知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部改正法律案(議案番号:2110984)

2021年06月23日

議案番号:2110984

提案日:2021年6月23日

提案者:イ・ギュミン議員外10人

提案理由

現行法は、不正競争行為等により、営業秘密のような知的財産権に準ずる法益が侵害されると、その行為により営業上の利益を侵害された者(以下、「被害者」という。)は、その侵害行為に対する損害賠償を請求することができ、これに対して法院は、損害賠償額を算定するに当たり営業上の利益を侵害した者(以下「侵害者」という。)の利益額を被害者の損害と推定することができるように規定している。
しかし、損害額を算定するためには被害者が侵害者の利益額を立証しなければならないが、侵害者が保有している営業秘密のような主要情報を被害者が確保して損害額を立証し、それを裁判過程で現出することは事実上不可能に近いため、それに対しては適正に立証責任が分配されるように制度を改善すべきであるという指摘がある。
一方、2016年の「特許法」の改正を通じて、特許権侵害による損害賠償額を算定するに当たり、法院の鑑定命令及び当事者の説明義務を付与し、侵害者に資料提出命令の対象・範囲を拡大する等における損害額算定制度の改善が行われた。しかし、現行法は、類似な領域を取り扱っているにも関わらず、制度変化の流れに追いつけず、そのため、訴訟時の被害当事者の実質的な救済は、特許権の侵害訴訟より難しい状況である。
そこで、侵害者の侵害行為で受けた損害額の算定のために鑑定人に対する当事者の説明義務を課し、迅速・正確な損害額の算定を図るようにする一方、侵害者が保有している証拠に対して提出命令の対象と範囲を拡大し、法院の証拠提出命令に対する不応時の制裁効果の導入を通じて、法院の証拠提出命令の実効性を向上して被害者の効果的な権利救済を図ろうとするものである。

主要内容

  1. 不正競争行為又は営業秘密の侵害行為による営業上利益の侵害訴訟において、法院が提出を命ずることができる要件に侵害行為の立証を含めるようにする(案第14条の3第1項)。
  2. 証拠提出命令の拒否理由の妥当性を判断するために法官のみが予め確認する秘密審理手続制度を導入する(案第14条の3第2項新設)。
  3. 侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要な場合には、営業秘密であっても提出義務を課し、法院の提出命令に従わない場合、相手方の主張事実を真実なものに認めるようにすることで、被害者等の立証負担を緩和する(案第14条の3第3項から第5項まで新設)。
  4. 不正競争行為又は営業秘密の侵害行為による損害額算定のために法院が鑑定を命じた際には、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明するように義務化する(案第14条の8新設)。

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部改正法律案

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部を次のように改正する。

第14条の3の本文のうち、「侵害行為による損害額を算定」を「侵害の証明又は侵害による損害を計算」にして、同条の題目以外の部分を第1項とし、同条第2項から第5項までをそれぞれ次のように新設する。
②法院は、資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合、法院は、その資料を他の者に見られるようにしてはならない
③第1項により提出すべき資料が営業秘密に該当するが、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要な際には、第1項の但し書による正当な理由と見做さない。この場合、法院は、提出命令の目的内で閲覧できる範囲又は閲覧できる者を指定しなければならない。
④当事者が正当な理由無しに資料提出の命令に従わない際には、法院は、資料の記載に対する相手方の主張を真実と認めることができる。
⑤法院は、第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することに著しく困難な事情があり、資料により証明する事実を他の証拠により証明することを期待し難い際には、その当事者が資料の記載により証明しようとする事実に関する主張を真実なものと認めることができる。
第14条の4第1項第1号のうち、「準備書面又は既に調査し、若しくは調査しなければならない証拠」を「準備書面、既に調査し、若しくは調査しなければならない証拠又は第14条の3第2項により提出し、若しくは提出しなければならない資料」とする。
第14条の8を次のように新設する。
第14条の8(鑑定事項の説明義務)不正競争行為、第3条の2第1項や第2項を違反する行為又は営業秘密の侵害行為による営業上利益の侵害に関する訴訟において、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じた際には、当事者は、鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。

附則

第1条(施行日)この法律は、公布後3ヶ月が経過した日から施行する。
第2条(適用例)この法律は、この法律の施行後に提起される訴訟から適用する。

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