.6 △ 41.5
階層レベル2の項目鉄・鋼鉄 2,854 1,686 3.2 △ 40.9
繊維・同製品 5,705 4,565 8.8 △ 20.0
階層レベル2の項目原綿 2,283 2,415 4.6 5.8
輸送機器・同部品 3,629 1,266 2.4 △ 65.1
階層レベル2の項目自動車(四輪・二輪) 3,010 1,074 2.1 △ 64.3
合計(その他含む) 71,543 51,979 100.0 △ 27.3

〔出所〕パキスタン中央銀行

表2-1 パキスタンの主要国・地域別輸出(FOB)[国際収支ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
米国 6,808 5,929 21.2 △ 12.9
中国 2,783 2,029 7.3 △ 27.1
英国 2,201 1,966 7.0 △ 10.7
ドイツ 1,751 1,600 5.7 △ 8.6
オランダ 1,500 1,447 5.2 △ 3.5
スペイン 1,151 1,374 4.9 19.4
アラブ首長国連邦(ドバイのみ) 1,598 1,329 4.8 △ 16.8
イタリア 1,087 1,151 4.1 5.9
バングラデシュ 873 769 2.8 △ 11.9
日本 200 205 0.7 2.5
合計(その他含む) 32,493 27,903 100.0 △ 14.1

〔出所〕パキスタン中央銀行

表2-2 パキスタンの主要国・地域別輸入(FOB)[国際収支ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
中国 17,301 9,662 18.6 △ 44.2
アラブ首長国連邦(ドバイのみ) 6,625 5,382 10.4 △ 18.8
カタール 2,687 3,788 7.3 41.0
サウジアラビア 4,231 3,324 6.4 △ 21.4
シンガポール 3,412 2,763 5.3 △ 19.0
インドネシア 2,676 2,644 5.1 △ 1.2
クウェート 2,304 2,546 4.9 10.5
米国 3,055 2,215 4.3 △ 27.5
アラブ首長国連邦(アブダビのみ) 896 1,543 3.0 72.2
日本 1,986 889 1.7 △ 55.2
合計(その他含む) 71,543 51,979 100.0 △ 27.3

〔出所〕パキスタン中央銀行

対内直接投資 
経済リスクを反映して、対内直接投資は低迷

2022/2023年度の国・地域別の対内直接投資(FDI)は、外貨ひっ迫による輸入や海外送金の規制、急速に進むルピー安などのビジネス上のリスクを反映し、14億5,580万ドルと前年度比24.8%減となった。最大投資国の中国は、中国パキスタン経済回廊(CPEC)のインフラ建設プロジェクトがピークを越えたことから27.5%減となった。2021/2022年度に流出超過によりネットでマイナス1,080万ドルになった日本(流入1,710万ドル、流出2,800万ドル)は、1億8,300万ドル(流入1億8,440万ドル、流出150万ドル)となり2位となった(注)。UAEは47.9%増で3位だった。

表3-1 パキスタンの国・地域別対内直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
中国 596 432 29.7 △ 27.5
日本 △ 11 183 12.6
アラブ首長国連邦 122 180 12.4 47.9
スイス 143 134 9.2 △ 6.5
香港 136 101 6.9 △ 25.6
米国 314 89 6.1 △ 71.5
オランダ 7 72 4.9 989.4
英国 61 65 4.5 7.3
フランス 85 64 4.4 △ 25.1
シンガポール 112 41 2.8 △ 63.8
合計(その他含む) 1,936 1,456 100.0 △ 24.8

〔出所〕パキスタン中央銀行

中国が進める「一帯一路」の一部として2015年に始まったCPECでは、電力、交通インフラ、グワダル港関連などにおいて、それぞれ21件、24件、14件の計59件のプロジェクトがある。そのうち、約1,330億ドル相当の24プロジェクトが完成、706億ドル相当の13プロジェクトが建設中、927億ドル相当の22プロジェクトが計画・検討中となっている(政府CPECウエブサイト、2023年11月現在。政府公共事業でCPEC事業に認定されたものを含む)。特に電力分野では14プロジェクトが完了、2プロジェクトが建設中となっており、発電所建設はピークを越えている。カーカル暫定首相は、2023年10月17~18日に北京で開催された第3回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに出席し、中国の李強首相との会談で両国の「鉄の友情」を確認し、政治経済のみならず、教育、科学技術、文化、草の根交流においても関係を強化することに合意した。表向きの蜜月関係を演出する一方、報道によると、中国人労働者へのテロ、工事の遅れ、独立系発電事業者(IPP)である中国企業へのパキスタン政府の電力買い取り代金の支払い遅延などに中国側はたびたび不満をあらわにしている。また、2022年10月に開催された第11回CPEC共同協力委員会(JCC)の議事録への署名が翌年7月になるなど、両国の関係には葛藤も垣間見られる。

2022/2023年度の業種別の対内直接投資においては、「化学品」を除き、多くの業種で減少し、全体で前年度比24.8%減となった。最大業種の「電力」は、CPECプロジェクトがピークを越えたことから18.2%減となった。日系企業が集中する「輸送機器」分野は、2021/2022年度のネット540万ドルの流出から、2022/2023年度は1億2,330万ドル(流入1億2510万ドル、流出180万ドル)となった。ネットの内訳は、二輪車が5,340万ドル、自動車が5,830万ドル、バス・トラックが1,160万ドルだった。

表3-2 パキスタンの業種別対内直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021/22年度 2022/23年度
金額 金額 構成比 伸び率
電力 761 623 42.8 △ 18.2
階層レベル2の項目石炭 441 286 19.6 △ 35.2
石油・ガス探査 195 135 9.3 △ 30.6
金融 416 275 18.9 △ 33.9
輸送機器 △ 5 123 8.5
化学品 25 50 3.4 96.4
情報通信 124 59 4.1 △ 52.1
階層レベル2の項目IT(注) 146 39 2.7 △ 73.2
貿易 80 45 3.1 △ 43.3
飲料 △ 18 69 4.7
合計(その他含む) 1,936 1,456 100.0 △ 24.8

〔注〕ソフトウエア・ハードウエア開発およびITサービス
〔出所〕 パキスタン中央銀行

通貨価値の下落が激しいパキスタンへの直接投資は為替リスクが大きく、外国企業は新規投資にちゅうちょしている模様だ。また、SBPはモノの輸入決済(海外送金)は厳しいながらも認めるものの、在パキスタン外資系企業の本社への利益や配当、技術援助契約に係るロイヤルティーの海外送金などはほぼ認めない姿勢を取っているため、日系を含む多くの外資系企業は海外送金が容易にできないという事態に陥っている。

日本貿易保険(NEXI)は2023年9月12日、ロイヤルティー送金の遅れによる保険事故により、パキスタンの保険引き受け方針を変更した。貿易一般保険(ユーザンスが2年未満ならびに2年以上)について、知的財産権などのライセンス契約については、引き受けを停止している。

投資環境・外資政策 
軍が参画するSIFC発足、湾岸諸国からの大型投資を狙う

パキスタン政府は2023年6月、首相をトップに陸軍参謀長も参画する大型投資の誘致組織である特別投資円滑化評議会(SIFC)を設立し、翌7月に防衛、農業、鉱物、IT、エネルギーの5分野を重点分野とする「パキスタン投資政策(PIP 2023)」を決定した。「質の高い、輸出志向で、輸入代替となる、生産性向上に資する」FDIを、伝統的投資国である欧米や日本に加えて湾岸協力会議(GCC)諸国から誘致することを目指している。

非産油途上国であるパキスタンの最大の経済問題は、外貨が常に不足していて、それが経済活動と経済成長の制約になっていることである。人口増加が著しいパキスタンは経済成長に伴い、エネルギー、原材料、化学品、食品、機械、携帯電話、自動車などあらゆる輸入が増えるが、輸出は繊維製品と農産物が主であり、輸入に必要な外貨を輸出で賄えないのは自明である。軍の後ろ盾を持つSIFCは、GCC諸国からの大型投資の誘致において投資庁(BOI)以上の力を持つとみられる。この組織が輸出拡大や輸入代替に資する大型投資誘致を実現すれば、パキスタンの産業構造が変わる可能性がある。今後のSIFCの動向が注目される。

対日関係 
日本製造業の投資は停滞するも、サービス業の進出が進む

2022暦年の日本とパキスタンの貿易を日本側統計でみると、日本のパキスタンへの輸出は2,077億4,053万円で前年比17.9%減(主要品目は自動車、鉄鋼、繊維機械、電気機器など)、また日本のパキスタンからの輸入は406億3,450万円で38.0%増(主要品目は織物用糸および繊維製品、衣類および同付属品、揮発油、金属鉱およびくず、魚介類および同調製品など)で、日本側の1,671億60万円の貿易黒字であった。

対パキスタン直接投資については、パキスタンの厳しい経済環境を反映して、2022/2023年度は製造業の新規企業進出はなかった。在パキスタン日系企業の中でプレゼンスの大きい自動車3社(スズキ、トヨタ自動車、本田技研工業)はCKDの輸入困難で部品在庫水準を維持できず、たびたび生産休止に追い込まれたほか、ルピー安による輸入コスト増に悩まされた。そうした中、スズキが約7割の株式を所有するパキスタン生産販売現地法人のパックスズキモーター(PSMC)は2023年10月19日、残りの全株式をスズキが買い戻し、パキスタン証券取引所(PSX)上場を廃止することを発表した。PSMCは上場廃止の理由として、2019年、2020年、2022年が赤字となり、2023年も第3四半期(7~9月)まで赤字となっていることなどを挙げた。

さらに、「2021-2026年自動車産業開発および輸出政策(AIDEP 2021-26)」で自動車メーカーに課された輸出義務(2022/2023年度は輸入額の2%)を各メーカーが達成できなかった。そのことから、製造ライセンスが有効期限の2023年9月末までに更新されず、日系3社への輸入割当(IQ)もなされなかったことにより、各社は10月以降、CKDを輸入できないという事態に直面した。11月3日にライセンスは更新され、12月までのIQは出たものの、予断を許さない状況となっている。

他方、サービス業においては、進出が増える傾向にある。公文教育研究会は2023年2月に法人登記をし、パキスタン公文を設立した。パンジャブ州都ラホールで第1号教室を開設し、2025年末までにラホール、カラチ、首都イスラマバードで計15教室の開設を目指す。日本と海外60カ国以上で使われる公文教材と指導法でパキスタンに教育サービスを展開する。

近年では、ITやIT人材関連の進出も続いている。パキスタンに永住した日本人IT技術者が2020年10月にイスラマバードに設立したジャパンステーションは、日本向けにソフトウエアのオフショア開発サービスを展開し、創業後順調に業績を伸ばしている。IT人材に着目して進出した、グローバル人材紹介・派遣・IT開発を手掛けるPlus W(プラスダブリュ、本社:東京都渋谷区)は2022年5月、パキスタン科学技術大学(NUST)と連携し大学内に日本パキスタン人材交流センターを開設した。2023年には先端IT教育や日本語習熟や文化理解を通じて即戦力となるIT人材を育成するために、イスラマバード、カラチ、ラホールの複数の有力理系大学やNPOなどと覚書(MOU)を締結した。2022年6月にカラチに現地法人を設立した海外ICT技術者採用やオフショア開発支援のプロファウンドヴィジョン(本社:東京都千代田区)は2023年1月、日本向けのICT人材を確保するため、コングロマリットであるファウジ・ファウンデーションなどと提携している。

(注)四捨五入の関係で流入と流出の差はネットの流出超過額と一致しない。

基礎的経済指標

人口
2億4,150万人 (2023年8月、確定値)
面積
79万6,095平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
1,658米ドル (2022/23年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020/21年度 2021/22年度 2022/23年度
実質GDP成長率 (%) 5.8 6.1 0.3
消費者物価上昇率 (%) 8.9 12.2 29.2
失業率 (%) 6.3 n.a. n.a.
貿易収支 (100万米ドル) △ 28,634 △ 39,050 △ 24,076
経常収支 (100万米ドル) △ 2,820 △ 17,481 △ 2,387
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 14,592 19,028 6,159
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 122,292 130,320 124,296
為替レート ( 1 米ドルにつき、パキスタン・ルピー、期中平均) 161.8 162.9 204.9

注:
年度は7月~翌年6月。
1人当たりGDP、実質GDP成長率:2022/23年度は暫定値。
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
外貨準備高(グロス)、為替レート:2020、2021、2022暦年値。
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:パキスタン統計局 (PBS)
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):パキスタン中央銀行 (SBP)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF