知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 【法案提出】下請取引の公正化に関する法律の一部改正法律案(議案番号:2205091)

2024年10月31日

議案番号:2205091
提案日:2024年10月31日
提案者:キム・ジョンホ議員(共に民主党)外14人

提案理由及び主要内容

 下請取引において受給事業者の技術が元事業者により奪取される不公正行為は需給事業者の技術開発の動機を阻害し、産業の全般にわたり深刻な被害をもたらす行為である。現行法は、需給事業者が受ける技術奪取による被害を防止するために「特許法」上の損害額の推定に関する規定を定める内容で2024年2月に改正された。
 しかし、現在の法的体系の下では需給事業者が損害賠償請求訴訟を起こすとしても被害を立証することが難しい状況である。とりわけ、技術奪取に係る損害の発生とその範囲を具体的に立証するための資料を確保するには限界があり、それにより受給事業者の権益が実質的に保護されない事例が頻繁に発生している。
 従って、損害賠償請求訴訟において受給事業者が主張する技術資料の不当な使用又は提供行為の具体的な行為態様について元事業者が否定する場合、元事業者が自己の具体的な行為態様を提示するようにし、正当な理由なしにそれを提示しない場合には、裁判所が需給事業者による主張を真実なものと認めるようにする等立証責任を転換する目的である。また、技術奪取による損害額を立証することが難しい場合、裁判所が「技術の移転及び事業化の促進に関する法律」第35条に基づく技術評価機関に対し技術の経済的価値を評価させ、損害額を算定する際にその評価結果を反映させるようにして下請取引において技術奪取を防止し、公正な取引秩序を確立することで、技術革新と共生協力を促す目的である(案第25条の3、第35条の6及び第35条の7の新設)。

下請取引の公正化に関する法律の一部改正法律案

下請取引の公正化に関する法律の一部を次のように改正する。
第25条の3第1項各号外の部分に但し書を次のように新設し、同項第3号の中「第12条の2、第12条の3、第13条」を「第12条の2、第13条」にし、同項に第3号の2を次のように新設する。
但し、第3号の2に該当する場合には下請の代金の5倍を超えない範囲で課徴金を科すことができる。
3の2.第12条の3を違反した元事業者
第35条の6第1項各号外の部分の中「以下、同条で『技術流用被害事業者』とする」を「以下、『技術流用被害事業者』とする」にし、同条第5項に後段を次のように新設する。
この場合、裁判所は「技術の移転及び事業化の促進に関する法律」第35条に基づく技術評価機関に対し技術の経済的価値を評価させ、損害額を算定する際にその評価結果を考慮することができる。
第35条の7を次のように新設する。
第35条の7(具体的な行為態様の提示の義務)①第12条の3第4項を違反した行為に対する損害賠償請求訴訟において技術流用被害事業者が主張する技術資料の流用行為の具体的な行為態様を否定する元事業者は、自己の具体的な行為態様を示さなければならない。但し、元事業者がそれを明かすことができない正当な理由がある場合にその限りではない。
②裁判所は元事業者が第1項の但し書に基づき自己の具体的な行為態様を示すことができない正当な理由があると主張する場合には、その主張の是非を判断するためにその当事者に対し資料の提出を命ずることができる。但し、その資料の所持者がその資料の提出を拒む正当な理由があればその限りではない。
③第2項に基づく資料提出命令に関しては第35条の2第2項、第3項を準用する。この場合、第35条の2第3項の前段の中「損害の証明又は損害額の算定に必ず必要な場合」は「技術資料の流用行為の具体的な行為態様を示すことができない正当な理由の有無の判断に必ず必要な際」とみなす。
④第2項の但し書による正当な理由がないと認められる場合、裁判所は具体的な行為態様の提示命令を下すことができる。それに対しては即時抗告することができる。
⑤裁判所は元事業者が正当な理由なしに自己の具体的な行為態様を示さない場合には、技術流用被害事業者が主張する技術資料の流用行為の具体的な行為態様を真実なものと認めることができる。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後6か月が経過した日から施行する。
第2条(適用例)第35条の6、第35条の7の改正規定は、この法律の施行以降、技術流用被害事業者が第35条に基づく損害賠償を請求する場合から適用する。

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