ラオスの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 実質GDP成長率2.5%、緩やかな経済回復が続く。
  • 出入国再開により外国人観光客が増加し、中国ラオス鉄道やドライポートが本格稼働。
  • 輸出は電力や農産物、縫製品などが増加。
  • 世界的な物価高や現地通貨キープ安で、年平均インフレ率は2割増。
  • 低い外貨準備高と高い公的債務残高は引き続きリスク要因。

公開日:2023年10月3日

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マクロ経済 
急激なインフレが進行

アジア開発銀行(ADB)の分析レポートによると、2022年の実質GDP成長率は2.5%となり、2021年の2.3%と同様に緩やかな経済回復が続いた。東南アジア各国が入国規制を緩和する中、ラオスでも2022年1月から外国人観光客の受け入れが条件付きで再開された。5月から全国23カ所の国際国境や空港で、ワクチン接種証明があれば比較的自由に出入国ができるようになった。これにより観光や貿易、また中国ラオス鉄道やドライポートの本格稼働など、サービス業が活発化した。一方で、多額の対外債務負担による外貨不足で現地通貨(キープ)が大幅に下落したことや、2月からのロシアのウクライナ侵攻により、石油価格が急騰したことで、5~6月に全国で燃料不足が発生した。キープの対ドルレート(パラレルレート)は2021年6月の1ドル=約1万300キープから、2022年6月に一時、約2万700キープまで下落した。これらは国内の混乱を招き、消費や建設、製造、農業などの経済活動を抑制した。さらに、これに伴う急激なインフレの進行が悪循環をもたらした。

セクター別にみると、農業は燃料不足と肥料や飼料などの投入資材の価格上昇の影響を受けたが、天候も良く外需に支えられたことで輸出が伸びた。主食のコメの生産量は378万トンで前年比3.3%増とわずかに増えた。工業は発電量の増加や投資案件の建設に支えられた。電力開発は水力発電所(ナムグム1拡張、ホアイラムパンニャイ(下流)、ナムトゥン1)などが商業運転を開始し、これにより全国の発電所は94カ所となった。発電容量は前年比6.4%増の1万1,661メガワットと前年に引き続き拡大した。雨量にも恵まれ水力発電所の稼働が順調であったため、電力生産量は前年比13.5%増の5万1,031ギガワット時となり、81%が輸出された。一方、国内消費量9,705ギガワット時のうち52.7%を暗号通貨マイニング産業が新たに消費した。続いて住宅が24.3%、工業が9.0%、中国ラオス鉄道が7.8%となった。暗号通貨は取引所2カ所と14カ所のマイニング拠点に認可が与えられた。鉱業は94社168事業で金や銅、鉄鋼石、レアアースなど鉱物29種の採掘加工が行われている。特にウクライナ情勢の影響を受けカリウム肥料の価格が高騰したことから、ラオス国内のカリウム採掘が増産し148万トンに達した。セポン鉱山では新たに地下450メートルのトンネルを開発し、金採掘を開始した。鉱山事業からより高い税収を確保するためのパイロット事業では、2021年6月から23年1月までに69件(鉄鉱石37件、金17件、レアアース8件など)が認可された。ただし、鉄鉱石は価格の低迷により生産や輸出を見合わせる動きが続いた。製造業のうち輸出向け労働集約産業は、キープの下落によりドルベースで賃金が大きく下落したことで恩恵を受けた。他方、国内市場向けの産業は、燃料費や資材の高騰が負の影響をもたらした。政府は2022年8月に最低賃金を110万キープから120万キープへと引き上げた。しかし、高インフレの中、国境の往来が容易になったこともあり、タイや韓国などへの出稼ぎを選択する労働者が増えている。コロナ禍で43万人が失業したとみられているが、2022年の失業率は18.5%と2021年の21.8%から若干改善した。国会報告(2023年12月)によると、2022年は約5万人の労働者を正式ルートで外国へ送り出した。

公共事業運輸省によると、2021年末に開通した中国ラオス鉄道の2022年の乗客数は140万人、中国との越境貨物輸送量は220万トンだった。2022年12月には中国側のモーハン駅で植物検疫が開始されたことで、ラオス産バナナやタイ産ドリアンなど熱帯果物の中国向け一貫輸送が開始された。また、2023年4月にはコロナ禍で遅れていたビエンチャンと中国の昆明を結ぶ国際旅客列車の一貫運行が開始され、観光客誘致の起爆剤になると期待されている。2023年上半期では、同鉄道を利用した越境旅客が2万5,900人、越境貨物が215万トン(前年同期比1.9倍)となった。情報文化観光省によると外国人観光客は2022年1月から入国が再開され、通年で129万人に上り、観光収入は2億1,300万ドルとなった。2023年は140万人、3億4,000万ドルを計画している。なお、ラオス政府はASEAN議長国を担う2024年を観光年として観光誘致を大々的に行い、コロナ前の水準に近い460万人を目指すとしている。

キープ安と世界的な物価上昇により、2022年の年平均インフレ率は23.0%に跳ね上がり、2023年2月には42.3%に達した。食品と運輸の上昇が主な要因である。2022年末のガソリン販売価格は1年前と比較して66%上昇した。インフレ対策と為替相場の安定化のため、ラオス中央銀行は3.1%の短期政策金利を2022年10月に6.5%へ、さらに2023年2月に7.5%に引き上げた。また、2023年1月には全国の全ての両替店を強制的に閉鎖させ、外貨交換を商業銀行に集約した。

貿易 
電力輸出が順調に増加

ラオス商工省によると、2022年の輸出額は81億9,800万ドル(前年比7.5%増)、輸入額は68億800万ドル(15.6%増)で、貿易黒字は13億9,000万ドル(20.1%減)だった。なお、内陸国であるラオスは通関を介さない国境貿易も依然広く行われていることから、実際の貿易額はさらに多いとみられる。

輸出を品目別にみると、電力が最大で23億5,800万ドル(8.7%増)であった。電力は輸出総額の約29%を占めた。エネルギー鉱山省によると、3万9,965ギガワット時(前年比9.1%増)を周辺国へ輸出した。うち、タイ向けが3万4,567ギガワット時(4.9%増)で全体の87%を占める。また、2022年6月から初めて中国とシンガポールへの売電が開始され、通年で中国へ83ギガワット時、シンガポールへ180ギガワット時を輸出した。一方で、2018年から開始されていたマレーシアへの輸出は実施されなかった。2位の鉱物は19億4,300万ドル(0.0%減)で、金や銅など23種の鉱物が輸出された。エネルギー鉱山省によると、2大鉱山であるセポン鉱山からの金・銀の輸出は3億8,870万ドル(11%増)、プービア鉱山は1億7,000万ドル(20.9%減)であった。銅は全体で4億4,370万ドル(0.0%増)となり、10月末にはプービア鉱山の銅が初めて中国ラオス鉄道を使って中国へ輸出された。カリウムの輸出は3億4,880万ドル(1.5倍)だった。2021年に輸出が急増した鉄鉱石は価格の下落により1億2,100万ドル(52.5%減)となった。農畜産物・食品の輸出は19億2,600万ドル(9.4%増)となった。農林省によると、主要品目である天然ゴムが3億3,600万ドル(27.7%増)、バナナが2億4,600万ドル(1.2%減)、キャッサバ(澱粉含む)が3億2,400万ドル(36.7%増)であった。一方、中国政府の新型コロナウイルス対策で国境が混雑し、バナナやスイカなどの青果物の対中輸出が影響を受けた。コーヒー豆は6,600万ドル(33.8%増)と好調で、木材・木製品・パルプ・紙は9億1,700万ドル(1.6%増)だった。うち、2021年から生産が本格化した溶解パルプやロール紙の輸出は8億5,100万ドル(3.0%増)だった。製造加工品である電子機器やケーブルハーネスなどの工業製品や縫製・靴製品の輸出は、それぞれ5億9,900万ドル(13.9%増)、4億4,600万ドル(41.5%増)となり、需要が回復したことで生産が増大した。

輸出を国・地域別でみると、1位のタイは29億4,000万ドル(5.6%増)だった。内訳は電力が20億2,000万ドル(3.9%増)、キャッサバが2億8,600万ドル(29.8%増)、セメントが1億2,700万ドル(39.9%増)だった。2位の中国は22億3,800万ドル(0.8%増)で、パルプ・紙が8億2,800万ドル(6.7%増)、銅および銅製品が3億4,300万ドル(1.9%増)、カリウムが2億8,300万ドル(1.6倍)となった。3位のベトナムは13億5,500万ドル(9.6%増)で、砂糖が2億3,400万ドル(1.8倍)、天然ゴムが2億3,100万ドル(27.8%増)だった。日本への輸出は1億3,200万ドル(59.1%増)で輸出総額の1.6%だった。うち、ラオス国内工場で加工を行う縫製・靴製品が5,510万ドル(34.2%増)、ケーブルハーネスや電子部品などは1,780万ドル(20.8%増)だった。日系工場でも輸出先はASEAN諸国とする製品が多い。またシリコンが2,730万ドル(14倍)、バナナは2,750万ドル(4.7倍)と急増した。コーヒー豆は4,890万ドル(23.7%減)で日本のコーヒー豆輸入相手国としてラオスは10位(金額ベース)である。

輸入を品目別にみると、化石燃料が13億600万ドル(76.5%増)で、世界的な石油価格高騰の影響で輸入額は大きく増加した。しかし、燃料ガス協会によると輸入量は13億2,600万リットル(19.6%減)と減少し、インフレや燃料不足など社会的に大きな影響をもたらした。農畜産物・食品は11億8,400万ドル(19.7%増)だった。うち、最も多かったのは飲料で2億4,800万ドル(14.4%増)となった。多くがベトナムなどへ再輸出されているとみられる。また、機械・電子機器および部品は11億600万ドル(16.3%増)で製造業の原料輸入などが増加した。車両および部品は6億9,300万ドル(3.4%減)、鉄および鉄製品は2億9,000万ドル(0.4%増)となった。電力は。国内の電力網の整備が進み、国境地域の周辺国からの輸入が減少したため、4,000万ドル(49.9%減)、873ギガワット時(33.3%減)となった。

輸入を国・地域別にみると、1位のタイは33億7,700万ドル(12.7%増)と輸入超過が続いた。うち、化石燃料が11億8,600万ドル(95.3%増)となり、化石燃料の輸入全体の90.8%を占めた。ラオス政府は、石油不足問題を契機に輸入元の多様化を図るため、ロシア産石油の輸入や中東からの直輸入を検討したが進展しなかった。ラオスとタイの両政府は2025年までに貿易総額を110億ドルに増やす計画である(2022年は約63億ドル)。2位の中国は16億4,600万ドル(31.2%増)で、重機部品が3億3,700万ドル(2.4倍)と大幅に増加した。3位はベトナムで4億2,300万ドル(15.4%減)だった。日本は1億4,800万ドル(0.4%減)で輸入額全体の2.2%相当だった。うち、自動車やトラクターなど車両および部品が1億290万ドル(25.5%増)と大半を占めた。

ラオス政府は2023年社会経済開発計画において、輸出額は82億2,500万ドル、輸入額は71億ドルを計画している。輸出では、電力が24億5,300万ドル、鉱物が15億2,500万ドル、農産物(食品を含まず)が12億ドルとした。2023年6月の国会では、2023年上半期の輸出額が42億 7,200万ドル(前年同期比2.5%増)、輸入額が32億 7,300万ドル(2.6%増)と報告された。うち、農産物(食品を含まず)輸出は10億8,900万ドルと好調である。

表1-1 ラオスの主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:100万米ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
電力 2,169 2,358 28.8 8.7
鉱物 1,944 1,943 23.7 △ 0.0
農畜産物・食品 1,761 1,926 23.5 9.4
木材・木製品・パルプ・紙 902 917 11.2 1.6
工業製品 526 599 7.3 13.9
縫製・靴製品 315 446 5.4 41.5
その他 11 10 0.1 △ 7.0
合計(その他含む) 7,627 8,198 100.0 7.5

〔出所〕商工省輸出入統計を基にジェトロ作成

表1-2 ラオスの主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:100万米ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
化石燃料 740 1,306 19.2 76.5
農畜産物・食品 989 1,184 17.4 19.7
機械・電子機器および部品 951 1,106 16.2 16.3
車両および部品 717 693 10.2 △ 3.4
鉄および鉄製品 289 290 4.3 0.4
電力 80 40 0.6 △ 49.9
その他 2,122 2,189 32.2 3.2
合計(その他含む) 5,887 6,808 100.0 15.6

〔出所〕商工省輸出入統計を基にジェトロ作成

表2 ラオスの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万米ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア・大洋州 7,140 7,645 93.3 7.1 5,201 5,963 87.6 14.6
階層レベル2の項目日本 83 132 1.6 59.1 148 148 2.2 △ 0.4
階層レベル2の項目中国 2,221 2,238 27.3 0.8 1,255 1,646 24.2 31.2
階層レベル2の項目香港 88 81 1.0 △ 8.1 28 21 0.3 △ 26.4
階層レベル2の項目韓国 11 21 0.3 89.1 48 65 0.9 34.9
階層レベル2の項目台湾 5 6 0.1 24.9 19 19 0.3 △ 1.4
階層レベル2の項目ASEAN 4,308 4,669 57.0 8.4 3,597 3,969 58.3 10.3
階層レベル3の項目タイ 2,784 2,940 35.9 5.6 2,996 3,377 49.6 12.7
階層レベル3の項目ベトナム 1,237 1,355 16.5 9.6 501 423 6.2 △ 15.4
階層レベル3の項目カンボジア 160 185 2.3 16.0 1 1 0.0 5.5
階層レベル3の項目シンガポール 91 164 2.0 80.3 52 79 1.2 51.6
階層レベル3の項目マレーシア 6 9 0.1 50.4 20 57 0.8 184.1
階層レベル2の項目インド 75 102 1.2 36.0 33 23 0.3 △ 30.7
階層レベル2の項目オーストラリア 348 395 4.8 13.4 64 61 0.9 △ 4.6
階層レベル2の項目ロシア 1 0.0 △ 92.8 28 11 0.2 △ 59.2
階層レベル2の項目EU27 228 292 3.6 28.3 111 142 2.1 28.4
階層レベル2の項目英国 22 29 0.4 33.5 23 36 0.5 52.4
階層レベル2の項目スイス 116 76 0.9 △ 34.4 228 282 4.1 23.8
階層レベル2の項目米国 67 111 1.4 66.6 250 311 4.6 24.3
合計(その他含む) 7,627 8,198 100.0 7.5 5,887 6,808 100.0 15.6

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕商工省輸出入統計を基にジェトロ作成

対内直接投資 
投資はコロナ前の水準に回復

商工省によると、2022年の対内直接投資額(新規登録ベース、自国投資含む)は92億400万ドル(32.4%増)と、コロナ禍で半減した2021年から大きく回復した。業種別にみると、卸・小売・自動車修理業が30億1,000万ドル(12.5%増)、金融・保険業が11億8,700万ドル(2.1倍)、電気・ガス業が10億7,000万ドル(3.1倍)、鉱業が8億8,400万ドル(81.7%増)、製造業が6億9,400万ドル(3.0倍)などと大きく伸びた。一方、2020年に大きく増加した農林水産業は2021年から2年連続で減退し、3億8,000万ドル(37.1%減)となった。国別にみると、ラオスの国内投資が40億1,100万ドル(1.0%減)、中国が33億2,100万ドル(99.1%増)、ベトナムが5億6,000万ドル(15.4%増)、タイが4億6,600万ドル(52.4%増)となり、主要3カ国からの投資が増加した。日本からの投資額は1億7,500万ドル(11.4倍)となった。

ラオスによる国内投資の主な動きとしては、南部ワンタオ国境のドライポートの営業開始、5億8,000万ドルの首都近郊スマートシティの建設開始、ビエンチャン工業団地開発などが進捗した。外国投資では鉱山資源やクリーン電源開発、農業開発などが目立った。中国からの新規投資では、セポン鉱山を開発する赤峰吉隆黄金鉱業と厦門タングステンによるレアアース開発会社の設立や、香港天地グループによるアタプー県での大型農業観光開発、国防省と天津市企業による家畜飼育事業、雲南省企業による500メガワットの太陽光発電事業のプロジェクト開発契約の締結、中国水利水電建設による2,000メガワットの地熱発電事業、サイセター総合開発区での2,000人規模の縫製工場、ラオス電力公社とファーウェイによる太陽光発電の可能性調査など様々な大型投資の動きがみられた。ベトナムからの投資では、TTCシュガーによる1,700ヘクタールの農地コンセッション契約、ビウパワーによる4,000メガワットの太陽光・風力・地熱複合発電と大規模農業開発事業、エーエムアイによる1,220メガワットの風力発電事業の可能性調査(20億ドル)、10億ドルのボーキサイト事業の建設開始などが挙げられる。タイからの投資では、工業団地大手アマタグループが10億ドルを投資するラオス北部の工業団地(スマート&エコシティ)のコンセッション契約の締結や、サイアムガス・アンド・ペトロケミカルズのラオス法人設立、チョーカンチャングループによる1,460メガワットのルアンパバーンダムの建設開始などがあった。また、ラオス国内でのコンビニ(セブンイレブン)の設立のためにCPオールは200万ドルでラオス法人を設立した。2023年中に1号店を出店する。

日本からの投資では、刻みたばこの柘製作所がラオス工場開所式を行った。また、九電みらいエナジーが参画する年10万トン規模の木質ペレット生産事業では、2022年4月に竣工式が行われ、2023年中に稼働する見込みである。また、三菱商事が出資する600メガワットの風力発電事業が認可された。そのほかにもコーヒー農園への投資などがみられた。

表3 ラオスの国・地域別対内直接投資[新規登録ベース、グロス](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021 2022
金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 6,802 8,839 96.0 30.0
階層レベル2の項目日本 15 175 1.9 1,034.6
階層レベル2の項目中国 1,668 3,321 36.1 99.1
階層レベル2の項目韓国 66 185 2.0 180.3
階層レベル2の項目ASEAN 4,962 5,086 55.3 2.5
階層レベル3の項目ラオス 4,052 4,011 43.6 △ 1.0
階層レベル3の項目タイ 306 466 5.1 52.4
階層レベル3の項目ベトナム 485 560 6.1 15.4
階層レベル3の項目マレーシア 80 25 0.3 △ 68.6
階層レベル3の項目シンガポール 2 15 0.2 549.1
階層レベル2の項目インド 7 10 0.1 55.4
階層レベル2の項目オーストラリア 84 61 0.7 △ 27.1
欧州 97 332 3.6 241.7
階層レベル2の項目EU27 82 330 3.6 304.0
階層レベル3の項目フランス 14 291 3.2 2,007.5
階層レベル2の項目英国 13 0.0 △ 99.3
北米 41 7 0.1 △ 83.1
階層レベル2の項目米国 38 13 0.1 △ 65.0
合計(その他含む) 6,951 9,204 100.0 32.4

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)の合計値。
ラオス企業による対内投資を含む。
2021年1ドル=9,737キープ、2022年1ドル=14,035キープで算出。
〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

表4 ラオスの業種別対内直接投資[新規登録ベース、グロス](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産 604 380 4.1 △ 37.1
卸・小売・自動車修理 2,676 3,010 32.7 12.5
電気・ガス 346 1,070 11.6 209.5
建設 750 594 6.5 △ 20.7
製造 235 694 7.5 195.0
鉱業 487 884 9.6 81.7
金融・保険 571 1,187 12.9 108.1
ホテル・レストラン 121 255 2.8 111.0
科学技術 196 228 2.5 16.3
不動産 342 444 4.8 29.9
上下水道、廃棄物処理 33 13 0.1 △ 60.4
運輸・倉庫 127 181 2.0 42.6
健康医療 25 27 0.3 7.5
情報通信 44 43 0.5 △ 1.8
教育 157 23 0.2 △ 85.4
エンターテイメント 37 9 0.1 △ 75.8
その他 194 161 1.8 △ 16.7
合計 6,944 9,204 100.0 32.6

〔注〕ラオス企業による対内投資を含む。2021年は1ドル=9,737キープ、2022年は1ドル=1万4,035キープで算出。
〔出所〕ラオス商工省企業登録管理局

投資環境 
公的債務対策と投資環境の改善が急務

財政は、アジア開発銀行(ADB)の推計によると、2022年の歳入がGDP比14.4%で、2021年の15.2%から若干割合が減少した。政府がITシステム導入による徴税強化を進めているものの、石油小売価格を抑制するために取られた物品税の免除や付加価値税の7%への減税が影響した。歳出はGDP比で14.7%と2021年の16.5%よりもさらに抑制された。しかし、財政赤字は2022年にGDP比1.6%と、前年の1.3%から拡大した。公的債務への利払いが増加する中、公共投資の延期や中止など厳しい歳出抑制政策を継続している。IMFは公的および対外公的保証債務残高がキープ安の影響を受け、2021年末のGDP比79.5%から、2022年末には104.5%へと急増したと推定している。対外債務はGDP比の164.8%に達した。ブンチョーム・ウボンパスート財務大臣(当時)は2022年6月の国会で、公的債務は2010~2016年ごろに政府開発資金として多く借り入れたことが原因で、2022年は14億ドルの支払いが予定されていると答弁した。世界銀行によると、中国からの借入金の返済猶予額はGDPの8%相当に達している。IMFが2023年5月に発表した債務持続可能性分析(DSA)報告書では、ラオスは対外的、全体的に債務危機に陥っており、持続不可能な状態であると評価している。フィッチ・レーティングスはラオスの長期・短期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を2022年8月にCCCマイナスへと引き下げ、10月には格付けを取り下げた。なお、外貨準備高は2022年末時点で11億ドルと輸入額の1.5カ月相当にすぎない。

ソーンサイ・シーパンドン首相は2023年6月の国会にて、公的債務問題の解決と投資環境の改善など重点項目への取り組みを説明した。特に喫緊の課題となっている公的債務への取り組みでは、歳入を増やすためのITシステムの導入や土地税など税関係法の整備を進め徴税率を高めるとともに、農業や工業を振興し輸入を減らした上で輸出の増加に努めている。また、外貨の流出を抑えるために、アルコールや高級車など輸入贅沢品の税率を増やす計画である。農業では積極的な低金利融資の提供や、中国やタイなどの主要貿易相手国との動植物検疫協議を進めている。また、インフレを加速させるとともに対外債務への負荷を高めている為替安については、違法な両替の取り締まりを強化し、貿易会社の外貨決済への監督を強化することで安定させようとしている。2022年12月の国会報告によると、2022年の経常赤字は11億9,900万ドルで、輸出総額の33%がラオスの商業銀行へ振り込まれているに過ぎず、外貨不足の原因となっていると指摘した。ラオス政府は2022年10月に外貨管理法を施行し、輸出代金全額をラオス国内の銀行に振り込むことを義務付けた。また、主要品目を扱う輸出入企業の登録を開始し、外貨の流れを把握し、管理を進めるとしている。2023年上半期の平均インフレ率は38%、キープは対ドルで10%下落している。公的債務を巡る動きについてはラオス国内での取り組みとともに、中国などの借入相手国による支払い猶予やIMFなどとの調整も注視していく必要がある。

投資環境の改善では、優良事業者に対して通関手続きの簡素化などの便宜を与える認定事業者(AEO)制度の開始や、輸出入にかかる時間の50%以上の削減など成果が出始めている。2023年3月にはサルムサイ・コンマシット副首相を委員長とする貿易運輸円滑化委員会が発足した。ドライポートでのトラック積み替えによる輸送コスト上昇問題への対応、中国ラオス鉄道の効率的な運用などへの取り組みが注目される。また、2023年6月には保税地域に関する政府令が発布され、保税地域開発が可能となった。さらに、投資奨励法の改正や経済特区、工業団地やスマートシティ開発における法整備が進められている。

特恵関税では中国政府から後発開発途上国(LDC)向けの適用品目が2022年9月から全品目の98%に拡大された。一方で2021年11月の第76回国連総会にて、2026年中のLDCからの卒業目標が採択されており、卒業後は段階的に日本やEUも供与する一般特恵関税制度(GSP)が廃止される見通しである。

ADBは2023年のラオスの経済成長率見通しを4.0%とした。外国人観光客の増加や発電所の新規稼働や建設、ドライポートや鉄道沿線の開発、農産物の輸出拡大などがけん引すると分析した。一方で低い外貨準備高や高い公的債務残高は引き続きリスク要因であると指摘している。

表5-1 ラオスの対日主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:1,000米ドル, %)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
縫製・靴製品 41,038 55,059 41.8 34.2
階層レベル2の項目 20,709 31,031 23.5 49.8
階層レベル2の項目衣類 14,095 15,631 11.9 10.9
階層レベル2の項目スポーツ用品 1,666 2,717 2.1 63.1
鉱物 3,004 30,729 23.3 923.1
階層レベル2の項目シリコン 1,800 27,255 20.7 1414.1
電気製品および部品 14,751 17,820 13.5 20.8
農産物および食品 13,238 14,288 10.8 7.9
階層レベル2の項目コーヒー豆 6,417 4,894 3.7 △ 23.7
階層レベル2の項目バナナ 481 2,746 2.1 470.4
階層レベル2の項目黒炭・白炭 1,543 1,856 1.4 20.3
化粧品・香水 9,627 11,972 9.1 24.4
木製品 533 568 0.4 6.7
機械および部品 92 333 0.3 262.6
その他 551 1,048 0.8 90.2
合計(その他含む) 82,833 131,817 100.0 59.1

〔出所〕商工省輸出入統計を基にジェトロ作成

表5-2 ラオスの対日主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:1,000米ドル, %)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
車両および部品 82,026 102,934 69.7 25.5
階層レベル2の項目自動車 55,384 73,194 49.5 32.2
階層レベル2の項目トラクター 6,506 7,579 5.1 16.5
縫製・製靴原料 12,135 11,981 8.1 △ 1.3
階層レベル2の項目ウール 4,172 4,939 3.3 18.4
階層レベル2の項目綿製品 3,711 3,410 2.3 △ 8.1
機械・電気機器および部品 33,507 13,228 9.0 △ 60.5
階層レベル2の項目電気製品および部品 6,685 6,760 4.6 1.1
階層レベル2の項目ケーブル 2,604 2,904 2.0 11.5
農産物・食品 224 2,508 1.7 1022.1
階層レベル2の項目魚肉製品 2,048 1.4 全増
階層レベル2の項目アルコール飲料 62 35 0.0 △ 42.9
プラスチック製品 4,429 3,944 2.7 △ 10.9
その他 16,059 13,144 8.9 △ 18.2
合計(その他含む) 148,379 147,740 100 △ 0.4

〔出所〕商工省輸出入統計を基にジェトロ作成

基礎的経済指標

人口
744万人 (2022年)
面積
23万6,800平方キロメートル(2022年)
1人当たりGDP
2,047 米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 0.5 2.3 2.5
消費者物価上昇率 (%) 5.1 3.8 23.0
失業率 (%) 20.0 21.8 18.5
貿易収支 (100万米ドル) 1,104 1,740 1,390
経常収支 (GDP比(%)) △ 6.6 △ 5.0 △ 4.7
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 1,393 1,476 1,216
対外債務残高(グロス) (GDP比(%)) 70.9 79.5 104.5
為替レート (1米ドルにつき、キープ、期中平均) 9,049 9,737 14,035

注:
1人当たりGDP:推計値
貿易収支:通関ベース
対外債務残高(グロス):公的および対外公的保証債務残高
出所:
人口、消費者物価上昇率:ラオス計画投資省統計センター
面積:国連統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、対外債務残高(グロス):IMF
実質GDP成長率、経常収支、為替レート:アジア開発銀行
失業率:ラオス労働社会福祉省
貿易収支:ラオス商工省