知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 【法案提出】不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部改正法律案(議案番号:2209043)

2025年03月18日

議案番号:2209043
提案日:2025年3月18日
提案者:キム・ドンア議員(共に民主党)外17人

提案理由及び主要内容

現行法は、営業秘密の侵害訴訟及び不正競争行為に対し裁判所が当事者の申請により損害の証明又は損害額の算定に必要な資料の提出を命ずるよう定めている。
しかし、実際の訴訟の課程においては損害の証明や損害額の算定だけではなく、侵害行為自体についても立証が難しい場合が多く、実効的な証拠の調査手続が不十分であるため、侵害を立証する証拠の確保に限界があるとの指摘が持続的に提起されている。
従って、営業秘密の侵害及び侵害額の立証のために専門家事実調査制度を導入し、侵害の証明に必要な場合にも資料の提出を可能とさせる等、営業秘密の侵害訴訟において証拠を確保するために制度を改善することで、実効性のある紛争の解決手段を設ける目的である(案第14条の8等)。

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部改正法律案

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部を次のように改正する。
第14条の3の本文の中「侵害行為による損害額を算定する上で」を「侵害の証明又は侵害行為による損害額の算定に」に改める。
第14条の8を次のように新設する。
第14条の8(専門家による事実調査)①裁判所は不正競争行為、第3条の2第1項若しくは第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害に関する訴訟において侵害の証明又は損害額の算定に必要な証拠の確保のために職権又は当事者の申請に基づき次の各号の事項を考慮して調査する証拠と関連する分野の専門家を指定し、その専門家に対し相手側の当事者の事務室、工場及びその他の場所に出入りして調査を受ける当事者等に質問するか資料の閲覧・複写、装置の作動・計測・実験等必要な調査をするよう決定できる。
1.不正競争行為、第3条の2第1項若しくは第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害の可能性があるか否か
2.調査の必要性に比べて相手側の当事者に過度な負担を与えているか否か
3.当事者が他の手段により証拠を容易に収集できるか否か
②裁判所は技術の難易度・複雑性を考慮して次の各号のいずれかに該当する者の中、1人以上を第1項に基づく専門家に指定できる。
1.「法院組織法」第54条の2・第54条の3に基づく技術審理官若しくは調査官
2.「民事訴訟法」第164条の2に基づく専門審理委員
3.「弁護士法」第4条に基づく弁護士の資格を有する者
4.「弁理士法」第3条」に基づく弁理士の資格を有する者
5.その他裁判所規則で定める者
③裁判所は第1項に基づく調査の決定に先立ち、当事者及び相手側の当事者に意見を陳述できる機会を与えることができる。
④第1項に基づき指定された専門家は裁判所が指定した期日内に調査結果について記載した報告書(以下、「調査結果報告書」とする)を裁判所に提出しなければならない。この場合、専門家は調査により知った事実を秘密として保持しなければならない。
⑤裁判所は調査を受けた相手側の当事者に調査結果報告書を優先して閲覧させる必要がある。この場合、調査を受けた相手側の当事者が訴訟の対象ではない営業秘密が調査結果報告書に含まれていることを主張する際には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。
⑥裁判所は第5項の後段に基づき資料の提示を命ずる場合、その資料を他の者に見せてはならない。
⑦第5項の後段に基づき相手側の当事者が訴訟の対象ではない提出の対象となる資料に該当するとしても調査結果報告書上の営業秘密を主張する内容が損害の証明又は損害額の算定に必ず必要な場合に裁判所は目的を超えない範囲内で閲覧できる範囲又は閲覧できる者を指定しなければならない。
⑧裁判所は第5項の後段に基づく相手側の当事者の主張が妥当だと認められれば、侵害の証明や損害額の算定に必ず必要ではない営業秘密に関連する内容を調査結果報告書から削除して提出することを専門家に命じなければならない。この場合、裁判所は申請人にその削除の趣旨を知らせ、当該内容に対する証拠の確保の必要性について意見を陳述する機会を共に与えなければならない。
⑨当事者は第4項から第8項までに基づく手続きを経て提出された調査結果報告書を閲覧・謄写し証拠として申請できる。但し、裁判所が第7項に基づき調査結果報告書を閲覧できる者を指定した場合にはその者に限って調査結果報告書を閲覧できる。
⑩第1項に基づき調査を受ける相手側の当事者は専門家が要請する資料を提供しない等調査を拒否・妨害又は忌避してはならず、調査に誠実に協調しなければならない。この場合、相手側の当事者が第1項に基づく調査を拒否・妨害又は忌避した際には、裁判所は資料の記載により証明しようとする事実に関する当事者の主張を真実なものと認めることができる。
⑪裁判所は必要な場合、第1項に基づく調査を申請した当事者に対し担保額と担保提供の期間を定めて担保を提供するよう命ずることができ、当事者がそれに従わない際にはその調査申請を却下できる。この場合、その担保に関しては「民事訴訟法」第122条、第123条、第125条及び第126条を準用する。
⑫裁判所は調査の対象・方法・範囲・手続き及び期間を具体的に特定しなければならず、その他に第1項に基づく調査の範囲及び手続等に必要な事項は大法院規則で定める。
⑬第1項に基づく調査は「民事訴訟法」の証拠補填手続きにおいても活用できる。
⑭第1項に基づく調査を命ずる裁判所の決定については異議を申し立てることができる。この場合、異議申立に関する裁判所の決定については独立して不服できない。
第18条の4に第3項を次のように新設する。
③第14条の⑧第4項の後段を違反して秘密を漏洩した者は1年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。
第20条第1項に第3号を次のように新設する。
3.第14条の8第10項の前段を違反して調査を拒否・妨害・又は忌避した者

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後6月が経過した日から施行する。
第2条(営業上利益の侵害訴訟に関する適用例)第14条の3及び第14条の8の改正規定はこの法律施行以降提起される訴訟から適用する。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195