知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 【法案提出】特許法の一部改正法律案(議案番号:2204924)
2024年10月25日
議案番号:2204924
提案日:2024年10月25日
提案者:コ・ドンジン議員(国民の力)外16人
提案理由
特許制度では、特許に係る権利を持つ個人の辞合産権を制度上で保護するという側面と国レベルで特許保護により産業の発展を図るという二つの側面から、その制度を運営する目的を有する。しかし、侵害及び損害額の算定に必要な証拠が侵害者側に偏っており、特許権者等に対する権利保護に限界があるため、特許権侵害を予防し、企業の訴訟費用や侵害事実の立証への負担を軽減する一方、最終的には紛争の迅速な解決を図れるよう、特許侵害訴訟において証拠の収集が円滑に行われるために制度を改善する必要があるとの意見が継続的に提起されている。
従って、裁判所ではない場所において必要とされる者を対象に当事者が直接尋問できるようにする等、当事者による事実調査制度を導入し、侵害の証明又は損害額の算定に必要な資料の毀損を防止するために裁判所が資料の保全を命ずることができるようにする等、現行の資料提出命令制度の運営上の不備を改善する目的である。
主要内容
- 裁判所は特許権又は専用実施権に係る侵害訴訟において当事者の申請による決定により両当事者に対し、陳述者の数、範囲、方法及び場所を定め、相互間で尋問できる制度を導入する(案第128条の3の新設)。
- 裁判所は当事者の相互間で円滑に尋問を行うために、当事者が弁護士を訴訟代理人として選任する必要性があると認められる場合、その当事者に対し期間を定めて弁護士を選任するよう命ずることができる(案第128条の4の新設)。
- 裁判所は特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟が提起されたか提起される可能性が高い場合であって一定の事由が疎明される場合、侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を占有、管理、保管する者がそれを毀損するか使用することができなくさせないように1年の範囲内で期間を定め資料の保全を命ずることができる(案第128条の5の新設)。
- 裁判所は資料提出命令をする前に資料の範囲等に関連して当事者による協議が必要だと認められれば、当事者の出席を命ずることができる(案第132条第6項の新設)。
特許法の一部改正法律案
特許法の一部を次のように改正する。
第128条の3から第128条の5までをそれぞれ次のように新設する。
第128条の3(当事者による尋問等)①裁判所は特許権又は実用新案権に係る侵害訴訟において次の各号の事項を考慮して両当事者の申請による決定により、両当事者に対し訴訟上の攻撃又は防御方法に関わる事実や資料の検証に必要な者(当事者を含む)を対象に陳述者の数、範囲、方法及び場所を定めて相互間で尋問させることができる。
1.相手側の当事者に過度な負担を与えているか否か
2.資料や当事者が主張する事実の検証又は資料の保全のために必要な事項であるか否か
②裁判所は第1項に基づく陳述者の数、範囲、方法及び場所等を定めるために必要な場合、弁論準備期日を指定することができる。
③裁判所は第1項に基づき両当事者に対し尋問をさせる場合、次の各号のいずれかに該当する者に対し陳述者による陳述を録音装置又は映像録画装置を使用して録音又は映像録画をさせなければならない。
1.法院書記官・法院事務官・法院主事又は法院主事補
2.「公証人法」第1条の2第1号に基づく公証人
3.第1号及び第2号に基づく者に準ずる者として第1項の尋問に関わる業務を行う上で適合な者
④第3項各号のいずれかに該当する者(以下、「法院事務官等」とする)に対しては第148条から第151条までを準用する。この場合、「審判官」は「法院事務官等」に、「審判」は「尋問」とみなす。
⑤法院事務官等は第1項に基づく尋問に先立ち、陳述者に宣誓をさせなければならず、次の各号の事項について告知した後、宣誓をさせなければならない。但し、特別な事由がある場合には尋問後宣誓をさせることができる。
1.事件番号及び事件名
2.法院事務官等の氏名
3.宣誓の義務及び趣旨
4.偽証又は嘘の陳述に対する警告
5.その他裁判官が第1項の尋問に関して告知が必要だと認める事項
⑥法院事務官等は第1項に基づく尋問の終了後、即時に次の各号の事項が記載された書面上の陳述要約書を作成して裁判所に提出しなければならない。
1.事件の表示
2.法院事務官等の氏名
3.出席した当事者・代理人・通訳者と、出席しなかった当事者の氏名
4.尋問の期日及び場所
5.尋問者の個人情報
6.尋問の内容、方法及び手続きに関する当事者による異議の要旨
7.陳述の拒否及び宣誓の拒否があった際にはその内容の要旨
8.宣誓をさせることなく、当事者ではない陳述者を尋問した場合はその要旨
9.その他尋問の進行経過を確認するために必要な事項
⑦第1項に基づく尋問の進行中に、尋問の内容、方法及び手続き等に異議がある当事者は異議を申し立てることができる。この場合、法院事務官等はその異議の要旨について陳述要約書に記載しなければならない。
⑧相手側が正当でない方法により陳述を強要する場合には、陳述者又は当事者は裁判所に対し尋問手続きの終了又は中止を申請することができ、それに対する決定が下りるまで尋問が中止される。
⑨両当事者は第3項に基づき録音又は映像録画された陳述者に対する尋問の内容の中で必要な部分を特定して録音物又は映像録画物とそれに関する録取書を証拠として提出することができる。この場合、裁判所が必要だと認める際には当事者に対し尋問の内容全体を記録した録音物又は映像録画物とそれに関する録取書を提出するよう命ずることができる。
⑩両当事者のうち片方が正当な事由なしに出席しないか宣誓又は陳述を拒否する等、第1項に基づく尋問手続きを妨害する際には、裁判所は陳述者が陳述する内容に対する相手側の当事者による主張を真実なものと認めることができる。この場合、陳述者が陳述する内容について具体的に主張することが非常に困難であり、陳述により証明する事実について他の証拠で証明することを期待することが難しい時には、陳述により証明しようとする事実に関する主張を真実なものと認めることができる。
⑪両当事者のうち片方が正当な事由なしに出席しないか宣誓又は陳述を拒否する等、第1項に基づく尋問手続きを妨害する際には、裁判所はそれによる訴訟費用を当該の当事者に負担させるよう命ずることができる。
⑫この法律上特別な規定がある場合を除き、当事者ではない陳述者を第1項に基づき尋問する場合には「民事訴訟法」第303条から第309条まで、第311条、第312条、第314条、第315条、第321条から第324条まで、第327条第1項、第327条の2及び第328条を、当事者である陳述者を第1項に基づき尋問する場合には「民事訴訟法」第309条、第321条、第322条、第327条第1項、第327条の2及び第370条を準用する。
⑬当事者ではない陳述者が陳述拒否又は宣誓拒否をした場合、拒否する理由を疎明しなければならない。この場合、当事者は裁判所に陳述拒否又は宣誓拒否に関する裁判を申請することができ、陳述拒否又は宣誓拒否の裁判に関しては「民事訴訟法」第317条及び第318条を準用する。
⑭第1項の尋問に対する裁判所の決定に対しては異議を申し立てることができる。この場合、異議申立に関する裁判所による決定に対しては独立して不服することができない。
⑮第1項に基づく尋問に必要な事項は大法院規則で定める。
第128条の4(弁護士選任の命令)①裁判所は第128条の3第1項に基づく尋問の円滑な進行のために当事者が弁護士を訴訟代理人として選任する必要性があると認められる場合、その当事者に対し期間を定め弁護士を選任するよう命ずることができる。
②裁判所は当事者が第1項に基づく命令を受けたにも関わらず、定められた期間内に弁護士を選任しなかった場合、第128条の3第1項に基づく尋問を許容する決定を取り消すことができる。
③裁判所は第128条の3第1項に基づく申請による相手側の当事者が第1項に基づく命令を受けたにも関わらず、正当な事由なしにそれに従わなかったことで第128条の3第1項に基づく尋問が実施されなかった場合、第128条の3第10項に基づき認定をすることができる。
第128条の5(資料保全命令及び効果)①裁判所は特許権又は専用実施権に係る侵害訴訟(侵害禁止仮処分を含む)が提起されたか提起される可能性が高い場合であって次の各号の事実が認められる場合、その当事者の申請により侵害の証明又は侵害による損害額の算定に必要な資料を占有・管理・保管する者がそれを毀損するか使用することができなくさせないように1年の範囲内で期間を定めて資料の保全を命ずることができる。この場合、大法院規則で定めるところによりその期間を延長することができる。
1.資料保全命令の対象になる資料を特定するには十分な事実
2.資料の保全を命じなければ申請人に回復できない損害が発生する恐れがあるとの事実
②当事者が第1項に基づく資料保全命令を申請する場合には次の各号の事項を疎明しなければならない。
1.資料を占有・管理・保管する者
2.証明する事実
3.保全対象の資料
4.資料保全の事由
③裁判所は第1項に基づく資料保全命令をする場合、事前に資料を占有・管理・保管する者に対し意見を陳述できる機会を与えることができる。
④裁判所は必要な場合、第1項の資料保全命令を申請した当事者(以下、同条で「申請当事者」とする)に対し担保額と担保提供の期間を定めて担保を提供するよう命ずることができ、それに従わなかった場合にはその申請を却下することができる。この場合、その担保に関しては「民事訴訟法」第122条、第123条、第125条及び第126条を準用する。
⑤資料を占有、管理又は保管する者が第1項の資料保全命令に従わなかった際には、裁判所は資料の記載により証明しようとする事実に関する資料保全命令に対し申請当事者の主張を真実なものだと認めることができる。
⑥相手側の当事者は第1項の資料保全命令の対象になった資料を電子的形態で管理し、業務上の理由によりその資料を更新する必要がある場合には裁判所から許可を得てその命令が下された際の現状通りその資料の写本を裁判所に提出した以降、その資料を更新することができる。
⑦資料保全を命ずる裁判所の決定に対しては異議を申し立てることができる。この場合、異議申立に関する裁判所の決定に対しては独立して不服することができない。
⑧第1項に基づく裁判所が資料保全を命じた後にも本案の訴訟を提起しない場合には、裁判所は2週以上の期間を定めて申請当事者に対し本案の訴訟を提起してそれを証明する書類を提出するよう命じなければならない。
⑨申請当事者が第8項に基づき指定した期間内に訴訟を提起したことを証明する書類を提出しなかった際には、裁判所は相手側の当事者の申請による決定により申請当事者に対し資料保全命令に関する費用の負担及び資料保全命令の取り消しを命ずることができる。
⑩第9条の決定に対しては即時抗告をすることができる。
⑪第1項に基づく資料保全命令に関する費用は本案の訴訟に関する訴訟費用の一部にする。
⑫第1項の管轄裁判所に関しては「民事訴訟法」第376条を準用する。
第132条第1項の本文の中「により」を「による決定により」に、「資料」を「資料(その資料の目録を含む。以下、同条で同一)」に改め、同条第2項の前段の中「裁判所は資料の」を「裁判所は第1項に基づく当事者の申請がある場合、資料の所持者に対し意見を陳述させることができ、その資料の」に改め、同条第3項の後段の中「ならない」を「ならなく、『民事訴訟法』第163条第1項にも関わらず当事者をその指定から除外することができる」に改め、同条に第6項から第8項までをそれぞれ次のように新設する。
⑥裁判所は第1項に基づき資料提出を命ずる場合、両当事者による協議が必要だと認める際には期日を決めて両当事者に対し出席を命ずることができる。
⑦第1項に基づく資料提出の申請を引用する裁判所による決定に対し相手側の当事者が異議を申し立てることができる。この場合、異議申立に関する裁判所の決定に対しては独立して不服することができない。
⑧第1項に基づく申請と関連してこの法律上で規定していない事項に関しては「民事訴訟法」第345条及び第346条を準用する。
第224条の3第1項各号外の部分の但し書を削除し、同条第5項の中「即時抗告を」を「異議申立を」に改め、同項に後段を次のように新設し、同条に第6項を次のように新設する。
この場合、異議申立に関する裁判所の決定に対しては独立して不服することができない。
⑥第1項に基づく秘密保持命令を受けた訴訟代理人は、本人が代理する道理者が第132条第3項の後段に基づき閲覧できる者から除外された場合、その当事者に対しても秘密を保持しなければならない。
第224条の4第3項の中「即時抗告を」を「異議申立を」に改め、同項に後段を次のように新設する。
この場合、異議申立に関する裁判所による決定に対しては独立して不服することができない。
第225条の2を次のように新設する。
第225条の2(資料保全命令の違反罪)国内外で正当な事由なしに第128条の5第1項に基づく資料保全命令を違反した者に対し3年以下の懲役又は3千万ウォン以下の罰金を科す。
第226条の2第2項の中「専門審理委員は」を「次の各号のいずれかに該当する者は」に、「第132条までの規定を」を「第132条まで及び『公職者の利害衝突防止法』を」に改め、同項に各号を次のように新設する。
1.第128条の3第3項に基づき陳述者による陳述を録音又は映像録画する者のうち公務員ではない者
2.第154条の2に基づき指定された専門審理委員
第227条第2項を第3項に改め、同条第2項及び第4項をそれぞれ次のように新設する。
②この法律に基づき宣誓した当事者ではない陳述者が嘘で陳述した場合には、5年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金を科す。
④第2項に基づく罪を犯した陳述者が陳述した事件の裁判が確定される前に自白又は自首した場合にはそれに対する刑を減軽又は免除することができる。
第232条第2項を第3項に改め、同条に第2項を次のように新設する。
②第128条の3第1項に基づき尋問をする両当事者のうち正当な事由なしに出席しないか宣誓又は陳述を拒否する等尋問手続きを妨害する者に対しては500万ウォン以下の罰金を科す。附則
第1条(施行日)この法律は、公布後6か月が経過した日から施行する。
第2条(特許権又は専用実施権に係る侵害訴訟等に関する適用例)第128条の3、第128条の4、第128条の5、第132条及び第224条の3、第226条の2、第232条第2項の改正規定は、この法律の施行以降、提起される訴訟から適用する。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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