知的財産情報(知財関連法律改正の動き) デザイン保護法一部改正法律案

2019年10月21日

議案番号:22925

提案日:2019年10月21日

提案者:無所属 文喜相(ムン・ヒサン)議員外11人

提案理由

現行法上、デザイン権などの知的財産権が侵害されると、デザイン権者はデザイン権侵害に対する損害賠償を請求することができ、これに対し法院は損害賠償額を算定する際に、侵害者の利益額をデザイン権者の損害として推定可能にすることで、適切な民事的救済ができるよう、制度が運営されている。しかし、同損害額の算定方式は推定規定に過ぎず、デザイン権者の生産能力の範囲内で損害額が認められるため、侵害者がデザイン権者より生産能力が優れている場合には、侵害者がデザイン権者の損害を賠償してもその利益額が残り、「侵害した方が得」と認識する問題点が提起されている。

また、同損害額の算定方式を適用するためには、デザイン権者が侵害者の利益額を立証しなければならず、侵害者が保有している営業秘密などの主な情報をデザイン権者が立証し、これを裁判過程で明らかにすることは事実上不可能であるため、立証責任が適正に分けられるよう制度を見直されなければならないという指摘がある。

デザイン権などの知的財産権はその侵害行為による被害が莫大であるにも関わらず、その侵害行為と損害を立証するには関連証拠が侵害者に偏重しており、関連紛争においての実体的な真実に接近するのが簡単ではないという問題がある。

そこで、侵害者がその侵害行為から得た利益額はデザイン権者の生産能力とは関係なく、デザイン権者の損害として認められるようにし、立証責任の範囲を適正に分ける一方、侵害者が保有した証拠に対し提出命令の対象と範囲を拡大し、法院の証拠提出命令に対する不応時の制裁効果の導入を通じて、提出命令の実効性を向上し、デザイン権者の効果的な権利救済を図るためである。

主要内容

イ.デザイン権侵害に対する損害賠償請求の根拠規定を整備する(案第115条第1項新設)。
ロ.損害額を算定する方式の中、侵害者の利益額をデザイン権者の生産能力とは関係なく損害と認められるようにし、デザイン権者及び侵害者がそれぞれ立証すべき事項を明確に区分する(案第115条第4項)。
ハ.損害額を算定するために鑑定人に対する当事者の説明義務を課すことで、迅速・的確な損害額の算定を図る(案第115条の2新設)。
二.デジタル記録媒体の発展環境を反映するために、提出命令の対象を書類から資料に拡大し、侵害証明のための目的も追加する(案第118条第1項)。
ホ.提出拒否の事由についての妥当性を確認するために、法官だけが事前に確認する秘密審理手続きを導入する(案第118条第2項新設)。
ヘ.侵害の証明又は損害額の算定の際に必ず必要な場合には、営業秘密であっても提出義務を課し、法院の提出命令に従わないときには、相手の主張事実を真実のものと認められる制裁規定を導入する(案第118条第3項から第5項まで新設)

デザイン保護法一部改正法律案

デザイン保護法の一部を次のとおり改正する。

第115条の題目 「損害額の推定等」を「損害賠償請求権」とし、同条第1項から第6項までをそれぞれ第2項から第7項とし、同条第1項を次のとおり新設し、同条第2項(従来の第1項)中、「デザイン権者又は専用実施権者は、故意若しくは過失によって自分のデザイン権又 は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償」を「第1項によって損害賠償」とし、同条第3項(従来の第2項)本文中、「第1項」を「第2項」とし、同条第4項(従来の第3項)を次のとおりとし、同条第5項(従来の第4項)中、「デザイン権者又は専用実施権者が故意若しくは過失で自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償」を「第1項によって損害賠償」とし、同条第6項(従来の第5項)前段中、「第4項」を「第5項」とし、同条第7項(従来の第6項)中、「第1項から第5項まで」を「第2項から第6項まで」とする。

(1)デザイン権者又は専用実施権者は、故意若しくは過失によって自分のデザイン権又 は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求することができる。

(4)第1項によって損害賠償をする場合、デザイン権又は専用実施権を侵害した者が、その侵害行為によって得た売上額の中、侵害行為と関連して追加的にかかった費用を除いた金額を、デザイン権者又は専用実施権者が受けた損害額と推定するものの、デザイン権者又は専用実施権者の生産能力は考慮しない。この場合、その売上額はデザイン権者又は専用実施権者が証明しなければならず、その費用は侵害した者が証明する。

第115条の2を次のとおり新設する。

第115条の2(鑑定事項の説明義務)デザイン権又は専用実施権の侵害訴訟で、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じたときには、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。

第118条の題目中「書類」を「資料」とし、同条の題目以外の部分を第1項にし、同条第1項(従来の題目以外の部分)本文中「侵害行為による損害を計算するのに必要な書類」を「侵害の証明及び侵害による損害を計算するのに必要な資料」とし、同項のただし書き中「書類」をそれぞれ「資料」とし、同条に第2項から第5項までを次のとおり新設する。

(2)法院は資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合に法院は、その資料を他人に供してはならない。

(3)第1項によって提出しなければならない資料が営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2 条第2 号による営業秘密をいう。以下同じ)に該当するものの、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要なときには、第1項ただし書きによる正当な理由として認めない。この場合に法院は、提出命令の目的内で閲覧することができる範囲又は閲覧することができる人を指定しなければならない。

(4)当事者が正当な理由なしに資料提出命令に従わないときには、法院は資料の記載に対する相手の主張を真実のものと認めることができる。

(5)第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することが顕著に困難な事情があり、資料で証明する事実を他の証拠で証明することも期待することができないときには、法院はその当事者が資料の記載によって証明しようとする事実に関する主張を真実のものと認めることができる。

第217条第1項各号以外の部分本文中「営業秘密(『不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律』第2条第2号による営業秘密をいう。以下同じ)」を「営業秘密」とし、同項第1号中「準備書面又は既に調査したか調査しなければならない証拠」を「準備書面、既に調査したか調査しなければならない証拠又は第118条第3項によって提出したか提出しなければならない資料」とする。

附則

第1条(施行日)この法は公布した日から施行する。

第2条(デザイン権又は専用実施権の侵害訴訟に関する適用例)第115条、第115条の2、第118条及び第217条の改正規定は、この法の施行以後、最初に提起される訴訟から適用する。

新旧条文対照表
現行 改正(案)
第115条(損害額の推定等) <新設> 第115条(損害賠償請求権等) (1)デザイン権者又は専用実施権者は、故意若しくは過失によって自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求することができる。
(1)デザイン権者又は専用実施権者は、故意若しくは過失によって自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求する場合、その権利を侵害した者がその侵害行為をするようにした物品を譲渡した時には、その物品の譲渡数量にデザイン権者又は専用実施権者がその侵害行為がなかったら販売することができた物件の単位数量当たり利益額を乗じた金額をデザイン権者又は専用実施権者が負った損害額とすることができる。 (2)第1項によって損害賠償を請求する場合、その権利を侵害した者がその侵害行為をするようにした物品を譲渡した時には、その物品の譲渡数量にデザイン権者又は専用実施権者がその侵害行為がなかったら販売することができた物件の単位数量当たり利益額を乗じた金額をデザイン権者又は専用実施権者が負った損害額とすることができる。
(2)第1項によって損害額を算定する場合、損害額はデザイン権者又は専用実施件者が生産することができた物品の数量から実際販売した物品の数量を引いた数量に単位数量当たり利益額を乗じた金額を限度とする。但し、デザイン権者又は専用実施権者が侵害行為以外の事由で販売することができなかった事情がある時には、その侵害行為以外の事由で販売することができなかった数量による金額を引かなければならない。 (3)第2項によって損害額を算定する場合、損害額はデザイン権者又は専用実施件者が生産することができた物品の数量から実際販売した物品の数量を引いた数量に単位数量当たり利益額を乗じた金額を限度とする。但し、デザイン権者又は専用実施権者が侵害行為以外の事由で販売することができなかった事情がある時には、その侵害行為以外の事由で販売することができなかった数量による金額を引かなければならない。
(3)デザイン権者又は専用実施権者が故意若しくは過失で自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求する場合、権利を侵害した者がその侵害行為で利益を得た時にはその利益額をデザイン権者又は専用実施権者が受けた損害額と推定する。 (4)第1項によって損害賠償をする場合、デザイン権又は専用実施権を侵害した者が、その侵害行為によって得た売上額の中、侵害行為と関連して追加的にかかった費用を除いた金額を、デザイン権者又は専用実施権者が受けた損害額と推定するものの、デザイン権者又は専用実施権者の生産能力は考慮しない。この場合、その売上額はデザイン権者又は専用実施権者が証明しなければならず、その費用は侵害した者が証明する。
(4)デザイン権者又は専用実施権者が故意若しくは過失で自分のデザイン権又は専用実施権を侵害した者に対してその侵害によって自分が負った損害の賠償を請求する場合、その登録デザインの実施に対して通常的に受けることができる金額をデザイン権者又は専用実施権者が負った損害額にして損害賠償を請求することができる。 (5)第1項によってを請求することができる。
(5)第4項にもかかわらず損害額が同じ項に規定された金額を超過する場合には、その超過額に対しても損害賠償を請求することができる。この場合、デザイン権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がない時には、法院は損害賠償額を算定する時その事実を考慮することができる。 (6)第5項にもかかわらず損害額が同じ項に規定された金額を超過する場合には、その超過額に対しても損害賠償を請求することができる。この場合、デザイン権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がない時には、法院は損害賠償額を算定する時その事実を考慮することができる。
(6)法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で損害が発生したことは認められるがその損害額を証明するために必要な事実を明らかにすることが事実の性質上極めて困難な場合には、第1項から第5項までの規定にもかかわらず弁論全体の趣旨と証拠調査の結果に基づいて相当した損害額を認めることができる。 (7)法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で損害が発生したことは認められるがその損害額を証明するために必要な事実を明らかにすることが事実の性質上極めて困難な場合には、第2項から第6項までの規定にもかかわらず弁論全体の趣旨と証拠調査の結果に基づいて相当した損害額を認めることができる。
新設 第115条の2(鑑定事項の説明義務)デザイン権又は専用実施権の侵害訴訟で、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じたときには、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。
第118 条(書類の提出) 法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で当事者の申請によって該当侵害行為による損害を計算するのに必要な書類を提出するように他の当事者に命ずることができる。但し、その書類の所持者がその書類の提出を拒絶する正当な理由がある時には、この限りでない。 第118 条(資料の提出)(1)法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で当事者の申請によって該当侵害の証明及び侵害による損害を計算するのに必要な資料を提出するように他の当事者に命ずることができる。但し、その資料の所持者がその資料の提出を拒絶する正当な理由がある時には、この限りでない。
新設 (2)法院は資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合に法院は、その資料を他人に供してはならない。
新設 (3)第1項により提出しなければならない資料が営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2 条第2 号による営業秘密をいう。以下同じ)に該当するものの、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要なときには、第1項ただし書きによる正当な理由として認めない。この場合に法院は、提出命令の目的内で閲覧することができる範囲又は閲覧することができる人を指定しなければならない。
新設 (4)当事者が正当な理由なしに資料提出命令に従わないときには、法院は資料の記載に対する相手の主張を真実のものと認めることができる。
新設 (5)第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することが顕著に困難な事情があり、資料で証明する事実を他の証拠で証明することも期待することができないときには、法院はその当事者が資料の記載によって証明しようとする事実に関する主張を真実のものと認めることができる。
第217 条(秘密維持命令) (1)法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で当事者が保有した営業秘密(「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2 条第2 号による営業秘密をいう。以下同じ)に対して次の各号の事由を全て疎明した場合には、その当事者の申請によって決定で他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他その訴訟によって営業秘密を知った者にその営業秘密をその訴訟の継続的な遂行以外の目的で使用し、またはその営業秘密に関係されたこの項による命令を受けた者以外の者に公開しないことを命ずることができる。但し、その申請時点まで他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他その訴訟によって営業秘密を知った者が第1 号に規定された準備書面の閲覧若しくは証拠の調査以外の方法でその営業秘密を既に取得している場合には、この限りでない。 第217 条(秘密維持命令) (1)法院は、デザイン権又は専用実施権の侵害に関する訴訟で当事者が保有した営業秘密に対して次の各号の事由を全て疎明した場合には、その当事者の申請によって決定で他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他その訴訟によって営業秘密を知った者にその営業秘密をその訴訟の継続的な遂行以外の目的で使用し、またはその営業秘密に関係されたこの項による命令を受けた者以外の者に公開しないことを命ずることができる。但し、その申請時点まで他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他その訴訟によって営業秘密を知った者が第1 号に規定された準備書面の閲覧若しくは証拠の調査以外の方法でその営業秘密を既に取得している場合には、この限りでない。
1. 既に提出し、または提出しなければならない準備書面又は既に調査し、または調査しなければならない証拠に営業秘密が含まれているということ 1. 既に提出し、または提出しなければならない準備書面、既に調査したか調査しなければならない証拠又は第118条第3項によって提出したか提出しなければならない資料に営業秘密が含まれているということ
2.(省略) 2.(現行と同様)
(2)~(5)(省略) (2)~(5)(現行と同様)

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