ミャンマーの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 自然災害の影響などを受け、2024/25年度の実質GDP成長率はマイナス1.1%に。
  • 輸入抑制政策が功を奏し、輸入額が減少。貿易収支は黒字に転換。
  • 2024/25年度の外国直接投資認可額(ティラワ経済特区を除く)は前年度並みだが引き続き低迷。
  • 日本との経済関係は貿易投資ともに縮小傾向。

公開日:2025年7月1日

マクロ経済 
2024/25年度の実質GDP成長率はマイナス1.1%

2025年4月に国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しによると、2024/25年度(2024年4月~2025年3月)のミャンマーの実質GDP成長率は1.1%減であった。2024年10月段階では同年度(注1)の成長を1%増と見込んでいたが、2024年9月に発生した台風などの自然災害の影響を受けてマイナスに転じたと考えられる。2025年4月の世界経済見通しに基づき過去の経過をみると、2020/21年度の9.0%減、2021/22年度の12.0%減から2022/23年度は3年ぶりに4%増とプラス成長に転じ、2023/24年度も1%の成長を記録していた。2025/26年度は1.9%の成長が見込まれているが、2025年3月28日に発生したミャンマー中部地震の影響が今後反映されるとみられ、見通しは厳しい。2021年2月の国軍による政権掌握(以下、政変)以降、外貨不足と外国直接投資の低迷が継続し、少数民族武装勢力や市民防衛隊(PDF)と国軍との紛争は激化している。それに伴う欧米などからの経済制裁も継続している。また、徴兵制の導入に加え、台風、地震と自然災害の影響を受け、経済は厳しい情勢が続き、先行きも引き続き不透明である。他方、現時点において実施は確約されていないが、2025年12月に総選挙を実施すると政府は発表しており、社会経済情勢が変化する可能性はある。

(注1)
ミャンマーの会計年度は4月から翌3月だが、2024年10月時点のIMFのデータは年度の対象期間を10月から翌9月としており、ここでは2024年10月~2025年9月を指している。本稿において明記のない限り、年度は4月~翌3月のことを指す。

CPI上昇率は3年連続で25%超え

ミャンマーの消費者物価指数(CPI)の上昇率は2024/25年度は26.5%となった。2021/22年度の9.6%、2022/23年度の28.0%、2023/24年度の25.5%とCPIは上昇し続けており、3年連続で25%を超えた。外貨不足とチャット安などを背景に、燃料をはじめとした輸入品価格の上昇は国民生活に大きな影響を与えている。CPI上昇率は2025/26年度も33.0%と予測されており、今後も上昇が続く見通しだ。ミャンマーの主な外貨収入源としては、輸出に加えて、外国人観光客による国内消費やミャンマー人の海外就労者からの送金がある。しかし、新型コロナ感染症の拡大で減少した観光客数は、その後の政変の影響、少数民族武装勢力と国軍との紛争の激化などによって回復の見込みが立っていない。一方、海外就労者については、ミャンマー国内での雇用環境が経済低迷によって悪化したことに加え、2024年2月に施行が公表された徴兵制から逃れる目的もあり、外国への出稼ぎ労働者やその希望者が急増した。このことから、海外からの外貨の送金増は一定程度期待できる。しかし、2024年5月から徴兵対象者の就労目的での海外渡航が制限されており、今後の見通しは不透明である。加えて、2011年の民主化以降、ミャンマーの外貨獲得の新しい柱であった外国からの政府開発援助(ODA)と外資企業による対内直接投資は政変以降低迷している。国内の外貨不足は深刻となっており、政府は外貨流出を抑制するために輸入抑制政策を近年強化している。具体的には、輸入時にライセンス取得が必要となる品目数を断続的に拡大させている。まず、2022年1月にそれまでの3,931品目から7,001品目に拡大した。その後も、数回にわたり対象を拡大する旨の通達を発出し、現在(2025年4月時点)は9,029品目となっている。また、政府は輸出で得た外貨の管理を強化しており、2022年4月からは収入外貨を1営業日以内に強制的に現地通貨へ兌換させる仕組みを開始した。当初は、収入外貨の100%を現地通貨へ兌換することが求められたが、輸出企業などからの批判もあり、断続的に兌換比率が見直された。現在は、輸出で得た外貨の現地通貨への1営業日以内の兌換義務を25%に低減し、企業は収入外貨の75%を1カ月間保有できるようになった。しかし、引き続き厳しい外貨管理が行われていることに変わりはなく、在ミャンマー企業は自由に原材料などの輸入調達ができず、国内での生産活動に支障が生じているケースもある。

貿易 
輸入が減少し、貿易収支は黒字に転換

2024年の輸出(通関ベース)は前年比1.2%増の149億2,400万ドル、輸入は24.3%減の124億5,200万ドルとなった。輸入抑制が進んだことで、貿易収支は2023年の16億8,700万ドルの赤字から24億7,200万ドルの黒字に転換した。

表1-1 ミャンマーの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料(天然ガス、石油) (27) 3,574 3,277 22.0 △ 8.3
衣類・付属品(布帛製品) (62) 2,911 2,570 17.2 △ 11.7
穀物 (10) 1,197 2,036 13.6 70.0
食用の野菜・根など (07) 1,578 1,975 13.2 25.2
衣類・付属品(ニット製品) (61) 1,477 1,283 8.6 △ 13.1
魚介類 (03) 659 642 4.3 △ 2.6
ゴム及びその製品 (40) 235 426 2.9 80.9
履物 (64) 381 410 2.7 7.5
電気機械・部品 (85) 234 311 2.1 32.8
食用の果実およびナッツなど (08) 258 309 2.1 19.5
合計(その他含む) 14,753 14,924 100.0 1.2

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
〔出所〕Global Trade Atlasから作成

表1-2 ミャンマーの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料(天然ガス、石油) (27) 5,402 4,526 36.3 △ 16.2
人造繊維の短繊維・織物 (55) 542 717 5.8 32.4
動物性または植物性油脂 (15) 653 576 4.6 △ 11.8
人造繊維の長繊維並びに人造繊維の織物及び人造繊維製品 (54) 633 538 4.3 △ 15.1
肥料 (31) 587 535 4.3 △ 8.8
一般機械・部品 (84) 965 451 3.6 △ 53.2
電気機械・部品 (85) 778 448 3.6 △ 42.4
鉄鋼 (72) 650 386 3.1 △ 40.6
プラスチック製品(39) 575 372 3.0 △ 35.3
輸送機器 (87) 341 352 2.8 3.2
合計(その他含む) 16,440 12,452 100.0 △ 24.3

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
〔出所〕Global Trade Atlasから作成

表2-1 ミャンマーの主要国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 3,428 3,457 23.2 0.8
タイ 3,580 2,904 19.5 △ 18.9
インド 839 1,276 8.5 52.0
日本 1,200 1,074 7.2 △ 10.5
ドイツ 519 632 4.2 21.7
インドネシア 136 514 3.4 276.4
米国 588 473 3.2 △ 19.5
韓国 404 449 3.0 11.1
ポーランド 468 433 2.9 △ 7.3
イタリア 287 293 2.0 2.1
合計(その他含む) 14,753 14,924 100.0 1.2

〔出所〕Global Trade Atlasから作成

表2-2 ミャンマーの主要国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 5,091 4,174 33.5 △ 18.0
シンガポール 3,705 3,106 24.9 △ 16.2
マレーシア 1,368 1,262 10.1 △ 7.8
タイ 2,097 1,163 9.3 △ 44.5
インドネシア 1,185 678 5.4 42.8
インド 448 359 2.9 △ 19.8
オマーン 138 227 1.8 64.7
ベトナム 293 217 1.7 △ 25.9
韓国 553 160 1.3 △ 71.1
日本 199 138 1.1 △ 30.5
合計(その他含む) 16,440 12,452 100.0 △ 24.3

〔出所〕Global Trade Atlasから作成

輸出を品目別(HSコード2桁)でみると、金額ベースの1位は引き続き鉱物性燃料(天然ガス、石油)で、前年比8.3%減の32億7,700万ドルとなった。タイと中国向けの天然ガス輸出が多くを占める。2位は衣類・付属品(布帛製品)で、11.7%減の25億7,000万ドルであった。ミャンマーでは、縫製業を中心に原材料を外国から免税で調達し、安価な労働力を活用して加工し輸出する「裁断・縫製・包装(CMP)」と呼ばれる委託加工業が盛んである。また、5位の衣類・付属品(ニット製品)も13.1%減の12億8,300万ドルと大幅に減少した。8位の履物は2023年の落ち込み幅が大きかったが2024年は7.5%増の4億1,000万ドルと回復した。縫製品の輸出が減少しているのは、主要輸出先である欧州経済の低迷によるものと考えられる。日本向けの縫製品輸出も減少している。食品については、3位の穀物が70.0%増、4位の野菜が25.2%増、10位のナッツが19.5%増と伸長し、6位の魚介類が2.6%減と微減であったことを除くと、全体として好調であった。ミャンマーの輸出上位品目である鉱物性燃料や衣類が前年実績を下回ったものの食品輸出が回復し、輸出全体では昨年実績を上回った。

一方、輸入は、政府の輸入抑制政策が功を奏したようだ。輸入総額は前年比24.3%減の124億5,200万ドルであった。最大の輸入品目(輸入額の36.3%)である鉱物性燃料(天然ガス、石油)は16.2%減の45億2,600万ドルとなった。2023年は輸入額2位であった一般機械・部品は、53.2%減の4億5,100万ドルで2024年は6位に、2023年3位の電気機械は42.4%減の4億4,800万ドルで7位となり、2023年の上位3品目が大きく減少した。

国・地域別でみると、輸出は中国が1位(前年比0.8%増、34億5,700万ドル)、2位がタイ(18.9%減、29億400万ドル)であった。タイ向けの輸出が減少した結果、2023年の1位と2位が入れ替わり、前年並みの水準であった中国が1位となった。ミャンマーは二大輸出相手国である両国と国境を接している。両国との陸路国境貿易は減少しており、これは雨期の土砂崩れなどの自然災害に加え、国境周辺地域での少数民族武装勢力と国軍との紛争激化により、主要な国境税関が閉鎖になったことなどが原因と考えられる。特に、内政問題に起因する陸路国境貿易への影響は長期化する可能性がある。また、3位と4位も入れ替わり、3位のインドが前年比で52.0%増加したのに対し、4位の日本は10.5%減であった。タイ、中国への輸出は、ミャンマーの輸出額の42.7%を占め、インド、日本を合わせると輸出額の58.4%になる。

一方、輸入は、前年に引き続き1位が中国(前年比18.0%減、41億7,400万ドル)、2位シンガポール(16.2%減、31億600万ドル)であった。3位はマレーシア(7.8%減、12億6,200万ドル)、2023年に3位だったタイが4位(44.5%減、11億6,300万ドル)となった。輸出入ともにタイとの貿易が大きく減少している。

対内直接投資 
2024/25年度の投資認可額は6億9,000万ドル

2021年2月の政変と各国による経済制裁、内戦の激化は外国企業のミャンマーへの投資マインドを冷え込ませた。ミャンマー投資企業管理局(DICA)が発表した2024/25年度(2024年4月~2025年3月)の統計によると、対内直接投資認可額(ティラワ経済特区(SEZ)を除く)は前年度比4.3%増の6億9,000万ドルであった。政変前の2019/20年度(2019年10月~2020年9月)は55億ドルだったが、これに満たない水準が続いている。

投資認可額上位の国・地域は、前年度と同様、シンガポール(4億6,000万ドル、前年度比33.4%増)が最多であった。2位も前年度と変わらず、中国(9,400万ドル、58.3%減)であった。この2カ国で認可額全体の80.3%を占めている。以下、タイ(4,600万ドル、83.9%増)、香港(3,000万ドル、30.8%増)が続いた。日本からの投資は新規投資1件を含む167万ドル(48.2%減)であった。

業種別にみると、石油・ガス分野が3億5,700万ドル(前年度比全増)で1位となった。製造業は20.7%増の1億8,300万ドルと増加し、2位となった。新規の投資認可件数は52件と、件数ベースで全体の86.7%を占め、最多であった。運輸通信分野は継続した投資があり12.8%増の8,800万ドルで、前年度同様3位であった。4位「その他サービス(注2)」は、件数ベースで前年度の3件から4件へと微増したが、金額ベースでは2,100万ドルから5,100万ドルへと約2.4倍に増加した。前年度に1位であった電力分野は900万ドルとなり、前年度の3億7,500万ドルから大きく減少した。

なお、政変以降新規投資がなかったティラワSEZには、2024年10月に3件の新規投資が認可された。

(注2)
運輸通信、ホテル・レストラン、不動産、工業団地を除く。
表3 ミャンマーの国・地域別対内直接投資 [認可ベース](単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023/2024年度
(2023/4~2024/3)
2024/2025年度
(2024/4~2025/3)
件数 金額 件数 金額 構成比 伸び率
シンガポール 7 345 4 460 66.7 33.4
中国 40 226 34 94 13.6 △ 58.3
タイ 1 25 2 46 6.7 83.9
香港 9 23 8 30 4.4 30.8
インドネシア 0 0 3 21 3.0 全増
韓国 3 2 0 11 1.6 342.1
台湾 1 7 3 8 1.2 14.0
インド 1 1 2 7 1.0 1,081.3
ロシア 0 0 1 3 0.5 全増
英国 1 4 0 3 0.4 △ 35.0
マーシャル諸島 1 1 1 3 0.4 106.4
日本 1 3 1 2 0.2 △ 48.2
合計(その他含む) 71 662 60 690 100.0 4.3

〔注1〕 ティラワ経済特区への投資は含まれない。
〔注2〕 ミャンマーの会計年度は4月~翌年3月まで。
〔注3〕 追加投資は件数にカウントされず、金額のみ計上されている。
〔出所〕 ミャンマー投資企業管理局(DICA)

表4 ミャンマーの業種別対内直接投資 [認可ベース](単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023/2024年度
(2023/4~2024/3)
2024/2025年度
(2022/4~2023/3)
件数 金額 件数 金額 構成比 伸び率
石油・ガス 0 0 0 357 51.7 全増
製造業 60 151 52 183 26.5 20.7
運輸・通信 0 78 1 88 12.7 12.7
その他サービス 3 21 4 51 7.4 141.8
電力 3 375 2 9 1.2 △ 97.7
畜産・水産業 0 23 0 3 0.4 △ 88.7
農業 4 3 1 1 0.1 △ 81.0
不動産開発 1 11 0 0 全減
建設 0 0 0 0
ホテル・観光業 0 0 0 0
鉱業 0 0 0 0
工業団地 0 0 0 0
合計(その他含む) 71 662 60 690 100.0 100.0

〔注1〕 ティラワ経済特区への投資は含まれない。
〔注2〕 ミャンマーの会計年度は4月~翌年3月まで。
〔注3〕追加投資は件数にカウントされず、金額のみ計上されている。
〔出所〕ミャンマー投資企業管理局(DICA)

対日関係 
対日貿易は輸出入とも減少

2024年のミャンマーの対日輸出は10億7,400万ドル(前年比10.5%減)と減少した。輸入は1億3,800万ドル(30.5%減)と4年連続で減少した。その結果、対日貿易収支は9億3,600万ドルの黒字(6.5%減)となり、7年連続黒字を維持した。品目別(HSコード2桁)でみると、輸出は、上位3品目の衣類・附属品(布帛製品、ニット製品)、履物はいずれも前年から減少したが、これら3品目の合計は9億3,500万ドルと、対日輸出全体の87.1%を占めた。一方、輸入は1位の電気機械が2,900万ドル(60.4%減)、2位の一般機械(建設機械など)が1,700万ドル(11.3%減)、3位の光学精密機器などが1,000万ドル(25.6%減)となった。対日貿易は輸出入ともに減少している。

表5-1 ミャンマーの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
衣類・付属品(布帛製品)(62) 672 619 57.6 △ 8.0
衣類・付属品(ニット製品)(61) 284 263 24.5 △ 7.3
履物(64) 63 53 5.0 △ 15.0
食用の野菜・根(豆など)(07) 26 28 2.6 10.4
電気機械(85) 52 22 2.1 △ 56.9
魚介類 (03) 27 17 1.6 △ 36.3
真珠・貴金属など(71) 9 11 1.0 22.5
光学精密機器及びその付属品(90) 6 10 1.0 69.4
革製品(42) 8 8 0.7 △ 0.1
ゴム及びゴム製品(40) 6 5 0.5 △ 6.6
合計(その他含む) 1,200 1,074 100.0 △ 10.5

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
〔出所〕 Global Trade Atlasから作成

表5-2 ミャンマーの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機械(85) 72 29 20.8 △ 60.4
一般機械・部品(84) 19 17 12.1 △ 11.3
光学精密機器及びその付属品(90) 13 10 7.2 △ 25.6
人造繊維の長繊維・織物(54) 11 10 6.9 △ 8.9
雑品(96) 9 9 6.7 8.2
人造繊維の短繊維・織物 (55) 10 9 6.3 △ 8.3
輸送機器(87) 4 7 5.2 78.4
特殊織物、タフテッド織物類、レースなど(58) 7 6 4.2 △ 15.5
鉄鋼(72) 7 5 3.9 △ 24.8
プラスチック製品(39) 6 4 2.8 △ 34.3
合計(その他含む) 199 138 100.0 △ 30.5

〔注〕品目欄の括弧内数値はHSコード。
〔出所〕 Global Trade Atlasから作成

現地進出日系企業の活動は縮小傾向

ミャンマー日本商工会議所(JCCM)の会員数は、2024年4月時点の341社から、2025年4月には314社へと27社減少している。2020年4月の426社からは100社以上減少した。政変に合わせて発出された非常事態宣言が2025年2月に7回目の延長となり、事業環境の先行き不透明感は今後も長期化すると想定される。JCCMには、駐在員が不在または別拠点からの兼轄となっている会員企業も多い。現在のビジネス環境は厳しいが、ミャンマー市場の可能性に期待し、ビジネス再開まで拠点と体制を最小限にしつつも残している。一方、2025年3月28日に発生したミャンマー中部の大地震に際し、自社の拠点や駐在員の有無にかかわらず支援物資を被災地に送付、義援金を寄付するなどの支援活動を行う進出日系企業もみられ、投資者としての社会的責任を果たそうとしている。

日本での就労目的の渡航に大きな制限

2021年の政変以降、ミャンマー経済が低迷し、雇用情勢が悪化したことで、国外での就労を検討するミャンマー人が増加している。このような状況下、2024年4月から徴兵制が実施され、同年5月からは23~31歳までの男性の就労目的での海外渡航が制限された。2025年1月からは対象が18~35歳に拡大した。また、2025年2月以降はミャンマー人が就労目的での出国の際に必要なスマートカード(OWIC:Overseas Worker Identification Card)の発給が停止され、就労目的での海外渡航が全面的に停止した。スマートカードは2025年4月下旬から発給が一部再開されているが、それまで制限のなかった送り出し機関あたりの派遣者数に大幅な制限(日本向けは1機関15名/月)が設定され、以前のように就労希望者を派遣できなくなっている。ミャンマー人材を受け入れ予定であった日本企業はこれらの措置への対応に苦慮している。現状では派遣人数や時期が確定できないため、現在の契約を解除し、別の国からの派遣への切り替えなどを検討する企業も出てきている。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022/23年度 2023/24年度 2024/25年度
実質GDP成長率 (%) 4.0 1.0 △1.1
1人当たりGDP (米ドル) 1,135 1,125 1,114
消費者物価上昇率 (%) 28.0 25.5 26.5
失業率 (%) n.a. n.a. n.a.
貿易収支 (100万米ドル) △318 △1,687 2,472
経常収支 (100万米ドル) △2,068 △1,352 △727
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 7,758 8,856 n.a.
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) n.a. n.a. n.a.
為替レート (1米ドルにつき、ミャンマー・チャット、公定レート) 2,100 2,100 2,100


ミャンマーの会計年度は4月から翌年3月まで。
1人あたりGDP:推計値
貿易収支:対象期間は1~12月、通関ベース
出所
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率 、経常収支、外貨準備高(グロス):IMF
貿易収支:Global Trade Atlas
為替レート:中央銀行