知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法の一部改正法律案(議案番号:2120028)

2023年02月15日

議案番号:2120028
提案日:2023年2月15日
提案者:ファン・ウナ議員外10人

提案理由

昨年、某製薬会社は、薬理効果に対する実験結果を操作したデータと正常データを一緒に提出して薬品関連特許を取得した。その後、データが操作された事実が発覚され、操作部分のみ削除して特許審判院に特許訂正請求をすることで当該特許を維持した事件が発生した。それに対し、特許庁は、虚偽の行為の罪で検察に捜査依頼及び職権による特許無効審判を請求した。また、公正取引委員会は、当該製薬会社が操作した実験データで不当に権利範囲を広げ、後発企業の市場参入を意図的に妨害する目的があったとして、課徴金の賦課と是正措置を命じた。
ところが、以上の事例のように、特許出願の際に添付される明細書のデータを騙す等の虚偽やそれに準ずる不正行為により特許を取得したにもかかわらず、操作部分のみ削除して有効なデータのみ残す方式の訂正請求書を提出すれば、当該特許を維持できるという現行法の欠点が露呈した。そのため、今後、それを悪用する事例も増えるものと予想されることから、対策作りが急がれている状況である。
そのため、出願人が虚偽や不正行為により特許を取得した場合、審査官が特許全体を無効にする審判を請求できるようにし、特許権者が虚偽等の不正行為により取得した特許に対して訂正請求及び訂正審判を請求できないようにする等、現行制度の運営上現れた一部の不備を改善・補完することで、特許制度の公正性を強化しようとするものである。

主要内容

  1. 出願人が故意に明細書又は図面に虚偽事項を記載する等の虚偽やその他の不正行為により特許を取得した場合、審査官等は特許請求項全体を対象に無効審判を請求するようにする(案第133条第1項第9号及び第215条第2項新設等)。
  2. 虚偽やその他の不正行為により特許を取得して特許無効審判が提起された場合は、被請求人(特許権者)に対して特許無効審判の手続きにおける特許訂正請求を制限する(案第133条の2第1項)。
  3. 特許権者が虚偽やその他の不正行為により特許を取得した場合、特許権者の特許訂正審判を請求できないようにする(案第136条第1項)。
  4. 特許権者が虚偽やその他の不正行為により特許を取得した場合に認められても、特許訂正審判において、それに対する特許権者の意見書提出の機会を与える(案第136条第6項第4号新設)。
  5. 虚偽やその他の不正行為により特許を取得した場合に当たって特許を無効とする審決又は判決をする場合は、訂正前の明細書又は図面によって特許出願、出願公開、特許決定又は審決及び特許権の設定登録がなされたとみなす(案第136条第11項新設)。
  6. 特許権者が虚偽やその他の不正行為により特許を登録された後、当該特許に対して訂正を認められた場合、審査官等が特許訂正の無効審判を請求できるようにする(案第137条第1項)。
  7. 虚偽やその他の不正行為により特許を取得した特許権者に対しては、審査官等が請求した特許訂正無効審判の手続きにおいて特許の訂正請求をできないようにする(案第137条第3項)。

参考事項

この法律案は、ファン・ウナ議員が代表発議した「実用新案法の一部改正法律案」(議案番号第20027号)の議決を前提にしているため、同法律案が議決されないか、修正議決される場合は、それに合わせて調整されるべきである。

特許法の一部改正法律案

特許法の一部を次のように改正する。
第132条の3第3項前段中「第6項まで、第8項、第10項から第13項まで」を「第6項(第4号は除く。)まで、第8項、第10項、第12項から第14項まで」に改め、同項後段中「第136条第11項」を「第136条第12項」に改める。
第133条第1項各号以外の部分後段中「できる」を「できるが、第9号に該当して請求する場合は、請求項全体を対象に請求しなければならない」に改め、同項に第9号を次のように新設する。
9.故意に明細書又は図面に虚偽事項を記載する等、虚偽やその他の不正行為により特許を取得した場合
第133条の2第1項前段中「該当する」を「該当し、第133条第1項第9号に該当しない」に改め、同条第4項前段中「第13項」を「第14項」」とし、同項後段中「第136条第11項」を「第136条第12項」とする。
第136条第1項各号以外の部分中「該当する」を「該当し、第133条第1項第9号に該当しない」に改め、同条第6項に第4号を次のように新設し、同条第11項から第13項までをそれぞれ第12項から第14項までとし、同条に第11項を次のように新設し、同条第14項(従前の第13項)中「第12項」を「第13項」とする。
4.第133条第1項第9号に該当する場合
⑪第10項にもかかわらず、第133条第1項第9号に該当して特許を無効とする審決又は判決をする場合は、訂正前の明細書又は図面によって特許出願、出願公開、特許決定又は審決及び特許権の設定登録がなされたとみなす。
第137条第1項各号以外の部分中「違反した」を「違反した場合や第133条第1項第9号の理由に該当するにもかかわらず、特許発明の明細書又は図面に対する訂正がなされた」に改め、同条第3項前段中「該当する」を「該当し、第133条第1項第9号に該当しない」に改める。
第215条見出し以外の部分を第1項とし、同条に第2項を次のように新設する。
②第1項にもかかわらず、第133条第1項第9号の理由により同条第2項に基づく無効審判を請求するか、同条第3項に基づく特許を無効にする審決をする場合は、請求項全体を対象にしなければならない。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後3か月が経過した日から施行する。
第2条(特許の無効審判に関する適用例)第133条第1項及び第215条の改正規定は、この法律の施行後に設定登録された特許権から適用する。
第3条(特許無効審判の手続きにおける特許の訂正に関する適用例)第133条の2第1項の改正規定は、この法律の施行後に設定登録された特許権から適用する。
第4条(訂正審判に関する適用例)第136条第1項・第6項・第11項の改正規定は、この法律の施行後に設定登録された特許権から適用する。
第5条(訂正の無効審判に関する適用例)第137条第1項及び第3項の改正規定は、この法律の施行後に設定登録された特許権から適用する。

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