スリランカの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は5.0%、経済危機からの回復基調が鮮明に。
  • 経済活性化で消費財や資本財の輸入が増加、貿易赤字が拡大。
  • 対内直接投資は、債務不履行による国際的な信用低下から低水準で推移。
  • 対日貿易・投資は経済危機や自動車輸入規制の影響が残存。事業環境は改善へ。

公開日:2025年8月13日

マクロ経済 
3年ぶりにプラス成長を記録、経済危機からの回復基調が鮮明に

2024年のスリランカ経済は、物価上昇の緩和に伴う経済活動の回復を通じ、実質GDP成長率は5.0%を記録した。2022年と2023年には2年連続でマイナス成長に陥ったが、3年ぶりにプラス成長に転じた。2023年第3四半期(7~9月)以降プラス成長を続けており、2022年に発生した経済危機から著しい回復基調にある。スリランカ中央銀行(以下、CBSL)によれば、2024年の1人当たり名目GDPは4,516ドルで、過去最高を記録した。

全国の消費者物価指数に基づくインフレ率は、年間を通じて低水準で推移し1.6%にとどまった。CBSLは2024年3月、7月、11月に政策金利を引き下げたが、2024年末時点でも8.0%の高水準で推移している。さらに、スリランカ公益事業委員会(PUCSL)が電気料金を2024年3月に平均21.9%、7月に平均22.5%引き下げたことで物価上昇圧力が和らいだ。同年9月以降はインフレ率がマイナスとなり、物価が緩やかに下落した。

スリランカの外貨準備高は、海外出稼ぎ労働者の郷里送金や観光業回復による外貨流入、IMF、世界銀行、アジア開発銀行(ADB)からの援助により増加し、2024年12月末には前年同月比39.5%増の60億4,800万ドルに回復した。また、CBSLの発表によると、2024年に出稼ぎ労働者として海外に出国した人数は31万3,642人と、経済危機が発生した2022年の31万1,269人を上回り、2000年の統計開始以降最多となった。このため、2024年の郷里送金額は前年比10.1%増の65億7,540万ドルとなり、繊維製品・衣料品の輸出額(50億6,100万ドル)や観光収入(31億6,860万ドル)を上回る最大の外貨獲得源となった。

財政・経常収支は好転、債務再編も進むが、持続的経済成長が課題

スリランカは、構造改革を条件としたIMFによる金融支援プログラムを2023年から受けており、財政や経常収支は改善傾向にある。2024年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)と経常収支は、前年に続き黒字を記録した。2024年1月に付加価値税率(Value-Added Tax:VAT)を15%から18%に引き上げたほか、6月には公的債務管理法を施行し、債務管理の強化を図った。8月には財政管理法が施行、基礎的財政支出の上限を名目GDPの13%以下に抑えるなど、財政規律を強化した。

2024年6月には2国間債務の公的債権者に対して、また12月には民間債権者に対して対外債務の再編交渉が完了し、民間格付け大手のフィッチは「制限付きデフォルト(一部債務不履行)」格付けから5段階引き上げた。2024年9月に就任したアヌラ・クマーラ・ディサーナーヤカ大統領は、前政権に引き続きIMFの金融支援プログラムを着実に履行する意思を示しており、腐敗防止によるガバナンス強化などを通じて、財政の持続性回復に取り組んでいる。

今後の経済見通しについてCBSLは、マクロ経済の安定化や国内での不確実性の解消により、2025年は経済回復の継続を見込む一方で、米国の関税政策など地政学リスクが世界的に広がることで対外経済部門や経済全体への悪影響を懸念している。2025年の実質GDP成長率については、IMFは3.0%、世界銀行は3.5%、ADBは3.9%と見込んでいる。

マクロ経済指標が概ね回復に向かう一方で、国民の生活は苦しい状況が続いている。2024年9月の大統領選挙では、汚職の根絶や公正な富の配分を訴えたディサーナーヤカ氏が、政治刷新に期待を寄せる国民の支持を集めて勝利した。11月の国会議員選挙では、ディサーナーヤカ大統領が率いる国民の力(NPP)が、3分の2超の議席を確保し、政権基盤を固めた。今後は、国民の税負担軽減とともに、産業基盤の強化による持続的な経済成長をいかに実現していくか、新大統領の政権運営手腕が問われる。

表1 スリランカの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 △ 7.3 △ 2.3 5.0 5.1 4.1 5.3 5.4
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.2 △ 1.9 4.0 △ 8.5 8.2 4.8 12.5
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.4 △ 5.4 △ 1.8 △ 3.4 △ 4.0 △ 0.9 1.0
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 40.6 △ 5.7 21.1 42.8 △ 2.0 44.4 4.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 9.8 13.2 12.5 19.3 7.8 9.0 14.2
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 △ 19.9 8.9 22.5 19.5 9.8 29.0 30.5

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕スリランカ・センサス統計局(DCS)「National Accounts Estimates of Sri Lanka」

貿易 
経済の活性化により輸入が伸長、貿易赤字は急拡大

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比7.2%増の127億7,200万ドル、輸入は12.1%増の188億4,100万ドルとなった。貿易収支は60億6,900万ドルの赤字となり、貿易赤字額は前年比で23.9%増加した。経済活動の活性化により輸入量が回復し、輸出の伸びを上回ったかたちだ。

輸入増加の要因は、国内における一定の需要回復による消費財への支出拡大や、事業活動の活発化と輸送需要の増加に伴う資本財の輸入拡大などが挙げられる。品目別にみると、2022年に大幅に減少した消費財の輸入が前年比13.9%増加し、燃料や繊維製品など輸入総額の6割以上を占める中間財も8.2%増加、機械・機器や建設資材など資本財が25.6%増加した。

輸出増加の背景には、海外市場での需要拡大が挙げられる。品目別では、構成比が高い繊維製品・衣料品(前年比3.7%増、50億6,100万ドル)や茶(同9.6%増、14億3600万ドル)の輸出増が全体の伸びにつながった。

表2-1 スリランカの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
農産品 2,567 2,774 21.7 8.1
階層レベル2の項目 1,310 1,436 11.2 9.6
階層レベル2の項目香辛料 393 455 3.6 15.7
階層レベル2の項目ココナッツ 337 416 3.3 23.7
階層レベル2の項目海産品 262 233 1.8 △ 11.2
階層レベル2の項目野菜 28 29 0.2 3.1
階層レベル2の項目ゴム 28 26 0.2 △ 7.4
階層レベル2の項目未加工たばこ 28 26 0.2 △ 8.4
階層レベル2の項目その他農産品 181 154 1.2 △ 14.8
工業製品 9,278 9,947 77.9 7.2
階層レベル2の項目繊維製品・衣料品 4,879 5,061 39.6 3.7
階層レベル2の項目石油製品 539 1,063 8.3 97.2
階層レベル2の項目ゴム製品 902 976 7.6 8.1
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 539 652 5.1 20.8
階層レベル2の項目機械・機器 598 486 3.8 △ 18.8
階層レベル2の項目宝石、ダイヤモンド、宝飾品 500 382 3.0 △ 23.6
階層レベル2の項目化学製品 194 234 1.8 21.0
階層レベル2の項目卑金属および物品 178 187 1.5 4.8
階層レベル2の項目動物飼料 146 133 1.0 △ 8.3
階層レベル2の項目木材・紙製品 114 124 1.0 8.4
階層レベル2の項目輸送機器 149 107 0.8 △ 28.3
階層レベル2の項目皮革、旅行用品、履物 71 62 0.5 △ 12.7
階層レベル2の項目プラスチックおよびその成形品 56 54 0.4 △ 4.4
階層レベル2の項目印刷業界向け製品 55 47 0.4 △ 13.9
階層レベル2の項目セラミック製品 34 32 0.3 △ 5.6
階層レベル2の項目その他工業製品 323 347 2.7 7.7
鉱業品 38 25 0.2 △ 36.2
その他 28 26 0.2 △ 6.6
合計(その他含む) 11,911 12,772 100.0 7.2

〔注〕2024年は暫定値。
〔出所〕スリランカ中央銀行「Annual Economic Review 2024」

表2-2 スリランカの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
消費財 3,044 3,466 18.4 13.9
階層レベル2の項目食料品・飲料品 1,693 1,914 10.2 13.1
階層レベル3の項目野菜 359 446 2.4 24.4
階層レベル3の項目砂糖・菓子類 436 390 2.1 △ 10.6
階層レベル3の項目乳製品 274 240 1.3 △ 12.4
階層レベル3の項目油脂類 134 248 1.3 85.1
階層レベル3の項目香辛料 133 116 0.6 △ 13.2
階層レベル3の項目穀物・製粉産業製品 117 163 0.9 39.6
階層レベル3の項目海産品 79 119 0.6 49.5
階層レベル3の項目その他食料品・飲料品 162 194 1.0 19.8
階層レベル2の項目その他の消費財 1,351 1,551 8.2 14.8
階層レベル3の項目医薬品 667 576 3.1 △ 13.7
階層レベル3の項目衣類・アクセサリー 170 226 1.2 32.8
階層レベル3の項目家電製品 72 156 0.8 115.1
階層レベル3の項目通信機器 99 142 0.8 43.6
階層レベル3の項目家庭用品・家具 122 138 0.7 13.1
階層レベル3の項目ゴム製品 59 85 0.5 43.4
階層レベル3の項目化粧品・トイレタリー 55 75 0.4 36.8
階層レベル3の項目自動車(個人用) 28 66 0.4 139.2
階層レベル3の項目その他食品以外の消耗品 79 88 0.5 11.8
中間財 11,007 11,915 63.2 8.2
階層レベル2の項目燃料 4,703 4,354 23.1 △ 7.4
階層レベル2の項目繊維製品 2,371 2,847 15.1 20.1
階層レベル2の項目化学製品 815 987 5.2 21.2
階層レベル2の項目プラスチックおよびその製品 475 609 3.2 28.4
階層レベル2の項目卑金属 314 473 2.5 50.8
階層レベル2の項目紙・板紙およびその製品 412 447 2.4 8.4
階層レベル2の項目小麦とトウモロコシ 338 383 2.0 13.1
階層レベル2の項目ゴムおよびその成形品 200 317 1.7 58.1
階層レベル2の項目自動車・機械部品 233 301 1.6 29.5
階層レベル2の項目農業資材 234 264 1.4 12.9
階層レベル2の項目食品 171 223 1.2 30.1
階層レベル2の項目ダイヤモンド、貴石、半貴石 268 217 1.2 △ 19.2
階層レベル2の項目肥料 235 201 1.1 △ 14.4
階層レベル2の項目鉱物製品 81 127 0.7 57.3
階層レベル2の項目その他中間財 157 164 0.9 4.6
資本財 2,745 3,448 18.3 25.6
階層レベル2の項目機械・機器 1,868 2,363 12.5 26.5
階層レベル2の項目建設資材 775 927 4.9 19.6
階層レベル2の項目輸送機器 99 155 0.8 57.1
階層レベル2の項目その他資本財 3 3 0.0 △ 6.6
その他 16 13 0.1 △ 18.8
合計(その他含む) 16,811 18,841 100.0 12.1

〔注〕2024年は暫定値。
〔出所〕スリランカ中央銀行「Annual Economic Review 2024」

国・地域別では、中国やインド、アラブ首長国連邦(UAE)に対して大幅な貿易赤字を抱える。中国については、輸入が前年比44.1%増の43億6,600万ドルとなり、インドを上回る最大の輸入相手国になった。インドからの輸入も23.4%増の38億7,000万ドルに達し、両国産品はスリランカ市場で大きな存在感を示している。一方で、欧州や北米地域に対しては貿易黒字を維持している。米国に対しては、輸出が前年比5.1%増の29億1,100万ドルになった一方で、輸入は12.2%減の4億4,300万ドルにとどまり、貿易黒字幅が拡大した。

表3-1 スリランカの主要国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
米国 2,769 2,911 22.8 5.1
英国 849 906 7.1 6.7
インド 853 884 6.9 3.6
ドイツ 589 629 4.9 6.8
イタリア 675 596 4.7 △ 11.7
オランダ 343 393 3.1 14.6
アラブ首長国連邦(UAE) 364 337 2.6 △ 7.4
カナダ 294 321 21.6 9.2
中国 279 273 2.1 △ 2.2
フランス 304 264 2.1 △ 13.2
合計(その他含む) 11,911 12,772 100.0 7.2

〔注〕2024年は暫定値。
〔出所〕スリランカ中央銀行「Annual Economic Review 2024」

表3-2 スリランカの主要国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
中国 3,030 4,366 23.2 44.1
インド 3,136 3,870 20.5 23.4
アラブ首長国連邦(UAE) 1,850 1,489 7.9 △ 19.5
シンガポール 866 1,300 6.9 50.0
マレーシア 828 660 3.5 △ 20.3
ロシア 414 545 2.9 31.6
オマーン 343 473 2.5 38.1
パキスタン 323 457 2.4 41.5
インドネシア 378 444 2.4 17.4
米国 504 443 2.4 △ 12.2
合計(その他含む) 16,811 18,841 100.0 12.1

〔注〕2024年は暫定値。
〔出所〕スリランカ中央銀行「Annual Economic Review 2024」

対内直接投資 
対内直接投資は減少続く

2024年のスリランカへの対内直接投資は前年に引き続き減少(17.5%減)し、6億1,400万ドルとなった。国・地域別では、フランスからの投資額が最も多く1億3,700万ドル(前年比86.6%増)、次いでインドから1億2,900万ドル(20.7%減)、オランダが8,500万ドル(40.1%増)、UAEが6,900万ドル(24.0倍)となった。2023年にシェアを伸ばした中国は73.9%減の4,400万ドルの投資にとどまり、大きくシェアを落とした。業種別では、インフラ関連が12.9%増の2億5,000万ドル、製造業が8.7%増の2億6,000万ドルと回復を見せた一方で、サービス業への投資額(1億400万ドル)が63.4%減となり、投資額全体の落ち込みの要因となった。

スリランカへの投資が低水準にある背景として、2022年に発生した対外的な債務不履行による国際的な信用低下が挙げられる。加えて、スリランカから海外への就労が引き続き拡大しており、国内での優秀な人材確保の難しさも影響を及ぼしているとみられる。

一方、スリランカ国内の投資家は、ディサーナーヤカ新政権に高い期待を寄せている。同政権は汚職の撲滅などガバナンスの強化を推進しており、投資にかかる手続きの透明性向上や迅速化に期待が集まっている。さらに、2024年11月の国会議員選挙で政権基盤を固めたことで、一貫した政策の実施が嘱望されている。国内の株式市場は、政権交代への高い期待を背景として、2024年の大統領選以降、前向きな反応を示している。コロンボ証券取引所の全株価指数(All Share Price Index:ASPI)は、大統領選挙前日の2024年9月20日時点で10,974.30だったが、選挙後は上昇基調を維持し、2025年6月末時点では過去最高の18,026.72に達している。今後スリランカ政府が、国内投資家の期待を適切に反映した投資環境の変革を実現すれば、海外投資家からの国際的な信用の回復、さらには新たな対内直接投資につながる可能性もある。

表4 スリランカの国・地域別対内直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
フランス 73 137 22.3 86.6
インド 163 129 21.1 △ 20.7
オランダ 61 85 13.9 40.1
アラブ首長国連邦(UAE) 3 69 11.2 2,300.9
中国 169 44 7.2 △ 73.9
マレーシア 34 25 4.1 △ 26.1
シンガポール 52 20 3.2 △ 62.1
英国 13 18 2.9 35.0
ルクセンブルク 17 16 2.6 △ 3.5
日本 9 12 2.0 33.4
米国 21 11 1.8 △ 46.6
合計(その他含む) 744 614 100.0 △ 17.5

〔注〕BOI法に基づく認可案件。
〔出所〕スリランカ投資委員会(BOI)2024

表5 スリランカの業種別対内直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
製造業 239 260 34.9 8.7
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 5 1 0.1 △ 79.9
階層レベル2の項目繊維・衣料・皮革製品 85 46 6.2 △ 45.7
階層レベル2の項目木材・木材製品 3 2 0.3 △ 13.8
階層レベル2の項目紙・紙製品、印刷・出版 3 9 1.2 216.3
階層レベル2の項目化学・石油・石炭・ゴム・プラスチック製品 99 166 22.3 67.5
階層レベル2の項目非金属鉱物製品 8 14 1.9 87.7
階層レベル2の項目金属加工・機械・輸送機械 10 6 0.9 △ 36.4
階層レベル2の項目その他製造業 27 15 2.1 △ 43.0
農業 0 0 0.0 △ 55.9
サービス業 283 104 13.9 △ 63.4
階層レベル2の項目ホテル・レストラン 129 91 12.2 △ 29.4
階層レベル2の項目IT、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO) 12 3 0.4 △ 78.7
階層レベル2の項目その他サービス 142 10 1.4 △ 92.9
インフラ関連 222 250 33.6 12.9
階層レベル2の項目住宅物件開発・店舗・オフィス 41 20 2.7 △ 49.7
階層レベル2の項目電話・通信ネットワーク 113 68 9.2 △ 39.7
階層レベル2の項目発電、燃料、ガス、石油、その他 37 74 10.0 98.1
階層レベル2の項目港湾コンテナターミナル 30 87 11.7 188.2
合計(その他含む) 744 614 100.0 △ 17.5

〔注〕BOI法に基づく認可案件。
〔出所〕スリランカ投資委員会(BOI)2024

対日関係 
貿易は一定の回復、自動車・バイクの禁輸解除で活性化に期待

2024年の日本のスリランカ向け輸出額は前年比36.0%増の2億2,700万ドルとなり、一定の回復を見せた。品目別では、日本からの主な輸出品である一般機械(89.1%増、4,200万ドル)や輸送機械(93.2%増、3,300万ドル)、ゴム及びその製品(73.2%増、2,900万ドル)、電気機器(21.9%増、2,100万ドル)などの輸出が増加した。スリランカでは外貨不足により2020年から2025年1月末まで自動車やバイクの輸入が禁止された。このため、これら製品を主力とする日本からの輸出額はスリランカの輸入総額のうち1.3%にとどまった。禁輸前で内需が旺盛だった2018年には、日本からの輸出額は12億5,700万ドルに達していたが、近年は減少が顕著だった。自動車・バイクの輸入が解禁された2025年2月1日以降は、貿易の活発化が期待される。

2024年の日本の対スリランカ輸入額は前年比4.8%増の2億6,000万ドルで、主な輸入品はコーヒー、茶、マテ及び香辛料(2.2%増、4,300万ドル)、ゴム及びその製品(13.8%増、3,300万ドル)、船舶(全増、2,700万ドル)、衣類(ニット製品)(9.5%増、2,000万ドル)などだった。

表6-1 日本の対スリランカ主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
一般機械 22 42 18.3 89.1
輸送機械 17 33 14.4 93.2
ゴム及びその製品 17 29 13.0 73.2
電気機器 17 21 9.2 21.9
衣類(ニット製品) 14 13 5.7 △ 9.6
精密機械 7 11 4.7 54.6
人工繊維(糸、織物) 7 10 4.4 41.6
プラスチック及びその製品 9 8 3.7 △ 2.5
各種の化学工業生産品 5 6 2.7 15.4
鉱物性燃料 2 3 1.3 24.1
合計(その他含む) 167 227 100.0 36.0

〔出所〕 グローバル・トレード・アトラス

表6-2 日本の対スリランカ主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
コーヒー、茶、マテ及び香辛料 42 43 16.7 2.2
ゴム及びその製品 29 33 12.6 13.8
船舶 0 27 10.2 全増
衣類(ニット製品) 18 20 7.8 9.5
衣類(布帛製品) 20 19 7.3 △ 6.4
動物飼料 30 18 6.8 △ 42.2
植物性生産品 13 12 4.8 △ 2.9
海産品 14 12 4.6 △ 15.3
電気機器 13 11 4.1 △ 18.6
貴金属 9 8 3.3 △ 5.8
合計(その他含む) 248 260 100.0 4.8

〔出所〕 グローバル・トレード・アトラス

進出日系企業のビジネス・投資環境、事業見通しは改善

2024年の日本からスリランカへの投資は、前年比33.4%増の1,220万ドルに拡大したものの、対内直接投資全体では構成比2.0%にとどまっている。

他方、2024年の投資環境は、前年に比較して回復基調にある。ジェトロが2024年に実施した「2024年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、前年と比較した2024年の営業利益見込みについて、在スリランカ日系企業(回答数28社)の50.0%(前回調査比22.4ポイント上昇)が「改善」、46.4%(同11.9ポイント上昇)が「黒字」と回答した。加えて、2024年と比較した2025年の営業利益見通しについては、75.0%が「改善」と回答し、アジア・オセアニア地域の20カ国・地域で最も高い割合を示した。

スリランカの投資環境上のメリットとしては、「人件費の安さ」(54.8%)、「言語・コミュニケーション上の障害の少なさ」(41.9%)、「市場規模/成長性」(38.7%)、「税制面でのインセンティブ(法人税、輸出入関税など)」(22.6%)、「ワーカー等の雇いやすさ」(22.6%)、「駐在員の生活環境が優れている」(22.6%)、「土地/事務所スペースが豊富、地価/賃料の安さ」(22.6%)が上位を占めた。スリランカの人件費は、ミャンマーやラオス、パキスタンやバングラデシュと並ぶ水準であり、アジア・オセアニア地域では競争力がある。

他方、スリランカの投資環境上のリスクとしては、「不安定な政治・社会情勢」(83.9%)、「現地政府の不透明な政策運営」(71.0%)、「不安定な為替」(45.2%)、「人件費の高騰」(41.9%)、「従業員の離職率の高さ」(35.5%)が挙げられた。具体的には、「突然の輸入規制や税率の変更」、「法人税や光熱費の高騰による固定費の増大」、「優秀な人材の海外流出」、「停電」、「輸入ライセンスや在留ビザの取得に時間がかかりすぎる」、「新たな輸入制限によるサプライチェーン分断」といった点が指摘されている。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) △7.3 △ 2.3 5.0
1人当たりGDP (米ドル) 3,464 3,801 4,516
消費者物価上昇率 (%) 50.4 16.5 1.6
失業率 (%) 4.7 4.7 4.4
貿易収支 (100万米ドル) △5,185 △ 4,900 △ 6,069
経常収支 (100万米ドル) △1,448 1,439 1,206
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 1,863 4,336 6,048
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 49,667 54,257 57,133
為替レート (1米ドルにつき、ルピー、期中平均) 324.55 327.53 302.12


2024年は暫定値。貿易収支:国際収支ベース(財のみ)。
出所
外貨準備高(グロス):スリランカ中央銀行「Reserve Data Template - Historical」
実質GDP成長率、1人当たりGDP、 消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、為替レート:スリランカ中央銀行「Annual Economic Review 2024」
対外債務残高(グロス): スリランカ中央銀行「Quarterly External Debt Statistics as at End Quarter (2012 4Q to Latest)」