知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 【法案提出】特許法の一部改正法律案(議案番号:2212429)

2025年08月27日

議案番号:2212429
提案日:2025年8月27日
提案者:チョン・ジンウク議員(共に民主党)外12人

提案理由及び主要内容

現行の「特許法」では、特許権等の侵害訴訟において侵害事実を立証するか、損害額を算定するための資料の確保が円滑でなく権利者の実効的な権利救済が難しいという問題がある。
とりわけ、証拠の多くが侵害者に偏在されており、権利者が積極的に侵害事実を立証するには構造的な限界が存在しているため、特許権侵害に関する立証への責任の負担を緩和し、訴訟の実効性を高めるための制度の改善が求められる。
従って、証拠調査及び証拠保全制度を導入して技術紛争の実態と真実を確保することで、特許権者及び専用実施権者の権利保護を強化し、紛争の迅速な解決を図る目的である(案第128条の3から第128条の5まで新設等)。

特許法の一部改正法律案

特許法の一部を次のように改正する。
第128条の3から第128条の5までをそれぞれ次のように新設する。
第128条の3(専門家による事実調査)①法院は特許権又は専用実施権にかかる侵害訴訟において職権又は当事者の申請により次の各号の事項を考慮して調査する証拠と関連する分野の専門家(以下、「専門家」とする)を指定し、その専門家に対し侵害の証明や侵害による損害額の算定のための証拠の確保に必要な調査(以下、「事実調査等」とする)をするよう求めることができる。
1.相手側の当事者が特許権又は専用実施権を侵害している可能性があるかどうか
2.侵害の証明や侵害による損害額の算定に必要であるかどうか
3.調査の必要性と比べて相手側の当事者への負担が相当であるかどうか
②法院は第1項の専門家に対し次の各号のいずれかに該当する者のうち1人以上を指定できる。
1.「法院組織法」第54条の2・第54条の3に基づく技術審理官や調査官
2.「民事訴訟法」第164条の2に基づく専門審理委員
3.「弁護士法」第4条に基づく弁護士の資格を有する者
4.「弁理士法」第3条に基づく弁理士の資格を有する者
5.その他大法院規則で定める者
③専門家は事実調査等のために次の各号に該当する行為をすることができる。
1.相手側の当事者の事務室、営業場、工場、その他の場所の出入り、相手側の当事者・関係人を対象とする質問及び資料の閲覧・複写、装置の作動・計測・実験及びその他それに準ずる行為
2.相手側の当事者等関係人に対する陳述の聴取又は陳述書の提出への要求
3.相手側の当事者等関係人に対し事実調査等に必要だと認める資料又は物件の提出への要求
4.法院の決定に基づく訴訟手続きの参加及び各当事者、証人、鑑定人等の訴訟関係人を対象にする質問
5.その他法院が円滑な訴訟手続きのために必要だと認める行為
④法院は事実調査等の決定に先立ち、弁論準備期日を指定して当事者及び相手側の当事者に対し技術説明又は意見を陳述できる機会を与えることができ、必要な場合、その具体的な範囲を決めて当事者の代理人又は相手側の当事者の代理人による専門家調査への参加を全部又は一部許可することができる。
⑤専門家は法院が指定する期日内に調査結果を記載した報告書(以下、「調査結果報告書」とする)を法院に提出しなければならない。この場合、専門家は事実調査等により知った事実について秘密を保持しなければならない。
⑥法院は事実調査等を受けた相手側に調査結果報告書を優先して閲覧させなければならない。この場合、事実調査等を受けた者が、営業秘密等が調査結果報告書に含まれていることを主張する場合は、主張の当否を判断するため資料の掲示を命ずることができる。
⑦法院は第6項に基づく主張が妥当だと認められれば、侵害の立証や損害額の算定に関連のない営業秘密等に関しては調査結果報告書から削除して提出することを調査した専門家に命じなければならない。この場合、法院は申請人にその削除の趣旨を知らせ、当該内容に関する証拠確保の必要性に関する意見を陳述する機会を与えなければならない。
⑧当事者は第3項から第7項までの手続きを経て提出された調査結果報告書を閲覧し証拠として申請することができる。
⑨事実調査等を受けた者は専門家が要請する資料を提供する等調査に協調しなければならない。
⑩事実調査等を拒否・妨害する場合には法院は資料の記載により証明しようとする事実に関する当事者の主張を真実なものだと認めることができる。
⑪第1項の場合、法院は申請した当事者に適当な担保を提供するよう命ずることができる。この場合、同項の担保に関しては「民事訴訟法」第122条、第123条、第125条及び第126条を準用する。
⑫その他事実調査等の範囲及び手続等に関して必要な事項は大法院規則で定める。
⑬事実調査等は「民事訴訟法」の証拠保全手続きにも活用できる。
第128条の4(専門家の除斥等)①第128条の3第2項に基づき法院により指定された専門家に「民事訴訟法」第41条から第45条まで及び第47条を準用する。
②除斥又は忌避の申請を受けた専門家はその申請に関する決定が確定されるまでその申請のあった事件の訴訟手続きに参加することができない。この場合、専門家は当該の除斥又は忌避の申請に対し意見を陳述することができる。
第128条の5(資料保全命令及び効果)①法院は特許権又は専用実施権にかかる侵害訴訟が提起される可能性が高いか、提起された場合、職権又は当事者の申請に基づき相手側の当事者に侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を棄損するか、使用することをできなくさせることがないよう送達の方法で資料保全通知をしなければならない。
②当事者が次の各号の事由を疎明して資料保全を申請した場合に法院は資料保全通知を受けた相手側の当事者が侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を棄損するか、使用することができないよう資料保全を命ずることができる。
1.資料保全命令の対象になる資料を特定するには十分な事実
2.資料保全を命じなければ申請人に回復ができない損害が発生する恐れがあるとの事実
③第2項に基づく資料保全の申請には次の各号の事項を明らかにしなければならない。
1.相手の表示
2.証明する事実
3.保全しようとする資料
4.資料保全の事由
④法院は第1項に基づく資料保全命令に先立ち資料を占有・管理・保管する者に対し意見を陳述できる機会を与えることができる。
⑤相手側の当事者が当事者の使用を妨害する目的で当該侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を棄損するか、それを使用することをできなくさせた場合には法院は資料の記載により証明しようとする事実に関する当事者の主張を真実なものだと認めることができる。
⑥第1項の管轄は「民事訴訟法」第376条を準用する。
第132条第1項本文の中「資料」を「資料(その資料の目録を含む)」にし、同条第2項前段の中「資料の所持者が第1項に基づく」を「第1項に基づく資料の提出申請があった場合、資料の所持者に対し意見を陳述させることができ、その資料の所持者が」に、「命ずる」を「命ずるか、必要な場合、職権又は当事者の申請により第128条の3に基づく専門家による事実調査等を命ずる」にし、同条に第6項及び第7項をそれぞれ次のように新設する。
⑥第1項に基づく申請に関連して同法で規定しない事項に関しては「民事訴訟法」第346条を準用する。
⑦第1項について相手側の当事者は独立して不服することができない。
第224条の3第1項各号外の部分の但し書を削除し、同条に第6項を次のように新設する。
⑥第1項に基づく秘密保持命令を受けた訴訟代理人はその代理する当事者が第132条第3項後段に基づく閲覧ができる者の対象から除外された場合、その相手側に対しても秘密を保持しなければならない。
第225条の2を次のように新設する。
第225条の2(資料保全命令の違反罪)国内外で故意に第128条の5第2項を違反した者は5年以下の懲役又は1億ウォン以下の罰金に処する。
第226条の2第2項の中「専門審理委員は」を「次の各号のいずれかに該当する者は」に、「規定を」を「規定及び『公職者の利害衝突防止法』を」にし、同項に各号を次のように新設する。
1.第128条の3第2項に基づき指定された専門官の中、公務員ではない者
2.第128条の5第4項に基づき陳述人による陳述を調書に記載する者の中、公務員ではない者
3.第154条の2に基づき指定された専門審理委員
第227条第2項を第3項にし、同条に第2項及び第4項をそれぞれ次のように新設する。
②同法に基づき宣誓した当事者ではない陳述人が嘘の陳述をした場合には5年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。
④第2項に基づく罪を犯した申述人が申述した事件の裁判が確定される前に自白又は自首した場合にはその刑を減軽又は免除する。
第229条の2の題目の中「違反罪」を「等違反罪」にし、同条第1項の中「秘密保持命令を」を「秘密保持命令及び第128条の3第5項後段に基づく秘密保持命令を」にし、同条第2項を削除する。
第232条第1項及び第2項をそれぞれ第2項及び第3項にし、同条に第1項を次のように新設し、同条第3項(従前の第2項)の中「特許庁長が」を「法院が賦課・徴収し、第2項に基づく過料は大統領令で定めるところにより特許庁長が」に改める。
①正当な理由なしに第128条の3に基づく事実調査等を拒否・妨害又は忌避する場合、法院は決定により次の各号の区分に基づく金額の過料を科す。
1.法人の場合:1億ウォン以下
2.法人の役員・従業員とその他の利害関係人の場合:5千万ウォン以下

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後6月が経過した日から施行する。
第2条(特許権又は専用実施権にかかる侵害訴訟等に関する適用例)第128条の3から第128条の5まで、第132条、第224条の3、第226条の2の改正規定は同法施行以降提起される訴訟に適用する。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195