知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 【法案提出】大・中小企業の共生協力促進に関する法律の一部改正法律案(議案番号:2209179)

2025年03月20日

議案番号:2209179
提案日:2025年3月20日
提案者:オ・セヒ議員(共に民主党)外15人

提案理由及び主要内容

現行法では、委託企業が同法を違反したことで損害を受けた者がいる場合、委託企業はその者に対し損害賠償責任を負い、それに対する損害賠償請求の訴が提起された場合、裁判所は中小ベンチャー企業部長官に当該事件に関連する調査記録の送付を求めることができる。
しかし、損害賠償請求訴訟において流用行為の立証及び損害額の算定に関する証拠資料は殆ど委託企業が保有しているため、被害を受けた中小企業は訴訟の証拠を収集することが難しい現状である。また、現行法上、中小ベンチャー企業には関連資料を提出する義務がないことから、業務上取得した秘密の漏洩禁止規定等を理由に資料の提出が行われないことが多い。
一方、米国ではディスカバリー(Discovery)制度により、違反行為の立証及び損害額の算定に関連する証拠を効果的に確保できるように定めており、ドイツは専門家調査制度(Inspection)を採用し、裁判所が指定した専門家に対し侵害の立証又は損害額の算定に必要な証拠を調査するように定めているため、これを参考にして証拠の確保を容易にするための手続きを設ける必要があるとの意見が提示されている。
従って、専門家による事実調査制度を導入し、中小ベンチャー企業部に対し資料の提出を義務化するとともに、当該資料が営業秘密等非公開資料に該当する場合には裁判所がそれを確認するようにし、営業秘密を知った者に対し秘密保持命令を下すよう定めることで、受託企業を保護し、迅速な紛争の解決に寄与する目的である(案第40条第5項から第7項まで、第20条の6から第40条の8まで新設)。

大・中小企業の共生協力促進に関する法律の一部改正法律案

大・中小企業の共生協力促進に関する法律の一部を次のように改正する。
第40条に第5項から第7項までをそれぞれ次のように新設する。
⑤中小ベンチャー企業部長官は第4項に基づき裁判所から求められた資料を提出しなければならない。但し、資料が次の各号のいずれかに該当する場合にはその限りではない。
1.他の法律に基づく非公開資料
2.営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号に基づく営業秘密をいう。以下、同一)資料
⑥裁判所は中小ベンチャー企業部長官が第5項の但し書に基づき資料を提出しない場合、同項各号に該当するかどうかを判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合、裁判所はその資料を他の者に見せてはならない。
⑦第5項第2号に該当する資料が損害の証明又は損害額の算定に必ず必要だと裁判所が判断する場合、中小ベンチャー企業部長官はその資料を提出しなければならない。この場合、裁判所は提出する要求する目的内で閲覧できる範囲又は閲覧できる者を指定しなければならない。
第40条の5第3項の前段の中「営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号に基づく営業秘密をいう)に」を「営業秘密に」に改める。
第40条の6を第40条の9に改め、第40条の6から第40条の8までをそれぞれ次のように新設する。
第40条の6(専門家による事実調査)①裁判所は第25条第2項を違反した行為に対する損害賠償請求訴訟において次の各号の事項をすべて満たしている場合、違反行為による損害の証明又は損害額の算定に必要な証拠を確保するために、当事者の申請により調査する証拠と関連する分野の専門家を指定し、指定された専門家(以下「指定専門家」とする)に対し相手側の当事者の事務所、工場及びその他の場所に出入りして相手側の当事者及びその従業員等大統領令で定める者に質問若しくは資料の閲覧・複写、装置の作動・計測・実験等必要な調査をさせるよう決定できる。
1.相手側の当事者が第25条第2項を違反する行為をした相当な可能性があること
2.調査の必要性に比べて相手側の当事者の負担が過重ではないこと
3.当事者が他の手段で証拠を収集すると期待することは難しいこと
②裁判所は第1項に基づく調査をするよう決定する場合、その調査の対象、範囲、方法、手続き及び期間を具体的に決めなければならない。この場合、相手側の当事者とその弁護士等代理人が法律の諮問又は訴訟の準備・遂行を目的に相互でやり取りした非公開情報又は資料等大統領令で定める資料は調査の対象に含めてはならない。
③裁判所は次の各号のいずれかに該当する者のうち1名以上を指定専門家に指定できる。
1.「法院組織法」第54条の2に基づく技術審理官又は第54条の3に基づく調査官
2.「民事訴訟法」第164条の2に基づく専門審理委員
3.「弁護士法」第4条に基づく弁護士の資格を有する者
4.「弁理士法」第3条に基づく弁理士の資格を有する者
5.その他大法院規則で定める者
④指定専門家は裁判所が指定した期日内に調査結果報告書を裁判所に提出しなければならない。この場合、指定専門家は職務上知った秘密を他の者に漏洩又は提供若しくは不当な目的で利用してはならない。
⑤裁判所は調査を受けた相手側の当事者に第4項の調査結果報告書を優先して閲覧させることができる。この場合、調査を受けた相手側の当事者は調査の対象・範囲に該当しない資料及び本人又は第三者の営業秘密に関する内容が調査結果報告書に含まれた場合、その内容の削除を主張できる。
⑥裁判所は第5項の後段に基づく主張に理由があると認められればその内容を調査結果報告書から削除後再度提出することを指定専門家に命じなければならない。但し、調査結果報告書に含まれた営業秘密が第25条第2項の違反による損害の証明又は損害額の算定に必ず必要な場合にはその限りではない。
⑦第6項の但し書に該当する場合、裁判所は調査の目的内で調査結果報告書に含まれた営業秘密に関する内容を閲覧できる範囲又は閲覧できる者を指定しなければならない。この場合、指定された者は閲覧した営業秘密に関する内容を他の者に漏洩又は提供若しくは不当な目的で利用してはならない。
⑧当事者又はその訴訟代理人は第4項から第7項までの手続きを経て提出された調査結果報告書を閲覧し証拠に申請できる。
⑨第1項に基づき調査を受ける相手側の当事者は指定専門家が求める資料を正当な事由なしで提供しない等調査を拒否・妨害又は忌避してはならない。
⑩第1項に基づく相手側の当事者又はその訴訟代理人は大法院規則で定めるところにより調査に参加できる。
⑪第1項に基づく裁判所の調査命令決定に異議のある者は異議を申し立てることができる。この場合、異議申立に関する裁判所の決定については独立して不服できない。
⑫その他に第1項に基づく調査の方法・手続き・期間・費用及び第4項に基づく調査結果報告書の作成方式等に必要な事項は大法院規則で定める。
第40条の7(秘密保持命令)①裁判所は第40条の2に基づく損害賠償請求訴訟においてその当事者又は利害関係者(第40条第5項第2号に基づき中小ベンチャー企業部長官が営業秘密資料を提出した場合は中小ベンチャー企業部長官を含む)が保有する営業秘密について次の各号の事由をすべて疎明して申請した場合には決定により、他の当事者(法人の場合にはその代表者をさす)、当事者の訴訟を代理する者、その他その訴訟により営業秘密を知った者に対しその営業秘密をその訴訟の継続的な遂行外の目的で使用するか若しくはその営業秘密に関係する動向に基づく命令を受けた者の外の者に公開しないことを命ずることができる。但し、その申請の時点まで他の当事者(法人の場合にはその代表者をさす)、当事者の訴訟を代理する者、その他にその訴訟により営業秘密を知った者が第1号に基づき提出された資料の閲覧や証拠調査の外の方法によりその営業秘密をすでに取得している場合にはその限りではない。
1.すでに提出されたか提出されるべきである資料、すでに調査したか調査すべきである証拠又は第40条・第40条の5に基づき提出したか提出されるべきである資料に営業秘密が含まれていること
2.第1号の営業秘密が当該の訴訟の遂行外の目的で使用若しくは公開されると、当事者又は利害関係者の営業に支障をきたす恐れがあり、それを防止するために営業秘密の使用又は公開を制限する必要があること
②当事者又は利害関係者は第1項に基づく命令(以下、「秘密保持命令」とする)の申請は次の各号の事項を書いた書面で行う必要がある。
1.秘密保持命令を受けた者
2.秘密保持命令の対象になる営業秘密を特定するには十分な事実
3.第1項各号の事由に該当する事実
③裁判所は秘密保持命令が決定された場合にはその決定書を、秘密保持命令を受ける者に送達しなければならない。
④秘密保持命令は第3項の決定書が秘密保持命令を受ける者に送達された時から効力が発生する。
⑤秘密保持命令の申請を棄却若しくは却下した裁判に対し即時抗告を提起できる。
第40条の8(秘密厳守の義務)同法に基づく職務に従事しているか若しくは従事していた委員又は公務員はその職務上知った事業者又は事業者団体に関する秘密を漏洩するか若しくは同法の施行のための目的外に利用してはならない。但し、第40条第5項に基づき資料を提出した場合にはその限りではない。
第41条第3項第4号の中「第40条の5第7項」を「第40条の5第7項、第40条の6第4項の後段又は同条第7項の後段」に改め、同項第5号及び第6号をそれぞれ次のように新設する。
5.国内外で正当な理由なしに第40条の7第1項に基づく秘密保持命令を違反した者
6.第40条の8に基づく秘密厳守の義務を違反した者
第43条第2項第1号の中「第40条」を「第40条又は第40条の6第9項」に改める。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後6月が経過した日から施行する。
第2条(専門家による事実調査に関する適用例)第40条第5項から第7項まで、第40条の6及び第40条の7の改正規定は同法施行以降訴が提起される訴訟から適用する。

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