知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法の一部改正法律案(議案番号:2104891)
2020年11月03日
議案番号:2104891
提案日:2020年11月3日
提案者:ソン・ガブソク議員外10人
提案理由
特許出願人・特許権者の権利救済を拡大するために、特許出願及び特許権の回復要件を合理的な基準に緩和し、特許拒絶決定の後に出願人に十分な審判の請求期間を提供することで、請求期間の延長や請求理由を補正するなどの不必要な行政処理を最小限にするよう、特許拒絶決定等に対する審判及び再審査の請求期間を増やし、分割出願の優先権主張の記載を省略できるようにすることで、現行制度の運営上現れた一部の不備点を改善・補完し、出願人の便宜を図ろうとするものである。また、特許が決定された場合に設定登録をしていなければ、出願日から1年以内に優先権主張出願をすることができるように、その対象を特許決定された特許出願に拡大し、特許拒絶決定に対する審判の請求が棄却された後にも一定の範囲内で拒絶決定に含まれていない請求項を分離して出願することができるように分離出願制度を導入して、出願人が特許を受けることができる機会を拡大する。一方、共有物分割請求で共有特許権が他人に移転されても、実施中の他の共有特許権者に通常実施権を付与して実施事業を続けられるようにすることで、共有特許権者を保護しようとするものである。
主要内容
- 特許に関する手続き・特許出願・特許権の回復要件を緩和(案第16条第2項、第67条の3第1項及び第81条の3第1項)
特許に関する手続きで補正書類の提出期間が満了して取り下げとみなされる、又は手続きに該当する期間を守れず無効処分になった特許出願や特許権を回復するための要件として、責任を負うことができない事由を適用することで、回復要件が厳格すぎて国民の権利が制限される恐れがあるため、特許出願手続きの無効処分又は特許出願・特許権の回復要件を、責任を負うことができない事由から正当な事由に緩和する。 - 分割出願の優先権主張及び証明書類の提出を省略(案第52条第4項新設及び第5項から第7項まで)
分割の基礎となった特許出願(原出願)が、適法に優先権主張され証明書類が提出された場合でも、その分割出願についての同一な手続きを進めることで不必要な行政処理が発生し、出願人の単純な過ちや誤認及び混同により分割出願の際に優先権主張が欠落した場合には、分割出願が自分の原出願により拒絶決定される問題があり、それを補完するために原出願が適法に優先権主張などをした場合に、その分割出願に対しても優先権主張され証明書類が提出されたとみなす。 - 分離出願制度の導入(案第52条第8項及び第52条の2新設、第59条第3項、第62条第6号、第92条の2第4項及び第133条第1項第7号)
現行の分割出願は、特許拒絶決定の謄本の送達を受けた日から30日以内の期間までのみ可能であり、出願人は特許拒絶決定の審判を請求するとともに、請求が棄却された場合に備えて、出願しなくてもいい分割出願をすることで、不必要な追加費用を支出し、審判の請求が棄却された場合には請求範囲に記載された発明のうち登録可能な発明があっても救済が不可能なため、出願人の特許取得の機会が制限される問題点があった。そこで、特許拒絶決定の審判の請求が棄却された後、特許法院に訴えを提起することができる期間に審査官が特許拒絶決定の対象にしていなかった請求項に記載されている発明を分離して出願できるように分離出願制度を導入し、分離出願は分離出願日から30日以内に出願審査の請求ができるようにする一方、分離出願の範囲を違反した場合には、特許拒絶決定又は無効審判の対象となり、登録遅延による特許権存続期間の延長起算日は分離出願日にする。 - 特許出願等を基礎とした優先権主張出願の対象を拡大(案第55条第1項第2号・第4号及び第56条第1項第2号)
特許出願日から1年以内の場合には、特許拒絶決定の謄本の送達を受けた日から30日まで優先権主張出願をすることができる一方、登録決定謄本の送達を受けた場合には、その当日に特許決定が確定され特許出願日から1年以内であっても、それを基礎として優先権主張出願をすることができず、そのために改良された発明で出願できないという指摘があった。特許が決定された場合でも、設定登録をしていなければ出願日から1年以内に優先権主張出願ができるよう、優先権主張出願の対象を特許決定された特許出願に拡大する。 - 再審査の請求対象及び期間の拡大(案第67条の2第1項・第3項)
特許が決定された後には請求範囲の変更手続きが複雑で、市場状況に応じた適切な権利行使が不可能であり、より強力な特許権の確保が困難であるだけでなく、出願人が訂正したい内容が含まれている状態で特許が決定された場合にそれを訂正するためには、訂正審判を請求する方法しかない。また、再審査の請求期間が30日と短いため、再審査を請求する際に提出する補正書の作成に十分な期間が必要であるという要求が増加するにしたがって、再審査の請求対象を現行の特許拒絶決定された特許出願から設定登録前の特許決定された特許出願まで拡大し、再審査の請求期間を3ヶ月に延長する一方、分離出願を再審査の請求対象から除外し、特許拒絶決定が取り消された際には再審査の請求が可能であることが明確になるよう、一部の不備点を補完する。 - 実施中である共有特許権者の保護(案第122条)
共有特許権が共有物分割請求され、他の特許共有者が本人の意思とは無関係に競売によって持分を喪失した場合、特許侵害を回避するためには実施事業を中断しなければならないという問題があった。そのため、実施中である他の共有特許権者の実施事業を保護するための制度的な装置が必要なため、共有物分割請求で特許権が他人に移転される場合、共有特許権者に通常実施権を付与するようにして、通常実施権を受けた共有特許権者は競売などにより特許権の移転を受けた特許権者に相当の代価を支給するようにする。 - 特許拒絶決定等に対する審判の請求期間を延長(案第132条の17、第52条第1項第2号及び第53条第1項第1号)
現行の特許拒絶決定等に対する審判の請求期間は、特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日以内で世界主要国に比べて短いため、審判請求人が審判準備のための期間を確保するために期間を延長するか、又は審判を請求した後に請求の理由を補正するなどの不必要な手続きとそれに伴う費用が追加発生するという問題点があり、特許拒絶決定等に対する審判の請求期間を現行の30日から3ヶ月に延長する。 - その審判請求の対象となる特許拒絶決定で拒絶されなかった請求項
- 選択的記載事項のうち、一部だけ拒絶された請求項からその部分を除いた請求項
- 第1号又は第2号を第47条第3項各号(同項第4号は除く。)のいずれかに該当するように記載した請求項
- 第1号から第3号まで、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲を外れた部分を削除した請求項 ②第1項により分離された特許出願(以下「分離出願」という。)に関しては、第52条第2項から第5項までの規定を準用する。この場合、「分割出願」は、「分離出願」とみなす。
- 再審査を請求する際に、既に再審査による特許可否の決定がある場合
- 第132条の17による審判請求がある場合(第176条第1項により特許拒絶決定が取り消された際には除く。)
- その特許出願が第52条の2による分離出願である場合 第67条の3第1項の本文のうち、「責任を負うことができない事由」を「正当な事由」にする。
法律第 号
特許法の一部改正法律案
特許法の一部を次のように改正する。第16条第2項のうち、「補正命令を受けた者が責任を負うことができない事由」を「正当な事由」とする。
第52条第1項第2号のうち、「30日」を「3ヶ月」とし、同条第4項から第6項までをそれぞれ第5項から第7項までとし、同条第5項(従前の第4項)のうち、「分割出願の場合に第54条による優先権を主張する者は同条」を「第4項により優先権を主張したとみなす分割出願に関しては、第54条第7項又は第55条第7項による期限が過ぎた後にも分割出願をした日から30日以内に、その優先権主張の全部又は一部を取り下げることができ、第54条」とし、同条に第4項及び第8項をそれぞれ次のように新設する。
④分割の基礎となった特許出願が第54条又は第55条により優先権を主張した特許出願である場合には、第1項により分割出願をした際にその優先権主張の基礎となる出願に関して第54条第3項又は第55条第2項により優先権を主張したものとみなし、分割の基礎となった特許出願に対して第54条第4項により提出された書類又は書面がある場合には、分割出願に対しても該当書類又は書面が提出されたものとみなす。
⑧第52条の2第1項による分離出願は、第1項にもかかわらず、その一部を新しい特許出願として分割することはできない。
第52条の2を次のように新設する。
第52条の2(分離出願)①特許拒絶決定を受けた者は、第132条の17による審判請求が棄却された場合に、その審決の謄本の送達を受けた日から30日(第186条第5項により審判長が付加期間を定めた場合には、その期間をいう。)以内に、その特許出願の出願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内で、その特許出願の一部を新しい特許出願に分離することができる。この場合、新しい特許出願の請求範囲には、次の各号のいずれかに該当する請求項のみ記載することができる。
③分離出願をする場合には、第42条の2第1項の後段又は第42条の3第1項にもかかわらず、特許出願書に最初に添付した明細書に、請求範囲を記載しないか、又は明細書及び図面(図面の中の説明部分に限定する。)を国語以外の言語で書くことはできない。
④第1項にもかかわらず、分離出願は、その一部を新たな特許出願に分離することができない。
第53条第1項第1号のうち、「30日」を「3ヶ月」とする。
第55条第1項第2号のうち、「分割出願若しくは」を「分割出願又は第52条の2第2項による分離出願であるか」とし、同項第4号のうち、「特許可否の決定、実用新案登録可否の決定」を「設定登録されたか、特許拒絶決定、実用新案登録拒絶決定」とし、第8項を次のように新設する。
⑧特許決定された特許出願を基礎として第1項による優先権主張をした場合、その先出願に対しては第79条による設定登録を受けることができない。但し、該当の先出願を基礎とした優先権主張が取り下げられた場合は、この限りでない。
第56条第1項第2号のうち、「特許可否の決定、実用新案登録可否の決定」を「設定登録されたか、特許拒絶決定、実用新案登録拒絶決定」とする。
第59条第3項のうち、「分割出願」を「分割出願、分離出願」とし、「分割出願をした日」を「分割出願をした日、分離出願をした日」とする。
第62条第6号のうち、「分割出願の場合」を「分割出願又は第52条の2第1項による範囲を外れる分離出願の場合」とする。
第67条の2第1項の本文のうち、「特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日」を「特許決定の謄本の送達を受けた日から3ヶ月(第79条による設定登録を受けるまでの期間をいう。)又は特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から3ヶ月」とし、同項のただし書のうち、「再審査を請求する際に既に再審査による特許拒絶決定があるか、又は第132条の17による審判請求がある」を「次の各号のいずれかに該当する」とし、同項に各号を次のように新設し、同条第3項のうち、「特許拒絶決定」を「特許決定又は特許拒絶決定」とする。
第81条の3第1項の本文のうち、「責任を負うことができない事由」を「正当な事由」にする。
第92条の2第4項のうち、「第52条第2項」を「第52条第2項、第52条の2第2項」とし、同項第2号のうち、「分割出願をした日」を「分割出願をした日又は第52条の2による分離出願の場合は、分離出願をした日」にする。
第122条の題目のうち、「質権行使」を「質権行使等」とし、同条前段のうち「特許権者」を「特許権者(共有特許権の分割請求の場合には、分割請求をした共有者を除いた残りの共有者をいう。)」とし、「質権設定又は特許権の共有者の共有物分割請求」とする。
第132条の17の「30日」を「3ヶ月」とする。
第133条第1項第7号のうち、「分割出願の場合」を「分割出願又は第52条の2第1項前段による範囲外の分離出願の場合」とする。
附 則
第1条(施行日)この法律は、公布後6ヶ月が経過した日から施行する。
第2条(手続きの無効等に関する適用例)第16条第2項、第67条の3第1項及び第81条の3第1項の改正規定は、この法律の施行日から適用する。
第3条(分割出願に関する適用例)第52条第4項から第7項までの改正規定は、この法律施行後に分割出願された特許出願から適用する。
第4条(分離出願に関する適用例)第52条第8項、第52条の2、第59条第3項、第62条第6号、第92条の2第4項及び第133条第1項第7号の改正規定は、この法律施行後に初めて特許拒絶決定等に対する審判が請求された特許出願から適用する。
第5条(特許出願等を基礎とした優先権主張に関する適用例)第55条第1項第2号・第4号、同条第8項及び第56条第1項第2号の改正規定は、この法律施行後に第62条による特許拒絶決定、第66条による特許決定又は第176条第1項による特許拒絶決定の取消審決(特許登録を決定した審決に限定するが、再審審決を含む。)の謄本の送達を受けた特許出願から適用する。
第6条(再審査の請求に関する適用例)第67条の2第1項及び第3項の改正規定は、この法律施行後第62条による特許拒絶決定、第66条による特許決定又は第176条第1項による特許拒絶決定の取消審決(特許登録を決定した審決に限定するが、再審審決を含む。)の謄本の送達を受けた特許出願から適用する。
第7条(質権行使等による特許権の移転に基づく通常実施権に関する適用例)第122条の改正規定は、この法律施行後に初めて共有特許権が分割請求された場合から適用する。
第8条(特許拒絶決定等に対する審判に関する適用例)第132条の17、第52条第1項第2号及び第53条第1項第1号の改正規定は、この法律施行後に特許拒絶決定謄本の送達を受けた特許出願から適用する。
第9条(他法律の改正)実用新案法の一部を次のように改正する。
第10条第1項第1号のうち、「30日」を「3ヶ月」とする。
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