知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 商標法の一部改正法律案(議案番号:2120764)

2023年03月20日

議案番号:2120764
提案日:2023年3月20日
提案者:ク・ジャグン議員外9人

提案理由

出願商標が「商標法」第34条第1項第7号又は第35条第1項に定める他人の先願(先登録)商標と同一・類似の場合は、商品の出所につき誤認混同をきたすおそれがあるという理由で商標登録が拒絶されており、2022年、拒絶理由がある商標登録出願のうち「商標法」第34条第1項第7号又は第35条第1項に該当する出願は約40%に上り、そのうち約82%は個人・小規模事業者・中小企業等が出願した件に当たる。
また、先登録商標の商標権者が取引市場で出願商標と商品の出所につき誤認混同がないと判断して出願商標の商標登録に同意するとしても、現行の「商標法」はそれを認めていないことから、出願人は迂回手続き(他人の商標権を譲り受けて登録し、それを再度譲り渡す方式)を通じて商標を登録するという不便がある。
一方、審査官により商品の出所につき誤認混同をきたすおそれがあるという判断から商標登録が拒絶されたにもかかわらず、実際の取引市場では商標が共存する場合があるため、審査官による商品の出所につき誤認混同をきたすおそれがあるか否かの判断のみをもって出願商標の商標登録の可否を決めることには限界があるとの批判がある。
そのため、出願商標が他人の先登録商標と同一・類似で、商標登録の拒絶理由があるとしても、先登録商標の商標権者が出願商標の商標登録に同意すれば、商標を登録できるようにすることで審査過程において実際の取引社会の事情を考慮できるようにし、出願人が迂回手続きを通じて商標を登録するという不便を解消する一方、個人・小規模事業者・中小企業等の商標登録の可能性を高められるようにしようとするものである。

主要内容

  1. 先願(先登録)商標権者の同意による拒絶理由解消事由の規定(案第34条第1項第7号ただし書及び第35条第1項ただし書新設)。
  2. 先願(先登録)商標権者の同意により登録された商標が不正競争の目的で使用される場合、商標登録取消事由として規定(案第119条第1項第5号の2新設)し、取消審判の除斥期間を規定(案第122条第2項)。

商標法の一部改正法律案

商標法の一部を次のように改正する。
第34条第1項第7号中「使用する商標」を「使用する商標。」に改め、同号にただし書を次のように新設し、同条第3項各号以外の部分中「第3号まで及び第5号から」を「第3号まで、第5号、第5号の2及び第6号から」に改める。
ただし、その他人から商標登録に対する同意を得た場合(同一の商標として、その指定商品と同一の商品に使用する商標に対して同意を得た場合は除く。)には、商標登録を受けることができる。
第35条第1項にただし書を次のように新設する。
ただし、先に出願した者から商標登録に対する同意を得た場合(同一の商標として、その指定商品と同一の商品に使用する商標に対して同意を得た場合は除く。)には、後に出願した者も商標登録を受けることができる。
第119条第1項に第5号の2を次のように新設する。
5の2.第34条第1項第7号ただし書又は第35条第1項ただし書に基づいて登録された商標の権利者が自己の登録商標の指定商品と同一・類似の商品に、不正競争を目的に自己の登録商標を使用することで需要者に商品の品質の誤認を生じさせたか、又は他人の業務に関わる商品との混同を生じさせた場合
第122条第2項中「第119条第1項第1号・第2号・第5号」を「第119条第1項第1号・第2号・第5号・第5号の2」とする。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後6か月が経過した日から施行する。
第2条(商標の共存に関する適用例)第34条第1項第7号ただし書、第35条第1項ただし書、第119条第1項第5号の2及び第122条第2項の改正規定は、この法律の施行後に出願する商標登録出願、変更出願、分割出願及び指定商品追加登録出願から適用する。


新旧条文対照表
現行 改正(案)
第34条(商標登録を受けることができない商標)①第33条にもかかわらず次の各号のいずれかに該当する商標については、商標登録を受けることができない。
1.~6.(略)
7.先願による他人の登録商標(登録された地理的表示団体標章は除く。)と同一・類似の商標で、その指定商品と同一・類似の商品に使用する商標〈ただし書新設〉




8.~21.(略)
②(略)
③商標権者又はその商標権者の商標を使用する者は、第119条第1項第1号から第3号まで及び第5号から第9号までの規定に該当するとの理由で商標登録の取消審判が請求され、その請求日以後に次の各号のいずれかに該当するようになった場合、その商標と同一・類似の商用[同一・類似の商標(地理的表示団体標章の場合には同一であると認められる商標をいう。)を指定商品として再び登録を受けようとする場合に限定する。]に対しては、その該当するようになった日から3年を経過した後に出願してこそ商標登録を受けることができる。
1.~3.(略)
④(略)
第35条(先願)①同一・類似の商品に使用する同一・類似の商標について、異なった日に二以上の商標登録出願がある場合には、先に出願した者だけがその商標の登録を受けることができる。〈ただし書新設〉




②~⑤(略)
第119条(商標登録の取消審判)①登録商標が次の各号のいずれかに該当する場合には、その商標登録の取消審判を請求することができる。
1.~5.(略)
〈新設〉




6.~9.(略)
②~⑦(略)
第122条(除斥期間)①(略)
 ②第119条第1項第1号・第2号・第5号、第7号から第9号まで及び第120条第1項に該当することを事由とする商標登録の取消審判及び専用使用権若しくは通常使用権登録の取消審判は、取消事由に該当する事実がなくなった日から3年を経過した後には請求することができない。
第34条(商標登録を受けることができない商標)①---------------------------------------。
1.~6.(現行に同じ)
7.---------------------------------------------------------------------使用する商標。ただし、その他人から商標登録について同意を受けた場合(同じ商標で、その指定商品と同一の商品に使用する商標について同意を受けた場合は除く。)には、商標登録を受けることができる。
8.~21.(現行に同じ)
②(現行に同じ)
③---------------------------------------------------------------------第3号まで、第5号、第5号の2及び第6号から---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1.~3.(現行に同じ)
④(現行に同じ)
第35条(先願)①---------------------------------------------------------------------------------------------------------。ただし、先に出願した者から商標登録について同意を受けた場合(同じ商標で、その指定商品と同一の商品に使用する商標について同意を受けた場合は除く。)には、後に出願した者も商標登録を受けることができる。
②~⑤(現行に同じ)
第119条(商標登録の取消審判)①----------------------------------------------------。
1.~5.(現行に同じ)
5の2.第34条第1項第7号ただし書又は第35条第1項ただし書に基づいて登録された商標の権利者が自己の登録商標の指定商品と同一・類似の商品に、不正競争を目的で自己の登録商標を使用することから、需要者に商品の品質の誤認を生じさせるか、又は他人の業務に係る商品との混同を生じさせる場合
6.~9.(現行に同じ)
②~⑦(現行に同じ)
第122条(除斥期間)①(現行に同じ)
第119条第1項第1号・第2号・第5号・第5号の2---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------。

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