知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 商標法一部改正法律案

2020年07月03日

議案番号:1417

提案日:2020年7月3日

提案者:パク・ボムゲ議員外13人

提案理由

知的財産権は、建物など不動産のような有体物とは異なり、形態のない無体財産権であるため、権利を侵害された際に、その価値を評価して適正な損害賠償を受けることが難しい。例えば、特定の建物に対する価値は公示地価、実際の取引価額など様々な評価指標などにより、侵害による損害を算定することが容易である反面、商標権の場合、その商標が持つ経済的価値は商標権者の信用に比例するため、商標権が侵害された場合、その損傷された価値に対する評価を受けることが難しい。
商標権者が相当な投資と努力を通じて構築した信頼を強く保護することは、単に商標権者に限って利益になるものではなく、その商標を信頼して製品を購買した需要者にも利益になるものである。このように商標は製品の出所を表す機能、広告宣伝機能及び製品の品質を保証する機能も同時に持っている。特に最近は、消費者の消費に対する見識が広くなったことを受けて品質保証機能が大きく注目を集めている。
従って、需要者の製品選択権等の利益を保障するためには商標権者の商標と同一か、もしくは類似な商標を使用して消費者を混乱させる行為を根絶する必要がある。
そこで、本改正法が施行された以降に侵害が発生した場合、その登録された商標と同一・類似な商標を故意的に侵害したに対し、その侵害により損害額として認められた金額の3倍以内で賠償額を賦課できるようにして商標権者の効果的な権利救済を図ろうとするものである。
又、2011年に導入された法定損害賠償の最高限度である、5,000万ウォンを国内の商品取引市場の拡大、物価上昇要因等を考慮し、本改正法が施行されて以来、商標権を侵害した者に対して損害額として認められる最大金額を1億ウォンへと引上げ、故意的な場合には最大3億ウォン以内で賠償できるように制度を整備する。
一方、現在の損害額の選定方式の一つである通常的に受けられる金額が、市場の基準より低く算定されているため、適正な損害額の算定が行われないという指摘があり、これを合理的に受けられる金額へと基準を変更し、損害額を市場の現実に即して算定できるように改善しようとするものである。

主要内容

イ.商標権侵害に対する損害額の算定方式のうち、使用料の算定基準を「通常受けることができる金額」から「合理的に受けることができる金額」に変更する(案第110条第4項)
ロ.故意的に商標権者又は専用使用権者の登録商標と同一・類似な商標をその指定商品と同一・類似した商品に使用し、商標権又は専用使用権を侵害した者にその損害として認められた金額の3倍以内で賠償額を法院が定めることができるようにする(案第110条第7項及び第8項新設)
ハ.法定損害賠償額の最高限度を5,000万ウォンから1億ウォン(故意的に侵害した場合には3億ウォン)に引き上げる(案第111条)

法律第 号

商標法一部改正法律案

商標法の一部を次のように改正する。
第110条第4項のうち、「通常」を「合理的に」にし、同条に第7項及び第8項を、それぞれ次のように新設する。
⑦法院は故意的に商標権者又は専用使用権者の登録商標と同一・類似な商標をその指定商品と同一・類似した商品に使用し、商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、第109条にも関わらず、第1項から第6項までの規定により損害として認められた金額の3倍を超えない範囲で賠償額を定めることができる。
⑧第7項による賠償額を判断する際には次の各号の事項を考慮しなければならない。
 1.侵害行為した者の優越的な地位の有無
 2.故意又は損害発生の憂慮を認識した程度
 3.侵害行為により商標権者及び専用使用権者が受ける被害規模
 4.侵害行為により侵害した者が得た経済的利益
 5.侵害行為の期間・回数等
 6.侵害行為による罰金
 7.侵害行為をした者の財産状況
 8.侵害行為をした者の被害に対する救済努力の程度
第111条第1項の前段のうち、「5,000万ウォン」を「1億ウォン(故意的に侵害した場合には3億ウォン)」とする。

附 則

第1条(施行日)この法律は、公布した日から施行する。
第2条(商標権又は専用使用権の侵害訴訟に関する適用例)第110条第7項及び第8項、第111条の改正規定は、この法律施行後に発生した違反行為から適用する。

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